遙か短文ヒノエ×朔部屋です。一番上が最新です。
シリアスほのぼのコメディごっちゃまぜ、ネタバレ考慮一切しておりませんのでご注意!
短文以外はその他創作部屋に置いてます。




昼下がり




望美や譲が「学校」とやらに通っている間。
有川邸のリビングで、朔はやっと慣れてきた「てれび」をみながらぼんやりとしていた。
「そうじき」は一人で動かす事は愚かただ指を触れるだけでもまだ怖い(だって動くとすごい音がする)。
料理の支度にはまだ早く、買い物だって一人では行く気にもなれない。
書物を読もうにも文字が違いすぎて何が書いてあるのかさっぱりだった。
こうなってみると朔はやはり何をするでもなく、ただぼんやりとするしかない。
「てれび」の中の耳慣れない音楽や見慣れない衣装に、ここは異世界なのだと思い知りながら。
そんな朔に声をかけたのは、年若い熊野の頭領だった。
「朔ちゃん、ちょっと付き合ってよ」
「まあなあに?」
「いいからさ、ね?」

ヒノエの満面の笑顔につられて、朔もついほだされてしまう。
そんなことが最近多くなった。
あまり調子に乗らせても面白くないのだが。
望美の世界に来てから、積極的にこの世界の事を知ろうと頻繁に出かけていったヒノエに比べて、朔は家の中に閉じこもりがちだ。
これでははいけない、と思ってはいても自分の世界とはあまりにも違う町並みにどうしても足がすくんでしまう。
そんな朔を慮ってというのなら、断るのも悪い気がしてしまう。
軽い態度の中に隠して、彼がそういったさりげない気遣いをするのだと、もう朔は知っていたから。

「そんなに遠くへ行くわけではないのなら、いいわよ」
「・・・いいんだね?」
「いいと言っているでしょう?」
「朔ちゃんは、俺と付き合う」
「・・・?なんなの?」

ヒノエはにやりと人の悪い笑みを浮かべる。
なんだかとても嬉しそうだ。

「朔ちゃんが、俺と付き合う・・・付き合うってね、こっちの世界では恋仲になるって意味もあるんだってさ」
「・・・なっ」
「朔ちゃんがいいって言ったんだよ?これでやっと、オレのものだね」

朔の顔が怒りの為か羞恥の為か、みるみる赤く染まる。
それを見てヒノエがとうとう抑えきれずに声をあげて笑い出し、朔の堪忍袋の緒は勢いよく切れた。

「ヒノエ殿っ!!」

ヒノエの笑い声と朔の怒鳴り声はしばらく続き、なんともにぎやかな昼下がりとなったのだった。




迷宮でのある日の出来事。洗濯はきっと兄ちゃんがやってるしなーとなると朔ちゃん暇だな、これはヒノエがちょっかいかけて暇つぶしさせねば!そんなお話です。






「貴方はそれでも一応神職にあるのでしょう?そんな貴方が女を・・・ましてや尼僧を口説くなんてしていいと思っているの?」

まるでそれを口にすればオレが退くとでも思っているように、強い眼差しで彼女は言う。
甘いね、朔ちゃん。

「その程度の罪、犯す事は怖くもなんともないよ」

神でありながら人を愛し、人でありながら神を愛した。
そんな二人に比べれば、自分の罪なんて軽いものだ。

だから二人で、罪に落ちよう?

ヒノエはそう言うと、朔の身体を抱き寄せた。




そして1.5秒後に殴り飛ばされた。
いやーきっとそうなると思います(笑)



烏の楽しみ2




以前から熊野水軍は源氏の要職、軍奉行のいる梶原邸に烏を潜ませてはいたが、最近は戦に関係の無い軍奉行の妹についての報告が詳しく事細かになっていた。
もちろん、頭領の要望に応じて、である。

「・・・以上です」
「ご苦労」
「・・・ところで、頭領」
「何だ?」
「朔殿をいつ口説き落とされるんですか」

お茶を吹いた。

「・・・ばっおま、お前なあ・・・!朔殿なんて馴れ馴れしい呼び方すんなっ」

そっちかよ、と思ったが優秀な烏はあえて突っ込まなかった。
以前までは、女を口説く事に長けたこの頭領なら即行で嫁くらい連れてきそうだと思っていたのだが。

この分だとまだまだ当分先になるな、と烏は思った。




ヒノ朔+烏さんその2。ヒノ朔を観察。楽しいだろうなあ(笑)!



烏の楽しみ




熊野の烏の仕事は様々だったが、最近になって報告に対する頭領の言葉が少々変わってきていた。

「梶原邸の様子は、特に変わりはありません」
「そうか・・・あーそれでその」
「軍奉行殿の妹御のご様子も、特にこれといって」
「分かった・・・ご苦労」

昨日も一昨日もその前も、同じ事を聞かれたのでさすがに優秀な烏はさっさと答えを発した。
それを聞くと、頭領が長いため息をつくのも、最早珍しいものでもない。

これが女とみると口説いてまわっていた頭領なのかと思うとおかしくて仕方が無いが。
恋わずらいに悩まされる頭領なんて面白いもの。
せっかくだからじっくりと観察させてもらおうと、熊野が誇る優秀なはずの烏は思った。




ヒノ朔+烏さん。実は「それは、まるで」でヒノエが朔のとこに来なかった間の話を書こうかと思って書き出したらこれになりました。烏さんおいしいなー。



もしもの話




朔に、軽い気持ちで声をかけないでくれ。
彼女を容易く手に入れられる、装飾品のようなものだと考えているのなら、どうかもう諦めてくれ。

もしも本当に・・・本気で、彼女がほしいのだというのなら・・・。
それでも。
諦めて、そっとしておいて欲しい。

もしもの話だよ。

君みたいな要職についた人が、この戦乱の世でいつ命を落とすかなんて分からないだろう。
彼女にとって君が特別になったとして。
それで君がもしも本当に命を落としたりしたら・・・彼女はどうなる?

馬鹿馬鹿しいと思うだろう。そんなに妹が大事なのかと笑ってくれてかまわない。
だけどね、俺は本気だよ。
彼女がこれ以上、傷付いたり、泣いたり・・・そんな姿を見るのはもうたくさんだ。
だから、君がこれ以上彼女の中に踏み入れようとするのなら・・・

俺も、容赦はしないよ。



そう言った彼は今にも斬りかかってきそうな、どこまでも真剣な目でオレを射抜いた。




ヒノ朔+景時さん。お兄ちゃんは心配性(笑)。ヒノ朔の最大の障害の一つだと思うの。



新婚さんの夕食




夕飯の支度をしている朔の背中に柔らかな声がかけられた。

「何かお手伝いしましょうか?」
「あら・・・弁慶殿。良いのよ、一応お客様なのだからゆっくりしていて」
「といっても最近は朝昼晩と食事を頂いてしまっているので」
「あっ・・・」

朔が包丁からぱっと手を離す。
その白い指からぽつりと零れ落ちる鮮やかな赤。
弁慶は、朔が止める間もなくその指を自身の口へと含む。

「弁慶殿っ!」
「・・・こうしたほうが、早く治るんですよ」
「嘘おっしゃい」

取り戻した自分の指をかばうようにして、朔が睨みつける。
相変わらずの柔和な笑顔に、苛立ちが沸き起こる。
一体、どういうつもりだというのだろう。
自分はもう、ヒノエ殿の妻だというのに。

「前々から言おうと思っていたのだけれど・・・いい加減にからかうのはやめて頂戴」
「おや、僕はこれまで真剣に口説いていたつもりだったんですが・・・」

弁慶がそう言うと、朔はにっこりと笑顔を見せた。
そして袂から扇を取り出す。
それはもちろん舞にも使うことができるが、戦いにも充分な威力を発揮する特別製のもの。

「では私も、真剣に追い払う事にするわ」

笑顔のままで告げられた言葉に、弁慶はじりじりと後退した。
背中を汗がつたうのを感じながら、源氏軍最強の軍師は思った。

ああ、ヒノエなどよりよっぽど手強い。





「・・・朔ちゃん、弁慶と何かあった?」
「あら、どうして?何もないわよ」
「・・・そう?」

連日ご飯時になると現れていた迷惑な叔父が、今日は姿を見せなかった。
その事を不思議に思いながらも、すぐにヒノエは頭を切り替え、気にしない事にした。
なんといっても新婚家庭。熱愛中の二人の夕飯時に、お邪魔虫はいらないのである。
目の前に並べられる愛しい新妻手作りのほかほかご飯。
そして可愛い妻の、可愛い笑顔。

「あ〜なんか俺、幸せかも・・・」
「まあ、いきなりなあに?」

可笑しそうに笑い声をたてる朔を見て、ヒノエは思った。

幸せかも、じゃなくて。
本当に、世界一幸せだな、と。




よし、夕食までいけました!これで朝昼晩そろったー!
ヒノ朔←弁慶で弁慶を追い払うのはやっぱり朔だと思うのです(笑)。






たまに望美のようになれたら、と思う時がある。

強く、真っ直ぐに前を向いて進んでいく、変わることを恐れない。
過去にとらわれて立ちすくんだままの私には、あまりにも眩しい。

なんて、皮肉な名前なんだろう。
満月と朔月。
同じ月のはずなのに、あまりにも違う。

「望美には望美の、朔ちゃんには朔ちゃんの良さがあるんだよ」

そう言って笑ってくれたヒノエ殿の顔を見て、私はまた思う。

ああ、私も望美のようになれたなら、と。




ヒノ朔。い・・・意味ちゃんと通じてますかね?(ドキドキ)



新婚さんの昼食




ヒノエは今日は仕事で遠出だった。
日も高く中天にさしかかる頃、ヒノエは足を止めて大きな樹の根元に腰掛けた。
いそいそと小さな包みを取り出す。
それは新妻が朝方ヒノエにもたせてくれた、握り飯と漬物だった。

「おや、昼食にしますか」
「・・・・・・」
「いいですね〜僕もお腹がすきました。一つ分けてくれませんか?」
「・・・・・・」
「朔殿の手作りとあれば、ただの握り飯でも美味しく感じられるでしょうね」
「・・・・・・」
「ああ、お腹が減ったなあ・・・このままでは任務に支障が出るかもしれない」
「・・・・・・」
「仕方がないので、今から帰って朔殿と一緒にお昼ご飯を食べてきます」
「・・・・・・っ!」

ヒノエは頬張っていた握り飯を噴出した。少々むせて苦しそうに竹筒から水を飲み干す。

「おやおや、大丈夫ですかヒノエ?」
「・・・何、言ってんだよアンタ」
「ヒノエがお昼ご飯を分けてくれないからですよ?」
「だからってなんでそうなるっ!」
「いや〜いいですね、あの家で一人寂しく君を待つ新妻。そこに現れる僕。
二人きりで仲良くお昼ごはんを頂く。親密度も一気に上がるというものですね。
う〜ん我ながら完璧だな」
「ふ・ざ・け・ん・なっだ〜れがアンタなんかと朔ちゃんが」
「おやでも朔殿と僕はめでたく親戚になりましたし。もとより仲間同士でしたし。お腹を減らした僕が現れたら、きっとお昼ごはんをだしてくれますよね。
あの家ではできるだけ家人をおかず、朔殿自身が家事をこなしているわけでしょう。
だったら自ずと二人きりで過ごすことになりますよねえ・・・」
「・・・・・・」
「大丈夫ですよ、先方には僕は体調が良くないから失礼させて頂いたと文を送っておきますから、ヒノエは心置きなくゆっくりと仕事をこなしてきて下さいね。夜まで帰らなくて結構ですよ。ああ、なんなら泊まりでも」
「・・・やる」

ヒノエは地獄の底に落ちろこの野郎と思いながら、握り飯を差し出した。
弁慶はそれをにこにこと微笑みながら受け取る。

「ああ、有難うございます。悪いですね〜せっかくの愛しい新妻の作ってくれたお昼を分けてもらうなんて」

声が笑ってるから、声が。

ヒノエは頬をひきつらせながら、思った。

こいつといつか縁を切ってやるっ!絶対に切ってやるっ!

ヒノエの切実な願い・・・それが叶えられる時がくるのか、それは龍神様にも分かりはしまい。




ヒノ朔もっと読みたいという嬉しいコメントを頂いたので!
朝食があるなら昼食もあるよねー。ほんと、ヒノ朔結婚後はなにかと弁慶につきまとわれてると面白いなー(笑)



新婚さんの朝食




「いただきまーす」

ぽん、と軽く手を合わせてヒノエが軽快に箸を動かし始める。
さすがにまだ成長期なだけあって、その食欲はなかなかに旺盛だ。
あっという間にご飯を平らげて、空になった茶碗を傍らにいた新妻に差し出す。

「おかわりはたっぷりあるんだし、そんなに急いで食べなくてもいいのよ」
「だって朔ちゃんのご飯うまいんだよ」

そう言うヒノエに、朔も仕方がないわね、と嬉しげに笑顔を浮かべる。
ああ、なんて夢のような新婚生活。
ヒノエは喜びに打ち震えた。
恋焦がれた、何度も何度も振られ続けて相手にされていなかった相手をやっとの思いで口説き落として添い遂げて、こうして彼女の手作りの朝食を食べる。
こんな幸せが他にあるだろうか。
本当に、最高の気持ちだった。

「弁慶殿も、おかわりはいかが?」
「ああ、お願いできますか」

そう、こいつさえいなければ。

「・・・あんた、何で毎朝毎晩人の家にご飯食べにくるわけ?」
「いやだなあ他人じゃあるまいし。可愛い甥っ子夫婦の様子を観にきて何がいけないんですか?」

ふふふ、とどこまでもにこやかな笑顔でそう答える。
ああ、殴ってやりたい。

「こっちは新婚ほやほやなんだよ!当てられたくなきゃさっさとどっか行け!」
「はっはっは馬鹿だなあ新婚だからこそまだまだ横槍を入れる隙があるというものでしょうヒノエ」

顔を真っ赤にして怒鳴るヒノエに対し、弁慶はあくまでも穏やかに笑顔で応じる。
それがますますヒノエを苛立たせ、二人はまさに一触即発状態である。
そんな二人の間の緊張をやぶったのは、やはりというかもちろんというべきか、凛と静かながら よくとおる朔の一声である。

「ヒノエ殿、弁慶殿」
「朔ちゃん」
「朔殿」
「食事中は、暴れたりしないで、仲良く食べるのよ。いいわね?」

彼らにとって最大の弱点である彼女にこう言われては、二人とも従わざるをえない。
こうして表面上だけなごやかな朝食の時間が、今日もまた穏やかに過ぎるのだった。




ヒノ朔ブーム続行中。とはいえやはり弁朔も好きなんだよ(笑)
特にヒノエにちょっかいかけてる弁慶がすごい好きらしいですよ私。
朔はふつーに料理上手だと思う。んで望美はすんごい料理下手だと信じてる(笑)



飴とはちみつプリン




「ねえ、朔ちゃんってば」

呼びかける声を見事に無視して、少女はもくもくと譲の作った異世界の菓子を口に運んでいる。

「おいしーい!譲くん、また腕上がったんじゃない?」
「そうですか、実は蜂蜜はヒノエが差し入れてくれたものなんですよ。すごく良い物らしくて」
「へーヒノエくん、ありがとね」
「いや、姫君に喜んでもらえたのなら良かったよ。・・・朔ちゃんは、お気に召さないみたいだけど」

ヒノエのぼやきに朔がようやく反応する。

「あら、そんなこと言っていないわ。ただ少し静かにできないものなのかと呆れていただけよ」
「朔ってヒノエくんに対しては飴とムチならぬムチとムチって感じだよね」

望美が思わず呟く。
その言葉にヒノエはわざとらしく悲しんでみせる。半分本気だ。

「ほんと、たまには俺だって甘いものがほしいよねえ」

その言葉に勘違いしたのかそれとも皮肉なのか、譲がはちみつプリンを白龍に手渡しながらヒノエに言う。

「悪いけど、ヒノエの分は作ってないぞ」
「えっほんとに?」

譲の言葉にヒノエはまた大げさに嘆きだす。

「あ〜あ、せっかく苦労して材料を手に入れてきたのに、俺の分はなし、朔ちゃんは冷たい。俺って可哀想すぎない?」
「もう、仕方ないわね」

そう言って、朔はひょいとヒノエの口に蜂蜜プリンをのせた匙を放り込む。

「どう?美味しいでしょう?これで文句はないわね」

目を丸くしたヒノエは口に匙をくわえたままでコクコクと頷く。

「・・・さ、朔それって・・・」
「朔が、食べてたやつだよな・・・?」
「・・・あら」

朔は二人に言われてようやく自分がしたことの意味に気づいたらしく、頬をほんのりと染めた。

「あんまりヒノエ殿がうるさいから・・・甘いものが欲しいなら分けてあげようと思って、それで」

珍しく少し取り乱した様子の朔をみて、呆然としていたヒノエもいつもの調子を取り戻す。

「いや・・・うん。ごちそうさま、朔ちゃん。とっても甘い飴だったよ」
「・・・蜂蜜プリンよ」

朔がそう言うと、ヒノエは楽しそうに笑った。




なんか珍しくふつーに甘くないこれ?
ヒノエが良い目みてるなんてすごく珍しい気がします(笑)
ヒノ朔ブーム(私が)だからか!良かったねヒノエ!



朔のお風呂タイムには絶対景時さんが結界はってると思う。




黒龍の神子、梶原朔。
彼女が馴れない現代での暮らしの中で、最も楽しみにしていること・・・。
それは、ずばりお風呂タイムである。

旅の多かった以前とは違い、毎日たっぷりの湯につかる事ができる。
居候になっている有川家の風呂場は一人で入るには広々としていて、のんびり入るのにうってつけだ。
馴れない生活で疲れた神経を癒す至福の時・・・それが朔にとってのお風呂タイムなのであった。

しかし彼女は知らなかった・・・その(風呂場の)裏で男たちの熱き戦いが繰り広げられている事を!


がさがさがさ、と木の葉がゆれ、赤い頭がちらりとのぞく。
現代日本の一般家庭にしては有川家の庭はとても広かった(なんせ蔵と温室がある)。
当然庭には立派な木もたくさん生えている。
仕事に忙しい父と、手先の不器用な母と、家事の手伝いは全てスルーする兄に囲まれている為、その世話をするのは譲の仕事となっている。
その庭の一角に生えている木・・・そう、読者様にはもう当然のごとく理解されておられる方もいらっしゃるだろうが、もちろんベタな展開で風呂場のすぐそばの木である。

「んー・・・窓がくもって見えない」

おしいね〜と呑気に風呂場の窓を木の上からのぞこうとしているのは熊野別当、藤原湛増・・・ヒノエである。
彼にとって残念な事に、現代のお風呂は温泉のように開放的でもなければ窓だって磨りガラスで開けようとしなければ中が見えることはまずない。
もちろん朔が無防備に開けるわけがない。
しかし開けぬなら開けてみせようホトトギス・・・なのがヒノエの性格であった。

身軽な彼が木の上からそろそろと手を伸ばして窓へと手をかけようとした・・・その時。

「その手は何かな〜ヒノエくん」

ぴたり、とヒノエの手が止まる。
見下ろしてみるとそこには同じ八葉の譲、弁慶、そして朔の兄でもある景時の姿があった。

「お前ら、いつのまに!?」
「こんな事もあろうかと風呂場の窓にもセコ●してみたんだよ」
「これが現代の科学というやつですね・・・観念なさい、ヒノエ」
「というか朔のお風呂タイムに君がいなければ誰でも思いつくよね〜油断できないよね〜」
「景時・・・目が、怖い」
「さあ、いい加減にして降りてきなさいヒノエ」
「・・・ったく、仕方ねえなあ」

がしがしっと頭をかいてヒノエが飛び降りようと・・・

「みせかけて!」

ガラッ!!
大きな音をたてて風呂場の窓が開く。
かぽ〜〜〜ん。

「・・・んだコレ!?」
「はっはっは俺の幻術で惑わされたようだね!そこは風呂場にあらず!」
「なにいっ!?」
「俺の式神サンショウウオ銀時くんの住む池に空間をつなげてみました〜」
「くっ!一瞬朔ちゃんがサンショウウオに変わったのかと驚いちまったぜ!」
「まだまだ甘いね!ちなみに本物の風呂場の窓には結界をはったから外からは見つけられないよ〜」

木の上と木の下からの馬鹿馬鹿しいやりとりは尽きる事無く。

二人を見守っていたほかの八葉もいい加減飽きて帰っていった。

その後も二人は「エロ別当!」「シスコン軍師!」「尊星王招請!」「火翼焼尽!」と白熱した戦いを繰り広げ、有川家の庭を燃やしつくしたという(譲くんごめんね)。

そんな男たちの熱き戦いの存在を知らず、今日も朔はゆったりのんびり、暖かい風呂につかっているのであった。

「あ〜兄上たちの相手をしてると疲れるわ・・・」

などとつぶやきながら。




今回なぜに望美がいないのかというと、彼女が出てきたら確実にヒノエくんが殺られると思ったからです(笑)
その他×朔に入れた「大団円ED後有川家にて」の続編にもとれるなあと気づいたのはついさっき。うーむでもヒノエ×朔だよねこれ。一応。






本当に好きなら、その人の幸せを喜んであげられる。
そんなのはきっと嘘だ。

幼い姿で蘇った黒龍に微笑みかける彼女の姿をみて、どうしようもなく暴れだしたいような気持ちになる。 
何もかもめちゃくちゃに壊してやりたい。
醜くて、みっともない独占欲と嫉妬に、心が真っ黒に染まっていくような。

これが恋じゃないとしたら、一体なんだっていうんだ。

本当に好きだから、独り占めしたい。
その微笑みを他の男に向けられるのは、耐えられない。

そうだろう?




黒龍が復活した後のヒノエと弁慶の片思いも面白そうだなーとか思ってしまいます。



それは、まるで。




梶原邸の縁側で、朔はぼんやりと庭を眺めていた。

家事もあらかた終わり、夕餉の支度にはまだ早い、ぽっかりと空いた時間。
以前なら、まるで見計らったように熊野別当が訪れては朔をからかって帰っていった。
その彼がここ最近姿をみせない。

何か彼の気にさわることを言ってしまっただろうか・・・と最後に交わした会話を思い返してみた りもするが、それより何よりもとから彼の軽口に対して自分がとってきた今までの態度を考えれば 、自然と足が遠のくというのも当たり前のように感じる。
むしろこれまで頻繁に通っていた事のほうが、不思議だった。

毎日のように訪れては、交わされたやりとり。
彼の甘い台詞。
毎日毎日よく飽きないものだ、となかば呆れた思いで聞き流していたはずなのに。
今こんなにも心をしめているのは・・・

「朔ちゃん?」
「きゃっ」

かけられた声に驚いて、思わず大きな声をあげてしまう。
振り返ったそこにいるのは、今まで確かに朔が思い描いていた人で。

「ヒノエ殿・・・?」
「驚かせちゃったみたいだね。一応何度か声をかけてたんだけど」
「全然気付かなかったわ」
「何をそんなに考え込んでたんだい?」
「・・・」

何を、と言われて朔の言葉が止まる。
まさか本人を前に言えるわけがない。

あなたの事よ、なんて。

そんなの、まるで私がヒノエ殿がこなくて寂しかったみたいだ。
そんなの・・・
ヒノエは、珍しく本気で驚いたように目をまるくした。

「ほんとにどうしたんだい?顔が真っ赤だけど」

ヒノエのその言葉に、朔の顔はますます赤く染まった。




ヒノエ×朔。
久々にコメディでもシリアスでもない話を書いた気がします。朔が可愛いので気に入ってます。



花二輪




花ざかりの少女二人が仲良く並んでいる姿は、とても微笑ましくて目に楽しい。

しかし。

いくらなんでも、もう少し。

もう少しくらいこっちもみてはくれないものか。

こんないい男が口説いてるんだからさ。

ね、朔ちゃん。




ヒノエ×朔。
朔を口説こうとした場合の一番のライバルは、実際のところ黒龍でもシスコン景時でもなく望美だと思う(笑)。



レッツゴー還俗




朔がついにヒノエの嫁になる為に、還俗することになった。

控えめな尼僧姿の朔も自身の美しさをひきたてるようで良かったが、 色とりどりの美しい装いをする朔、というのもまた華やかで美しい。
年頃の娘らしく装い頬を染めて微笑む少女を見て、ヒノエは幸せにひたりにやにやとだらし なく頬をゆるめた。
しかし。
叔父がぼそりと言った言葉にヒノエの笑顔は凍りついた。

「尼僧でなくなったなら堂々と手が出せますよね・・・」

ふふふ、と不遜な笑みを浮かべる叔父の姿に本気を感じ、ヒノエは熊でも射殺せそうな視線を向けた。

「手、出したらコロス」
「祝言をあげるまでは誰のものでもないはずですよヒノエ」

恐ろしいことをさらっと言ってくれる。



それから祝言をあげるまで、朔はヒノエに一日中べったりと付きまとわれて辟易することになる。




ヒノエ×朔←弁慶。
そうでなくともヒノエはべたべたすんのが好きそうだ。


変化




「朔ちゃんは、可愛いね」
「・・・言う相手が違うわよ、ヒノエ殿」

何度も同じように交わされた言葉。
けれど。

「本当に、可愛いと思ってるんだよ」
「もう、おかしな人ね」

交わされる言葉は同じでも。
ヒノエの言葉に平静でいられなくなっている自分だけが、違っていた。




ヒノエ×朔。言葉が同じでも、そこにのせられる感情が違う。
頑張れヒノエ!あとちょっと!編(笑)


名前




「なんで譲は朔ちゃんの事呼び捨てなわけ?」
「・・・そうだな、あまり深く考えた事はなかったけど」
「ん〜まあ、譲くんとはそれなりに長い付き合いになってるしね」

妹溺愛疑惑を払拭したい景時が、心の広いところを見せようと言う。

「ふ〜ん」

その言葉にどこか不満そうな、すねたような様子のヒノエを譲は珍しそうに眺める。

「ま、別にいいけどさ」
「ヒノエ?」
「譲が好きなのはもう一人の神子姫だってのは分かってるしね」
「ヒノエっ!」

顔を真っ赤にして譲が怒鳴ると、ヒノエはにやりと笑って立ち上がる。

「ま、面白くはないけどね」

そう言い捨てて立ち去ったヒノエの後姿を譲と景時はしばらくぼんやりと見守り。
そしてどちらからともなく顔を見合わせた。

「それって・・・」
「一体どーいう意味・・・」

どーいう意味なのか、たった一つしか思い当たりはしないのだから。
妹を溺愛している景時の顔が青ざめていたのは、仕方のない事といえるだろう。




ヒノエ×朔。ほんと、なんで譲くんは朔を呼び捨てなんでしょう?先輩につられたのか?(笑)


夜桜見物




夜桜は、やはり昼間に見る姿とは違って見えた。

「夜桜見物なんて、はじめてだけれど・・・美しいものね」
「でもライトアップがあればもっと良かったんだけどね」
「それは流石に無理ですよ。その分、観やすいように背が低い桜を選んだわけですから」
「らいとあっぷ・・・?」

相変わらず、異世界から来た白龍の神子は不思議な言葉を使う。

「あ、えっと・・・光をあてて、暗闇でも見えやすくするんだよー暗い中でそこだけ明る いからすごく目立つし、綺麗なの」
「そういうものがあるのね」
「光に照らされて輝く桜か・・・美しいものだろうね」

いつの間にか朔の隣に並んでいたヒノエが加わる。

「そうね・・・とても華やかになりそうだわ」

風が吹いて、雲が割れて。
月明かりがうっすらと桜の姿を照らしだす。

「まあ・・・良い月ね」
「・・・」
「ヒノエ殿?」

隣を歩いていた相手が足を止めた事に気づいて、朔もその歩みを止めて振り返る。
望美や他の八葉は気づかず先に歩いていってしまった。

「いや、思わず見惚れてしまっただけだよ」
「・・・?」

異世界の「らいとあっぷ」とやらには、かなわないかもしれないけれど。

「月明かりに照らされて、桜を見上げる姿はまるで月から降りてきた天女のようだよ」

艶を含んだ笑みで言われて。
朔は呆れた声で言った。

「言う相手を間違えてるわよ、ヒノエ殿」
「今のは朔ちゃんに言ったんだよ、間違いなく」
「まあ・・・」

いつも望美に向けている軽口を今度は朔に、ということか。

「貴方って・・・」
「ん、なんだい姫君?」
「呆れた人ね」

その言い方がなんだかとても可愛らしくて、ヒノエは笑い。
その表情の意外な幼さにほだされたのか、つられただけか。

朔の口元も自然とほころび、ヒノエと一緒に笑い声をあげた。


先を歩いていたはずの望美たちはこっそりと桜の陰にひそんで見守っていた。

「とりあえず、ヒノエくんが手を出しそうだったらすぐにGOよ!」

と息巻く望美の声に、今にも飛び出そうとするのは景時だ。

「朔〜ヒノエ殿とあんなに無防備に接しちゃ駄目だよ〜」
「景時さん、とりあえず落ち着いてください」

それを押しとどめているのはもちろん譲である。


なかなかに賑やかな、夜桜見物となったのだった。




ヒノエ×朔。まだまだ恋愛未満な感じで。
景時さんのシスコンぷりを少し出せたので嬉しいです!こんなもんじゃないと思うけど(笑)。


恋の病




「姫君たち、今日は良かったら一緒に出かけないかい」

街を案内するよ、と言った相手は熊野出身の少年で、熊野に不慣れな二人の神子はもちろん断る理由 などなかった。

「こっちには市が立っているから人が多いよ。気をつけて」
「わー面白そう!あれ何だろ」

ヒノエの注意もそこそこに早速人ごみに突っ込んで行ったのはもちろん望美だ。

「走っては危ないわよ」

それを慌てて追う朔をみて、ヒノエは笑いをもらした。

「・・・まあ、なんなのヒノエ殿?」

それを目敏く見つけて朔が問う。

「いや・・・同じ龍神の神子だっていうのに、正反対なんだな」
「私は望美のように華やかではないもの」
「そういうことじゃ、ないんだけどね。朔ちゃんは魅力的だよ」
「どうでもいいわ、そんなこと。私は尼僧ですもの」
「せっかくそんなに可愛いのに、もったいない」

朔の眉間に皺がよる。

「・・・ヒノエ殿、いい加減にしてちょうだい」
「姫君の機嫌を損ねるつもりはないんだけどね」
「もう・・・貴方のその軽口は、ほとんど病気みたいなものね」
「そう、病気なんだ」
「?」
「恋の病。・・・治していただけるかな?」
「ヒノエ殿っ!」

顔を真っ赤にして怒り出した朔の顔をみて、
ヒノエは明るい笑い声をあげた。




ヒノエ×朔。ヒノ朔は明るくて書いてて楽しい!
ヒノエくんの力で朔をもっと元気にして欲しい〜!


傲慢と自信




尼僧であるということを盾にして、ひいてくれる相手なら良かった。

「もう、これ以上近づかないで」

お願いだから。

「嫌だね」

なんて傲慢。
そしてなんて自信。

私の腕を強引に引き寄せて、俯いた顔を上向かせて。
そうして合わせた視線の先には、端正な顔を歪ませた、彼の顔。
これまでみた事もないような。

「もう遠慮なんてしないって決めたんだ」

ああ、なんて憎らしい。



そんな風に切ない本気の目をされたら
本心から憎むこともできないじゃないの。




ヒノエくんはいけいけGOGOだから書きやすいのか。