お月様は静かに白桃色の光を降らせてうなずきました。
これから、ロッソは命がけの仕事に出かけるところです。
空を仰いだまま目を閉じたロッソは、あの日の事を思い出していました。
事件は今から2週間前に起こったのでした。
いつもはのんびりなご主人さんが、ガタガタと机の引出しをひっかき回したり
押入から箱を取り出して中を見たりしては、独り言をつぶやいていました。
「困ったなぁ。どこにしまったんだっけ…?困ったなぁ」
どうやら何か大事な物をなくしてしまった様子でした。
なになに、とロッソが黙って聞いていると結局こんなことらしいのでした。
…ロッソの整理…
●ご主人さんはずっと前にお祖父さんから素敵な懐中時計を譲り受けた
●そのお祖父さんがもうすぐ誕生日で、お祝いの会にご主人さんが招かれている
●誕生会には懐中時計を持って来ておくれと言われてしまった
●大切にしまっておいたはずなのに、懐中時計が見当たらない!!
●どうしよう、困った
本当に困ったことになってしまいました。
独り言とガタガタは一日中続きましたが、探し物はとうとう見つかりませんでした。
その夜、ロッソはなかなか眠れませんでした。
「なぜ、懐中時計はみつからないんだろう…?」
小さなこの家で、一日中探しても出てこないなんて 不思議でたまらなかったのです。
考え込んでいるうちに夜はふけていきました。
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