青空とそよ風と大地と
   ニホンミツバチとともに   
目次
 (1)重箱型巣箱  
 (2)天蓋の改善  
 (3)巣枠式巣箱  
 (4)観察窓の追加  
 (5)蜂玉の収容  
 (6)蜜蝋による誘引  
 (7)キンリョウヘンによる誘引  
 (8)洞穴状の巣場  
 (9)ミツバチの飼育履歴  
(10)蜜蜂飼育届を  
(11)女王蜂の不調には  
(12)産卵巣板を使ったニホンミツバチの人工分蜂法の概要  
(13)人工分蜂の実際T(養母を利用する人工分蜂)  
(14)人工分蜂の実際U(実姉を使った人工分蜂)  
(15)早春の人工分蜂  
(16)逆巣型の人工分蜂  
(17)山都式(上桟式重箱法)の人工分蜂  
(18)分蜂の瞬間から蜂玉の捕獲を経て  


 普通に蜂蜜を採取するために飼育されているのは、セイヨウミツバチである。 セイヨウミツバチに関する飼育法は確立されていて、それに従っていれば、花のある時期にはコンスタントに蜂蜜を採取できる。 ローヤルゼリーなども、その習性を利用して採集できる。 ただ、セイヨウミツバチは気が荒いので、その飼育には細心の注意が必要である。
 それに対して、ニホンミツバチは、蜜を集める能力では、セイヨウミツバチよりも、かなり劣っている。

蜂蜜の採取に関しては、セイヨウミツバチが頻繁に採蜜できるのに対して、ニホンミツバチは年に1回の採蜜ができるのは全ての巣箱の50%〜70%程度である(*1) という。 蜂蜜を採取するという目的には、ニホンミツバチは適していない。
 一般的に、ニホンミツバチは、セイヨウミツバチと違って、「飼育することは不可能である(*2)」といわれている。 できることは、ミツバチの群れが用意した巣箱に定着することに、心を砕くことだけである。 それでもなお、ニホンミツバチが野生のハチそのものであるので、不意に、人工的な工作物である巣箱から逃去してしまうことが、往々にして起こってしまう。
 しかし、ニホンミツバチは温和しくて、挑発しないかぎり、ヒトを刺すことはない。 巣箱の側で観察していても、ヒトの存在に無関心である。 働きバチが、花蜜や花粉団子を次々と運んでくるのを見ていると、時間が飛ぶように過ぎてゆく。 ミツバチとは、仲良くできそう。
 用意した巣箱にミツバチの群れを導入するには、野生のハチを、女王蜂を含む群れとして、捕まえることなど(*3) から始まる。 セイヨウミツバチのように、蜂群の増殖法が体系化されていないので・・・。
 あるブログの2015年6月22日の記事で、 『 「逃去群の巣箱を処分して欲しい」と依頼された。 日本ミツバチ超初心者から「蜂の出入りが無い」と連絡がありました。 この方は巣箱を見ているのは好きなのですが日本ミツバチの知識は全くありません・・・ 逃去の「原因」は「スムシに負けた」でしょうか?。 日本ミツバチは「野生のみつばち」です安易な気持ちでは養蜂はできません。 「日本ミツバチ」の生態を勉強してミツバチにこちらが寄り添う事が大切だと思います。 』 とあった。 蜂場を見た人からこのようなことを言われないように、正しい知識を仕入れないといけないようだ。
 当初は重箱型巣箱を使っていたが、それに加えて、巣枠式巣箱での飼育を始めたことで、ミツバチの性質をより深く知ることができるようになった。 蜂玉になった分蜂群の収容は、重箱型の巣箱が便利である。 蜂玉をバケツに落とし込んで、バケツの水を流し込むようにミツバチを巣箱に入れるには、巣箱内にある程度の空間が必要であるから。 キンリョウヘンを使って導き寄せる場合はどちらのタイプの巣箱でもよいので、このときは、原則として、巣枠式巣箱とする。 後で紹介する人工分蜂法では、巣枠へ営巣しているものを利用すると便利であるから。
 今では、野生のニホンミツハチを女王蜂を含む群れとして捕まえることに加えて、人為的な方法で新たなミツバチ群を得ることが可能になった。 4月頃の野生群の分蜂期には前者の方法でミツバチの群を増やし、5月以降では人工分蜂によって増群できるようになった。
 使用している巣箱の仕様を手始めに、重箱型に営巣したミツバチ群の消滅までの顛末、人工分蜂法の詳細な紹介とその実行例を書き留める。
 

(*1) たとえば、重箱式養蜂箱の採蜜作業:大和ミツバチ(日本ミツバチ) | 大和ミツバチ研究所の中で示されている。

(*2) ニホンミツバチ協会・会長のホームページ田舎へおいでにおいて。

(*3) ニホンミツバチを、女王蜂を含む群れとして、入手するには、
 (1)分蜂したハチが、蜂玉状になって、木の枝に取り付いているものを、一網打尽に収容する方法
 (2)「蜜蝋」と「キンリョウヘン」の花を使って、巣箱の中に誘き寄せる方法
 (3)女王蜂の誕生を人為的にコントロールして、ミツバチ群を得る方法
 などがある。
 1番目の方法は、ニホンミツバチの温和な性質を利用している。 捕獲には防具(厚手の白い服と、頭全体を被うネット)が必要であるが、このときにハチが積極的に襲ってくることは、ない。 しかし、分蜂した蜂玉を見つけることは、根気と幸運が必要であろう。
 2番目の方法は、第一段階として、探索バチ(分蜂するとき、新しい巣を見出すために、周辺を飛びまわるハチ)がこの巣箱を見出し、その探索バチがこの巣箱を気に入ってくれることである。 第二段階として、この探索バチが蜂玉のところに帰って、他の探索バチが見出した別の巣の候補よりも、優れていることを行動で示してくれることである。 最終的に、女王蜂が、その気になってくれることである。
 「キンリョウヘン」の花には、ハチを誘うフェロモンと似た成分が存在するという。 そのため、ハチを巣箱に誘因できる確率は高くなる。
 このとき、「キンリョウヘン」の花は、網で覆っておく必要がある。
 「キンリョウヘン」などの蘭の花粉は、粘膜で被われた花粉の塊として存在する。 この『花粉塊』  (2個の黄色玉は、胡蝶蘭での花粉塊)は、蕊柱(ずいちゅう)の先端にある葯室に粘り付いている。 そのため、風が当たっても、強く振動しても、散らばることがない。 花粉の移動は、昆虫が蜜を吸うときに、この粘膜で被われた花粉塊が昆虫に付着してしまうことにより成立する。 昆虫が動きまわると、昆虫に付着していた花粉塊が他の花の雌しべ(柱頭)に移り、受粉が完了する。 蘭の花は、お祝いに使われている胡蝶蘭でもそうだが、受粉しなければ1ヶ月以上も咲きつづける。 ところが、その花を人為的に受粉してやると、2〜3日の内に萎れてくる。 受精すると、子房の発育の方に、養分が使われることになった結果だと思われる。 すなわち、『受粉すると、花が萎びてしまう』ことになる。
 したがって、ミツバチによって受粉してしまうことを防ぐために、株全体を網で覆うのである。
 ミツバチとは関係のない「お話」。 あるテレビドラマ(科捜研の女13 #9)。 犯人が絡むパーティ会場。 そこに飾られていた胡蝶蘭の花粉が、ある人の服に付いていたことが、アリバイ崩しのキーポイント。 上で述べているように、胡蝶蘭の花粉は1つの花に2個の塊のみ。 それも粘液でしっかりとくっついているので、花が潰されるほどの接触がないと服には付かない。 パーティ会場に昆虫はいないし、その人物が花籠に倒れかかってしまったというドタバタ場面は、当然、ない。 科学を絡めたドラマで、キーポイントが虚偽では拍子抜け。 豪奢なパーティを演出するため「胡蝶蘭」の花を使ったようだが、「カサブランカ」にしとけば良かったかも・・・。 このシリーズ、突っ込みどころが多い。 新・科捜研の女3 #7では、爆弾犯の仕掛けた爆薬の成分である硝安(硝酸アンモニウム)を分解するのに還元剤である「亜鉛」が有効という。 それで、「亜鉛」を含んでいる健康飲料を注入して、解決。 還元剤として働くのは「金属亜鉛」であって、飲料中に溶けている「亜鉛イオン」では効果はない。 この飲料に含まれているはずである「ビタミンC」によって硝安を還元するという筋書きならば、科学的に辻褄が合ったのに・・・。 と見ていると、この飲料は特製で、還元作用がある「粉末(状の金属)亜鉛」が入れてあったとなって、そんな金属の固形物を何故?
 閑話休題。 キンリョウヘンの花から発せられるニホンミツバチを誘うフェロモン類似成分が、最近同定されたというニホンミツバチ分蜂群誘引剤(待ち箱ルアー)のご案内。 3-ヒドロキシオクタン酸(3-hydroxyoctanoic acid)と10-ヒドロキシデセン酸(10-hydroxydecenoic acid)という比較的単純な直鎖脂肪酸である。 これが実用化されれば、ニホンミツバチを趣味で飼おうとするとき、ハチを誘引するためにキンリョウヘンを栽培するというハードルがなくなってしまうことになる。
 3番目の方法は、人為的に女王蜂を誕生させることから始まる。 女王蜂を得る方法の詳細は、 日本蜜蜂の科学 - Yahoo!ブログや、 山都町・清和高原の四季・・・庭で日本みつばちを、 および、 しゃくなげの花、シャクナゲ、石楠花の後半部分などで、 紹介されている。 セイヨウミツバチのように任意の数の女王蜂を誕生させるというほどの計画的な生産方法ではないが、前2者のような自然分蜂に任せた方法よりは効率的なものである。 ミツバチの自然巣が多くない地域では、この方法を導入することになるであろう。
 この方法に関して具体的に実施した例を、後半に示す。 飼育ミツバチ群を増やす方法として、かなり有用である。


(1)重箱型巣箱
 重箱型の巣箱をつくることにする。 この巣箱は、ニホンミツバチでよく使われている。
 ニホンミツバチの自然状態での巣をみると、巣板の上部に蜜を貯蔵している領域がある。 もともと幼虫を育てていた部分であるが、それの再利用として、蜜の貯蔵庫として使われている。 その下に花粉を貯蔵する領域があり、更にその下に女王蜂と幼虫の領域がある。 このように、巣板の上と下では、違った使われ方をしている。
 このニホンミツバチの習性を上手く利用したのが、重箱型の巣箱である。
 上部の重箱は、蜜を貯蔵している領域に相当する。 その下の重箱は花粉の貯蔵領域であり、更にその下は幼虫を育てている領域となる。 蜂蜜を採取するときは、蜜が貯蔵されている最上部の重箱だけを抜き出す。 抜き出した重箱から、巣板を取り出す。 その取り出した巣板から、蜂蜜を搾り出せばよい。 その巣板の中には、ミツバチの幼虫はいない。 採蜜しても、ミツバチの幼虫を殺すことはない。 ニホンミツバチの生態に即した採蜜方法である。
 重箱型の巣箱の製作は、比較的簡単にできる。 この箱は、3つの部分からできている。 本体の「重箱」とその土台になる「基盤」、屋根になる「天蓋」である。
 
[重箱]の製作
 重箱は、一般的には、約30ミリメートル厚さのプレナー仕上げ材を使っていることが多い。 これくらいの厚さがないと、冬季に、寒気が防げないということである。
 しかし、この厚さの板では電動工具を使わない日曜大工で加工するには厚すぎて手に負えない。 そこで、一般的な板厚よりも薄い12ミリメートルの「杉野地板(幅18センチメートル)」を使うことにする。 冬季の防寒については、ミツバチが神社の屋根下などに住み着いていることからも、寒さには結構強いものと思われる(*4) ので、重箱の一部の構造に防寒対策をするにとどめる。 この杉野地板は、ホームセンターの資材売り場で、安価に購入できる。 その板の「ざらつき具合」は、ミツバチに気に入ってもらえるかも・・・。
 作製した重箱の内法寸法は、280ミリメートル(横幅)×300ミリメートル(奥行)×180ミリメートル(高さ)で、内容積おおよそ15リットルである。

重箱製作図
(画像をクリックすると大きくなります)

 

(*4) ミツバチに耐寒性については、2007年3月の「日本蜜蜂の科学 『北信流養蜂術』 - Yahoo!ジオシティーズ」の3月24日付け記事において、 『長野市近郊の冬季は零下10℃になる事もある地域)において、「巣箱側面にある開放扉を開放し蜂球を露出させたまま越冬に入った所、新春を迎えた時にどの蜂群よりも蜂量が多く、春の立ち上がりがどの蜂群よりも早かった」という事があった。  ・・・  以上から、「育児停止をする寒冷地では、冬季は冬季なりに低温にしておく事で、蜂数や貯蜜量を維持できる。越冬場所は温度上昇が少ない木陰が最適。」という結果が出てきた。 結論から言うと、「寒冷地での越冬場所は、新春の開花が早い日当たりが良い地にて、遮光をして巣箱設置する事が望ましい。」といったところであろう。』 という。 そのようなことから、板厚12ミリメートルの杉野地板で、防寒に関しては、充分ではないかと思われる。

 

角の添え木
左側)添え木を側面の板に固定し(重箱製作図の)、その後で余った側面板部分を切断する。このようにすると、添え木と側面板の端面が綺麗に揃えることができる。
右側)2枚の側面板を前面(および、後面)の板に取り付け(重箱製作図の)、その後で添え木の位置で切断する。
 重箱を板厚12ミリメートルの野地板でつくるが、角で2枚の板を直角に接続する際に、この程度の薄い板で直角を安定的に保持できるかどうか、不安が残る。 この接続部分だけは、板が厚い方がよい。 そこで、重箱の角の外側に「添え木」を付ける。 これによって、角での接触面積が増えて、強度が高くなる。 この添え木によって、重箱の歪みを防ぐことに関して、厚い板を使用したことと同様の効果が得られる。 また、冬季の巣箱内への寒気の侵入は、箱板を通る熱伝導よりも、すきま風の流入によるものの方が多いと思われる。 このすきま風をできるだけ防ぐためにも、四隅の添え木が有効である。
 「側面」の板として、重箱の「奥行」である300ミリメートルよりも若干長目の板を用意する。 この側面の板に2本の添え木を、板に対して直角であることと、2本の添え木の間が(外法で)正確に300ミリメートルになっていることの2点に注意して、固定する(「重箱製作図」の左側上)。 このとき、側面板と添え木の端面が一致しているように努力する必要は、ない。 そうすると、側面板の両端部は、添え木よりも飛び出していることになる。 そこで、固定した2本の添え木のそれぞれの外側に合わせて、側面板の両端を切断する。 このように添え木に沿って切断する方法を取ると、側面板と添え木の端面が綺麗に揃う。 端面が丁寧に処理されていないと、出来上がったときの重箱が歪んでしまうことになるが、この方法ならばその心配がない。
 「前面」と「後面」の板も、同様に、正規の長さよりも長目のものを用意しておく。 正確に280ミリメートル長さの木切れを用意して、これを重箱の「横幅」を決める内法の「見当」として使う。 この「見当」を前面板(および、後面板)にあてがっておいて、側面板を固定していく(「重箱製作図」の左側下)。 側面板に添え木を固定したときと同じように、このときも、前面(後面)板の両端が外へはみ出してしまう。 そのはみ出した部分を、添え木の外側に沿って切断する。 これで、板の継ぎ目に段差のない重箱の本体が、出来上がることになる。
 つぎに、重箱内部に、ミツバチの巣板が下に落ちないように、十文字に「桟」を入れる。 四枚の箱板の中央部に、ドリルで10ミリメートルの穴をあける。 穴の高さは、真ん中よりも若干高い位置にする。 これは、巣板が下方向へつくられていく過程で、できるだけ早い時期に巣板を桟で固定できるようにするためである。 また、「桟」が上下でクロスするように、間口方向の板と奥行方向の板で、穴の高さ位置を10ミリメートルだけ違える。 この穴に、直径10ミリメートルの木質丸棒を差し込む。 箱からとびだしている丸棒は、箱外側に合わせて切断する。
 「桟」として針金を用いた巣箱の製作例もある。 針金の桟であると、採蜜するときに、その針金製の桟を重箱から引き抜くことができる。 そうすれば、巣板を固定している桟がないので、容易に巣板を取り出すことができる。 しかし、針金程度の太さでは、高温により巣板が柔らかくなったときの支持としては、心許ない所がある。 「桟」の効果が不完全であると、往々にして、巣板が落ちてしまう「巣落ち」が起こる。 「巣落ち」が起こると、ハチは、この巣箱を見捨ててしまう。 そのようなことから、採蜜時の利便性よりも、巣落ち防止を優先したい。 したがって、巣板との接触面積が大きくなるように、「桟」として太目の木質丸棒を使用することにした。
 この「重箱」と、後で述べる「基盤」の構造は、基本的には同じである。
 異なっているのは、
・巣板支持の十文字の桟
・底板および巣門板の有無
である。
 「重箱」と「基盤」は、共通の寸法で切り出せばよい。 能率良く重箱や基盤を製作するには、先ず、添え木を取り付けた側面の板(「重箱製作図」の左側上)を、必要な数だけ作ってしまう。 その後で、前面(と後面)の板を、次々と固定していく(「重箱製作図」の左側下)。 このように連続して同じ作業をすると、次第にその作業のコツが掴めてきて、作業効率が上がっていく。
 製作したての箱は、材木特有の臭いなどを発散している。 これらの成分の中には、木の自己防衛として、虫による食害を防ぐための作用を持ったものがある。 この作用は、ハチにとっても、好ましくない。 水溶性の成分については、箱を水中に浸漬することにより、洗い流すことはできる。 それ以外の成分は、年月を経て、蒸散したり変質したりすることを待つ他に(*5)、容易に実行できる方法はない。
 

(*5) 高温の石窯や高圧釜などで処理すれば、これらの有害成分を除去できるであろう。 ただ、これらの方法は、一般的ではない。
 一部の巣箱製作者は、巣箱板の表面を焦がすことを推奨している。 これは、ハチにとって有害な成分を除去する効果を狙ったものと思われる。 ゆっくりと時間をかけて加熱すると、板の内部の成分も揮散してしまうから、非常に有効であると思われる。
 しかし、バーナー火炎による短時間の加熱では、有害成分の除去は板の表面部分に限られてしまうので、その効果は限定的である。 ミツバチは煙を嫌う。 巣箱板の焼き焦げた臭いに対して、マイナスの効果をもたらす可能性があることは否定できない。

 

添え木(側面)

重箱
(十字形の巣板支持の桟)

重箱(側面)
 
[基盤]の製作
 「基盤」は、「重箱」の構造を基本にして、それに「底板」と、ミツバチが出入りするための「巣門」を付け加えたものである。 この「基盤」の上に、相当な重量となる重箱が載せられるのであるので、重箱とマッチングの取れた形であることが必要である。 その点で、基本的な構造が「重箱」と同じであるので、その上に重箱を積み重ねるときに「ズレてしまう」ことが防げる。
 また、「基盤」を製作するとき、「重箱」と基本的に同じ構造であるので、「重箱」の製作で慣れている同じ工作法が使える。
 その上、「基盤」を単独で使えば「待ち箱」にも転用できるように、それ自体にある程度の容積があって、簡単な「蓋」を用意するだけでよい構造となっている。 「待ち箱」に使用するときには、巣門板を待ち箱入門 4 寄り穴 しのさんの「ニホンミツバチ日記」/ウェブリブログ(*6) などで紹介されているミツバチお気に入りのものに、容易に取り替えることができる。
 

(*6) 参考にしているホームページ(しのさんの「ニホンミツバチ日記」の待ち箱入門 4 寄り穴に関する詳細記事 http://62858793.at.webry.info/201106/article_9.html)では、巣門として、自然な形で板に開いている木の「節穴」が最適であるとしている。
 ここで製作した基盤を、待ち箱として使用するときには、そのような「節穴」がある板を見つけてきて、巣門板の大きさに切り取り、基盤に木ネジ止めするだけである。

 

基盤製作図
(画像をクリックすると大きくなります)


「基盤」
(底板保持のための2ヶ所の「桟」)
 まず、重箱と同じように、手前を除く(左右の「側面」の板と「後面」の板の)3面を組み立てる。
 奥の板の下部と、手前の下部に、底板を保持するための桟を取り付ける。 桟の高さが、底板の下の空間の大きさを決めることになる。 この空間があることによって、過度な湿気を外部に放つ効果が期待できる。

基盤内に置かれた底板
(取り外しが可能)

底板の裏面
(3枚の横木で固定)
 基盤の内法に合わせて、底板をつくる。 底板の裏には、基盤に取り付けられている2ヶ所の桟に合致するように、横木が渡してある。
 この底板は、基盤に釘止めしないで使用する。 底板が固定されていないにもかかわらず、この横木により、底板が前後方向にずれることを防いでいる。
 固定されていないので、底板は取り外しが可能である。 少しだけ持ち上げると、底板を手前に取り出すことができる。 取り出して、巣箱底板を清掃する。

巣門

巣門板
(巣門の裏側に補強板)
 底板の上に載せるようにして、巣門板をつくる。
 巣門の高さは、ミツバチの天敵である肉食系の「スズメバチ」などが、巣箱内に入り込めないように決める。 働き蜂は4ミリメートルの隙間があれば自由に出入りできる。 そこで、余裕をみて、巣門高さは7ミリメートル以内にする。 巣門の隙間が小さくても、「スズメバチ」は、巣箱内に侵入しようとして、巣門の周囲を囓って広げてしまうことがある。 それを防ぐために、巣門の裏側に、補強の板を添えておく。
 巣門がある前面の板は、取り外しができるように、木ネジ止めしておく。
 このような構造にしたのは、

(1)底板の掃除
 木ネジ止めしてある巣門板を外すと、底板が取り外せる。 底板を巣箱外に取り出して、そこに付着しているゴミ(*7) を掻き落とす。

(2)砂糖液の給餌
 蜜を採集できない冬期には、砂糖液を給餌する必要がある。 巣門板を外すと、砂糖液(*8) が入っている容器を、巣箱内に置ける。

を可能とするためである。
 底板と巣門板があることを除いて、重箱と同じ形である。
 

(*7) 巣箱の底を掃除しないで使っているとき、その汚れ具合の写真が、ニホンミツバチ用重箱式巣箱の図面に掲載されている。 巣箱の底板が掃除できることは、必須である。

(*8) 砂糖液は、水800ミリリットルに上質砂糖1キログラムを溶かしてつくる。 この配合で、おおよそ1400ミリリットルの砂糖液が得られる。 砂糖液を入れた容器には、ハチが溺れないように、木片などを浮かせておく。

 

「基盤」の外観
 
[天蓋]の製作
 「天蓋」は、巣箱そのものの屋根になる部分と、巣箱の天井(この天井にぶら下がるかたちでミツバチが巣をつくる)になる部分の2つからできている。 屋根と天井の間には、空気抜きのための隙間が設けてある。
 屋根は、重箱と同じ厚さ12ミリメートルの杉野地板でつくる。 重箱の大きさよりも、縦横ともに数十ミリメートル大きくする。
 天井の部分は、10ミリメートル程度の幅をあけた格子状の構造にする。 巣箱内の空気とミツバチは、この格子と格子の間を通って、その上に抜けていけるようになっている。
 屋根板と天井との間は、おおよそ5ミリメートルだけ、「隙間」をあける。
 巣箱内の空気は、天井の格子の開いた部分を通り抜けて、5ミリメートルの「隙間」から外部へ出て行く。 空気が通り抜けるようになっているので、夏季でも、巣箱内の温度上昇が抑制できる。 寒候期には、この隙間に折った新聞紙を挿んで塞いでおく。 それで、寒気が入り込まなくなる。
 ミツバチも、この格子の内部に入り込んで、隣の巣板に移る(*9) ことができる。
 ミツバチの天敵である「オオスズメバチ」などは、侵入できないようにしてある。
 下に天蓋の構造を示す。 屋根部分はフラットであるので、天蓋の構造はその裏側を(裏返した状態で)示してある。 この天蓋と、その下にある重箱の関係を表すために、重箱の位置を破線で示す。 重箱の位置は、天蓋の格子にしてある部分に一致するようになっている。 この位置を確実なものにするために、屋根の一端をL字型にしてある。 そこに重箱を密着するように置けばよい。
 

(*9) 天井部分でのハチの移動を可能にしている「巣箱の作り方 ニホンミツバチ重箱式巣箱 | 週末養蜂家のニホンミツバチのおいしいはちみつ」を参考にした構造である。

 

天蓋製作図
(画像をクリックすると大きくなります)


「天蓋」の表側(左:屋根)と裏側(右:天井)
(天井の部分に格子状の隙間
庇になる部分は隙間なしの一枚板)
 「天蓋」の製作は、最初に、この屋根になる板を用意する。 この屋根板を礎にして、そこに約5ミリメートル厚さの板を「スペーサー」として置き、その上に格子状の天井を作り上げていく。 この天井の格子部分とその周囲の板とは、できるだけ段差ができないように(*10) 固定する。 このように天井部分に凸部分が無いようにしておくと、採蜜するとき、ワイヤーを使って巣板と「天蓋」との間を切り離す際に、それが容易にできる。
 

(*10) 左側の写真で、格子の板の下に、スペーサーの板があるのが僅かに見える。 このスペーサー板は、その周囲の板の下まで延びている。 そのため、「格子の板」と「その周囲の板」は同じ高さになるので、両者の間に段差が生じないようになっている。

 

格子(左)と拡大した格子部分(右)
格子板の下にスペーサーの板
格子と周囲の板は段差なしに接続

「天蓋」の側面
(「屋根」と「天井」の間に
厚さ5ミリメートルほどのスペーサーを置いて
空気抜きのための空間を確保)
 
[巣箱]の組立

巣箱の全景
(一番上が通風口を設けた「天蓋」、
4段重ねの「重箱
一番下に巣門がある「基盤」)
 巣箱の全景を示す。 一番下が、巣門が設けられている「基盤」である。 その上に「重箱」が4つ重ねてある。 最上部に、空気抜きを備えた「天蓋」が被せてある。 「重箱」と「基盤」は、同じ規格でつくられた箱であるので、5つの箱が積み重なっているように見える。
 材木板でつくった屋根であるので、このままでは雨水が巣箱内に浸み込んでしまうし、太陽熱によって熱せられてしまう。 巣箱に組み立てた後で、この屋根板の上に厚さ30ミリメートル程度の発泡スチロール板を載せることにする。 屋根板よりも、縦横ともに、数十ミリメートル大きい。 上面(表面) 下面(裏面)  雨水が屋根板の方に入り込まないように、発泡スチロール板の下面(裏面)を額縁状に加工してある。 屋根に降った雨水は、側面にある額縁の凸部分に沿って流れ落ちていく。 この発泡スチロール板により、雨水に対する防水と、直射日光からの断熱がはかれる。
 この巣箱にミツバチが定着すると、ミツバチは巣(巣板)を作りはじめる。 巣板は、巣箱の中で、「天蓋」からぶら下がるかたちで、一番上の重箱から下へ向かってつくられる。 一番上の重箱部分につくられた巣板は、最初は女王蜂が幼虫を育てるために使われ、その後は蜂蜜を貯めるために再利用される。 女王蜂は、つねに、その下方に新しくつくられた巣板で幼虫を育てる。
 巣板がどの程度つくられているかは、基盤の巣門板の木ネジを外すと観察できる。 巣板が上から3番目の重箱を満たしている状態なら、採蜜することができる。 蜂蜜を採取するときには、「新しい重箱」を、「最下段の重箱」と「基盤」の間に挿入する。 その後、最上段の重箱にいるミツバチを下方へ追いやってから、最上段の重箱を抜き出す。 この重箱につくられた巣板には蜂蜜が貯められているので、巣板を取り出し、蜂蜜を搾り出す。 詳細な方法は、ニホンミツバチの採蜜(はちみつの採取)などに紹介されている。

巣箱の上部
 
[巣箱]の設置

巣箱の設置
 巣箱の設置状況を、左に示す。 冬の巣箱である。 左写真の巣箱の後ろ(左側)には、茶が植えられている。 初冬には、茶の花が咲く。 手前は大きなビワの木が2本ある。 茶の木の花が終わると、このビワの花が咲き出す。 花のない時期での開花であるので、暖かい日にはミツバチにとっては桃源郷か。 右の巣箱は、ウメやモモの木の下に置いてある。 ミツバチが、ウメやモモを受粉してくれる。 その前(右側)の裸地に見える所は、クローバーやレンゲの畑である。 この時期には、まだ芽が出てきていない。 春になれば、蜜源になる。 その裸地の南側には、春には菜花などが咲き乱れる畑が広がっている。

(2)天蓋の改善
 巣箱の「天蓋」について、工作の容易さと使い勝手の良さを改善した。
 天井部分を「格子構造」から、「平面構造」に変更する。 この変更で、「巣虫」の侵入を少しでも防ぐことができる。 天井が「フラット」であることは採蜜するときに必要な条件であるので、究極的に単純な形となっている。 天井を作る際に2枚以上の板を接合する必要性から、両端に渡しの板が付けてある。 これによって、天井の板と屋根の間に、渡し板の厚さに相当する空間ができる。
 巣箱である重箱の上に、「天井板」を置く。 天井板の下面はフラットであるので、そのままでは左右に滑ってしまう。 そこに、額縁を付けた「屋根」を覆い被せる。 屋根を被せるだけで、天井板の滑りが防止できる。 巣箱を遠くに移す場合を除いて、天蓋を巣箱に取り付けるときに、「ネジ」や「釘」を使わない。

改善した天蓋の製作図
(画像をクリックすると大きくなります)

 「天井板」や「屋根」には、工作の都合上、非常に狭いスリット状の隙間ができてしまう。 「この隙間」と「天井と屋根の間にある空間」を通じて、僅かな空気の出入りが生じる。 夏季には、暑気の排出に役立つはずである。
 なお、ミツバチに関する書籍で『ミツバチは自身の存在を外部に知られないようにするため、その匂いをできるだけ巣の外に出さないようにしている』とある。 これが正しいとすると、ミツバチは天井板の僅かなスリット状の隙間部分を蜜蝋で塞ぐことで、その要求を満たすことができる。
 天井板が単純な形であるので、天井を被うときにミツバチを「潰す」ことを防げる。 天井板にいるミツバチを刷毛で除いてから、巣箱の横から天井板を水平方向にスライドするように置く。 巣箱上端にいるミツバチを、外へ押し退けるように。 その後、屋根を覆い被せることになる。

(3)巣枠式巣箱
 従来から使っているニホンミツバチの重箱型巣箱による方法は、ミツバチの状態を観察するのには非常に不便である。 女王蜂の様子も分からないし、蜂の幼虫の育ち具合を知ることもできない。 しかるに、巣枠式巣箱を使えば、女王蜂を他のミツバチ群に移すことや、強勢群にある蜂子の一部を劣弱群に移して蜂群を均等化する方法など、重箱型巣箱では逆立ちしてもできないことが可能となる。
 重箱型を含む本邦でもちいられている方法は、どちらかというと、自然なミツバチの生態に任せた放任的な管理で(*11)、人為的に操作できることは多くない。 それに対して、セイヨウミツバチの飼育に一般的に使われている巣枠式巣箱をもちいた方法は、ミツバチの生態を理解した上での徹底的な管理を前提とした飼育に向いている(*12)。 漢方薬と西洋薬との違い、ニワトリの放し飼い飼育とケージによる飼育の違いを思わせる。
 そこで、巣枠式の巣箱を作って、使ってみることにする。
 巣枠式巣箱には、巣枠の大きさの違いによりいくつかの型がある。 欧米でのミツバチの飼育は、規格化された巣箱である「ラングストロス式巣箱」が普通に使われている。 これは、セイヨウミツバチの生態に則った形状である。 家畜化することで、繁殖などの操作が可能でなければならない。 また、寒さに弱いから、冬季には温暖な地に移すことも考えなければならない。 このようなことを容易にできる構造となっている。 同じサイズで、その改良形のホフマン式もある。 この巣枠は、高さが横幅の半分程度の横長のものである。 縦が短い巣枠であるので、巣枠と巣箱内壁との接触面積が小さい。 巣枠が巣箱側面に蜜蝋で固着してしまう可能性が少ないという長所がある。 ミツバチが巣板をつくる「巣板形成領域」の正味の面積である「造巣面積」は、巣枠1枚あたり、おおよそ900平方センチメートルである。
 それに対して、本邦でのニホンミツバチを対象とした巣箱は、セイヨウミツバチとは違った生態を持っているため、まだまだ試行錯誤の段階である。 ラングストロス式巣箱をそのまま使った飼育例もあれば、独自の考えを基にした巣箱もある。
 「吉田式巣箱(「実験養蜂新書(吉田弘蔵著・明治40年 杉本書店) pp.60−65」)は、ラングストロス式では高さが横幅の半分である横長の巣枠であるのに対して、高さが横幅より2割も大きい縦長の巣枠である。 この巣枠の造巣面積は、700平方センチメートルである。
 縦長の巣枠である吉田式を、高さについて、更に、5/4倍に大きくしたものに、青木圭三氏によって考案された「青木式」(参照:「ニホンミツバチの飼育法と生態」吉田忠晴著・2000年 玉川大学出版部、pp.38−39)がある。 横幅は、逆に、それの7割程まで狭められ、よりスマートな形状をしている。 巣板形成領域の面積は、巣枠1枚あたり、おおよそ600平方センチメートルとなっている。
 青木式から派生した巣箱である「AY式巣箱」(「ニホンミツバチの飼育法と生態」吉田忠晴著・2000年 玉川大学出版部)は、巣板をつくる部分の高さが吉田式の1.5倍になっている。 ラングストロス式の横幅を、そのまま高さにしたものであるともいえる。 ただ、横幅はラングストロス式の高さよりも2割以上大きいから、横長のラングストロス式をそのまま90度回転させて縦長にしたものを基本的な構造としたものではないようだ。 巣枠をこれほど縦長にした理由は何か(*13)。 造巣面積は、ラングストロス式を越える1000平方センチメートルとなっている。
 龍馬式巣枠式巣箱(*14) というものも使われている。 巣板をつくる部分の高さが横幅のおおよそ1.5倍である縦長の巣枠である。 横幅は、「広めのAY式」と「狭めの吉田式」の中間の値であるが、その差は僅かに10〜20ミリメートルと、ほとんど差がない。 巣枠の高さは比較的大きく、背の低い吉田式と高いAY式の中間で、ほぼ青木式と同じである。 造巣面積は900平方センチメートルである。
 手の平を精一杯広げたよりも一回り大きい巣枠で、ラングストロス式巣枠の半分ほどの大きさのもの(「ハーフサイズ巣枠」)もある。 この巣枠2個を横に連結すると、ラングストロス式巣枠と同じ規格の巣箱に収納できる。 ラングストロス式との互換性を考慮しているため、造巣面積はラングストロス式の半分ではなくて、おおよそ400平方センチメートルである。 自然巣にあるミツバチの巣板の大きさに比べるとかなり小さいので、ミツバチが短時間で巣枠全体を効率よく埋め尽くしてしまう。
 これ以外にも、伊藤モデルは、巣板をつくる部分の横幅が約200ミリメートル、高さが250ミリメートル、造巣面積が500平方センチメートルである。 この巣枠は、下桟がないギリシャ文字の『Π』の形をしている。 シャンティクティ 日本蜜蜂では、横幅は200ミリメートル強、高さは260ミリメートル、造巣面積は500平方センチメートル強の巣枠を使っている。 これも下桟をつけていない。 これらは、ほぼ同じ大きさを持った同形式の巣枠といってよい。 吉田式巣枠をよりコンパクトにした相似形である。
 山都町・清和高原の四季・・・庭で日本みつばちをでは、巣をつくる部分がほぼ正方形である巣枠を使っている(以下「清和式」と表記。図表による数値が記されていないのでホームページ内の記述で)。
 また、斎藤昭夫氏による日本みつばち物語では、ラングストロス式をそのまま小さくした形の巣枠を使っている。 ニホンミツバチの体形が、セイヨウミツバチよりも小さいことを考慮して、巣枠の形状を決めているということである。 ここで紹介している巣枠の中では、一番背の低いものである。 ミツバチ飼育に関する多くの動画がアップされているが、巣枠一杯に巣板を形成しているのが見て取れる。 下桟の幅が、横桟などの幅の半分以下と狭く(*15) なっている。 これを「斎藤式」と呼ぶことにする。
 京都ニホンミツバチ週末養蜂の会のホームページに紹介されている巣枠式巣箱のサイズは、動画から推定して、ここで紹介している中で最も小さい面積をもつ巣枠である。 これを「京都式」巣枠と呼ぶことにする。 これ程に小さな巣枠になった理由は、重箱型の巣箱に入れられる巣枠であることを目指したから。 そのため、この巣枠にミツバチが一杯になったときの蜂の数は、1枚あたり両面で600匹程度とかなり少ない。 横長の巣枠で、横幅は「清和式」とほぼ同じで、形状は「斎藤式」と相似形である。
 

(*11) このため、戦前のテキスト(下の左図)によると、 『 ・・・蜜蜂には東洋種と歐洲種の二種あるが、東洋種は古來我國に飼養されて居た在來種の日本蜂である、種々な點で歐洲種に劣るので、現今では飼養者少く早晩滅亡の運命にあるものと云つてよい。・・・ (下の右図)』 と、古来、山里で広くおこなわれていたニホンミツバチを使った甘味料入手のための手段は、無視されている。 ミツバチを営利目的としていたものからは、ニホンミツバチの長所がまったく顧みられずに、西洋の風物のみが優れているといった傾向が見られる。 舶来崇拝といったことか。

  

 時代は国粋主義に傾いていた頃であるが、技術の世界では、欧米のものは無条件に優れているという考えが垣間見える。

(*12) 日本蜜蜂の科学 『北信流養蜂術』では、巣枠式巣箱をもちいるセイヨウミツバチの飼育法を使って、ニホンミツバチの管理をしている。 そこでは、ニホンミツバチでありながら、1年に何度もの採蜜がおこなわれ、採蜜量にして1群あたり年に1斗(18リットル)以上のものが得られている。 ニホンミツバチの通常の飼育では、年に1回の採蜜ができるのは全ての巣箱の50%〜70%程度である。 それが、セイヨウミツバチに劣らない量の蜂蜜が得られるという。
 また、在来種日本蜜蜂のコーナーしゃくなげの花、シャクナゲ、石楠花にも、巣枠を使ったニホンミツバチの飼育の詳細が述べられている。 後者の場合は、そのホームページの前半は表記の記事であって、その後半にミツバチについて取り上げられている。 このホームページでは、簡潔な表現で巣枠によるミツバチ飼育の実際を解説してあるので、それを参考にして様々な事を実践できよう。
 人工分蜂の手順 日本みつばち物語では、巣枠を使ったニホンミツバチの飼育で人工的に分蜂する方法を、動画による実演を含めて解説している。 待ち箱へのミツバチの入居や分蜂蜂球の捕獲に加えて、人工分蜂によって計画的に蜂群を増やせるとなると、逃去などによる蜂群の損失を容易に取り返せることになる。 ニホンミツバチの継続的な飼育が、可能となる。
 日本ミツバチの王抜き変成王台での分蜂.は、人工的に女王蜂を次々と生み出す手法が書かれているし、 みつばちはうす/はちみつ/みつばちでも、女王蜂の作り方を述べている。

(*13) AY式について、日本蜜蜂の科学 『北信流養蜂術』の中で、 『・・・流蜜量が非常に多い長野市では蜂群規模がとても大きくなるので、容積拡張ができない現在のAY巣箱では、容積が狭過ぎてとても飼育しにくい。 そのため今年の8月前半までAY群の管理には手を焼いていた・・・(2010年9月7日(火))』 とある。 AY式の巣枠は、総面積はラングストロス式よりも大きいが、横幅が狭く背が高いので、巣枠下部の領域が有効利用されないことが原因か。 添付写真でも、巣枠の下部には巣板がつくられていない。
 同様なことが、山都町・清和高原の四季・・・庭で日本みつばちを 巣枠の大きさで、ちょっと引用が長くなるが、 『「日本蜜蜂」を巣枠式巣箱で飼育するときの「巣枠の大きさ」の適正値はどうだろうか。 かって、AY式巣枠がよいとされて使用されたことがあったようだ、今でも使われているのだろうか。 西洋ミツバチ用の巣枠ラ式方式を縦に使用するものだったようで、日本蜜蜂の巣作りの性質からよいとされたんだろうか。 一度AY式を少し短くして使ってみたが、うまくいかなかった経験がある。 日本蜜蜂は「個の蜂群」ごとに、性質と巣作りの時期が異なっているため、「この巣枠と巣箱」でうまくいったということが、他の蜂群で同様に巧くいくとは限らないようだ。 地域差、蜜源差の違いも大きいと思う。「日本蜜蜂」はスムシの攻撃に弱く、蜂群がいつも活発に活動していれば問題ないが、一旦侵入を許すと立ち直りが困難で、その巣を放棄して逃去、消滅するようだ。 このことから、AY式巣枠での巣作りでは相当の強群でないと巣の防衛をしながらの巣作りは巣枠が大きくて「隙」が大きすぎるんではなかろうか?  日本蜜蜂には「専守防衛」しか生きる道はない。 守るスペースを小さくして、全巣板を蜂群で取り囲んで防衛に徹することの出来る「巣枠巣箱」が理想のようだ・・・(2012-06-21)』 とある。
 結局、[(*16)]で述べる「ミツバチは厚く飼え」を実現できる巣箱と巣枠でなければならないということか。

(*14) ここに紹介されている龍馬式巣枠は、継箱に入れる巣枠は本体に入れる巣枠とは異なった高さのものである(巣枠の横幅は同じ)。 巣板ができる部分の高さは、本体の巣枠のそれの4割である。 下部の本体巣枠は産卵部分に、上部の継箱巣枠は貯蜜部分にすることを目しているようである。 このようにすんなりと分かれてくれるならば、採蜜は容易になる。 ただ、下部本体巣箱の端の方に置いた巣枠にも貯蜜部分を形成してしまう。 この部分を採蜜するときには、継箱巣枠を低くしたメリットはほとんどないだろう。 また、人工分蜂する際に貯蜜部分の巣枠を利用することから、両者の巣枠形状は同一の方が都合が良いように思われる。
 ただし、継箱を置くとすると、同一の巣枠形状の場合には、巣箱全体の体積が大きく増えてしまう。 「ミツバチは厚く飼え」という巣虫対策からは、好ましくない。 そのこともあって、継箱の巣枠は低くした方が良いかも知れない。

(*15) 王台は巣板下部に下向きにつくるので、巣板が巣枠全面に形成されてしまうと、王台をつくるときに下桟が邪魔をする。 このため、伊藤モデルなどでは下桟を付けないことで解決しているが、下桟がないと、上部の横桟取り付け部分に力が集中してしまい破損の原因となるように思われる。 斎藤氏による巣枠では、下桟の幅を狭くして取り付け、王台の形成と巣枠の強度の両立を図っているようだ。

 
 形状の異なった多くの巣枠が、本邦で考案されている。 巣枠の高さ、横幅、縦横比、巣板を形成する部分の面積には、それぞれに特徴を持っている。 欧米から導入されたラングストロス式に準じたもの、ニホンミツバチの習性を考慮したもの、採蜜時の利便性を優先したものなど、それぞれに意味を持っているはずである。 それを整理するため、ラングストロス式を含めて、一覧にして示す。
 巣枠高さの小さいものから順に、(0.05刻みでの)比率で示すと、

形式
京都式
斎藤式
清和式
ラングストロス式
(ホフマン式)
ハーフ
サイズ
伊藤
モデル
吉田式
青木式
龍馬式
AY式
  高さ(*)
0.6
0.9
1.0
1.0
1.2
1.4
1.7
1.7
2.0
  横幅(**)
0.5
0.7
0.5
0.4
0.4
0.5
0.4
0.5
0.6
  縦横比(***)
0.6
0.6
0.9
0.5
1.1
1.2
1.2
2.1
1.5
1.6
  面積(****)
0.3
0.6
0.5
0.4
0.7
0.7
0.7
1.0
1.2
 
  (*)巣板をつくる部分の高さを、ラングストロス式を"1"として
(**)横幅を、ラングストロス式を"1"として
(***)高さと横幅の比率を、高さ/横幅の値で
(****)巣板をつくる部分の面積を、ラングストロス式を"1"として

 本邦の巣枠は、欧米式およびそれの縮小形である斎藤式の巣枠が横に長い形であり、清和式が正方形に近い形であるが、縦に長いものが多い。
 巣枠幅に関しては、2つのグループとそれ以外に分けることができる。 青木式、伊藤モデル、京都式のグループ、清和式、龍馬式、吉田式、AY式のグループ、及び斎藤式である。 前者のグループは、内幅が250ミリメートル前後のやや狭い巣箱に対応している。 巣枠の耳の部分や枠の板厚などを差っ引くと、巣を形成できる部分は更に狭くなってしまう。 青木式では、167ミリメートルである。 2つ目のグループは、同様に300ミリメートル前後のやや広い巣箱に入れる巣枠である。 このグループの清和式は、耳の部分が長いので巣をつくる部分の幅は前者のグループと同じ程度である。 これら2つのグループに使われている巣枠は、大きな改造をしないで、重箱型の巣箱に入れることができる。 斎藤式の巣枠は、これらのグループと違って、内法が三百数十ミリメートル程の幅の特別な大きさの巣箱が必要である。 重箱型とは独立して巣枠専用の巣箱を用意するのであれば、何ら問題はない。
 ミツバチ群がそんなに多くない状況(趣味的な範囲)では、重箱型と巣枠式の巣箱を相互に利用し合える互換性のある方式が、いろいろと使い勝手がよいと・・・。
 この中で、最も高さの大きいAY式巣枠は山都町・清和高原の四季・・・庭で日本みつばちを 巣枠の大きさなどで、巣枠高さが大きいが故に使い勝手が良くないということが述べられている。 次いで高さのある龍馬式巣枠について、それを使っている龍馬式巣箱の記録では、夏の段階で、巣板はその巣枠の2/3程度を満たしているにすぎない。 「ミツバチは厚く飼えミツバチの密度をできるだけ大きくなるように飼うのが良い)」という原則(*16) に照らせば、不都合なことである。 巣枠が(特に、高さが)、大きすぎるのか・・・。
 なお、ラングストロス式巣枠とAY式巣枠、およびハーフサイズ巣枠のそれぞれの特徴については、日本蜜蜂の科学の2012年1月14日(土)に述べられている。
 
[巣枠]の製作
 巣枠の寸法を決定する前に、巣枠の製作に使う角材を決める。 使う角材の厚さが、巣枠の寸法を左右する。 ラングストロス式巣枠では、厚さ10ミリメートルの角材が使われている。 吉田式では厚さ9ミリメートルと12ミリメートルの使い分けがなされている。 AY式は15ミリメートル厚さでの工作例がある。 しかし、角材の調達と管理を考えると、統一した方が便利である。 やや薄い9ミリメートル厚さの角材では、長い部材が歪んでしまう可能性がある。 釘を打ち込む際に、板が割れてしまう可能性も高い。 厚さを12ミリメートルとすると、入手が容易で安価な「杉野地板(幅18センチメートル)」を使用できる。 そこで、標準寸法として、厚さが12ミリメートルで横幅が24ミリメートルである角材を採用する。 この標準寸法の角材は、杉野地板を24ミリメートルの幅でカットすればよい。 幅18センチメートルの野地板であれば1枚から7本が取れる。


 現在使っている「重箱型の巣箱」を「巣枠式の巣箱」に流用するつもりであるので、ここで決めなければならない巣枠の形状は、それによって制限されてしまう。 上で紹介した各種の巣枠を参考にして、その制限の中で、巣枠の形状と大きさを決めることになる。
 巣枠の最大幅は使用する巣箱の幅(内法が300ミリメートル)で決まってしまい、(2ミリメートルの余裕をみて)298ミリメートルである。 巣枠の耳部分(長さ12ミリメートル)と枠厚さ(12ミリメートル)の左右合計の48ミリメートルが必要であるので、「巣板形成領域の横幅」は「250ミリメートル」となる。 この横幅は、吉田式より10ミリメートル程度広く、AY式よりは若干狭い。 龍馬式とほぼ同じで、これら3つの方式の横幅をほぼ踏襲したといえる。
 つぎに、巣板形成領域の高さを、どうするか。 重箱で営巣しているニホンミツバチの巣板は、約20センチメートルを越える長さになる。 冬季のニホンミツバチは冷気から体温を保つために、丸く寄り固まって過ごす。 そのための空間として、10〜20センチメートル程度が必要である。 巣板部分とこの寄り固まっている部分とを勘案すると、高さが20センチメートル程度のラングストロス式では、この空間を到底確保できていない(*17) と思われる。 吉田式がこのことを考慮した結果かどうか不明であるが、ラングストロス式のおおよそ5割増しの高さになっている。 AY式は、その吉田式の、更に、5割増しの高さである。 巣枠の高さが大きいと、巣箱からスムーズに取り出すことが困難になる。 ニホンミツバチは神経質であるので、巣枠を穏やかに巣箱から取り出せることは、重要な点である。 また、龍馬式巣箱の記録での巣板の様子から、そこでの飼育条件下での巣枠の高さは、龍馬式の7〜8割程度が適切であるように思われる。
 これらのことを考慮して、これから作る巣枠の高さを決める。 「重箱型の巣箱」を使うことを前提にすると、重箱型巣箱で使っている高さ180ミリメートルの標準型重箱と、高さを半分にした半高型重箱(高さ90ミリメートル)とを、組み合わせることになる。 それによる巣箱の高さは、180ミリメートル、270ミリメートル、360ミリメートル、450ミリメートル・・・となる。 270ミリメートルの巣箱であれば、斎藤式か清和式の巣枠高さになり、高さが足りないように思われる。 450ミリメートルであると、青木式、龍馬式と同じで、巣枠が高すぎるようである。 標準型重箱を2個積み重ねてできる360ミリメートル高さを採用する。

巣枠を入れる巣箱(標準型重箱の2個を連結)
(画像をクリックすると大きくなります)

 巣箱内で、巣枠の上部と下部に12ミリメートルの隙間を取る。 巣箱の高さ(360ミリメートル)から、これらの隙間と巣枠板の厚さ(12ミリメートル)、後で述べる下垂保持板(36ミリメートル)を引くと、「巣板形成領域の高さ」は「276ミリメートル」となる。 造巣面積は、690平方センチメートルである。 このタイプの巣枠を、「青風式巣枠」と名付ける。
 「青風式巣枠」を、主な巣枠方式と比べると、

             
形式
京都式
斎藤式
清和式
ラングストロス式
(ホフマン式)
ハーフ
サイズ
伊藤
モデル
青風式
吉田式
青木式
龍馬式
AY式
   高さ
0.6
0.9
1.0
1.0
1.2
1.4
1.4
1.7
1.7
2.0
   横幅
0.5
0.7
0.5
0.4
0.4
0.6
0.5
0.4
0.5
0.6
   縦横比
0.6
0.6
0.9
0.5
1.1
1.2
1.1
1.2
2.1
1.5
1.6
   面積
0.3
0.6
0.5
0.4
0.5
0.8
0.7
0.7
1.0
1.2

 「青風式巣枠」は、本邦で使用されている巣枠形式の中で、平均的な大きさのグループに属する。
 京都式のように背の低い巣枠は、巣箱から巣枠をスムーズに取り出せる点で有利であろう。 「青風式巣枠」は、京都式と同様に、既に使っている重箱型の巣箱に入れられることを必要条件としている。 そのため、巣枠の横幅を大きくするには限界がある。 ある程度の巣枠面積を確保するために、スムーズに取り出せる点を犠牲にしても、巣枠高さを若干大きくせざるを得ない。 「青風式巣枠」の横幅である250ミリメートルについては、よく使われている内法寸法が300ミリメートルである重箱型巣箱に適った値であるので、普遍的な寸法になり得る。
 本邦では様々な形状の巣枠が提案されていて、その元祖である明治40年発刊の「実験養蜂新書(吉田弘蔵著)」に描かれている吉田式の巣枠は、当時、外来のラングストロス式が広く使用されていたにもかかわらず、その横長の巣枠形状にまったく影響されることのない独自の形状をしている。 この形状には、「ニホンミツバチの習性」を子細に観察した結果が、忠実に反映されているものと思われる。 「青風式巣枠」は、その吉田式と、ほとんど同じ形状である。

青風式巣枠とそれ以外の巣枠の大きさと形状の比較
(それぞれの巣枠は巣枠まわりの枠板の部分を除いたミツバチが
巣をつくる正味の領域/マウスオンで青風式巣枠を表示)

 
 外来のラングストロス式を除くと、横長の巣枠は「斉藤式」と「京都式」である。 ラングストロス式をそのまま小さくしたものに近い形である。 巣をつくる領域の面積は、小さくなってしまう。 「清和式」は、ほとんど正方形に近い形状である。 縦の長さが横幅の1.5倍の「龍馬式」や黄金分割比に近い「AY式」、2倍以上もある「青木式」は、縦長巣枠の代表である。 それらは、ラングストロス式の倍近い高さである。 縦に長いことで、面積はラングストロス式と同程度になっている。
 それ以外の巣枠は、わずかに縦長な形状であって、その大きさには違いがある。 「青風式巣枠」は、その中では大きい部類に属するものである。

(*16) 玉川大学ミツバチ科学研究センターミツバチの病気と対策において、 『原則として、巣板1枚に2000匹以上となるような密度が最適です。この密度が低くなること=巣の面積と働き蜂のバランスの悪化となります。ミツバチを「混んだ」状態で飼育することが重要です。巣板が多すぎる場合には調整して下さい。』 ということである。 巣板1枚に2000匹以上としているが、巣枠の大きさによって適切なミツバチ数は変わる。 ミツバチが巣枠の両面にびっしりと張り付いている状態を指している。 同様に、山都町・清和高原の四季・・・庭で日本みつばちを みつばちでも、 『蜂群の維持には箱からあふれ出るくらいの蜂がいたほうががちょうどいいようだ。 巣箱、巣枠の数が蜂数に対して大きすぎると、たいていスムシの侵入を受ける。(2011-09-30)』 と、スムシ対策上でもミツバチが密集している方が良いという。 要は、「混んだ」状態での飼育が、キーポイントである。 大型の巣枠をもちいたときには、巣板が欠落しているなどでミツバチが存在しない部分が生じてしまう可能性が大きくなる。 巣枠が小さければ、「仕切り板」を挿入するなどしてミツバチの生活圏を制限することで、その密度を大きくすることができる。 小さい巣枠でミツバチが溢れてしまう状況になれば、継箱を追加すればよい。 巣枠の「大」は「小」を兼ねないが、「小」は「大」を凌ぐ。 巣枠高さが小さいラングストロス式巣枠をニホンミツバチに使用する飼育例が多いのも、このことによるものと思われる。
 このような事情にもかかわらず、背の高い巣枠を使っている例がある。 これは、次項の[(*17)]で述べるニホンミツバチ独特の生態を考慮すると、小さければ「良い」ということでもないということが関係しているかも知れない。

(*17) ニホンミツバチでは、越冬時に、寒さに耐えるために丸く集合するという生態この写真を持っている。
 セイヨウミツバチは寒さに耐えるためのこの生態を、生来、持っていないということか、それとも、冬季は暖地に転飼するのでこのような生態を無視して良いということか、ラングストロス式巣箱はこのことに考慮していないように思われる。 セイヨウミツバチがニホンミツバチよりも寒さに弱い(「養蜂・ミツバチの飼育」など)のは、前者によることかも知れない。 そうであれば、ラングストロス式が、至極当然であるが、巣枠にこのための領域を必要としなかったということよりも、正確には、その確保を考えもしなかったということであろう。 それで、巣枠の高さは小さくても良かったということか?
 この生態を持つニホンミツバチを背の低いラングストロス式で飼育すると、冬季に、丸く寄り固まるための領域をどのように確保しているのであろうか。 ラングストロス式で飼育している2009年5月の「積雪地帯のニホンミツバチ」は、 『 ・・・春までに貯蜜を消費しながら巣枠上桟までかじり上がり・・・ (2009年5月8日(金))』 ということが、報告されている。 この行動の一部は、巣囓りによって、この空間を確保しているものであるかも知れない。
 なお、重箱型巣箱でのミツバチを見ると、冬季になっても「巣囓り」が見られない。 温暖地であるので冬季でも花蜜が採れるので貯蜜を消費しながら巣枠上桟までかじり上がる必要がないのか、それとも、重箱型巣箱であるので充分な空間があるから巣囓りする必要がないということか。 巣枠式を使えば、その理由を解明できるかも・・・。

 

巣枠製作図
(画像をクリックすると大きくなります)

 巣枠製作図に、「下垂保持板」がある。 幅36ミリメートル、厚さ12ミリメートルの角材を用意して、V字形(楔形)になるように角材の2つの角を斜めに切り落とす。 V字形の先端が下方になるように取り付けて、下垂保持板とする。 この下垂保持板の鋭角な下端から、ミツバチが造巣していくことになる。 できるだけ狭い下辺にすることで、巣板が下へ伸びていく過程で、巣枠面の外へはみ出す可能性がより少なくなる。
 この部分は、吉田式では「三角棒」を角が下になるように取り付ける(「実験養蜂新書 p.64」)ようになっている。 北信流養蜂会の2009年5月8日(金)付け記事には、「ベニヤ巣礎」として紹介されている。 そこでは「ベニヤ巣礎」の有用性が説明されている。 ニホンミツバチの飼育と採蜜 日本みつばち物語の中の「巣枠式巣箱での増巣の様子」では、 『私の使用している巣枠には、巣礎を上部に1cmほどしか張っていません。 ニホンミツバチは全面巣礎張りになじまない感じがします。 全面巣礎張りにすると、捕獲時、待ち桶からの取り込みの時に逃去しやすくなります。』と、巣枠の空間を遮るものは避けた方がよいという。 動画のページ1 捕獲準備、捕獲関連 日本みつばち物語での「4 巣枠へ巣礎をはめ込む」では、 さらに、『ミツロウの巣礎の代わりに2.3ミリのベニヤ板でも大丈夫です。』という。 「庭で日本蜜蜂を・・・山都町・清和高原の四季」の2015/02/07付け記事では、『巣枠の上部に10mmの巣礎を付けてます。 このような時は、特に「巣礎」でなくても、巣板作りのガイドとして、板でも(厚くても、薄くてもよい。)巣板を、作っていきます。 蜜蝋で止めておきます。』として、その写真が掲載されている。
 下垂保持板は、この吉田式での「三角棒」の取り付けや北信流養蜂会での「ベニヤ巣礎」の使用、日本みつばち物語での「巣枠上部に1cmほどの巣礎」を嵌め込むことと同じ機能をはたすものである。
 また、下垂保持板に、もうひとつの役割がある。 巣枠が24ミリメートル幅と細いので、枠が捻ってしまうことが多い。 下垂保持板は、この巣枠の歪みを防止してくれる。
 下桟の幅を、斎藤式のように、狭くするかどうか。 「青風式巣枠」の高さは斎藤式の5割増しであるので、巣枠の下端まで巣板が伸びてくるまでには時間があり、それにあわせて継箱を設置すればよい。 下桟の幅が横桟と同じであれば、材料の調達と組立の作業が簡便になる。 ということで、下桟の幅は、横桟と同じにする。
 巣枠間の隙間を、標準的な8ミリメートルとする。 巣枠の幅が24ミリメートルで巣枠間が8ミリメートルであるので、内法280ミリメートルの巣箱には8枚の巣枠が入ることになる。 8ミリメートルの隙間を確保するため、巣枠両面の向かって右側の上端と下端に、高さ8ミリメートルの「コマ」を取り付ける。 下端側の「コマ」の取り付けについては、巣枠を出し入れするときに、横桟の側面に止まっているミツバチを押し潰す恐れがある。 これは、巣枠間を充分に広げてから、巣枠を上下するように心掛ければある程度防げる。 それよりも、下端「コマ」が無いと、巣枠下部で巣枠間が狭くなってしまうことが生じる。 狭くなると、巣枠と巣枠とを繋ぐように無駄巣を形成してしまう可能性が高まる。 この巣枠間の無駄巣を切り離すことは、巣枠の下の方での切断であるので、困難さを伴う。 下手をすると、巣枠の巣板まで剥がれてしまうことになる。 巣枠下部で隣り合う巣枠の間隙を一定に保ち、巣枠間に無駄巣をできるだけつくらせないために、下端への「コマ」の取り付けは必須である
 巣枠の製作に、次の部材を用意する。
巣枠1個あたり
      標準寸法の角材(24mm×12mmの角材)
 ・上桟24mm×12mm×298mm1枚巣箱の内法より2mmだけ短い
 ・側桟24mm×12mm×324mm2枚 
 ・下桟24mm×12mm×250mm1枚上桟の長さより板厚の4倍だけ短い
      標準の1.5倍幅の角材(36mm×12mmの角材)
 ・下垂保持板36mm×12mm×250mm1枚左側写真のように斜めに切り落とす
      標準の3分の1幅の角材(8mm×12mmの角材)
 ・コマ8mm×12mm×35mm4枚斜めに切り落とすのは、枠に固定してから

  
巣箱側に必要な角材(重箱1個に付き)
      標準の2倍幅の角材(48mm×12mmの角材)
 ・重箱固定用桟48mm×12mm×220mm2枚重箱と重箱、重箱と基盤の接続用
      標準の3分の1幅の角材(8mm×12mmの角材)
 ・巣枠固定用桟8mm×12mm×280mm2枚 

 巣枠の製作は次の順にするとよい。
 まず、上桟に4ヶ所のネジ釘のための穴をあける。 2ヶ所は下垂保持板との固定のために(穴の位置は任意であるが、できるだけ端に近い方に)、残りの2ヶ所は2枚の側桟を固定するために(側桟に合致する正しい位置に)。 側桟にも、それぞれ2ヶ所の穴をあける。 1ヶ所は下垂保持板との固定に、もう1ヶ所は下桟を固定するために。
 穴あけをしたら、上桟と下垂保持板とを2ヶ所でネジ止めする。
 下垂保持板が上向くように置き直して(左側写真)、上桟と下垂保持板がなす直角部分の隅に(上桟、下垂保持板、側桟の3つが会わさる部分に)、少量の木工用のボンドを塗る。 その位置に合わせて側桟を立てる(左側写真)。 そのままの状態で、側桟側から下垂保持板に向かってネジ止め(*18) する。 つぎに、上桟を持ち上げて、上桟側から側桟に向かってネジ釘をまわし入れる。 同様に、残りの側桟も、ボンドとネジ釘で固定する。 上桟と下垂保持板、下垂保持板と側桟、側桟と上桟は、それぞれがお互いにネジ釘によって固定し合っている上に、その交点が木工用ボンドによって接着しているので、ビクとも動かないようになる。 材料の切断工作が丁寧になされていたならば、この時点で2本の側桟は、平行垂直になる。
 側桟2本の端部に、下桟を取り付けると枠が完成する。 このときも、少量のボンドを塗った後、ネジ釘で止める。
 このようにしてできあがった枠は、綺麗に、直角と平面が取れている。 不幸にも、2本の側桟が平行垂直になっていない場合がある。 このときには、上桟と側桟とを、及び、側桟と下垂保持板とを固定しているネジ釘を僅かに緩める。 下桟に少量のボンドを塗って側桟と緩くネジ止めする。 そのあと、枠が平面で角が直角になっているように押さえておきながら、下桟のネジ釘を最後まで締め、合計4ヶ所の緩めておいたネジ釘も強く締め直す。 もし、木工用ボンドが過度に塗られていると、このボンドが潤滑剤として働いて、板の合わせ部分が滑ってしまう。 板が滑ると、この押さえておく作業が困難になってしまう。 このようにしても次第に歪んでいってしまうことがあるので、ボンドが乾くまで、「重し」を使って押さえつけておく。
 巣枠に、巣板の落下防止用に、数本の「極細の横桟」を取り付ける。 ラングストロス式巣箱では、直径0.55ミリメートルの針金を用いている。 しかし、ニホンミツバチの飼育と採蜜 日本みつばち物語では、 『ニホンミツバチは全面巣礎張りになじまない感じがします。 全面巣礎張りにすると、捕獲時、待ち桶からの取り込みの時に逃去しやすくなります。』 と、巣枠の空間を遮るものは避けた方がよいという。 さらに、『私の使用している巣枠には、巣礎を上部に1cmほどしか張っていません。』 ということから、青風式巣枠では(下垂保持板があるので)落下防止用の針金を取り付けないことにする。
 

(*18) このとき、板の合わせ部分を一致させるには、万力などで締め付けることになる。 万力で締め付けると、その向きによってはネジ止めの勝手が悪いといったこともある。 下に示す簡易な「コの字型」の治具の使い勝手がよい。 「コの字」の開いている方を、状況に応じて適切な強さで握る。 これであれば、即座に握りを緩めて角度を変えることができる。 コの字の開いた方が、若干広がっている所が「ミソ」である。 そこを握り締めることで、大きなモーメントを与えることができるので。

 

下垂保持板

下垂保持板を上桟へ取付

片側の側桟の取付

もう一方の側桟の取付

下桟を取り付けて
 巣枠を支える「巣枠固定用桟」は、巣箱上辺から24ミリメートル下げた位置に、取り付ける。 このため、巣枠の上端は、巣箱上辺から12ミリメートル下がった位置になる。
 巣枠固定用桟の厚みは8ミリメートルである。 巣箱の巣枠固定用桟と巣枠横桟との隙間は、左右両方を合計して10ミリメートル(=300ミリメートル−8ミリメートル×2−274ミリメートル)である。 空きが多いように見えるが、巣枠の上桟と巣箱側面との隙間は合計2ミリメートル(=300ミリメートル−298ミリメートル)であるので、巣枠の位置はこの2ミリメートルの範囲で決まってしまう。 片側の平均5ミリメートルの巣枠側面との隙間は、巣枠をスムーズに出し入れするために、この大きさにしたものである。 巣箱側面と巣枠横桟との隙間は、最大14ミリメートル、最小12ミリメートルである。 スムシ対策を考える(*19) ともう少し狭い方が良さそうであるが、そのようにするためには、巣枠のスムーズな出し入れを犠牲にするか、巣箱の構造を根本的に変更しなければならない。
 

(*19) 「採蜜専用巣箱?・・人工巣の裏活用」において述べられているコメント「分封が目的か採蜜が目的か?」によれば、 『・・・巣箱の形状と巣枠の大きさが合わないと空いてる隙間にスムシがくるようです。巣箱の壁と巣枠のサイド縦桟が1cm以上離れてるとか・・・』 と、スムシを避けるには巣箱側面と巣枠横桟との隙間を10ミリメートル未満にしておいた方が良いということです。
 この隙間の値がどの程度の許容値を持っているか、検証する必要はあろうが・・・。

 

巣枠の取付
(画像をクリックすると大きくなります)

 
 
巣箱の設置

巣箱全景
 この巣箱に巣枠を入れると、巣枠上部の空間は12ミリメートルである。 「巣枠下端」と「基盤の底板」との間の距離は、おおよそ140ミリメートルとなる。
 製作した巣箱を、左に示す。 上2段が巣枠を収容した巣箱、下が巣門を備えた基盤である。
 
[継箱]の製作

継箱
(画像をクリックすると大きくなります)



巣箱の全体
(画像をクリックすると大きくなります)

 1段目の巣枠が巣板で満杯になってしまったときや、事情により蜂群を合同させるときには、継箱を積み重ねることになる。 満杯になってしまったときの追加は、巣箱中の何枚かの巣枠を継箱に入れ直して、その空いた所に空の巣枠を入れる(*20)。 継箱にも若干のミツバチがいることになるので、継箱にミツバチがスムーズに馴染むことができる。 合同させるときには、お互いの「におい」に馴化させることが必要である。 そのためには、様々な合同法(たとえば、新聞紙合同法など)がある。
 この継箱も、2個の標準の重箱を繋ぎ合わせたものを巣箱とする。 この巣箱全体の高さは、360ミリメートルである。 継箱の巣枠上部の空間は12ミリメートルであり、継箱の巣枠下端とその底との距離も12ミリメートルである。 継箱の巣枠と下段の巣箱の巣枠の間の空きは、24ミリメートル(*21) となる。 24ミリメートルの隙間があるので、上下の枠の間をミツバチは自由に通ることができる。
 継箱を追加すると、夏季の暑さ対策にもなる。 巣箱内の熱気は上段の継箱に昇っていくので、下段の巣箱の温度が抑えられる。
 

(*20)「庭で日本蜜蜂を・・・山都町・清和高原の四季「ミツバチと遊ぶ」(2016-06-28)」では、
 『 日本ミツバチは、巣の下に障害物があると、そこで巣作りをやめて、
分割、巣別れを優先するようです。

 巣枠でも、枠の下桟に届くとそこで巣作りをやめます。
下桟がないと、どこまでも巣脾を伸ばしていきます。
といって、縦長の40〜50cmの巣枠では取り扱いができなくなりますので、
巣枠としては無意味になりますね。
取り扱いが可能な巣枠の長さを利用することになります。

 重箱にすわく箱を継ぐ方法を試しましたが、うまくいきません。
重箱式と巣枠式箱は別と考えたほうがよさそうです。
こちらの思うようには、巣作りしないものです。

という。 ニホンミツバチが満杯になったとき、ミツバチの増勢を計るために継箱をするという方策は、適切ではないということである。
 そうであるとすると、この「継箱」の使用を前提として巣枠式巣箱の全体を設計しているが、使用しないならば、この寸法を変更してもよいかも知れない。

(*21) 龍馬式の場合、上と下の巣枠の間隙は5ミリメートルにしている。 これは、ミツバチが通過できる最小の間隙にして、巣枠下桟の下側に無駄巣をつくらないようにするためである。 しかし、龍馬式巣箱を使っている掃部 彌氏の平成22年5月15日付けの記事によれば、 『・・・巣箱の点検のとき蜂を圧死するので上段と下段の間に10mmの板を入れて隙間を作る。これにより隙間の間隔が約15mmとなる・・・』 と、従来の5ミリメートルの隙間を、敢えて大きくしたことを述べている。
 氏の目的はミツバチの圧死を防ぐためであるが、これだけの隙間があれば、隔王板を挿入することも可能になる。

 

(4)観察窓の追加
 巣箱の中を観察できるように、観察窓を追加した。 巣枠式巣箱では、巣枠の並び方から、側面から覗くようにしないといけない。 正面からでは、巣枠の側板で視界が遮られてしまうから。
 可能な限り、視野を広く取ること。 透明な板は、ミツバチが営巣中であっても容易に取り外しができて、内側の汚れを拭うことができること。 遮光板の取り付けは、簡単な構造であること。
 この要求を基にして、以下のようにした。

観察窓の製作図
(画像をクリックすると大きくなります)


観察窓の部分

内側から見た観察窓

「透明板」を取り付けて

「覆い板」で遮光

「覆い板」を外して
観察窓から内部を覗くと
「巣落ち防止棒」が見える
 従来から使用している巣箱に手を加えて、観察窓を追加する。 巣箱の「側面板」を、「スリット」状に切り取る。 その詳しい様子は、「内側から見た観察窓」を見ると、分かりよい。 美的センスを優先すると、側板を「ロの字」に切り抜くべきであろう。 しかし、この工作は難しい。 「スリット」状に切り取り、側板の強度は両端の「添え木」が支える構造とする。
 そこに「プラスチックの透明板」を取り付ける。 「透明板」の厚さは、板の強度と切断の容易さの兼ね合いから、2ミリメートルにする。 透明板の大きさは、左右の幅が「添え木」の間隔に、上下の高さが「重箱固定用桟」で決まる長さにする。 なお、「重箱固定用桟」は、重箱を重ねて使うときに重箱間を固定する板である。 この透明板を、側面板の外側に固定する。 外側であるので、ミツバチが営巣中であっても、この板の取り外しができる。
 遮光のための「覆い板」は、縦横が透明板と同じ大きさの板を、厚さ12ミリメートルの「野地板」から切り出す。
 幸運にも、「添え木」の厚さは、透明板と覆い板を合わせた厚さに等しい。 これらの板は、「添え木」と「重箱固定用桟」とで囲われているので、簡単な留め具で固定するだけで大丈夫である。

観察窓を巣箱の上部に
(画像をクリックすると大きくなります)

 巣の上部の状態も観察したいときには・・・。 上の図に示すように、巣箱の構造はそのままで、巣箱の上下をひっくり返すだけである。

(5)蜂玉の収容
 分蜂最盛期に蜂玉で捕獲したミツバチのうちの1群が、逃去することもなく2年目の春を迎えるまで営巣した。 その過程でミツバチの様々な生態を観察し、それについての先人達による興味ある記述を参考にしながら、その群が崩壊してしまうまでの記録である。


蜂玉の宿り木

蜂玉

蜂玉の拡大

巣箱

生まれたてのハチ(上方のモコモコしたハチ)と
花蜜を運んでいるハチ(下方のハチ)



動画(スタートボタンを押してください)

巣箱の中
(下から見上げた状態で)

11月初旬

12月初旬

年末

1月末

2月初旬

2月下旬

3月上旬

3月中旬

3月下旬

4月上旬

4月中旬

4月下旬

5月上旬

5月中旬

5月下旬
 
 

1月の花菜にミツバチが(左上:花粉を団子に)

 

「花菜」や「大根の花」には群がっているミツバチも、
「オオイヌノフグリ」や「ウメ」の花には

(3月中旬)


周囲の状況
(右奥に巣箱が)

蜜や花粉を求めて

花の裏から蜜を

花粉団子を後ろ足に
 ある特定のスモモの木は、分蜂したニホンミツバチが、好んで蜂玉を作る場所である。 その部分は、白くなっている。
 この蜂玉を一網打尽にして、巣箱に落とし込めば、ニホンミツバチの捕獲は完了である。 ただし、これは捕獲であって、そこにハチが定着してくれるかどうかとは、別問題である。 現在までのところ、
古い巣箱であって、朝日の当たる小屋の東側に設置した場合には、今のところ定着
古い巣箱であっても、小屋の北側に設置した場合には、数日で逃去
新しい箱で、木陰に南向きに設置したものは、数日で逃去
という結果である。
 逃去してしまった巣箱では、巣門のまわりを意味もなく歩き回ったり、巣箱の外を止まっているだけで、花蜜を集めようとするハチがいない。 まったく、活気が感じられなかった。
 ニホンミツハチが定着している巣箱では、ハチの動きが盛んである。 巣門から出てきたハチは、すぐに、どこかへ飛んでいってしまう。 遠くから飛んできたハチは、そのまま巣門の中に入っていく(*22)
 このようなミツバチの行動の差が、何によるものかは、今のところ分からない・・・。
 定着した巣箱では、細かな茶色の、まるで産毛のような、まるまるとした毛をまとったハチが、巣門から出てきた。 出てきても、飛び立とうとはしない。 ほかの働き蜂がせっせと花蜜を運んでいるにもかかわらず、このモコモコしたハチは、巣門の縁に留まったままである。 花蜜を運んでいる働き蜂と比べると、このハチにはスマートさがないように見える。 羽を盛んに動かしている。 羽化した直後のハチに違いない。 巣板の状態は見えないが、ハチが次々と誕生しているようだ。 巣箱の周囲には、蜜源の花がいっぱい咲いていて、生息条件は良好である。
 この4回の蜂玉の捕獲で、定着は1群である。 逃去の原因には色々あろうが、捕獲時にミツバチに与えた手荒い扱いも関係しているかも知れない。 蜂玉の収容は、可能な限り多くのミツバチを運搬用のプラスチック容器に落とし込んで、そのまま、蜂場まで運んでいき、そこに置いてある巣箱の中に落としてしまうという・・・どちらかというと少々雑な方法を取っている。 ミツバチにとっては、2度に渡って落とされるし、狭い容器に押し込められて揺すられるなど、ストレス以外の何ものでもない。 ミツバチを容器に落とし込んだとき、女王蜂を取り逃がしている可能性もある。
 改善点は、巣箱を蜂玉の直下まで持って行くことにする。 蜂玉のミツバチを、取り逃がしたミツバチが多くなっても構わないから、穏やかに巣箱に収容する。 取り逃がしたミツバチは、徐々に、蜂玉のあった所に集まってくる。 女王蜂が巣箱の中に入っているなら、この蜂玉の所に集まったミツバチは、次第に巣箱に入る。 このとき、巣箱との距離が短いときには、飛んで移動するのではなくて、ミツバチが紐状につながって歩いて巣箱に移動していくという普通には目にできない行動が観察できる。 そして、飛びまわっているミツバチは1匹もいないという落ち着いた状態になってしまう。 もし、女王蜂を取り逃がしていたら、ミツバチはいつまで経っても巣箱に入ろうとしないに違いない。 女王蜂の捕獲に失敗したことは、これで判明するはず。 そうであれば、再度、新たに蜂玉状になっているミツバチの巣箱への落とし込みを試みる。 女王蜂が、この中にいるかも知れないから。 そして、様子を見ることにする。 暗くなってから(*23)、この巣箱を、巣場まで静かに運んでいく。
 改善した方法で捕獲したミツバチは、今のところ、逃去する気配はない。 巣箱に取り込んだ翌々日、巣箱を見ている と、花粉を後ろ足に付けた ミツバチが巣門から入ろうとしている。 一安心である・・・。
 

(*22) 「入巣して3〜4日して花粉を付けた働き蜂を間々見られるようになると女王が産卵をしているので安心です」ということで、この巣箱に居着いてくれそうだ。

(*23) これとはまったく逆のことであるが、「ニホンミツバチ(日本蜜蜂)の飼育 ニホンミツバチの愛好者の井戸端会議」の「[32710] Re:[32707] 先日の蜂玉捕獲 投稿者:ONO@愛媛(2014/04/28(Mon))」では、 『 ・・・蜂球を見つけるまでに時間があった場合(極端なことを言えば、目の前で集まるのを見ていたのでなければ)、蜂球を取り込んだら、蜂球ができていた場所からできるだけ離すほうがいいようです。 この掲示板でのご報告では、蜂球ができていた下とか、そのすぐ側に取り込んだ巣箱を置くと逃げるケースが多発する、ということになっています・・・ 』 ということが、述べられている。 ミツバチの捕獲が、一筋縄ではいかないということであろうか。

 
 9月中旬、オオスズメバチがニホンミツバチの巣箱にやってきた。 このとき、ミツバチは、一斉に巣箱の中に入り込んでしまった。 この行動は、遺伝子にすり込まれている自然な振る舞いであろうか。 スズメバチは、巣箱の外側に取り付いている。 しかし、スズメバチが巣箱の中に入り込んでいけるような隙間は、どこにもない。 もし、スズメバチが巣箱の中に入り込めば、ミツバチにとって最悪の事態になってしまう。 巣箱の中に入れないので、スズメバチは巣門の周囲を歩き回っている。
 ミツバチは巣門の内側で1列に整列して、成り行きを窺っている。
 オオスズメバチが、ニホンミツバチを掴まえ去っていくという最悪の事態は回避できた。 だが、花蜜を集める絶好に時期に、ミツバチが巣箱から出られないということは早急に解決したい。
 そこで、「捕虫網(たも)」を使ってスズメバチを捕まえる(*24) ことにした、スズメバチに刺されないように万全の準備をして。 このときのスズメバチの動きは、思っていたよりも、鈍い。 巣箱に留まっている場合には、「たも」で捕捉されるという危機的な状況を察知できないようである。 確実にスズメバチを捕まえられる。 飛翔速度も大きくない。 「たも」で追い回しても、向かってくることはない。 「セミ」や「トンボ」を捕まえるよりも容易である。 油断は禁物であるが、「スズメバチの巣」の近辺で発揮される「攻撃性」は、ここでは、まったく感じられない。
 スズメバチがいなくなっても、ミツバチは巣箱から、なかなか出てこようとしない。 2,30分が経過した頃から、やっと、数匹のミツバチが巣箱から出てくる。 いつものように花蜜や花粉を集めだすようになるのは、小一時間後である。 ミツバチのこの用心深さの故に、スズメバチによる被害が最小限に抑えられているようだ。
 時間が許す限り巣箱を見回り、3週間ほどで、数十匹ものスズメバチを捕まえた。 スズメバチの巣には、女王蜂がひとり取り残されてしまったのではないかと思われるほどである。
 

(*24) ここで紹介した「たも」による捕捉は、絶対に、勧められない方法である。 スズメバチに刺される可能性が、非常に高い。 万全の装備をしていても、どこかに隙がある。 間違っても、「たも」による捕捉法を、決して使わないで欲しい!
 「スズメバチの巣」の近辺で発揮される「攻撃性」が、それ以外の場所で、まったく、感じられないことに関しては、 ニホンミツバチ協会|Facebookにおいて、
オオスズメバチは取り扱いを間違えなければ決して危険な生物ではありません。 自然界のルールさえ守れば楽しく観察する事も可能です。 写真のほとんどは1メートル以内の距離で撮影したものです。
オオスズメバチを楽しむ  イナゴを与えてみた。 オオスズメバチも巣の近く以外では凶暴ではない。
と述べられているが・・・。
 11月。 茶の木に花が咲いた。 その花で、1匹のスズメバチが蜜を吸っている。 その周りに、ハチ が、何匹か、懸命に蜜を吸っている、スズメバチの存在には気を留めずに。 スズメバチがその気になったら、簡単に、そのハチを捕らえることができるほどに。 しかし、このスズメバチにとっては、蜜の方に魅力があるようだ。
 以上のことをここに紹介した理由は、「スズメバチの巣の近辺」と「餌場の周辺」とでは、スズメバチの攻撃行動が大きく違うことを指摘したいからである。
 もし、野山でスズメバチに遭遇したときに、それに攻撃性がなかったとしても、それは「餌場の周辺」状態であった可能性がある。 それは、スズメバチの行動の一側面に過ぎない。 スズメバチは、案外、温和しいハチであると勘違いしないように!
 スズメバチを侮ってはならない。 スズメバチが飛んでいるところに出遭ったら、常に、「巣の近辺」であるかもしれないということを念頭に置いて、即座に退避の行動に移って欲しい。
 薦められる効果的な捕捉法は、「粘着紙」を使った方法(たとえば、粘着シートを使用したオオスズメバチの駆除方法」など)である。 これなら、飛び回っているスズメバチと、直接、対峙することは、ない。 粘着紙に絡め取られたスズメバチの処理を間違わなければ、最も安全な方法である。

 
 11月初旬。 ミツバチの巣板がどの程度までできているかを、巣門板を外して、確認した。 ミツバチは、上から3段目の重箱の「桟」の辺りに塊をつくっている。 巣板は、上から2段目の重箱の下部まで伸びてきているようだ。
 この状態で、最上段の重箱を取り外して採蜜すると、ミツバチにとっては、巣板の上半分を失ってしまうことになる。 また、貯蔵している蜂蜜の量で見れば、そのほとんどが無くなってしまうことになろう。 このような状態では、ミツバチが冬越しするには厳しすぎる。 ミツバチにとって過度の負担がないように採蜜するためには、上から3段目の重箱を満たすほどに巣板ができていることが望ましい。 そうであれば、貯蔵している蜂蜜の半分程度は、ミツバチのために残しておけるだろう。
 ということで、この冬が過ぎて暖かくなり、充分に巣を充実させるまで、採蜜しないことにする。
 12月の巣箱内の状態は、11月のときよりも、ミツバチの数が少なくなっている。 ニホンミツバチの働き蜂の寿命は1ヶ月程度であるということから、この1ヶ月で寿命を迎えたミツバチが、新しく生まれてきたものの数よりも多かったに違いない。 徐々に寒くなってきているから、生まれてくるミツバチの数が減ってきているのだろう。 晴れた日には、どこに咲いているのか分からないが、せっせと花蜜や花粉を運んできている。 近辺には、茶の木や菊、例年よりも早目のビワやミツバチのためと思って栽培している早生の花菜が咲いていて多くの昆虫が訪れているが、ニホンミツバチは見当たらない。 晩春の菜花にはニホンミツバチが群がっていたのであるが、この時季、遠くの方にもっと魅力的な花があるようだ。 このように、次々と花蜜や花粉を運んできているのであるが、巣板は、この1ヶ月で、ほとんど増えていない。 集めてきた花蜜や花粉は、冬に備えて、貯蔵しているのであろうか。
 年末の巣箱の状態を見ると、この前よりも更にミツバチの数が減ってきている。 上から3番目の重箱にある巣板保持用の桟が、11月のときはミツバチで隠れていたのが、大部分が見えるようになってきた。 巣板の下部も、よく見える状態になってきた。 ミツバチが巣板中央の下部を囓り切って、その空洞に入り込んでいるからでもあろう。 この状況で、砂糖水を給餌するのがよいかどうか、迷ってしまう。 巣板式であれば、蜂蜜の貯蔵量を内検できるのであるが・・・。
 晩秋の茶の木の花から、ビワの花へと移り変わって、小寒の今日この頃、ミツバチが今まで見向きもしなかった「花菜」に通うようになった。 この花菜は、ミツバチのために8月25日に播種、9月20日に定植した早生の品種(「秋華菜花」)である。 1ヶ月前から咲き始めていて、食用に蕾の状態の茎を収穫できる品種であるが、ヒトよりもミツバチ優先である。 巣箱の至近距離にあるので、蜜を求めるミツバチが、飛行途中に寒さと北風で墜ちてしまうこともない。 寒い時期に遠距離から蜜を集めてくるミツバチは、それ自身の寿命を縮めてしまい、春を迎えられないこともあるという。 この花菜は、越冬中のミツバチの消耗を、最小限に抑える効果を持つ。 蜂子を育てているかどうかは、重箱型の巣箱であるので不明であるが、この花菜の花粉を運んでいる。 この点でも、巣枠式の巣箱の長所が見えてくる。 もし育児しているのであれば、春になった時点で、蜂群は相当なものになろう。
 継続してミツバチ飼育の参考にしている 日本蜜蜂の科学 では、飼育していた30群ほどのニホンミツバチが、「アカリンダニ」のために全滅してしまったという。 それ以前から、アカリンダニの強い影響を受けているということを述べられていたので、その対策を見出されるものと期待していたのであるが・・・。 アカリンダニが本邦で初めて見出されたのは2010年4月のことであるから、4年目での出来事である。 ヒトの「エイズ(AIDS)」と同じように、あるときに突如としてはやり始める現象に対して、適切な対応・処置を取れないことが多い。 2013年12月7日(土)の記事によると、このアカリンダニに対して、ダニに有効であるとされていた「アピバール」は、少なくともニホンミツバチについては効果が無いという。 実験室内での試験研究で一定の効果があるという結果が出たとしても、有能なミツバチ飼育家においてこのような事態になってしまったということは、「フィールドでの有効性」が否定されたことになる。 「ミツバチヘギイタダニ」などは蜜蜂の体表に付くので駆除剤成分がダニに届きやすいが、アカリンダニは体内の気管に入り込んでいるので有効成分が届きにくいと思われる。 その成分がダニに有効な濃度で気管まで届いたとすると、その濃度の成分がハチに影響してしまうこともあろう。 アカリンダニの蔓延による被害(*25) が、願わくは一過性の事態で終わってくれますように・・・。
 

(*25) 亜熱帯地方のトウヨウミツバチの研究者であるNPO法人「みつばち百花」の中村純理事(玉川大学学術研究所ミツバチ科学研究センター教授)の講演「ニホンミツバチを飼うということ」(2014年)によると、 『アカリンダニはミツバチの気管の中で増える。 アカリンダニがミツバチに感染すると、そのダニの数は時間の経過に伴って増えていって、気管内のダニが一定数を超えるとミツバチは死んでしまう。 冬季を除いて働き蜂は30日程度の短い寿命であるので、ダニの数が極限にまで増える前に働き蜂は寿命を迎えることになるだろう。 したがって、アカリンダニに感染したとしても、ダニの影響ではなくて、寿命により死んでしまうことが考えられる。 死んだミツバチに、アカリンダニによる症状がほとんど見られないのも当然である。 ただ、冬季の働き蜂は半年程度の寿命があるので、アカリンダニは相当な数に増えてしまうだろう。 このときは、春まで生き続ける寿命があるにもかかわらず、春を待たずにアカリンダニの影響で働き蜂が死んでしまうことになる。』ということである。
 このことから、アカリンダニに感染したミツバチ群について、以下のようになることが考えられる。 晩冬から早春にかけて、アカリンダニの影響で働き蜂が次々と死亡するので、寿命による死亡数以上の早い速度でその数が減少していく。 ところが、ある時点で、春の産卵・羽化が始まって働き蜂が一挙に誕生し、その数が急上昇する。 この働き蜂の誕生数がその死亡数とバランスした時点以降は、ハチの数は急カーブで増えていくことになる。 産卵開始が早い土地であると働き蜂が多い時点でバランスするし、産卵開始が遅いと働き蜂の絶対数が少なくなってしまった時点でバランスする。 後者の時点では、盛り返すほどの働き蜂がいないので、次第次第に衰退してしまうだろう。 より寒冷な所では、秋の早い時期に育児を停止して越冬に入るので産卵を開始する時点ではほとんど働き蜂が残っていない・・・ということも考えられる。 そうであれば、秋の育児停止時期が遅くてより早い時期に産卵を開始する暖地では、アカリンダニの影響を抑え込めるか。 さらに、一年を通して寿命が短い亜熱帯のミツバチでは、アカリンダニには、ほとんど影響されないのではないかということになる。 もっとも、女王蜂が感染してしまえばそれで一巻の終わりではあるが・・・。
 なお、2014年3月1日(土)の「アカリンダニ・パンデミック」では、 『 ・・・ここで注意しておくことがある。 アカリンダニの被害について、とかく「春先に多い」という旨の文章を目にする事が多いが、実際には春・夏・秋のいつでも急速繁殖しているし、この中のどの時期であってもアカリンダニによって蜂群が消滅していっている。 アカリンダニにかかわる既存の文章について、訂正を必要とする部分があるのではないかと私は考える。 』 としている。 アカリンダニの被害が「春先に多い」のであれば、中村理事の講演に則った機序によるものであろう。 しかし、「春・夏・秋の中のどの時期」でも蜂群消滅が生じているのであれば、越冬期間が短い暖地であっても油断できないことになる。

 
 一月の末。 巣箱のミツバチは、昨年末から1ヶ月経過したが、その数はほとんど変わっていない。 冬季には、巣板の下部から上に向かって巣囓りすることが、ニホンミツバチに関する一部のホームページに述べられているが、見たところ、この巣箱ではそのような形跡はない。 当地の寒さがそれほどでもないからか。 それとも、年明けから、花菜の花蜜を集めるようになったので、巣囓りでのエネルギー補給が不要であるからか。 花粉も集め始めているが、蜂子の存在を確かめる術はない。 産卵後20日で働き蜂は羽化するので、花粉を集め始めた時期から推し量って、もうそろそろであろう。 ハチの羽化が見られたら、無事越冬できたことになる。 周囲にセイヨウミツバチの飼育が見られないためか、「アカリンダニ」の影響もないようだ。 数十年前であったら、周囲の田圃は黄色一色で彩られた菜の花畑。 それが、今ではキャベツ、キャベツ、キャベツ。 黄色の花が咲く以前に、すべて収穫されてしまう。 これで、黒潮洗う南岸の地の養蜂業者も、春は信州、夏は北海道と、当地はパス。 これが幸いしているのであろうか?
 3月になった。 花菜の蜜や花粉を集めるようになってから、2ヶ月が経過した。 重箱型の巣箱であるので、卵も幼虫も蛹の白い蓋も、あったとしても見えない。 巣板を下から見上げた状態では、ミツバチの数はほとんど増えていない。 このままのハチの数では分蜂圧力が高まらないので働き蜂も王台を作ろうとしない(*26) のでは・・・。 例年の分蜂は4月上旬であるので、これからの2週間で働き蜂がどーんと増えて欲しい。
 

(*26) ホームページの「三種類の王台と、その対処方法」の中で、「分蜂王台」や「換王王台」は『女王蜂が生存中におこなうので、王台は目立ちにくい隅っこにつくる』し、「変成王台」は『女王蜂が不在なので、遠慮なく卵のある場所につくる』とある。 それぞれの「王台」ができる場所の説明には間違いないが、それを『目立ちにくい隅っこに』とか『遠慮なく』という擬人的な解釈には疑問が残る。 ミツバチの思考過程が、ヒトと同じこともあろうが、まったく異なっていることもあろう。 擬人的な説明は読者に納得させよいが、誤解の危険性も大きい。 ミツバチの立場からは、「分蜂王台」や「換王王台」は「王台は下向きにつくるので、巣板の(中央部分ではなくて)隅っこに(巣板の下端に)つくるのが省資源である」し、「変成王台」は(女王蜂がいないので)新たに産卵されることがないから「その時点で利用できる卵があれば、その卵のある場所に王台をつくらざるを得ない(その場所を王台につくりかえるためには多大な労力が必要であったとしても、卵のある場所にしかつくれない)」ということか。
 同様に、「女王蜂」という表現にも疑問が残る。 その擬人的な意味は、その蜂群の支配者であることを含んでいる。 たとえば、女王蜂(西洋蜜蜂)と分蜂で、 『 女王蜂の鳴き声(クイーン パイピング)  女王蜂は、王台から羽化する前に鳴きます。 これが現女王蜂や王台中の女王蜂に「そろそろ産まれるよ〜」と知らせて分蜂の合図にもなっているみたいです。 訂正:分蜂の合図を出すのは経験を積んだ働き蜂だそうです。(ワーカーパイピング) 』 の前半部分のように。 しかしながら、女王蜂は鳴き声を出すが、その鳴き声が分蜂の合図ではないことが「訂正」部分で述べられている。 分蜂を支配しているのは、経験を積んだ働き蜂であるという。 女王蜂は、「働き蜂の卵を産む雌(「産卵蜂」)」ではあるが、擬人的表現である「王」としての振る舞いは・・・。
 ミツバチの生活を考える上で、「擬人的」な解釈や「女王蜂」の「王」の表現が、ほんとうの姿を反映しているだろうか。 それを、「王台」をつくる過程で考えてみると・・・。
 「王台」をつくることで新「女王蜂」が生まれて分蜂に至るプロセスは、現「女王蜂」からみれば、それ自身の勢力の分裂・衰退を意味する。 それは、現「女王蜂」が末永く生きていくには、不都合なことである。 また、「女王蜂」どうしで殺し合いをしたり、後から生まれてくる「女王蜂」候補をかみ殺すなどで、自身以外の「女王蜂」の存在を拒んでいることからも、「女王蜂」が主導して「王台」をつくっているとは考え難い。 女王蜂専用の産卵飼育場「王台」と分蜂 | 大和ミツバチ研究所において、 『 ・・・女王蜂が巣の中に2匹以上いる場合は、殺し合いになると言われます。 ですから、働き蜂はコロニー・巣・気候の状況を考慮しながら、次の女王蜂の誕生と分蜂をコントロールしているようです。 』 と、「働き蜂」によって次の女王蜂の誕生と分蜂がコントロールされているとしている。 より明快な形で述べられているRoyalJellyでは、「女王蜂」と「働き蜂」との間での相互の関係が、 『 ・・・女王蜂の大顎線からが分泌される女王物質が口移しに働き蜂の間に広まるからです。 9オキソデセン酸など5成分が含まれるこの女王物質に働き蜂は強く惹きつけられます。 女王物質には3つの大きな役割があります。その一つ、「階級維持フェロモン」とも呼ぶべき働きで、働き蜂の卵巣の発達は抑制され、しかも王台を作ろうとする本能も抑制させます。 みつばち社会には女王蜂は1匹しか必要ありません。 従って、働き蜂が王台を作り始めるという事は、次世代の女王蜂が必要となる場合、つまり世代交代の時期、または巣別れの時期を意味します。 女王物質の生産能力が1/4以下に低下すると、王台作り行動の抑制が解かれ、新たな女王蜂の誕生となります。 ・・・ 女王物質は働き蜂の体内で代謝産物になって蓄えられ、再び女王蜂に戻ると酵素作用で活性が甦り再使用されます。 このように、働き蜂の役割は、何をとっても有効(有益)なものばかりと言えるでしょう。 』 と、「王台」つくりのプロセスには、「女王物質」が仲介しているという。 「女王物質」の生産能力の低下は、現「女王蜂」の産卵能力の減少など体力の衰えの物差しとなり、早急に新しい「女王蜂」を誕生させなければならないことを意味する。 その物質の減少をシグナルとして、新「女王蜂」を誕生させるべく「働き蜂」による「王台」つくり行動が始まることになる。 これは、「女王蜂」の精神的な意志に関係なく、その「女王蜂」の肉体的な能力により、「王台」つくりがコントロールされることを示す。 (「女王蜂」を失った場合にも、「女王物質」がなくなるので「王台」つくり行動が始まることになる。) 結論として、「王台」つくりの切っ掛けは、「女王蜂」が示す行動に依るのではなくて、「女王蜂」が分泌する「女王物質」の多少に依っている。 それゆえ、「働き蜂」の数が多くなってくると「女王物質」が多くの「働き蜂」の間に拡散して薄められ、一部の「働き蜂」に王台作り行動への抑制が解かてしまうことになる。 「働き蜂」満載の巣箱で、「女王蜂」が居るにも係わらず、「王台」をつくり分蜂に至ることにつながってしまう。 これは、「分蜂王台」や「換王王台」では「女王物質」が比較的薄い状態になっている隅っこに、「女王物質」がまったく存在しない「変成王台」の場合には巣板の中央につくることの説明になる。

 
 啓蟄。 順調に温暖な春への道を歩んでいるのかと思われていた矢先に、日本に侵入してきた寒波がいつまでも去ろうとしない。 ミツバチにとっては、想定外の事態?  ここまでの数日間、寒さと雨天で、満開の花菜への通いが絶えている。 これからの1週間も、最高気温が低いとの予報。 10日ほども集蜜できないことになる。 それまで盛んに集蜜していたので、これくらいのことは大丈夫だとは思われる。 しかし、貯蜜の最後の一滴を求めて巣穴に頭から突っ込んだミツバチが巣板一面に尻尾だけを出したままで時間が止まっている光景が浮かんでくる。 いかん!  念のため、砂糖水を給餌することにした。 上白糖500グラムを400ミリリットルの水に溶かした。 700ミリリットルの砂糖液ができた。 この溶液を容器に移して、取り外しができる巣門板から巣箱の中に入れればよい。 ところが、巣門板を外そうとすると門衛蜂が数匹飛び出してきた。 ちょっとばかり気を抜いて、巣箱にショックを与えてしまったようだ。 無理をすることはないので、給餌は夕刻の暗くなってからに延期する。
 巣門板を外すと、底板に大量の花粉屑が積もっている。 この間の寒さなどで花蜜が集められないので、働き蜂がエネルギー源にするために巣板を囓っているのか。 花粉を貯めている巣板部分を。 この底板の花粉屑の量は尋常ではない。 数日前、巣板の写真を撮ったときには、まったく見られなかったものである。 貯蜜不足に陥っているのでれば、今回の給餌はギリギリのところでセーフということか。 春なのに、まだまだ寒さが続くようである。
 給餌して2日後、巣門板を外して砂糖液の減り方を見る。 ほとんど減っていない。 ミツバチが溺れないように10本ほどの割り箸を半折にして浮かせてあるが、その箸の上で1匹のミツバチが死んでいるだけである。 砂糖液の容器を取り出して、巣箱から1メートルほど離れた所に置いておく。 砂糖液を必要としないのは、貯蜜が充分にあるからか。 よく分からない。
 3月中旬になった。 ようやく暖かい日が続くようになった。 あたりには、巣箱に近い所にオオイヌノフグリの花が、約10メートル離れた所にウメの木10本の花が、同じほど離れた所に1列に植えてある花菜の花が満開である。 オオイヌノフグリやウメの花には、ミツバチがまったくいない。 花菜だけに群がっている。 これでは、ウメの受粉昆虫として、ミツバチは不適当なのか。
 春分の日が過ぎた。 お昼前後の暖かい時間には、何匹かの働き蜂が花蜜や花粉を運んでいる。 各地では春の子蜂が次々と誕生しているとの報告があるが、重箱型の巣箱を下から覗いてもミツバチの数が増えているようには見えない。 前回に比べて気温がより低くなってしまった夕方遅くの観察であるので、大部分のハチが巣の内部に入ってしまっているのかもしれない。 巣板隙間の奥の方に入り込んでいるとすると、見えるミツバチの数は限られてしまうが・・・。
 3月以降の巣板の写真をよく見ると、真ん中付近に王椀が見える。 それ以前の写真ではミツバチが群がっているので、見えていない。
 ソメイヨシノが満開になった「清明」の翌日、巣箱のミツバチは啓蟄のときと変わりがない。 寒い日が時々やってくる今日この頃、暖かい日には花蜜や花粉を運んでいるので、子育てが進んでいるとも思われるのであるが、見る限りでは数が増えているようには思えない。 昨年の初分蜂を記録した日から数日経っている。 遅れているのか。
 4月中旬。 昨年のこの時期、3回目の分蜂があった。 今年は未だに分蜂していない。 昨日、今日と強い北風が吹いているので、ミツバチは午前中には花粉をほとんど集めていない。 花蜜を持ったミツバチは、1秒に1匹程度の割合で飛んでくる。 午後になると、花粉を付けたミツバチが1分間に10匹程度に増えてくる。 見える範囲の巣板下部にいるミツバチも、以前より増えてきている。
 そのようなある朝、巣門の前に「白いもの」があった。 よく見ると ミツバチの蛹である。 眼が認められる。 何らかの原因で死んでしまったものを、巣箱の外まで運び出したのであろう。 軽いものであれば巣から離れたところへ運んでいくのであるが、これは一寸無理だったみたい。 巣箱の周囲を探しても、これ以外には、見当たらない。


 蜂玉として分蜂しているのを取り込んだ昨春から1年、冬を越せて春を迎えたミツバチ群であるが、これ以降、この蜂群は徐々に崩壊への道をたどっていくのである。 この続きは、「(11) 女王蜂の不調には」で。

(6)蜜蝋による誘引

ニホンミツバチの蜜蝋
(背景は蜜蝋提供者の
ホームページ画像)
 ニホンミツバチを飼育されている方から、蜜蝋の提供を受けた。 一般に出回っている蜜蝋はセイヨウミツバチのものであるので、ニホンミツバチの蜜蝋は貴重なもの(*27) である。
 その蜜蝋を、新しい巣箱の巣門周辺と箱の天井(天蓋の裏側)に、湯煎で溶かして塗った。 その箱を、何度も分蜂している巣の近くに設置した。 その巣は床下にあって、ハチは石組みの間から出入りしている。 10年以上前からの巣(*28) である。
 ハチの行動を見ていると、この箱には見向きもしない。 巣箱の近くまで飛んでいくミツバチもいるが、箱には留まろうともしない。 巣門周辺には蜜蝋が塗ってあるにもかかわらず、それよりも、どうも新品の巣箱が、良くないらしい。
 新しい木に含まれる虫を追い払う成分(*29) が、そこから徐々に発散しているようである。 そのため、ハチが近寄ることがないと思われる。
 この巣箱が古くなった時点で、この点を、再検証する必要がある。
 

(*27) 提供者には、心より厚く御礼申し上げます。

(*28) 例年になく猛暑の夏になった、 そのような夏のある日、床下の巣からのミツバチの出入りがないことに気づいた。 何日かの観察の後、慎重に床下を覗いたところ、ハチの巣  は「もぬけのカラ」になっていた。 蜂蜜も残っていない。 10年以上も巣くっていたミツバチが、あるとき、突然に消えてしまう。 何があったんだろうか。
 分蜂するとき、それまでの女王蜂は、働き蜂を引き連れて出ていってしまうという。 その巣には、生まれる寸前の女王蜂の候補が残される。 その女王蜂が脱皮すると、巣の上空高く飛びまわって、別のミツバチ群の雄蜂と交尾することになる。 その新しく生まれた女王蜂にとって、一番危険な場面である。 女王蜂の飛び方が素速いとは、とても云えないものである。 その女王蜂を捕食しようと狙っているものが、ツバメなど、多々いる。 また、それ以外の交尾行動中の事故によって、巣に戻れないこともあろう。
 それまで順調に産卵していた女王蜂が、死亡してしまったり、産卵できなくなってしまうこともあろう。
 このようにして、ハチの子が新たに生まれなくなってしまった巣では、その巣にいたハチの寿命にしたがって、徐々にハチの数が減少していく。 ハチの数が少なくなってしまった巣では、別のハチ群による攻撃に耐えられない。 貯蔵されている蜂蜜も、奪われてしまう。 そして、遂に、巣の亡骸となり果ててしまう・・・。
 この巣は、年に数回も分蜂していて、ニホンミツバチの群を得る絶好の場所であったのに・・・。

(*29) この成分を濃厚に含むのが、材木を蒸し焼きにして生じた蒸気を冷やして得られる「木酢液」である。 木酢液には虫よけ作用がある。
 製作したての巣箱を水に漬けておくと、大量の水にもかかわらず、水の色が茶色くなっているのが認められる。 この水に手を入れると、手が荒れてしまう。 このことから、新品の木材からは、水に浸漬することにより、相当量の含有成分が溶け出してきていることがわかる。 この過程で溶け出し切れなかった成分も、また、虫に作用することが考えられる。


出入り口

設置した巣箱
(左上にハチの出入り口)

巣門の前面

巣箱をニアミスする
ミツバチ

(7)キンリョウヘンによる誘引

開花直前のキンリョウヘン

キンリョウヘンの開花
 キンリョウヘンを入手した。 「池田錦」、「東亜錦」、「常磐錦」、「芙蓉錦」、「若松」とその原種株である。 品種により咲く時期に遅速があるようだが、その開花と分蜂時期が一致するかどうか、暗中模索である。 日本蜜蜂の科学 『北信流養蜂術』では、暖かい所に入れて1ヶ月で開花すると記述されている。 例年の分蜂は4月初旬から始まるので、上記のホームページに従えば、3月早々に温室に入れればよいことになる。 花茎が成育している過程で、その生育を更に促進することは温度管理を徹底してもかなり難しいが、生育を抑制することはやや温度の低い場所に移すことで可能となろう。 そこで、上記の時期よりも2週間だけ早く、温度18℃、湿度85%に保たれた温室に移すことにする。
 開花抑制をすることもなく、4月初旬、原種株を除く5つの品種とも、花が咲いてきた。 例年、初回の分蜂がある頃と一致している。 原種株も12月頃から数個の芽が見えてきたのであるが、そのすべては葉芽であった。 どれも同じ管理で育ててきたのであるが、このような差が生じてしまった。 蘭は難しい・・・。

巣箱にキンリョウヘンを
 キンリョウヘンの花を巣箱に備える方法として、開花した花茎を切り取って使うことがある。 目の届かない場所に置いてある巣箱の場合には安全であるし、キンリョウヘンの花をより多くの巣箱に備く必要があるときには便利な方法である。 ただ、この方法では、水を備えておいても花は10日程で傷んでしまうので、分蜂時期を厳密に把握しておかなければならない。 そこで、基本的には、開花したキンリョウヘンを鉢植えしたままで使うことにする。 タマネギなどを入れる網袋を用意して、その中に入れる。 それを吊り下げる形で、巣箱の横に取り付ける。 後日談であるが、初分蜂が4月下旬にずれ込んだので、鉢植えのままでの使用が正しい選択であったように思われる。 切り花で使ったキンリョウヘンは分蜂時期には萎びてしまっていたが、ミツバチを誘引する有効成分は残っていたようで、いくらかの探索蜂を呼び込んだようである。 閑話休題。 キンリョウヘンがない巣箱には、まったくミツバチが寄りついていない。 蜜蝋の塗布だけでは、誘引の材料にはなっていないようである。 キンリョウヘンの効果は、絶大である。

巣箱に入る探索蜂

巣門から外へ
 取り付けて10日間程、まったくミツバチの訪問はない。 ソメイヨシノが満開になって1週間が過ぎた。 無風の曇り空の下、探索蜂がやってきた。 数匹のミツバチが、巣門から中に入ったり出たりを繰り返している。 横にはキンリョウヘンが吊り下げられているが、それには見向きもしない。 キンリョウヘン誘引に関するホームページには、それを包む網一面にミツバチが取り付いているものがある。 探索蜂来訪の段階では、そのようにはならない・・・のか。 キンリョウヘンが探索蜂にどのように影響しているか、わからない。 夕方、薄暗くなるまで出入りを繰り返していたが、いつの間にかいなくなってしまった。 明日の予報は晴天なので、分蜂するだろうか。 この巣箱に、入って欲しい。
 同じ場所にある重箱の蜂群は、花蜜や花粉を盛んに集めてきている。 しかし、この蜂群が分蜂するようには、みえない。 近隣のミツバチが分蜂するということであれば、この後も、別のミツバチ群がやってくることが期待できる。

多くの探索蜂が巣箱へ
 今年最初の夏日になった翌日から数日間、最高気温が十数度で小雨模様の日が続いていたが、やっと20℃以上となる快晴の日となった。 4月も下旬になって、1回目の分蜂としては大幅に遅れているが、分蜂するのに最適な陽気である。 キンリョウヘンを吊り下げた巣箱には、昼前から数十匹のミツバチが訪れている。 その大部分のミツバチが巣門を入ったり出たりしているから、探索蜂に違いない。
 おおよそ4メートルの間隔で、8個の空巣箱を1列に置いてある。 そのうち、両端と中程の3つの巣箱にキンリョウヘンを吊り下げてある。 探索蜂は、その3つの巣箱には大いに興味を示しているが、その以外の巣箱を訪れることはない。 蜜蝋の塗布だけでは、探索蜂を誘引しないようである。 キンリョウヘンの効果が認められる。 キンリョウヘンの花は、探索蜂誘引の必要条件であることがわかる。 この花があっても、分蜂群が巣箱に入ってくれとは限らないが・・・。
 近所では、本日、柿の木の胸ぐらいの高さのところに蜂玉が観察された。 蜂玉の大きさからみて、旧女王蜂による初めての分蜂に違いない。 分蜂が始まったのならば、たくさんの探索蜂が訪れてきているこの巣箱にも、大勢の働き蜂とともに女王蜂を引き連れて来て欲しい。 ただ、夕方近くになっても、探索蜂ばかりが飛び回っている。 晴天でそこそこの気温になるという予報を信じて、明日に期待しよう。

多くのミツバチが
 初めて探索蜂が来てから、9日が経過した。 その間、雨がちの低温の日々が続いていた。 昨日から天気が回復し、気温も徐々に高くなってきている。 今日こそ分蜂が期待できる。 その期待に応えるように、午前中から多くの探索蜂が来ている。 働き蜂もキンリョウヘンに集まりだした。 その数、数百匹以上。
 正午前、突然、この巣箱のキンリョウヘンにとまっていたミツバチが飛びまわりだした。 10メートルほど離れた別の巣箱(この巣箱も開花したキンリョウヘンが縛り付けてある)にも、次第にミツバチが集まりだした。 これらの巣箱から飛び立って巣箱前面をウァンウァンと飛びまわっているミツバチで、辺りは騒然としてきた。
 この巣場で以前から営巣しているミツバチは、どうしているかと見てみる。 これらのミツバチは、辺りの騒然とした雰囲気とは対照的に、いつもの通りに花蜜や花粉を集めている。 雄蜂も、巣門付近にたむろしている。 我関せずと、普段通りの生活である。
 昼過ぎ、先ほどとは状況が一変して、巣箱前はシーンとしている。 最初にミツバチが集まっていた巣箱には、僅かなミツバチが残っているだけである。 もう1つの巣箱を見ると、多くのミツバチがキンリョウヘンにとまっている。 飛びまわっているミツバチは、もういない。 一部のミツバチは巣箱の中に入っているようだが、多くのミツバチはキンリョウヘンにしがみついている。 その数、おおよそ2千匹か。 いずれのミツバチもじっとしていて、歩き回ることもない。 静かにしている理由が、女王蜂が居ることによることからか、それともキンリョウヘンの影響によることからか、今のところ区別ができない。
 翌日夜明け前、多くのミツバチがかたまっていたキンリョウヘンをみると、ミツバチは僅か100匹程度に減っている。 巣箱の中を覗くと、余り多くはないがミツバチが塊をつくっている。 この巣箱のキンリョウヘンを外してしまうことにする。 キンリョウヘンの効果がなくなるので、女王蜂が不在なら、いずれ、巣箱の中のミツバチはちりぢりに出ていってしまう筈である。
 この日の昼間、働き蜂が花粉を運び込んでいるのを見つけた。 花粉運びから、女王蜂がこの巣箱にいて、この時点で産卵を始めようとしているという可能性がある。 産卵しているのであれば、親の女王蜂が分蜂してきたということになる。 長女、次女の分蜂ならば、交尾飛行の日数と成熟するための時間が必要であるから、巣作り直後に産卵することはない。 そうだとすると、2千匹程度の弱小の群れであるのが解せない。 分蜂直後に、何らかの理由で、女王蜂に従っていた働き蜂の大部分が元の巣に戻ってしまったということも考えられるが。 働き蜂の羽化は産卵後20日であるので、3週間も経過すれば判明する。 最初に探索蜂が来た巣箱は「重箱型」であったのに対して、こちらの巣箱は「巣枠式」であるので、直接、観察することも可能である。 なお、ミツバチが出入りするところは、出るときは巣門、入るときは「しのさんの「ニホンミツバチ日記」」で指摘されているように自然にできた板の節穴であることが、圧倒的に多い。
 この巣箱は、巣枠式の巣箱である。 これまでの蜂群は重箱型の巣箱に入っているので、巣枠式で営巣するのは初めてである。 巣枠式は、ミツバチの生態を直に観察することを目指して、また、少量多数回の採蜜を目的にして、このシーズンに向けて用意したものである。 その巣箱に、最初の年で入ってくれたのは、幸いである。 今後が楽しみである。

突然、飛びまわり

別の巣箱に集合

巣箱に入って2日目のミツバチ
(後足に花粉をつけている働き蜂)

(8)洞穴状の巣場

利用した貯水槽
(水捌けのために
底を抜いて)
 定常的にニホンミツバチの群を得るためには、ハチ群の供給源となる「安定した巣」があると良い。 そこは、蜜などを採取しないで、分蜂してくれることを目的とする。 そのような安定した巣をつくるための「巣場」を、設けることにした。
 ミツバチが長年にわたって床下に巣をつくっていることがあるので、それに近い環境を目指す。
 この目的に沿う場所として、農作業小屋の南側の軒下にある貯水槽(*30) を選んだ。 その貯水槽の大きさは、横幅40センチメートル、奥行90センチメートル、深さ60センチメートル程度で、厚さ10センチメートルのコンクリート造りである。
 貯水槽の壁が厚いので、外気温の影響は受け難いものと思われる。 数十年前から使っているので、セメントのアクは抜けきっている。 これの底は、排水のために、抜いておく。
 その貯水槽を頑丈な木箱でスッポリと掩って、「巣場」とすることにした。 「掩い」の高さは約30センチメートルで、貯水槽を含む巣場空間の高さは1メートル弱となっている。
 「掩い」の板を固定する枠は、新品の角材である。 古材の方が良いが、工作するときの強度の点で、新材を使った。 箱にする面の板は、多少の虫穴が見られるほどの古い野地板を、2枚重ねで使用した。 2枚の板を継ぐ部分を、上下の板で、ずらしてある。 全体の厚さは、25ミリメートルである。
 巣門は、東向きである。
 冬期には太陽があたるが、夏期には小屋の庇などによって朝方から夕方まで(*31) 日差しは遮られる。
 この「巣場」を、ハチが気に入ってくれることを期待している。
 

(*30) この貯水槽は、畑地の灌漑用に上総堀りを応用した『打ち抜き井戸』を掘ったので、不要になってしまった。 その再活用である。

(*31) この農作業小屋は、南面が20度ほど東に振っている。 真夏では、日の出は、小屋の東方向の延長線上であって、昼過ぎには太陽は北面側に移動してしまう。 農作業のための小屋であるので、庇が深く、このような太陽の動きもあって、直射日光による暑さ対策は、不要であると思われる。
 また、冬季では、日の出から日光が当たり、小屋の西方向延長線上で日没を迎える。 午前中に日光が良く差し込むため、昼前の早い時間帯に、温度の上昇が期待できる。 日差しがあれば、巣場は程良い温度になろう。


貯水槽上部の掩い
(裏返した状態)

貯水槽に設置した掩い
(巣門板がない状態)

設置した掩いの内部

巣門板
(掩いの開口部に固定)

貯水槽に設置した掩い
(側面)

(9)ミツバチの飼育履歴
 野生のニホンミツバチの飼育は、「蜂玉の捕獲」と「キンリョウヘンなどによる誘引」から始まる。 それだけでは飼育蜂群が限られてしまうので、「人工分蜂」を試みている。 その手法と結果は、後の項に詳述してある。 そのミツバチ飼育の詳細を、下図の「蜜蜂飼育の履歴」に示す。
 図中で、「捕獲」、「入居」、「人工分蜂」を示す『マーク』の位置が、それぞれがおこなわれた日時である。
 真夏での自然入居がある。 1ヶ月ほど営巣して巣枠式巣箱に3枚の巣板を残して 消滅した蜂群もあるが、そのまま営巣し続けている蜂群もある。 初春であれば蜂玉として捕獲の対象であったものが、この時期では、蜂玉を見逃してしまった結果であろうか。 この時期に分蜂した新しい蜂群であるか、何らかの事情で営巣していた蜂群が逃げ出して来たものかは、不明である。 ただ、数千匹もの比較的大きな蜂群であるので、定着すれば喜ばしいことである。
 晩秋での自然巣の捕獲が1回あった。 分蜂期でもないときである。 梨の枝にぶら下がっていた。 手が届く高さの位置に、当然、開放形で。 夏頃に巣を作り始めたということである。 その蜂群を巣ごと取り込み、巣枠式巣箱に入れることにする。 巣板を紐を使って巣枠に固定し、巣箱に収容した。 捕獲したミツバチは騒ぐこともなくすべて巣箱に入ったので、首尾良くいったものと思っていた。 しかし、数日を待たずに逃去してしまった。
 図に『マウスオンする(マウスのポインターを図上に置く)』と、「人工分蜂」の母系を知ることができる。 その詳細な系統図で、「赤色矢印」は、産卵巣板を提供した蜂群を示している。 また、「濃紺色矢印」は、養育のために導入した働き蜂の出身蜂群を示している。


蜜蜂飼育の履歴
(図上へのマウスオンで「人工分蜂」の母系を表示、クリックで拡大表示)


 「紫色」の帯線は重箱型巣箱での営巣を、「青色」は巣枠式巣箱を示す。
 「@」の矢印は、孫分蜂した蜂群の捕獲を示す。 分蜂元の蜂群が入居して、約1ヶ月後の分蜂である。
 「A」の矢印は、「人工分蜂」の際に、二次的に(副次的に)生じる蜂玉を形成する分蜂(人工分蜂を示す図の巣箱(t)の蜂群)を表し、矢印の先にその蜂玉を捕獲して得られた蜂群を示す。 この二次的な蜂玉形成を伴う分蜂の時期は、「新女王蜂」の羽化(ニホンミツバチの女王蜂では、羽化は産卵後15日目)を待って分蜂するので、「人工分蜂」の操作をしてから2週間後になる。 二次的な分蜂は、かなりの確率で見られる。 このとき、「人工分蜂」をおこなった巣箱で1群を、二次的な分蜂群の捕獲で更にもう1群をと、1回の分蜂操作で新たな2群を得ることも可能である。 分蜂する時がほぼ確定しているので、分蜂する瞬間を見逃さないように注意すれば捕獲の可能性が高まる。
 「B」の矢印の根元は台風による巣箱転倒での蜂群の逃去を、矢印先は逃去群の捕獲が示されている。
 暑夏も過ぎると、ミツバチは盛んに花蜜や花粉を集めてくる時期である。 巣箱を覗いてみると、巣箱は巣板とミツバチで一杯になっている。 貯蜜が増えていって蜂蜜で一杯になると、産卵する場所がなくなる。 後日、新しく生まれてくる働き蜂が減ってしまうことになる。 これが、蜂群がその後に衰退する原因や、元気に越冬する若い働き蜂が少なくなり春を迎えるまでに蜂群が消滅する原因になってしまう。 これに対応する方策は、2つある。
 採蜜するのが1つ目である。 巣枠のいくつかを取り出して、その巣枠全体から採蜜する方法である。 下部には産卵部分があるので、それを無駄にしてしまう欠点がある。 別法として、その巣枠の貯蜜部分だけを、ナイフを使って切り取ってしまうやり方である。 このとき、注意して巣板の貯蜜部分を切り取らないと、残した巣板が、巣枠から外れてしまうことになる。 切り取って穴の開いた巣枠を巣箱に戻してやれば、その穴に新たな巣板をつくり直す。 産卵するのは新しい巣板でなければならないが、その場所を提供することになる。 この別法が、優れているように思う。
 別の方策は、巣箱を追加して、産卵巣板のための空間を提供することである。 ただ、巣枠式巣箱を追加するとなると、重箱2個分の増加になる。 「玉川大学ミツバチ科学研究センター」では「「ミツバチの病気と対策」の「病気の対策」部分で『ミツバチは厚く飼え』」と、 また、別のホームページでは「2011年9月30日付けの記事で『蜂群の維持には箱からあふれ出るくらいの蜂がいたほうががちょうどいい』」としていることから、 巣箱を無闇に増やしすぎることは適当ではない。 追加するにしても、重箱1個分が好ましいだろう。
 採蜜を兼ねて巣箱に産卵場所を確保するため空きスペースをつくるには前者の「別法」が好ましいし、営巣している蜂群の数が少なくてできるだけミツバチが逃去しないことが望まれるときは後者の方法が適している。 そのため、巣作りが進んでいけば、もう1段分の重箱を加える。 巣板がこの重箱型の箱2段を満たせば、これ以上巣箱を積み重ねると不安定になるので、そのときは、上部の巣枠式の巣箱を外して採蜜することになる。
 「×」印はその蜂群が失われたことを示し、その位置が失われた日時である。 飼育直後に逃去してしまうだけでなく、2ヶ月以上もの間巣作りと安定した産卵・育児をしている思われていたミツバチ群がある日突然いなくなるということが起こる。 その結果、最終的なミツバチ群は、期待に反して少数になってしまう。

(a) ミツバチ群が逃去してしまう最大の原因として、積極的に「人工分蜂」を試みた結果であるかどうかを見てみる。
 「人工分蜂」は、ミツバチに大きな刺激を与えるので、逃去の原因である可能性が大きい。 それには、「人工分蜂」をおこなった時期と、「蜂群逃去」の時期に、同時性があるかどうかを見比べることで判明できる。 図上にマウスオンすると、双方の時期には、大きなズレがあることが分かる。 このことから、「人工分蜂」の操作によっては、蜂群が逃去してしまうということはないと言える。

(b) 巣箱形式の違いで、ミツバチがいなくなる期間に差があるかどうかを見てみる。
 越冬した蜂群及び捕獲して10日以内で逃去した群を除いて、重箱型巣箱の平均営巣期間は2.7ヶ月、その標準偏差は0.9ヶ月である。 同様に、巣枠式巣箱では、2.2ヶ月、1.1ヶ月である。 営巣期間のバラツキ(標準偏差)は、ほとんど違いがない。 そのバラツキを考慮すると、双方の平均営巣期間に有意差はないといえる。 無理に差をつけると、重箱型巣箱の方が長いといえるが・・・。

(c)「巣虫」が、蜂群が「逃去」する際、どの程度係わっているかを見てみる。
 蜂群を失う現象を分類すると・・・ これは「逃去」とは違うが、女王蜂の不調などによって、長い時間をかけて徐々にミツバチが減少していって蜂群が崩壊してしまうことがある。 ミツバチが「アカリンダニ」に感染した場合も、このような崩壊の経過をたどる。 崩壊後の巣箱には、巣虫は「巣箱の隅」に巣くっているだけではなく、蜜蝋でできている「巣板」の中にも潜んでいる。 当然のことながら、その数は尋常なものではない。 この場合は、ミツバチの勢いが弱まってしまって巣虫を排除できなくなった結果であろう。 「巣虫」の繁殖が蜂群崩壊の引導を渡したということはあったとしても、その崩壊の引き金を引いたとは、当然ながら、考えられない。
 もう1つは、「逃去」により蜂群が消えてしまう現象である。 巣板にある蜂蜜を腹一杯に溜め込んで、突然に、新しい巣を目指して集団で飛び出してしまう行動である。 空になってしまった巣箱に、「巣虫」がどの程度、巣くっているのだろうか?  重箱型巣箱にあっては、巣虫をほとんど見ない。 巣枠式巣箱の場合には、巣虫が見られることがある。 その場合には巣箱の隅に巣くっている。
 さて、巣虫が、ミツバチが営巣中の巣箱に入り込んで、卵を産み付けることはあるだろう。 その産み付けられた卵は、巣箱に落ちている巣板片やゴミと同じように、ミツバチにとって除去の対象となるはずである。 その卵を見つけたミツバチは、ただちに、それを除去・排除しようとする。 重箱型巣箱では、たいていの巣虫の卵は露わであるので、それらの卵はミツバチによる排除の対象になってしまう。 しかしながら、巣枠式では「巣枠」によってできる隙間が多い。 その隙間の陰に産み付けられた卵を取り除くことは困難であるので、それらの卵は排除されずに残されてしまう。 後日、残された卵はやがて孵化し、幼虫として隙間から這い出してくれば、ミツバチがそれを取捨ててしまうことになるが・・・。
 「逃去」のトリガーとして、「巣虫」の存在があるか?  「巣虫」の繁殖が先で、それを嫌ってミツバチが「逃去」してしまうとする過程を想定してみる。 そのときは、巣枠式巣箱の営巣期間は、逃去後にも巣虫がいない重箱型のそれよりも短くなるはずである。 実際には、双方の平均営巣期間の差は大きくない。 その過程によって逃去したとは、考え難い。 大抵の場合、ミツバチの「逃去」が先であろう。 その結果、「ミツバチによる巣虫の卵や幼虫の排除」がおこなわれなくなる。 「逃去前には巣箱の隙間に巣虫の卵が隠棲していた可能性の高い巣枠式の方に、逃去後の巣箱に多くの幼虫を見つける機会が大きい」ことが納得できる。 すなわち、蜜蜂が「逃去」する起因として、「巣虫」はほとんど係わっていないといえる。

(d) ミツバチ群を得る時期と方法を見てみる。
 捕獲などで得たミツバチ群の総数に対して、その月中にどれだけの群を得たかの割合を、人工分蜂によらないものを「薄い緑色の棒グラフ」で、人工分蜂とそれに付随するものを「濃い緑色の棒グラフ」で、それ以外の原因によるものを「黒緑色の棒グラフ」で示す。 人工分蜂とそれに付随するものとしては、「人工分蜂」と「人工分蜂によって複数の女王蜂が誕生することに伴う分蜂」がある。 後者は、人工分蜂の操作をしてからおおよそ2週間後に起きる分蜂である。
 4月と8月および5月の一部は、自然分蜂したものを蜂玉として捕獲したり、キンリョウヘンや誘引剤を使って誘引したもの、自然に巣箱に入ったものである。
 その後の5月、6月に得た蜂群は、人工分蜂による増群と、それに伴う蜂玉分蜂を捕獲したものである。 人工分蜂の操作によって入手できる蜂群の全体に占める割合は、高い。 人工分蜂が重要である。
 10月の捕獲は、特別なケースである。

(e) ミツバチ群を失う確率が高い時期・季節があるかを見てみる。
 その確率を、月初めに営巣していたミツバチ群が、その月中にどれだけの群を失うかの割合で示すことにする(*32) 。 ただし、捕獲して10日以内で逃去した群は、季節とは関係のない逃去であるので、計算に入れないことにする。 月初めは捕獲前である蜂群で、その月を10日を越えて営巣していれば、その群は月初めの営巣蜂群数に加えることにする。 下図「月別蜂群の亡失」中に、その割合を「だいだい色の棒グラフ」で「月別亡失割合」として示す。
蜂群の捕獲と亡失                                        
緑色:その月に得た蜂群の割合(月別捕獲割合)                      
 (注 薄い緑色:人工分蜂によらないもの  濃い緑色:人工分蜂によるもの  黒緑色:その他)
だいだい色:その月に亡失した蜂群の割合(月別亡失割合)                 
 (注 月別亡失割合の合計が100%にならないのは、それが月ごとに計算しているためである。)

蜂群の残存                                           
赤色折線:新しい蜂群の補充がないと仮定すると、月別亡失割合に応じて、蜂群が減少していく。
 年初の1月1日に100%の蜂群がいるとして、新しい蜂群の捕獲がないときに、      
 それぞれの月初めの時点で残存している蜂群の計算値(蜂群残存曲線)           

 4月以前と10月以降の「月別亡失割合」は"零"である。 7月〜9月の月別亡失割合が大きい。

(f) 一年を通して逃去などによって蜂群がどのように減少していくかを見てみる。
 実際に多くの蜂群を失ってしまったとの感じ方から見ると、「月別亡失割合」には、多少の違和感を持ってしまう。 営巣している蜂群が少なくなっている秋口で、その割合が大きくなっているからである。 蜂群を失って飼育群が減っていく状況を、もう少し適切に示したい。 そこで、ミツバチ群を新たに捕獲しなかったと仮定して、年の初めにいた蜂群の数が、どのように減少していくかを計算してみる(*33) 。 その計算結果を「赤色の折れ線グラフ」で「蜂群残存曲線」として示す。
 秋口に数少ない営巣群から更に蜂群を失うというダメージは大きいが、それの影響は大きくないことが分かる。 影響の大きい時期に逃去などを防いでおけば、多くの蜂群を年末まで持って行くことができることを示している。 実際の営巣蜂群数を見ているだけでは認識できなかったことである。 その認識を妨げていたのは、捕獲や人工分蜂による飼育蜂群の増加と逃去などによる減少が錯綜しているからである。 大幅に減少してしまう要注意の時期があって、その時期での対処法を考えなければならない。
 1つ目の時期には、「孫分蜂」によって「分蜂元の巣箱」で羽化した「女王蜂の候補」が不健康であったり交尾飛行において事故に会うなどで、分蜂元の巣箱で新しい女王蜂が失われてしまうことがある。 女王蜂の不在を感じ取った蜂群は、若齢幼虫を変成王台内で育てて「女王蜂」を「産み出す」。 そのために必要な若齢幼虫を確保できなければ、その群は崩壊することになる。 初夏の急減は、そのようなことが起こる期間に相当する。
 暑さの盛りの季節も、蜂群を失う時期である。 暑さによって、蜜源が少なくなっている。 蜜源を求めて新天地に向かって飛び去ってしまうこともあろう。 水田では、稲が開花を迎える時期である。 「ニカメイチュウ」や「ウンカ類」の防除のために、殺虫剤の空中散布が頻繁におこなわれる頃でもある。
 前者は「孫分蜂」を防ぐことで、後者はこの時期に開花するニホンミツバチが好む蜜源植物を蜂場の近くに用意することで、より多くの蜂群を年間を通じて飼育できる可能性がある。
 

(*32) ある月に、9群が営巣していて7群を失うとすれば、
  その月の「月別亡失割合」[%]
=(その月に失った蜂群の数 / その月の初めに営巣していた蜂群の数)× 100 [%]
=(7 / 9)× 100 [%]
で、その月の月別亡失割合は「78%」となる。
 ただし、
(1) 捕獲して10日以内で逃去した群は、割合の計算から除外すること
(2) ある月に捕獲した蜂群で、その月を10日を越えて営巣している蜂群は、月初めから営巣している蜂群として、割合の計算に加えること
とする。
 たとえば、ある月の25日に捕獲した場合では、その月での営巣期間が10日を越えていないので、計算には入れない。 しかし、ある月の12日に捕獲した群は、その月の「営巣していた蜂群数」に、この蜂群を加える。 その蜂群が12日に捕獲して25日に逃去すれば、「営巣していた蜂群数」に加えるとともに「亡失した蜂群数」にも算入する。 もし、その月の20日に逃去してしまった場合には、この蜂群は10日以内で逃去してしまったので、「営巣していた蜂群数」にカウントしないとともに「亡失した蜂群数」にも入れない。

(*33) 5月1日現在の蜂群残存値が100%であって、その5月中に29%の蜂群が亡失したとすると、
  ある月の1日時点での「蜂群残存値」
= 先月の1日時点での「蜂群残存値」 [%] ×( 1 − 先月の「月別亡失割合」 [%] / 100 )
として計算できるから、
  6月1日時点での「蜂群残存値」
= 5月1日時点での「蜂群残存値」 [%] ×( 1 − 5月の「月別亡失割合」 [%] / 100 )
= 100[%] ×(1−29[%]/100)
から、6月1日時点での蜂群残存値は「71%」となる。 同様に、7月1日の蜂群残存値が67%で、その7月中に40%の蜂群が亡失したとすると、
  8月1日時点での「蜂群残存値」
= 7月1日時点での「蜂群残存値」 [%] ×( 1 − 7月の「月別亡失割合」 [%] / 100 )
= 67[%]×(1−40[%]/100)
から、8月1日には「40%」になる。


(10)蜜蜂飼育届を

蜜蜂飼育届書
 重箱型巣箱を使って採れた蜂蜜を販売しない場合に限って、蜜蜂飼育届の提出が不要の県がある。 巣枠式巣箱を使っていれば、提出しなければいけないが・・・。 ニホンミツバチの飼育で重箱型巣箱と巣枠式巣箱で届出義務の有無が分かれてしまう規則が、どのような理由により決められてしまったかを納得できる説明は示されていない。 重箱型であるとそれを開けて病気の有無を観察できないから、除外してしまったということか。 重箱型巣箱にいるニホンミツバチの病気の有無を検査したいから「ミツバチを取りだしてくれ」と言われても、手荒なことをすると逃去の原因になってしまう・・・ので、それは勘弁して欲しいということか。
 規則に従って、蜜蜂飼育届を提出することになった。 それは、蜂蜜を販売することはないとしても、巣箱として巣枠式を使っているので、どこの都道府県の規則であっても、蜜蜂飼育届を出さなければならないからである。 この「届出」は法律により決まっているが、その内容は都道府県により異なっている。 現時点(*34) で、一部の都道府県では次のようである。 ただし、表内に示されている事項は過年度の情報であって、既に変更されている可能性がある。 この表によって「居住している都道府県が違えば、『届出の内容にかなりの相違がある』ことを実感できる」ことを目的にして掲載してある。
 提出する前に、お住まいの都道府県のホームページの最新情報を確認してください。
都道府県     年初に必要な届出書類      重箱型巣箱 
だけで飼育、
蜂蜜を自家
消費する時、
飼育届を提出
する必要性
 ホームページ上での 
届出用紙の
ファイル形式
備考
愛知県 「蜜蜂飼育届・飼育変更届」 不要 Excelファイル
青森県 「蜜蜂飼育届」 pdfファイル
石川県 「蜜蜂飼育届」 必要 pdfファイル
茨城県 「蜜蜂飼育届」 必要 pdfファイル
Wordファイル
愛媛県 「蜜蜂飼育届」 必要 pdfファイル
一太郎ファイル
Wordファイル
大分県 「蜜蜂飼育届・飼育変更届」 必要 Wordファイル
大阪府 「蜜蜂飼育届」
「飼育場所周辺の地図」
条例によって
必要
Wordファイル
pdfファイル
岡山県 「蜜蜂飼育届(蜜蜂飼育変更届)」 必要 pdfファイル
Excelファイル
備考欄に「蜜蜂の種類」
香川県 「蜜蜂飼育届」 必要 Wordファイル
pdfファイル
Excelファイル
「蜜蜂の種類」と「蜜源植物」
神奈川県 「蜜蜂飼育届」 必要 pdfファイル
Wordファイル
備考欄に「目的」や「蜜蜂の種類」など
岐阜県 「蜜蜂飼育届・蜜蜂飼育変更届」 必要 Wordファイル 「蜜源」の記載
京都府 「蜜蜂飼育届」
「別紙・参考事項」
必要 pdfファイル 参考事項に「蜜蜂の種類」や
「飼育の目的」、「蜜源」など
熊本県 「蜜蜂飼育届」 不要 Wordファイル
pdfファイル
ニホンミツバチについて付記
群馬県 「蜜蜂飼育届・飼育変更届」 必要 pdfファイル 「蜜蜂の種類」
高知県 「蜜蜂飼育届」 不要 Wordファイル
埼玉県 「蜜蜂飼育届」 必要 Wordファイル
pdfファイル
佐賀県 「蜜蜂飼育(変更)届」 必要 Wordファイル 月ごとの飼育記録
滋賀県 「蜜蜂飼育届」 pdfファイル
Wordファイル
静岡県 「蜜蜂飼育届・蜜蜂飼育変更届」 必要 Wordファイル
島根県 「蜜蜂飼育届」 必要 pdfファイル
東京都 「蜜蜂飼育届出書・飼育変更届出書」 必要 pdfファイル
Wordファイル
徳島県 「蜜蜂飼育届・飼育変更届」 必要 pdfファイル
Excelファイル
「蜜蜂の種類」や「用途」
鳥取県 「蜜蜂飼育届・飼育変更届」 必要 Wordファイル 「蜜蜂の種類」と「蜜源」の記載
富山県 「蜜蜂飼育届」 必要 Wordファイル 「蜜蜂の種類」の記載
長崎県 「蜜蜂飼育届」 Word(rtf)ファイル
長野県 「蜜蜂飼育届・蜜蜂飼育変更届」 必要 pdfファイル
Wordファイル
「蜜蜂の種類」
奈良県 「蜜蜂飼育届」 必要 Wordファイル 「蜜蜂の種類」
「採蜜」か「交配」かの用途
「巣箱内の観察」の可・不可
「蜜源」
兵庫県 「蜜蜂飼育届」 必要 Wordファイル
広島県 「蜜蜂飼育届」 必要 Wordファイル 備考欄にニホンミツバチの旨記入
福井県 「蜜蜂飼育届・飼育変更届」 必要 Wordファイル
福岡県 「蜜蜂飼育届」
「添付書類(土地仕様承諾・見取図)」
必要 pdfファイル 「蜜源」の記載
福島県 「蜜蜂飼育(変更)届」 pdfファイル
北海道 「みつばち飼育届」
「蜂群設置場所図面」
必要 Wordファイル
三重県 「蜜蜂飼育届」 不要 pdfファイル
宮城県 「蜜蜂飼育届」 必要 pdfファイル
Wordファイル
一太郎ファイル
宮崎県 「蜜蜂飼育届」 不要 Wordファイル
pdfファイル
山形県 「蜜蜂飼育届・飼育変更届」
「巣箱設置場所図面」など
必要 ZIPファイル 「蜜蜂の種類」や「飼育の目的」など
山口県 「蜜蜂飼育届」 必要 pdfファイル 「蜜蜂の種類・用途」
山梨県 「蜜蜂飼育届・飼育変更届」
「飼育状況調べ」
「生産状況調べ」
必要 Wordファイル  
和歌山県 「蜜蜂飼育届」
「飼育場所地図」
必要 pdfファイル 飼育計画には設置している「巣箱の数」

 趣味でミツバチを飼っている(重箱型の巣箱を使って、得られた蜂蜜の全量を自家消費する)場合に、届出をまったくしなくても良い所から、蜜蜂の種類・飼育目的・蜜源などや周辺地図の届出が必要な所まで、いろいろである。 業としてミツバチを飼育しているか、趣味として飼っているか、届出書の記入内容からその区別を判断できない都道府県もある。
 従来は養蜂業者向けであったのを今回の法改正によってそれを流用している蜜蜂飼育届書では、趣味などで飼育している場合に記入しようとすると、首を傾げることがある。 たとえば、
(1)ミツバチの種類を記入する欄がない場合がある。 以前であれば、そのほとんどがセイヨウミツバチであったから。 病気に対する抵抗性や生態、性質などが違うので、区別すべきであろう。
(2)「蜜源」を記入する欄が設けられている場合がある。 養蜂時期と蜜源植物は密接に関連しているが、ニホンミツバチでは採蜜する間隔が長いので多数の蜜源植物が係わっている。 蜜源が不明な場合も多い。
(3)飼育群数の記載が固定されている。 セイヨウミツバチでは人工的な増殖技術が確立しているので、手持ちの巣箱の数に従って計画的に蜂群の数をコントロールできる。 ニホンミツバチでは、それが流動的であることが多い。 蜂群の入手法はそのほとんどが自然群の捕獲であって、その捕獲数は確約されたものではない。 人工的な増殖もできるが、セイヨウミツバチでおこなわれているような確実な方法では、ない。 ニホンミツバチに関して「規則」に忠実に従うと、蜜蜂の捕獲や逃去毎に、頻繁な「蜜蜂飼育変更届」の提出が必要になろう。 ニホンミツバチの蜂群の導入方法やそれが逃去してしまう性質を考慮すると、「蜜蜂飼育計画」表中の「飼育蜂群数」への記入は「『和歌山県』の届書の注意書きにあるように、営巣している蜜蜂群の数ではなくて、設置している「巣箱の数」によって示す」ことが好ましいといえる。 設置してある巣箱の数を届出するのであれば、設置する巣箱を増やさない限り「蜜蜂飼育変更届」の提出が不必要となる。 届出書から、飼育蜂群の最大数は把握できる。 ニホンミツバチの生態とその飼育の実態に長けている人材を、県はその担当者に任命していると思われる。
 この法改正で、趣味の養蜂に網をかけた都道府県では、届出数が1桁以上増えたことと思われる。 その中には養蜂業者の何百群から趣味の1群までが含まれていることになる。 役所でのデータ入力も膨大になってしまうし、そのすべてを実地踏査することは現実的ではないだろう。 では、この膨大なデータをどのように活用するつもりか。
 そのなかで、「『大阪府』のように「蜜蜂飼育の20メートル規制(大阪府蜜蜂の飼育の規制に関する条例第五条第一号大阪府蜜蜂の飼育の規制に関する条例施行規則第六条第二項)」と連動する」のであれば、それの全容を掴むために、この届出の制度が有効に働くはずである。 各地で、道路脇の崖上に(地権者である国や県などの許可が得られているかは不明であるが、大阪府内であれば「20メートル規制」に抵触する)巣箱が置かれているのを見ることがある。 そのようなことを防ぐことでミツバチに対する市民の反発を抑制できるであろう。 「ミツバチ」と「アシナガバチ」の性質の違いを、まったく区別できない市民の・・・。
 奈良県では、「蜜蜂の種類」や「採蜜」か「交配」かの用途、「巣箱内の観察」の可・不可、「蜜源」を記入するようになっている。 従来の制度であれば、ほぼセイヨウミツバチであって、巣箱は巣枠式であるので、「巣箱内の観察」ができることは自明であったはずである。 そこに、巣箱内の蜂の観察ができるかどうかの項目を加えるという工夫が見られる。 ニホンミツバチでは「蜜源」を特定できないが、業者も使用する届書であるので、この項目を削除できなかったということか。
 各都道府県の対応をホームページで見ていると、取り組みへの濃淡が透けて見える。 法律が改正されたことで、それ以前につくられていた様式をそのまま使って済ませてしまおう・・・から、趣味の蜜蜂飼育が含まれるようになったことで従来の書式では把握しきれない「用途の多様性」や「蜜蜂の種類」に対応しよう・・・まで。 ファイルが「Word」か「Excel」であると、届出を提出する側からは、即座に記入でき電子ファイルとして保存しておける利点がある。 「pdfファイル」では手書きによる記入になり、手元に残しておくためにはコピーしなければならない。 受理した担当者は、届書をバインダーに綴じ込んで、それで終わり・・・?  役所から年末に届いた飼育届の提出を促す封書の宛先が手書きであるところをみると、その可能性が大きい。
 「愛知県のように「Excelファイル」を使ってネットワーク上でデータの受け渡しをする」ことで、担当者が「Excel」の『マクロ命令』や『VBA』を使って自動的に集計できるメリットが生かせる可能性がある。
 

(*34) 2015年時点で調査した各都府県のホームページであるが、キャッシュによる過年度の情報を拾っているものが含まれている可能性がある。


(11)女王蜂の不調には

女王蜂が不調な巣箱
(重箱型)

巣屑のある巣門前
 重箱型巣箱で越冬していたミツバチの調子が、よくない。 巣箱から相当に離れていても、ヒトをめがけて飛んでくる。 そこを離れても、執拗に追いかけてくる。 ミツバチが荒れている。 巣箱の前にも、巣屑が一杯捨てられるようになってきた。 女王蜂が弱ってしまったか、死んでしまったのか。
 今のところ、働き蜂の数は多い。 しかし、寿命を迎えることで徐々に減っていくことだろう。 多くの働き蜂が元気なうちに、新たな女王蜂を何とかしたい。 女王蜂が羽化するまでに、卵の産み付けから15日の時間が必要である。 今頃の働き蜂の寿命が1ヶ月程度とすると、残り時間はそんなに多くない。 急いで処置しなければならない。

巣箱の内部

崩れ落ちた巣板

ハチノスツヅリガの幼虫
 巣箱を開けてみる。 「巣虫(ハチノスツヅリガの幼虫)」の巣窟である。 晩秋の時点で大量の蜂蜜があったのであるが、それがほとんど存在しない。 越冬中に消費した分もあろうが、この所のミツバチの不調で、それを食い尽くしてしまったということであろう。 巣虫の存在は、その状況を更に悪い方に持っていったということか。
 この状態の巣で、そこにいる大量の働き蜂を有効に利用するために考えられる方法として、この巣箱自体をそのまま使うことは不可能である。 この巣箱は放棄せざるを得ない。 残っている巣板は「蜜蝋」にする。 できれば、この巣箱の働き蜂を利用して、新たな「女王蜂」を誕生させたい。

不調な女王蜂を持つ蜂群を
そこにいる働き蜂を使って健全群にする手法


@:産卵巣板を新しい巣箱(s)に入れ      
A:不調な女王蜂の巣箱(d)を別の場所に移し  
B:巣箱(s)を、不調な女王蜂の巣箱(d)の位置へ
C:巣箱(d)にいる働き蜂を追い出すと、    
  元々の位置に置いてある巣箱(s)へ向かって 


 王台、王椀がない厳しい状況で、新しい女王蜂を誕生させ得る方法が、「山都町・清和高原の四季(*35)」において紹介されている。 しかも、この方法が分蜂最盛期を過ぎた6月の上旬から下旬にかけての時期において試みられている。 どちらかというと女王蜂誕生が盛んな時期ではないにも係わらず、このような厳しい状況下での働き蜂による女王蜂誕生の営みは衰えていないようである。 いうことで、今回の状況を改善するために、そこに述べられている手法の応用を試みる。
 その方法の概要を、左図に示す。
 健全群が営巣している巣箱にある産卵されている巣板を取り出して、新しい巣箱(s)に入れる。 不調な女王蜂が営巣している巣箱(d)を、別の場所に移す。 産卵巣枠の入っている巣箱(s)を、不調な女王蜂が営巣している巣箱(d)が置いてあった場所に移す。 巣箱(d)にいる働き蜂は、今までの巣箱の位置に戻ろうとするので、新しい巣箱(s)に入っていく。 新しい巣箱(s)には女王蜂がいないので、入って来た働き蜂は、そこの巣板に産み付けられている卵から女王蜂を誕生させるために変成王台をつくる・・・。 健全群の卵から誕生した女王蜂であるので、元気なものであることが期待される。

使用した産卵巣枠

産卵部分

(拡大)

巣箱に入れた産卵巣枠
 先ず、ミツバチの卵が生み付けられた巣板を、調達することから始める。 上に紹介しているホームページでは、重箱型巣箱から卵のある巣板の部分を切り取って利用している。 この方法は乱暴であるので、ミツバチが逃去してしまう可能性がある。 手元にある重箱型巣箱で営巣しているミツバチは、巣箱に入って1ヶ月ほどであり完全に定着しているとはいえない。 巣板の切り取り法は、避けたい。
 1ヶ月ほど前に、キンリョウヘンを使って1群のニホンミツバチを巣枠式巣箱に取り込んでいる。 この巣箱の巣枠が、利用できることを期待したい。 通常、ニホンミツバチを巣枠で飼育すると、巣板が巣枠から外れてつくられることがある(*36) という。 そうであれば、できるだけ静かに巣枠を巣箱から取り出すということは困難になる。 ミツバチを驚かすと、巣作りをし始めてから1ヶ月程度であるので、この巣箱からミツバチが逃去してしまう可能性が大きくなってしまう。 静かに、静かに、慎重に巣枠を取り出しにかかる。 幸いなことに、この巣箱では巣板は巣枠に沿って真っ直ぐにつくられていた。 隣の巣枠の方に張り出すなどの障害もなく、巣枠を巣箱からスムーズに取り出すことができた。 「下垂保持板」の下端が細くなっていることによる効果であろうか。
 適度な数の卵が産み付けられている巣枠があるので、この巣枠のミツバチの卵を使って、女王蜂を生み出そうということである。 この巣枠そのものを、空の巣枠式巣箱の中央の巣枠と入れ換える。 参考にしているホームページでは、巣板を適切な大きさに切り取って「桟」に取り付けることになるが、ここでは巣枠1枚を入れ換えるだけである。 巣枠を入れ換えた巣箱を、不調な女王蜂がいた巣箱が置いてあった場所に置き直す。 いわゆる「戻り蜂」が、この入れ換えた巣箱に入って、そこの巣枠に生み付けられている卵を女王蜂になるように育てる。 厳密には、「戻り蜂」の利用では花蜜を集めにいった働き蜂が新しい巣箱に入ることになるが、この場合にはすべてのミツバチが対象となる。
 

(*35) 「庭で日本蜜蜂を・・・山都町・清和高原の四季」の2013年6月7日付けの記事にある 「上桟式重箱法」である。 ここで紹介されている方法は、重箱型から重箱型巣箱への人工分割法である。 重箱型巣箱内で産卵されている巣板の部分を、手のひら程度の大きさで切り取る。 その巣板部分を紐などで桟にくくりつけて、重箱型巣箱の上部にその桟を固定する(上桟式)。 育て親となるミツバチの巣箱を離れた位置に移して、その元の位置に「上桟式の重箱」を置く。 外に出ていた働き蜂は、元の位置に置いてある「上桟式の重箱」に入っていく(戻り蜂)。 その戻り蜂により「変成王台」がつくられ、女王蜂の誕生に至る。

(*36) 「日本蜜蜂の科学 - Yahoo!ブログの2014年5月19日(月)付け記事には、 『 ・・・自然入居した蜂群に巣枠を入れてそのまま増巣させると、結構な割合で巣枠同士をまたぐような巣を作ってしまう。 昨日の内検でも3群中2群において、巣枠に対して30°ほどずれた角度で増巣したために隣の巣枠に巣盤がまたがってしまっていた。 捕獲から3日目の蜂群にも巣盤に歪みがあったので、結果として3群全部について巣盤整形をする事となった・・・ 』 とある。 ニホンミツバチは、往々にして巣枠をまたぐような形で巣を作ってしまうという。 巣枠に「巣礎」を張るのは、これを防いで巣枠に沿った巣板を形成させるためである。 ただ、自然状態でミツバチを巣箱に導入する場合、巣礎の存在は自然導入に対してマイナス要因になるので、巣礎なしにすることが多い。

 

手前にある解体した重箱型巣箱と
向こう側に置いてある新しい巣枠式巣箱

(巣枠式巣箱には産卵巣板を挿入)

解体した重箱型巣箱から出てきた働き蜂が
取り付いている新しい巣枠式巣箱の前面

解体した巣箱からの働き蜂による
小さな蜂玉も
 不調な女王蜂がいる巣箱を、数メートルほど離れた位置に移動した。 その移動した巣箱が元々あった場所に、新しい巣箱を置く。 新しい巣箱は巣枠式である。 その巣箱には、別の巣枠式巣箱から取り出した産卵されている巣板が付いた巣枠の1枚を、中央部分に入れてある。 それ以外は空の巣枠である。 古い巣箱を解体する。 それによって、その巣箱にいたミツバチは辺りを飛びまわり始める。 やがて、そのほとんどのミツバチは、元の位置に置いてある新しい巣箱に入っていく。 しかし、ミツバチの中には、新しい巣箱の下部に留まっているものもいる。 近くの柿の木に、小さく蜂玉(*37) をつくっているミツバチもいる。 女王蜂の不調は、斯くして、ミツバチに統制のない行動を取らせてしまう。 同様に、挑戦的なミツバチの存在も継続している。 まだまだ、油断が出来ない。
 新しい巣箱に入っていったミツバチ(「戻り蜂」)が、そこにある別の女王蜂が産んだ卵を利用して、その卵がある巣穴を「変成王台」に作り変え、そこに充分なローヤルゼリーを与えることで新しい女王蜂を誕生させるという。 これがうまくゆけば、15日後には新しい女王蜂が誕生することになる。 この方法で女王蜂が誕生すれば、統制ある行動が出現し、挑戦的なミツバチがいなくなってしまうだろう。 女王蜂誕生のサインになる。
 

(*37) この小さな蜂玉は、次第にミツバチの数を減らしながら縦に細長く伸びていって、4日後に消滅してしまった。 このように、蜂玉がある程度の安定性を持っていたのは、この時点で、女王蜂が生存していたということか。 そうであっても、蜂玉のミツバチ数が少なすぎるので、新しい巣を見つけ出して移動するに至らなかったということか。 分からないことが多すぎる。

 

13日目の巣板(表と裏)
 この巣箱に巣枠を入れてから13日目である。 女王蜂は、卵として生み付けられてから15日目で羽化する。 そろそろ羽化する筈である。 働き蜂が盛んに出入りしているので期待できるが、花粉をほとんで運び込んでいないことが不安材料である。 巣枠を取り出して、調べてみることにした。
 取り出した巣枠(左側の写真)を見ると、巣箱に入れたときの巣板(左側上方の使用した産卵巣枠として掲載されている写真)と変わりがない。 巣板を広げていない。 両面を見ても、「変成王台」が見当たらない。
 「戻り蜂」として巣箱に入っていったミツバチの数は、少なくなかった。 しかし何故か、それらの働き蜂の間に、女王蜂がいないことを感じ取って「変成王台」をつくり次期女王蜂を誕生させようという行動を引き起こす「駆動力」が希薄になってしまった(*38)・・・ということか。 当初に卵が入っていた巣穴は、その中にあるはずの幼虫や蛹などはなく、空っぽである。
 そうかといって、この巣穴に「働き蜂産卵」があるかというと、その痕跡もない。
 

(*38) このような状態のミツバチが「変成王台」をつくることがないことは、既に、2007年に指摘されていた。 「日本蜜蜂の科学 - Yahoo!ブログ(2007/3/27(火))」で、 『 ・・・日本蜜蜂は無王群になりしばらくすると、「1室に20卵」というような激しい働蜂産卵に陥る。 そして更に日にちが経つと働蜂産卵の産卵数が減少して「1室に1〜3卵」となる。 この「1室1〜3卵」という状態は働蜂産卵の末期症状で、巣内のほぼすべての働き蜂が体毛が抜け落ちた蜂になっている。 また、無王であるのにもかかわらず「無王騒ぎ」が無く、「有王群」のごとく落ち着いている。 この状況に陥った蜂群では「変成王台を養成」しようと操作しても、王乳を生産できる若蜂がいない為に変成王台が生産されない。 「働蜂産卵数が1室1〜3卵」である事や「変成王台が生産されない」「無王騒ぎが無い」事などから、一見すると「有王群なのではないか」と誤解してしまう程である。 (ただし、ほとんど外勤しないので、無王群である事がわかる。) このような無王群の復活はとても厄介で、「正常群への合同」や「既交尾女王移入」による復活が出来なかった・・・ 』 との記述がある。
 ミツバチの行動の特徴は、若い働き蜂が、外へ出て行って花蜜や花粉を集めてくる仕事(外勤)ではなくて、巣の中での仕事(内勤)に従事していることである。 これは、若いときだけに発現する機能・能力を、巣作りに供するためであると考えられる。 機能・能力には、外勤蜂が集めてきた花蜜から、内勤蜂がそれを加水分解して単糖類の「蜂蜜」にかえることや、「蜜蝋」をつくり出すことが含まれる。 「ローヤルゼリー」を分泌することも同様である。
 そのような機能・能力が衰えてきた日齢の進んだ働き蜂は、外へ出て行って花蜜や花粉を集めてくる仕事に就くことになる。
 さて、解体した巣箱にいた働き蜂は、若くない。 働き蜂が老いていくにしたがって、その機能・能力が衰えていく。 蜜蝋をつくり出す能力が衰えてしまった結果、巣板を拡大できなくなってしまう。 それが、左側に示す『13日目の巣板』の形状が左上部の『使用した産卵巣枠』に示されているものからまったく拡大されていない事実を説明してくれる。 同様に、女王蜂候補の産卵があったにも係わらず、「変成王台」をつくっていないことにも納得できる。
 内勤蜂である働き蜂が外勤蜂として花蜜や花粉を集めることは可能であるが、その逆に、年老いた働き蜂が内勤蜂の仕事を代行できるかというと、そうではないということになる。

 
 この巣箱にいる「働き蜂」は、いったい何の仕事をしているのだろうか。 ただ漫然と、寿命になる時を待っているだけか。 一度崩壊してしまった蜂群とは、そういうことである・・・と。
 女王蜂の不調には・・・、結局、付ける薬はなかった!

(12)産卵巣板を使ったニホンミツバチの人工分蜂法の概要
 人工分蜂のために女王蜂を人為的に誕生させる方法として、「庭で日本蜜蜂を・・・山都町・清和高原の四季(2013年6月7日)」がある。 「上桟式重箱」法と呼ばれている。 それは、重箱型巣箱中の産卵されている巣板部分を、手のひら程度の大きさで切り取る。 それを、紐などで桟にくくりつける。 その桟を、新しい重箱型巣箱の上部に、固定する。 巣板にある卵から女王蜂を誕生させることで、新たなミツバチ群を得る方法である。
 この分蜂法の特色は、王椀、王台がつくられていない巣板をもちいていることにある。 ミツバチの卵が産み付けられている巣板があればよい。
 その方法に準じた手法を、使うことにする。
 ところで、セイヨウミツバチで、女王蜂を人工的に育成する方法は「みつばち協議会養蜂家向け養蜂マニュアル」などで紹介されているが、大概に記述すると、次のようである。
(1)プラスチックなどでつくった人工王台を用意する。
(2)その人工王台に、ローヤルゼリーを溶かし込んだ蜂蜜を塗布する。
(3)孵化直後の幼虫を、ラボ用スパーテル(超小型薬さじ)を使って、人工王台の中の蜂蜜上に移す。
(4)その人工王台を、巣箱に入れる。
(5)働き蜂を、その巣箱に導入する。
人工王台の中の幼虫は、ローヤルゼリーの作用により、女王蜂特有の機能を持つようになる。 その巣箱に導入された働き蜂によって、女王蜂として羽化するまで育てられる。
 ここでおこなわれているニホンミツバチの人工分蜂法は、セイヨウミツバチの飼育でおこなわれている孵化直後の幼虫になされている人工的な手順のすべてを、巣箱に導入された働き蜂に任せてしまおうということである。 王台をつくることやローヤルゼリーを幼虫に与えることなどを含めて。
 従来からニホンミツバチでおこなわれている女王蜂人工育成法では、王台(または、王椀)ができている巣板を取り出すことから始めることが多い。 これは、セイヨウミツバチの女王蜂人工育成法での(1)〜(3)が完了した状態が始点であって、(4)・(5)のみを人工的におこなうものである。 このような方法を採る主な理由は、ニホンミツバチでは必要量のローヤルゼリーを採取することが困難であることに起因している。 それを、ここでは(1)〜(5)のすべてを、人工分蜂を目的とする巣箱の中でおこなわせるものである。 従来の方法では、王台(または、王椀)があるかどうか何度も巣箱を観察する必要があり、分蜂の時期をコントロールすることは特別な手法を使えない飼育者にとっては難しいことである。 ここに述べる方法は、その特別な手法を使わなくても、分蜂の時期をある程度自由にできるという利点がある。
 セイヨウミツバチと比べると、人工分蜂をする際の「人工的の程度」は低いが、人工分蜂させる「時期の自由度」は同じである。
 巣箱へ導入する働き蜂の違いで、次の2つのケースが考えられる。


人工分蜂法の概念図(1)

@:産卵された巣板を新しい巣箱(d)に入れ
A:養母蜂群の巣箱(f)を別の場所に移し 
B:巣板を入れた巣箱(d)を、      
  養母蜂群の巣箱(f)の位置へ     


(1) 養母を利用する場合(左図の「人工分蜂法の概念図(1)」)
[特徴] 知人の蜂場で、優秀な性質のミツバチ群が営巣しているのを見つけたとする。 その性質を持つミツバチ群を是非とも己の蜂場に導入したいとき、この方法が有効である。
 この方法に基づいておこなった 応用例 を示す。
[方法] 人工的に増やしたいミツバチ群の巣箱から、卵が産み付けられている巣板(重箱型巣箱にあっては「手の平」の大きさに切り取った巣板、巣枠式巣箱にあっては巣枠の1枚)を、ミツバチが営巣していない『新しい巣箱』に入れる。 ただし、巣板を入れる前に、その巣板に取り付いている働き蜂を丁寧に取り除いておく。 つぎに、『元気に営巣している巣箱』を選んで、その巣箱を数メートル以上離れた場所に移す。 巣板を入れた『新しい巣箱』を、その『元気に営巣している巣箱』が移す前に置いてあった場所に、置く。 『元気に営巣している巣箱』の働き蜂が花蜜などを集めて帰ってくると、元々の場所に置いてある『新しい巣箱』に入っていく(これを「戻り蜂」という)。 巣箱に入った働き蜂は、その巣箱内に女王蜂がいないことをフェロモンの有無から察知し、卵がある産卵房を「変成王台」に作りかえ、その卵から新しい女王蜂を誕生させる。 この場合、新女王蜂の誕生に至るプロセスを、卵を産んだ女王蜂とは直接の血縁関係がない働き蜂(養母蜂群)に任せることになる。
 その働き蜂は、すべて花蜜集めから帰ってきた外勤蜂である。 巣内の仕事をしている内勤蜂よりも日齢が進んでいて、女王蜂誕生のための仕事には適していない可能性がある。 産卵巣板を提供した巣箱にとっては、その蜂群の働き蜂の数が減らないという利点がある。 重箱型巣箱から産卵巣板を取り出す場合には、工夫が必要である。 巣枠式巣箱からが、技術的には容易である。 『元気に営巣している巣箱』(左図に示す「養母蜂群の巣箱(f)」)は重箱型か巣枠式かのどちらのタイプでも良く、優勢な蜂群を使えば女王蜂の誕生に成功する可能性が高くなる。 自由度は大きい。


人工分蜂法の概念図(2)

@:産卵された巣板を、新しい巣箱(d)に入れ
A:巣板を提供した巣箱(m)を別の場所に移し
B:巣板を入れた巣箱(d)を、       
  巣板を提供した巣箱(m)の位置へ    


(2) 実姉を使った場合(左図の「人工分蜂法の概念図(2)」)
[特徴] 自宅群に繁殖力が旺盛なミツバチ群がいるとする。 この優れた性質を持っている蜂群を計画的に増やしたいとき、この方法が有効である。
 この方法に基づいておこなった 応用例 を示す。
[方法] 『人工的に増やしたいミツバチ群の巣箱』から、卵が産み付けられている巣板(重箱型巣箱にあっては「手の平」の大きさに切り取った巣板、巣枠式巣箱にあっては巣枠の1枚)を、ミツバチが営巣していない『新しい巣箱』に入れる。 そのとき、その巣板に取り付いている働き蜂も一緒に、『新しい巣箱』に入れる。 つぎに、『人工的に増やしたいミツバチ群の巣箱』を数メートル以上離れた場所に移す。 巣板を入れた『新しい巣箱』を、その『人工的に増やしたいミツバチ群の巣箱』が移す前に置いてあった場所に、置く。 『人工的に増やしたいミツバチ群の巣箱』に所属する働き蜂が花蜜などを集めて帰ってくると、元々の場所に置いてある『新しい巣箱』に入っていく。 巣板に取り付いていた働き蜂や花蜜集めから帰ってきて巣箱に入った働き蜂は、その巣箱内に女王蜂がいないことをフェロモンの有無から察知して、産卵房を「変成王台」に作りかえ、新しい女王蜂を誕生させる。 新女王蜂の誕生に至るプロセスを、その卵と同じ女王蜂から生まれた働き蜂(実姉蜂群)に任せることになる。
 巣板に取り付いていた働き蜂は、巣内の仕事をしている若い内勤蜂であるので、女王蜂誕生のための仕事に適している。 働き蜂が、左図に示す「元の巣箱(m)」と「新しい巣箱(d)」に二分されることになるので、それぞれの巣箱の働き蜂が少なくなってしまう。 「養母を利用する場合」に比べて『新しい巣箱』に多くの働き蜂が得られることは期待できないので、巣板に充分な量の「蜂蜜」と「花粉」、「卵・幼虫」が貯えられていることが望ましい。 巣板にある幼虫などが羽化してくるので、徐々に働き蜂は増えてくる。

(13)人工分蜂の実際T(養母を利用する人工分蜂)

使用した産卵巣枠

生み付けられた卵
 今にも分蜂しそうなほどミツバチ満杯の群があるので「養母を利用する場合」を試みる(*39)ことにする。
 卵が産み付けられている巣枠を入れた新しい巣箱を用意する。 ミツバチが営巣している巣箱(このときは重箱型であったが、巣枠式巣箱でもよい)を数メートル離れた位置に移動して、即座に、その元の位置にこの新しい巣箱を置く。 外に出ていた働き蜂は、元の位置に置いてあるこの巣箱に入っていく。 その巣箱内に女王蜂がいないことをフェロモンの有無から察知した働き蜂は、別の女王蜂が生んだ卵がある産卵房を「変成王台」に作りかえ、その卵から新しい女王蜂を誕生させる・・・というスキームである。
 

(*39) 若い働き蜂によって、花蜜や花粉をもとにして、蜂蜜や蜜蝋、ローヤルゼリーなどが生産される。 しかし、「養母を利用する場合」では、戻り蜂という外勤蜂が主体になってしまうので、生産能力の高い若い蜂は多くない。 前項の『(7)女王蜂の不調には』で述べているように、女王蜂を誕生させる方法としては、この能力の点で好ましくない。 女王蜂が誕生したとしても、産卵能力の低い女王蜂になってしまうかも知れない。
 この方法による蜂群が貧弱なものになったとしたら、それが原因であろう。

 

12日目の巣枠


変成王台
 ミツバチの卵が生み付けられている巣枠を、新しい巣箱に入れて、12日目である。 「女王蜂」は15日目に羽化するので、もし「変成王台」ができているとすると、今が観察の好機である。
 静かに、静かに巣枠を取り出す。 巣板部分を見ると、巣板の中ほどに王台が数個ある。 裏側にもいくつかの王台が見える。
 王台がある場所は、巣板の中ほどである。 この位置は、巣箱に入れた時点で、巣板の周辺部分に相当して卵があった部分(*40) である。 この10日余りの間に、更に、戻り蜂が巣板を伸ばしていったことがわかる。 変成王台の上方には、ミツバチの幼虫や蛹の蓋掛けされたものが見える。 新女王蜂の子が働き蜂となるまでのこれからの4週間、これらが羽化して巣作りに励むことになる。
 王台の中には、先端が茶色っぽく変色してきているものもある。 羽化まで、もう少しである。 女王蜂が誕生することは、間違いない。 複数の王台があるが、1匹の女王蜂になるように、働き蜂が淘汰してしまうだろう。 羽化した女王蜂が、無事に交尾飛行を終えられることを期待したい。
 

(*40) 左上の『使用した産卵巣枠』と、左側の『12日目の巣枠』は、比較ができるように、同じ位置から見た、ほぼ同じ範囲を写した写真である。 巣板の大きさに変化が見られるのは、戻り蜂により広げられた結果である。 「変成王台」がある場所が、『使用した産卵巣枠』での巣板辺縁領域で、生み付けられた卵があった位置である。

 

15日目

羽化直前
 今日で15日目。 ニホンミツバチでは、羽化する日齢である。 王台の蓋は、穴が開けられている。 中にいる羽化寸前のハチの足が、動いているのが見える。

小さな小さな蜂玉




重箱型巣箱に収容するも
約2週間後に消滅
 羽化寸前の新女王蜂が動いているのが見えたその翌日、その巣箱から10メートルほど離れた柿の木の高さ約4メートルの位置に、非常に小さな蜂玉があるのを見つけた。 午後のお八つ時である。 付近の空の巣箱のいくつかにも、数匹の探索蜂が来ているようである。 分蜂の最盛期では、キンリョウヘンがある巣箱には探索蜂が来ているが、それのない巣箱はまったく見向きもされなかったのに・・・。
 この蜂玉がどの巣箱から分蜂したかは定かではない。 しかし、付き随っている働き蜂の少なさから、人工分蜂によって複数の女王蜂が誕生してしまい、それからの二次的(副次的)な分蜂ではないかと推定される。 この巣箱は、「戻り蜂」として入り込んだ働き蜂と、持ち込んだ巣枠に付いていた幼虫や蛹からこの日までに羽化した働き蜂とからできている。 その合計は、そんなに多くない。 二次的に分蜂したとすれば、この蜂玉にいる百匹強という働き蜂の数は妥当であろうか。
 その蜂玉を収容し、別の巣箱に入れた。 この程度の働き蜂数で、6月中旬のこの時期に巣作りを始めて、果たして営巣できるかどうかの見守りもまた興味が湧くことである。
 気付いた時点で、この蜂群は消滅していた。 2週間ほどであろうか。 分蜂の際に巣箱から持ち出した蜂蜜の総量から考えて、「花蜜集め」と「巣板作り」の両方をこなすには、この蜂数では無理であったということか。

 
セイヨウミツバチの蜂玉とその拡大
 
左:重箱型巣箱に取り付けたセイヨウミツバチの巣板
(巣板を取り付けて46日後の状態)
右:その先端部の拡大              
 
巣板を取り付けて46日後の働き蜂
(左写真の右下方に、取り付けた「産卵巣板」が見える)
 
 

巣門前の働き蜂

 6月上旬、セイヨウミツバチ(*41) が分蜂して蜂玉をつくっているという連絡があって、巣箱への収容を手伝った。 セイヨウミツバチは左に示すように細い枝に蜂玉をつくり、太い枝のニホンミツバチ  とは違っている。 細い枝であるので、ミツバチの取り込みは非常に困難であった。 このセイヨウミツバチ、吹きっさらしの状態で越冬した群である。 この時期まで放ったらかしの管理であったようで、巣箱の中は巣板とミツバチで満杯、居る場所がなくなってしまったので分蜂したということか。 これ以前にも、何回か分蜂していたかも知れない。 満杯の巣箱にも手を入れようということで、そこにある巣板の大部分を切り出し(*42) て採蜜。 その際、「産卵部分の巣板」を、頂戴してきた。
 それを重箱型巣箱の中に取り付けて、ニホンミツバチを使って女王蜂を誕生させようという魂胆である。 切り取った巣板を重箱型巣箱に固定するという方法は「庭で日本蜜蜂を・・・山都町・清和高原の四季(2013年6月7日)」に記載されている基本の方法に近いものである。 このホームページの分類では、セイヨウミツバチが産んだ卵をニホンミツバチの働き蜂により女王蜂に育て上げるのであるから、「養母を利用する場合」の種の枠を超えた人工分蜂版である。 ニホンミツバチがつくるローヤルゼリーで、セイヨウミツバチの幼虫を女王蜂にできるかどうか・・・。
 あまり期待していなかったセイヨウミツバチの人工分蜂であるので、その巣箱を観察することもなかった。 巣板を取り付けて46日目。 巣門に多くの蜂が取り付いている。 中を見ると、多くのミツバチがいるではないか。 取り付けた巣板とは別の場所に、新たに巣板を作り始めている。
 この巣箱にいる女王蜂が、持ち込んだセイヨウミツバチの巣板に産み付けられていた卵から誕生したのであれば、この人工分蜂が成功したことになる。 セイヨウミツバチの女王蜂が誕生するのに16日、交尾して産卵を始めるまでに数日、その卵が働き蜂として羽化するのにセイヨウミツバチで21日、ニホンミツバチで20日を要する。 とすると、働き蜂の羽化の始まりは、1週間〜数日前であろう。 人工分蜂でよく見られる「蜂玉をつくる分蜂」をしなかったようであるから、左の写真に示すほどに増えたのか。
 周囲にはニホンミツバチしかいないので、ここにいる働き蜂はセイヨウミツバチの女王蜂とニホンミツバチの雄から生まれた子になる。
 そのような働き蜂であったならば、次のようなことが考えられる。
(1)働き蜂の性格はセイヨウミツバチのように激しいか、ニホンミツバチのように温和しいか。
(2)蜂に刺されたときの痛みは強いか、それ程でもないか。
(3)花蜜を集める能力は高いか、低いか。
(4)逃去してしまう性質が少ないか、多いか。
(5)いくつかの蜂の病気にかかる可能性があるか、かなりの耐病性があるか。
(6)スズメバチなどに対応できないか、集団で対抗できるか。
(7)寒さに弱いか、強いか。
(8)越冬するときに巣板に分散しているか、蜂玉状に固まっているか。
などなど、興味が尽きない。 マリリン・モンローから「私の美貌と、あなたの頭脳を授かった赤ちゃんは、さぞ素敵でしょう!」と持ちかけると、アルベルト・アインシュタインは「その逆だったら最悪なので、やめておきましょう」ということもあるから・・・。
 閑話休題。 温和しくて、しかも蜜をたくさん集めてくれて、手荒なことをしても逃げてしまうことのない働き蜂なら、大歓迎である・・・。
 好ましい性格の働き蜂であったなら、人工分蜂法を使ってどんどん増やしていきたい気持ちもある。 純粋なセイヨウミツバチであったなら、寒さに弱いので、野生の状態で越冬することはないといわれているが、セイヨウミツバチとニホンミツバチとの混血であれば、自然界で越冬できるかも知れない。 セイヨウミツバチの血を引くミツバチが増えていくことは、好ましくない外来生物の繁殖に手を貸すことになるかも知れない。 在来種のタンポポの生育場所が、次第にセイヨウタンポポによって押されていくように・・・。
 

(*41) ここでは、一応「セイヨウミツバチ」と呼ぶことにする。 「セイヨウミツバチ」として購入したミツバチ群ではなく、自然状態で巣箱に入った蜂群である。 セイヨウミツバチの飼育群が多い地域で得られた群であって、それを現在の飼育場所に持ってきたものである。 厳冬期には何回かの降霜がある地域において覆いのない屋外で元気に越冬できたところをみると、ニホンミツバチとの混血である可能性は高い。 しかし、盛暑時には、巣門入口で尻を外側に向けて一列に並んでいるので、セイヨウミツバチとしての行動様式も持っているようである。

(*42) このような手荒なことをしたのであるが、逃去せずに、その8週後も順調に営巣していることを確認 した。 セイヨウミツバチのこの性質、ニホンミツバチに欲しい!

 

逃去してしまって空の巣板
(上の写真から2週間後)
 連日の真夏日が続いたある日、巣箱にミツバチがいないことに気づいた。 セイヨウミツバチの血が入っているはずなので、逃去しない性質を持っていることを期待していたのであるが・・・。 同じ頃、あるホームページでも「またもや逃去、それも3群・・・」とあるように、偶々ではなく、ミツバチが逃去を画策する時期が存在しているように思われる。 巣箱には数枚以上の大きな巣板が完全な形で残されていて、巣虫などに影響された形跡は認められない。 苦労して作った大きな巣板を捨てるほどのどのような事情があったというのか。 ヒトの側から逃去を防ぐ有効な手立ては、あるのか・・・。
 
[補足]
 ここでは「養母を利用する人工分蜂」というような大仰な題目をつけているが、人工分蜂とは違うが、これと同じことを日常的におこなっている蜂飼いのブログがある。 それを示すと、
     ミツバチ | 乳酸菌生活![ 洋バチを内検 ](2015.06.09)
 6日に入居した洋バチ群ですが、内検してみました。
 大したこと無いだろうと思っていた群なんですが、ソコソコいます。
 ライターが湿気ってて火がつかないので、煙幕無しではぐったら天気が悪いのもあってか気が荒い荒い!
 長靴に入った奴に足首のとこやられた! (T_T)
 が、しかし、花粉とか運んでないし何か違和感を感じてじっくり内検してみた。
 産卵はまだしていない。
 んで、女王を見つけることが出来ない!
 なんで?
 お出かけ中?
 事故?  無王?
 遅い入居なので、マサカとは思うけど・・・・
 保険を掛けとこうかな!
 越冬して急成長著しい群から1枚失敬しました。
 無王か否か数日後わかるでしょう。
ということである。
 このとき、『保険を掛けとこうかな』ということで、『越冬して急成長著しい群から1枚失敬』するとして、女王蜂の健在な巣箱から取り出した1枚の産卵巣枠を女王蜂がいないかも知れない巣箱に移している。
 普通に考えると、巣枠の1枚を当該巣箱に移しても、「その巣箱に女王蜂がいなければ、巣箱にいる蜂群は遅かれ早かれ消滅してしまうことになる」から、移した1枚の巣枠を無駄にしてしまうだけだと思ってしまう。
 実際には、その当該巣箱に女王蜂がいなかった場合、その巣箱にいる働き蜂が、移された1枚の巣枠にある産卵を使って、女王蜂を誕生させてしまう。 結果的に、無王群を正常な蜂群にするという保険を掛ける方法になる。 記事中には明確には書かれていないが、これは、本質的に、女王蜂を新しく誕生させる人工分蜂と同じである。

(14)人工分蜂の実際U(実姉を使った人工分蜂)

実姉を使った人工分蜂法

@ 産卵された巣板を新しい巣箱(d)に入れ  
A 巣板を提供した巣箱(m)を別の場所に移し 
B 巣板を入れた巣箱(d)を巣箱(m)の跡へ移動


人工分蜂の操作により「実際に」生起した現象

親元である「巣箱(m)の蜂群」から、       
人工的に分蜂させて得られた巣箱(d)の蜂群と、
その際に蜂玉として分蜂した巣箱(t)の蜂群」  

巣箱(d)の蜂群

巣箱(t)の蜂群











巣箱(t)に入った蜂玉分蜂群
(取り込み2日後)

2週間後の巣枠式巣箱(d)
(下から見た所)

2週間後の巣箱(t)
(女王蜂の子は羽化前)




巣枠式巣箱(d)の蜂群は
2ヶ月後に崩壊へ

蜂玉を捕獲して4週間

捕獲6週後

捕獲8週後

捕獲後10週




蜂玉捕獲群の巣箱(t)は
台風による転倒で逃去
 もう一つの人工分蜂法である「実姉を使った場合」について、5月中旬に実施した。 この場合の手順を、くどいようだが、左に示す。 使用した営巣している巣箱は、巣枠(高さが約30センチメートル)8枚に、1ヶ月で巣枠全面の8割方に巣板がつくられているほどの集蜜力の強い蜂群である。 その巣枠1枚を新しい巣枠式巣箱の巣枠1枚と置き換え、その巣箱を集蜜力の強い蜂群が置いてあった巣箱位置に設置した。 「養母を利用する場合」では、移す巣板にいる働き蜂をすべて吹き払ってから、新しい巣箱に入れる必要があった。 しかし、「実姉を使った場合」にはその必要はないというよりは、積極的に「巣板にいる働き蜂」を一緒に移した方が良い。 この人工分蜂は、「花蜜集め」を仕事としている「戻り蜂」を育て親に使っている。 その「戻り蜂」は日齢が進んだ蜂であるので、若い「巣板にいる働き蜂」に比べると、蜜蝋やローヤルゼリーを作り出す能力に衰えがきている。 「巣板にいる働き蜂」の一部を取り込むことで、そのような欠点を補うことができる。 「実姉を使った場合」の利点である。
 人工分蜂を施した日を含めて15日経過した午前中、巣箱の周りに蜂が群舞している。 いわゆる時騒ぎである。 午後、真上にある柿の大木に蜂玉ができている。 この場所に設置してあるのはこの人工分蜂の巣箱だけであるので、これから分蜂したことは間違いない。 蜂の数は千匹程度である。 重箱型の巣箱に収容した。
 女王蜂が生まれ、更に、巣箱内には別の女王蜂が生まれようとしているようだ。 ニホンミツバチの女王蜂は15日で羽化するから、日数的には計算が合う。
 それから数日、人工分蜂した蜂群(左図の巣箱(d)のミツバチ群)ではミツバチが順調に出入りしている。 花粉を運び入れている働き蜂も見られる。 この巣箱に入れた1枚の巣枠には、充分な量の蜂蜜や花粉がある。 その巣板には元の女王蜂が生んだ羽化前の幼虫もあり、その幼虫が働き蜂として次々と羽化しているためか、安定した状態を保っている。
 蜂玉を捕獲したもう一つの蜂群(左図の巣箱(t)のミツバチ群)では、不規則なミツバチの出入りが見られる。 この巣箱にいるミツバチの財産は、分蜂時に持ってきた腹一杯の蜂蜜だけである。 この巣箱では1から巣板をつくらなくてはならない。 先ずは巣板作りに専念しているのであろうか。 覗いてみたのが、左の写真。
 うまく行くと、左上に示すように元々あった「巣箱(m)」に加えて人工分蜂による「巣箱(d)」の蜂群が得られ、その上に予定外の「第3の巣箱(t)」のミツバチ群が得られたことになる。
 人工分蜂した巣箱に新しい女王蜂が生まれたとみられる日から、2週間。 人工分蜂の本命である巣箱(d)の蜂群の様子を、示してみると・・・。 これは巣枠式であるので、巣枠の下端が邪魔をして、うまく写らない。 巣箱の蓋を外して巣枠を取り出して撮影すれば、鮮明に写るはずである。 しかし、この方法は蜂に多大なストレスを与えるので、実施したくない。 写っている範囲で見ると、巣枠の下端まで蜂がいるのが見える。 「人工分蜂」処理した時に、多くの卵がある巣枠を巣箱に入れている。 それらの卵が、徐々に羽化しているはずである。
 蜂玉を捕獲した巣箱(t)には、左に示すように、巣板が見えてきた。 この巣箱では、巣箱(d)とは違って、子蜂は誕生していないので、ミツバチの数は増えていない。 このあと一週間も経てば、新しい女王蜂が産んだ働き蜂が次々と羽化してくる(ニホンミツバチの働き蜂は産卵されてから20日後に羽化する)はずであるが。
 重箱型巣箱は、蜂の様子をストレスを与えないで観察する方法として、適している。 巣板の大きさや蜂の数が一目で分かる。 巣枠式巣箱だと、巣枠を取り出さないといけない。 神経質なニホンミツバチでは、逃去の原因になるかも知れない。 巣枠式は、「人工分蜂」に適しているという重箱型にはない長所が、あるが。
 蜂蜜の採取でも、違いがある。 重箱型巣箱では、「重箱単位」で採蜜することになる。 したがって、重箱2つ分以上の巣板がないと、ミツバチに与えるダメージが多すぎる。 採蜜できれば、一度に大量の蜂蜜が得られるが・・・。 巣枠式巣箱では、巣枠を取り出して巣板の貯蜜部分だけをナイフで切り取る。 巣板支持のワイヤーがないときには、巣板全体が巣枠から外れないように、慎重に切り取る。 外れてしまったときは、紐を使って枠に固定することになるが、適切な紐の選定と作業用治具の製作といった工夫が必要になってしまう。 セイヨウミツバチで使われている遠心分離器による方法は、ニホンミツバチの巣板が脆いので不適当である。 一度に取れる量は多くないが、「巣枠単位」でコンスタントに採蜜できる。 ナイフで切り取ったことで生じた空間には、そこを埋めるように新しく巣板をつくるであろう。 新しい巣板部分は、産卵に使うはずである。 巣板の作成 → 産卵・羽化 → 蜂蜜の貯蔵 → 人為的な巣板切り取り → 巣板の作成 → 産卵・羽化 → ・・・というサイクルが回り出す。 旨く管理できれば、「継箱」は不要である。
 蜂群を、重箱型巣箱に入れるか、巣枠式巣箱に入れるか、悩ましいことである。
 分蜂して蜂玉となったのを捕獲して4週間、巣箱を見ると、4番目の巣板が大きくなっていてその次の巣板がつくられようとしている。 しかし、蜂数が増えたようには見えない。 新しい女王蜂が交尾するのに1・2日、その後に産卵するまでに数日、そして、働き蜂は産卵後20日で羽化する。 捕獲した時に女王蜂がいたなら、数日前から子蜂が生まれてきているに違いないが、初期の巣板は小さいから産卵数も多くない。 子蜂は漸増か。
 それから2週後、巣板は縦の支持棒に届くまで広がってきている。
 蜂玉として捕獲してから8週。 巣板は広がってきているが、ミツバチの数はそんなに多くない。
 捕獲して10週が過ぎた。 立秋の日も過ぎ、暑さの最盛期である。 高い気温のためか、この季節には蜜源植物が開花していないためか、ミツバチの出入りは少ない。 巣板の広がりもミツバチの数も、変化がない。
 
台風による転倒で逃去



庭の石灯籠に蜂玉

重箱型巣箱に収容

2週間後

4週間後
 8月下旬の台風で、巣箱が転倒してしまった。
 その蜂群は、幸いなことに、庭の石灯籠に蜂玉をつくった。 ほぼ100%のミツバチを、重箱型巣箱に収容できた。 2ヶ月半前の状態と同じになった。 ミツバチの数も同じくらいであるので、巣箱の「年輪の模様」を見なければ、それぞれを区別できない。
 その後の経過も、ほとんど同じである。 4週間後より少し前に、女王蜂が健在であるなら、この巣箱に産み付けられた卵が働き蜂として羽化してきているはずである。 4週間後の写真では、それ以前と比べてミツバチの数が増えているようには見えない。
 再捕獲後6週目を迎えて、巣箱の状態を写真に撮ると、ミツバチが一匹もいない。 ここ数日の間に逃去してしまったのか?  数少ない蜂群であったので、期待していたのであるが・・・。
 巣板はきれいである。 巣虫は、いない。 逃去の原因が、巣虫ではないことが分かる。 蜂蜜は残っていない。 巣箱が空になったことを知る直前まで、数匹のミツバチが出入りしていた。 このミツバチ達は、蜂群が逃去したときに置き去りになってしまったのか?  最近まで、順調に、営巣しているものと思っていたのは、このミツバチ達によるものである。 「逃去時期」は、ここ数日よりも、もう少し前かも知れない。 巣箱を解体してしまったが、それでも、数匹のミツバチが巣箱の跡を飛んでいる。





いつの間にか、巣板だけが

巣板部分の拡大


蜂玉をつくった後
静かになってしまった
「人工分蜂」した方の巣箱

梅の木に取り付いた蜂玉








営巣中
初秋にはミツバチで満杯
巣箱を追加

蜂玉を捕獲してから2日の後
(小さな巣板を残して)




 上記よりも10日遅い5月下旬に、同じ組み合わせで「人工分蜂」を、再度、おこなった。 この分蜂群も、上の例と同様に15日目の早朝、多数の働き蜂が巣箱から出て騒いでいる。 しばらく群舞した後、梅の木に取り付いて、蜂玉をつくった。 蜂の数は2千匹弱か。 前回より、若干多いようだ。 10日遅い移植で、巣枠に産卵されている卵の数が多くなったためか。 蜂玉が形成されると、巣箱はすっかり静かになってしまった。 この蜂玉は、重箱型巣箱に収容した。
 一般的には、人工分蜂のために産卵巣枠を移植し戻り蜂を里親にするので、元の巣箱の「蜂蜜」、「花粉」、「産卵」、「働き蜂」が減ってしまうことになる。 これによるダメージで、蜂群が衰退してしまうことも考えられる。 試行している人工分蜂では、元の巣箱がすこぶる元気な蜂群であるので、そのようなことにはならない。 「養母を利用する場合」でもそうであったが、このいずれの方法でも「蜂玉をつくる分蜂」を伴うようである。 蜂群の増加の点では長所であるが、移植した巣板が小さいと蜂玉の蜂数が少なくなってしまって弱小な群をつくることになりそうである。 働き蜂の数によって複数の女王蜂の誕生をミツバチ自身が抑制してくれると良いのだが・・・。
 この2回目の「実姉を使った人工分蜂」では、「目的とした人工分蜂群」と「蜂玉としての分蜂群」の2群が得られたが、残念ながら後者は2日ほどで逃去してしまった。 前者の巣枠式巣箱に営巣しているミツバチ群は、花蜜の少ない酷暑を凌いで、集蜜を再開できる秋を迎えている。


動画(スタートボタンを押してください)

(15)早春の人工分蜂

人工分蜂法

@ 産卵された巣板を新しい巣箱(d)に入れ  
A 巣板を提供した巣箱(m)を別の場所に移し 
B 巣板を入れた巣箱(d)を巣箱(m)の跡へ移動


人工分蜂のために移した産卵巣板
 
産卵巣板を入れた巣箱
(戻り蜂が入口に)
 啓蟄の日。
 この後1週間ほど、最高気温が15℃前後の日が続くということで、人工分蜂法を試みた。 これまでは5月下旬から6月にかけての初夏での人工分蜂であったので、この時期にうまくいくかどうかは定かではない。
 順調にいけば、2週間後に女王蜂が誕生するはず。 その直後に、もう1匹の女王蜂が生まれて、先に誕生した女王蜂が巣箱を離れて蜂玉を形成する・・・というスキームが、今までの人工分蜂での流れであった。 蜂玉を形成する日時は限られているので、待ち受けていれば、それを収容できる可能性は高い。 人工分蜂の1回の処理で、新たに2つのミツバチ群(人工分蜂を施した巣箱群、その巣箱から飛び出した蜂玉群)が得られることになる。 1つのミツバチ群が、人工分蜂処理により、それを含めて3群になるという・・・。
 女王蜂が誕生する予定日は、春分の日の頃である。 自然界での分蜂時期に比べると、少しばかり早い。
たくさんの貯蜜が空っぽになってしまって・・・
 人工分蜂を施した日を含めて、6日目。
 前日は冷たい雨が、一日中、降っていた。 巣箱をみると、ミツバチの出入りがない。 巣箱はもぬけのカラである。 人工分蜂がうまくいかなかったことよりも、寒空に蜜を抱かえて出ていったミツバチの幾末が悲しい。
 春に人工分蜂を試みている例が、日本蜜蜂の飼育−人工分蜂−にある。 4月15日である。 ここでは、王台が作られている巣板を移植しているので、筆者の方法よりも確実な人工分蜂法である。 この時期は自然に分蜂する頃である(だから、巣箱内の巣板に王台がつくられていることが多い)ので、それを強制的におこなったということである。 しかし、その結果は失敗で、働き蜂産卵が見られたという。

 この時期の人工分蜂は、何故か、うまくいかないようである。 自然の分蜂に任せた方が良いらしい。

(16)逆巣型の人工分蜂

逆巣型の人工分蜂法

@ 産卵のある巣枠を新しい巣箱(n)に入れ  
A 女王蜂をその巣箱(n)に導入し      
B 巣枠を提供した巣箱(m)を別の場所に移し 
C 巣枠を入れた巣箱(n)を巣箱(m)の跡へ設置

 人工分蜂の別法を試みてみる。
 このホームページでの定型的な人工分蜂の方法は、先ず、1枚の巣板または巣枠を空の巣箱に移す。 その後、新しい巣箱に入れられた巣板または巣枠にある産卵を使って働き蜂が女王蜂を誕生させることで、新しいミツバチ群となる。 この定型的な人工分蜂では・・・
 「元の巣箱(人工分蜂の元となる巣箱)」には女王蜂が居て、多くの巣板とそこにある蜂蜜、花粉、ミツバチの幼虫などがある。 女王蜂がいるので、引き続き産卵して次々と羽化してくるはずである。
 「新しい巣箱」には、多いとはいえない蜂蜜、花粉、ミツバチの幼虫などと戻り蜂として入った若干数の働き蜂が居る。 女王蜂は不在である。 新しい女王蜂の誕生には、順調にいって2週間を要す。 その女王蜂が産んだ卵が働き蜂として羽化する時期は、人工分蜂からおおよそ6週間の後である。 働き蜂の増加は、元の巣箱とは比べようもないほどに緩慢である。
 その定型的な人工分蜂の状況を、逆にしたのが、「逆巣型の人工分蜂」の方法である。
 その概要を、左図に示す。 産み付けられた卵がある巣枠の1枚を、新しい巣箱に入れる。 その際、「女王蜂」を見つけ出して、その新しい巣箱に入れる。 元の巣箱を、別の場所に移動する。 その元の巣箱の位置に、新しい巣箱を置く。 花蜜を集めに外に出ていたミツバチは、元巣の位置にある新しい巣箱に(戻り蜂として)入っていく。
 この人工分蜂によって分けられた女王蜂が居る「新しい巣箱」と、女王蜂が不在である「元の巣箱」のそれぞれの様子を見ると・・・。

逆巣型の人工分蜂に使う産卵巣枠
(この巣枠を入れた巣箱には女王蜂を導入する)
 
戻り蜂で埋め尽くされた巣板とそこに産み付けられた卵
(女王蜂がいるはずの巣板を観察窓から撮影)


 新しい巣箱は、多いとはいえない蜂蜜、花粉、ミツバチの幼虫などと戻り蜂として入った若干数の働き蜂とで構成されていて、そこには女王蜂も居る。 人工分蜂の直後から、巣板に産み付けられている卵から、少ないながら働き蜂の羽化が続く。 それに引き続いて、3週目からは、この巣箱に移ってから産み付けられた卵から働き蜂が次々と生まれてくることになる。 戻り蜂として巣箱に入った働き蜂に加えて、途切れることもなく、新たな働き蜂が誕生してくるので、ある程度の数の働き蜂が保たれることになる。

 左の写真は人工分蜂したときの「女王蜂がいる方の巣箱」である。 逆巣型であるので、人工分蜂した時点では、巣板1枚の状態である。
 観察窓があるので巣板の様子を見ることができる。 ミツバチが群がっているので産卵されている状況の確認が困難である。 産み付けられた卵が、ようやく、その隙間から見られた。
 


 もう一方の「元の巣箱」は、何枚かの巣板と、多くの蜂蜜、花粉、ミツバチの幼虫などを伴うが、女王蜂は不在である。 そのため、働き蜂は、産み付けられていた卵のところに変成王台をつくって、女王蜂を誕生させることになる。
 巣箱内の働き蜂は、巣板にある充分な数の産卵から、次々と羽化してくる。 その期間は、人工分蜂を施した時点から3週目までの間である。 新たな女王蜂が順調に誕生すると、その女王蜂の子が働き蜂として誕生するのは人工分蜂から6週間後である。 この元巣では、3週目から6週後までの間は、働き蜂の誕生がストップしてしまう。 しかし、3週目までに充分な数の働き蜂が誕生しているので、働き蜂の数が不足するような事態になる可能性は少ない。 人工分蜂のために分けた「新たな巣箱」と「元の巣箱」とを比較すると、両者の間で働き蜂の数などでバランスが取れている。 ミツバチ群を増やすことが主目的であるなら、逆巣型人工分蜂法が、定型的人工分蜂法より優れている。
 人工分蜂の副産物として、この巣箱(人工分蜂した際に、女王蜂が居ない方の巣箱)から、蜂玉をつくる第3の分蜂が高い確率で生じる。 そのときの分蜂は、定型的な人工分蜂法にあっては、働き蜂が多くない巣箱からのものである。 そのため、分蜂した群の働き蜂は、充分な数であるとはいえない。 定着に失敗する場合もある。 逆巣型の人工分蜂法にあっては、働き蜂の数は、充分に多い。 そのため、蜂玉として分蜂したミツバチ群は強勢になる。 この点でも、この逆巣型が優れている。
観察窓から見た人工分蜂の巣板
(左:2週間後、右:3週間後)
 多くの働き蜂がいるものとして、油断して巣箱の観察を怠っていた。
 人工分蜂から2週間後、働き蜂の出入りがほとんどない。
 そこで、観察窓から巣箱を覗いてみた。 見える範囲には、働き蜂がいない。 ただ、シマリングチェック(巣箱をコツコツと叩くことで聞こえてくる羽音でミツバチの状態を確認する方法)では、少なくない数のミツバチがいる。 すべての巣板表面を被うほどの数ではないようではあるが。
 働き蜂の数が少なくなってしまった原因は・・・。 人工分蜂した巣箱から、蜂玉をつくる第3の分蜂が、ほとんど場合に起こる。 この分蜂は、人工分蜂の操作から約14日後である。 第3の分蜂を見逃してしまい、その直後の巣箱を観察しているということか・・・。
 働き蜂の絶対数が多くないため、巣箱内での仕事に忙殺されて、花蜜や花粉を集めにいく余裕がない状態であると思われる。

観察窓から覗いた
人工分蜂して4週間後の様子

左側写真の拡大
 それから2週間後、手前の巣板が落ちてきている。 黒いゴミのようなものが一杯ついている。 よく見ると、巣虫の幼虫がいる。
 巣虫が住み着くときは、働き蜂が少なくてそれの排除に手が回らないからである。 この巣箱からのミツバチの逃去は、巣虫が手に負えなくなった結果であると思っている。 その証拠に、この巣箱には、今でもかなりの数のミツバチがいる。
 巣虫の排除に手が回らなくなった原因は、ミツバチの数に対して、巣板の数が多いからである。 2週間前には、観察窓から見える範囲の巣板には、一匹のミツバチも見つけられなかった。 恐らく、巣板と巣板の間には相当な数のミツバチがいることを、そこには巣虫がいない環境であることを、期待しているのであるが・・・。
 今後、巣箱全体が巣虫に占領されて、ミツバチがいなくなってしまうか・・・。
 それとも、変成王台で新しい女王蜂が誕生していて、その女王蜂が産んだ最初の卵は2週間後には働き蜂として羽化してくるはずであるので、それによってミツバチが盛り返してくるか・・・。
 
人工分蜂して5週間後

7週間後
 巣虫の発見から1週間後、巣板の大部分が落ちてしまっている。 上部に、正常な姿にも思える巣板が残っているようだ。 僅かな数の働き蜂によって、この巣板部分へ巣虫成虫が卵を産むことがあってもその卵を除去しているかのように、更に、この部分への巣虫の進出を抑えているかのように、見える。 この部分には女王蜂がいるものと、その女王蜂が産んだ最初の卵が1週間後には羽化してくるものと、期待しておこう・・・。
 「人工分蜂して5週間後」の写真を撮ってから、2週間が経過した。 巣箱内のミツバチがいなくなってしまった。 今回の人工分蜂は、不首尾に終わった。

(17)山都式(上桟式重箱法)の人工分蜂

山都式人工分蜂法(上桟式重箱法)
[原著手法のうち上桟の使用について改変]

@ 巣箱(m)中の巣板の一部を切り取って   
A その巣板をビニール被覆ワイヤで枠に固定し
B それを新しい巣箱(d)に入れ       
C 巣板を提供した巣箱(m)を別の場所に移し 
D 巣板を入れた巣箱(d)を巣箱(m)の跡へ移動

 女王蜂を人為的に誕生させる方法の1つに「庭で日本蜜蜂を・・・山都町・清和高原の四季(2013年6月7日)」がある。 これを当該ホームページでは「上桟式重箱」法と呼んでいる。 切り取った巣板部分を重箱上部に設置した「桟」からぶら下げるかたちで取り付けることから、「上桟式」としているようである。 方法としては「上桟」ではなくても良い。 このホームページでは、より適切な呼び名として、考案者の居住している地域名から「山都式」人工分蜂法と呼ぶことにする。
 山都式人工分蜂法は、重箱型巣箱に営巣しているミツバチ群を人工分蜂する方法の1つである。 ニホンミツバチの一般的な人工分蜂法は、変成王台ができている巣板を切り出して、その変成王台内にいる女王蜂候補を育てることから始める。 山都式人工分蜂法の特色は、変成王台を必要としない点である。 変成王台を必要としないから、その「有無」を探る必要がないばかりか、それが見られないときであっても、人工分蜂の操作が可能である。
 具体的には、産卵部分を含む巣板を切り出し、その巣板を枠に固定する。 それを巣箱に入れ、戻り蜂を導入する。 戻り蜂が巣板にある卵を女王蜂に育てることで、新しいミツバチ群が誕生する。
 
左:巣板取付け用枠(下の板が「天蓋の天井の面」)
右:取付け用枠下端(斜めの切り落とし)     
 重箱型巣箱で営巣しているミツバチを利用して、人工分蜂を試みてみる。 この場合には、巣枠式巣箱の場合とは違って、巣板部分を切り出しそれを巣箱内に固定するという「山都式人工分蜂法(上桟式重箱法)」を使うことになる。 巣板を固定するための枠は、左のように、四角い枠である。 それを、天蓋の「天井面」に取り付ける。 採蜜時には「天井板」と巣板の間で切れ目を入れることになるので、天蓋部分とこの四角い枠とが容易に分離できることが望ましい。 そこで、天井板の反対側から固定することになる。
 天井面と四角い枠とが接触する部分は、斜めに切り落としてある。 天井板と四角い枠の間は、ミツバチによって蜜蝋で固められてしまう。 採蜜するときには、スチールワイヤをこの隙間に入れることで、この間にある蜜蝋をカットして切り離せる。

重箱に納めた状態の「巣板固定用枠」
(下方の板が天井面/使用時とは上下が逆)
 左図の「重箱への設置」に示すように、固定用枠の大きさは、重箱1段の高さよりも短くしてある。 これも、採蜜するときに重箱単位でおこなうことを前提にしているためである。

「巣板固定用枠」に取り付けた巣板
(下方の板が天井面/使用時とは上下が逆)
 営巣している巣箱から、手のひら程度の大きさの巣板を切り取る。 その巣板部分には卵が産み付けられていることを確認する。
 切り取った巣板部分を、枠に固定する。 枠への固定は、左図のように、ビニール被覆ワイヤを使って、2ヶ所で巣板を挟むようにしてある。 なお、固定用枠は、巣箱に対して斜めに留めてある。 斜めの方向(枠が巣門側から見て、時計の2時方向か、10時方向か)とその角度は、今までに重箱型巣箱に営巣したミツバチ群の巣板と同じである。
 それを、巣箱にセットして、戻り蜂の働きで女王蜂を誕生させることになる。
 
左:取付けて一週間後の様子           
   (斜めの板が巣板固定用枠)        
右:拡大                    
   (白の細線が巣板固定用ビニール被覆ワイヤ)
 左は、人工分蜂して1週間後の巣箱内の様子である。 この巣箱の戻り蜂の多少が分かる。 取り付けた巣板が隠れる程である。 拡大した写真から、盛り上がったミツバチは、下側(2番目)の白い固定用針金部分にまで達していて、巣板が見えていない。 取り付けた巣板より外側にもミツバチが群がっているので、この部分に新しい巣板を作り始めているようである。
 今日から1週間もすれば、うまく行くと、新しい女王蜂が羽化することになる。 更にうまく行けば、この女王蜂に続いて妹の女王蜂が誕生することになる(*43) と、姉の女王蜂が巣箱を飛び出して「蜂玉」をつくるというかたちで分蜂が起こる。 この分蜂群は、戻り蜂として巣箱に入ったミツバチが、更に、二分されることになるので、その群の大きさは期待できない。 しかし、ミツバチ群が増えることは、嬉しいことである。 蜂玉として分蜂する日時は予想できるので、確実に捕獲したい(*44)
 

(*43) 人工分蜂の操作をすると、このように複数の女王蜂が誕生するようである。 ただし、後で誕生するはずの女王蜂が、正常に羽化しないこともある。
 その場合、3番目の女王蜂を誕生させる用意があるかどうかが問題である。 通常は、多くの女王蜂が誕生しないように働き蜂によって淘汰されてしまうので、女王蜂の補充は難しいと思われる。 人工分蜂の操作をした巣箱のミツバチ群は、女王蜂がいないので次第に衰えてしまう。 蜂玉として分蜂したした方のミツバチ群を捕獲できないときには、手持ちのミツバチ群は増えないことになる。 人工分蜂した意味がなくなる。

(*44) 人工分蜂の処置に伴って生起する「蜂玉分蜂」を期待していたのであるが、今回は確認できなかった。 蜂玉分蜂をしなかったかも知れないし、分蜂で巣箱から飛び出したミツバチ群を見逃してしまったかも知れない。

 
 
人工分蜂して3週間
 3週間が経過した。 人工分蜂後1週間の時点では、移植した巣板の周辺はミツバチの群で隠されていたので、新しくつくられた巣板の様子ははっきりしない。 それが、左写真のように、両脇に1枚ずつの巣板があるのが分かる。 重箱1個の高さが18センチメートルであり、人工分蜂のために切り取った巣板を取り付ける枠の高さは約15センチメートルである。 切り取った巣板の高さは10センチメートル強であることから、両脇の巣板は10センチメートル近くまで伸びてきていることが分かる。
 移植した巣板にある巣房の数はおおよそ700個、この巣箱で新しくつくられた2枚の巣板では1000個程度である。 女王蜂が産卵し始めているとすると、この数日の間に1000個程度の卵が産み付けられる。 それが3週間後には、働き蜂として羽化することになる。
 
4週間後の巣板とその拡大

6週間後

8週間後

9週間後
 人工分蜂の操作をして、4週目である。 観察窓から、写真を撮った。 肉眼では見えないことも、フラッシュを焚いて撮影すれば、色んなことが見えるかも知れない。 左側の写真は、巣板片面のおおまかな様子である。 白のビニール被覆ワイヤで固定されている部分が、山都式人工分蜂法により移植した巣板である。 巣箱設置後に新たにつくった巣板がその手前にあるので、移植した巣板は、一部分しか見えていない。
 その巣板写真の右下部分を拡大したものが、右側の写真である。 この巣板部分は、「枠に取り付けた巣板(設置時には上下を逆に)」の写真と比べると、「戻り蜂が、移植した巣板の先端部分につくり足したものである」ことが分かる。 そこに、卵が見えている。
 変成王台中にある卵が産み落とされてから(正確には、産み落とされた卵がある巣房のいくつかを女王蜂育成用の変成王台に作りかえてしまうのであって、最初から変成王台があってそこに卵を産み付けることではない。 後で変成王台に作りかえられることになる巣房に卵が産み落とされた時点から)15日後に、女王蜂が羽化する。 その後の交尾飛行を経て、人工分蜂から3週を経過する頃に、女王蜂が産卵し始める(*45) ことになる。 今の時点では、最初に産み付けられた卵は、2〜3齢の幼虫になっていると思われる。 写真に写っているものは、幼虫になる直前の産卵から3日目くらいの卵である。
 このことから、この人工分蜂を施した巣箱では、想定していた経過に沿って新たな女王蜂が誕生し、その女王蜂が卵を産み始めていることが分かる。
 それから2週間経過した人工分蜂して6週の様子。 見えているミツバチの数が激減している。
 更に、2週間。 風前の灯火である。 うまくいかなかったのか。
 人工分蜂から9週間。 とうとう、ミツバチがいなくなってしまった。 今回の人工分蜂は、蜂群を増やすことが目的であるとすると、失敗に終わった。 新たな人工分蜂法が試行できたことには、価値があろう。
 

(*45) 女王蜂の初産卵については、日本蜜蜂を更に人工分蜂(日本蜜蜂の科学 2016年7月8日)において、 『・・・  新女王1匹目の産卵開始予定日は(筆者注:7月8日に誕生したので)7月16日。 新女王2匹目、3匹目の誕生予定日は7月10日で、産卵開始予定日は7月18日となっている。 和洋両蜜蜂ともに、蜂児の成長や産卵開始の日数計算等がすべて計算通り正確に進むのが蜜蜂の世界だ。 それだけ蜜蜂の巣内環境は安定した温度等を保たれている。 ・・・』 との記述がある。
 なお、セイヨウミツバチで、卵が産み付けられてから羽化までの様子が『T.ミツバチについての基礎知識 (2)ミツバチの生活』中の「図1-8.ミツバチの発育段階」に紹介されている。 ニホンミツバチは、そこに示されている日数よりも1日程度短い日数で、羽化するようである。

 

(18)分蜂の瞬間から蜂玉の捕獲を経て
 
多くのミツバチが巣門から
 無風で晴天、今年最初の分蜂をするなら、今日である。 分蜂の瞬間を、どんなことがあっても、見逃したくない。 午前11時50分。 多くのミツバチが巣門から、次々と出てきた。
 時騒ぎである。 分蜂の始まりである。

群舞するミツバチ
 そのうちに飛び始めた。 大きな羽音と、雲のように空をおおうミツバチ。 集団で大きく回転している。

桃の木に蜂玉
 やがて、数メートル先の桃の木に止まりだした。 高さ1メートルの位置である。 時刻は、12時4分である。 巣箱から出て14分、アッという間の出来事である。
 周囲には、多くの巣箱が置いてある。
 その中のひとつの巣箱には、ニホンミツバチを誘引する物質であるとする化学合成品を塗りつけた「シャーレ」が吊り下げられている。 別の巣箱には、網を被せたキンリョウヘンが置いてある。 この蜂玉の探索蜂は、どちらに興味を示すだろうか?

誘引剤を吊り下げた巣箱

キンリョウヘンの巣箱
 それぞれの巣箱を、見てみる。
 化学物質を使った誘引剤の巣箱。 シャーレ付近には、探索蜂は見当たらない。 よくよく見るとミツバチが巣門から出入りしているようであるが、その数は多くない。 この巣箱は、蜂玉と目と鼻の先であるのに。 10日ほど前から快晴・無風の日にはコンスタントに数匹ほどの探索蜂が訪れているのであるが、その程度である。
 キンリョウヘンを取り付けた巣箱。 数匹のミツバチが、キンリョウヘン付近に取り付いている。 蜂玉から数メートルの距離、もっともっと沢山の探索蜂が、来ていても良いはずなのに。
 ニホンミツバチに対して効果があるという「誘引剤」にも、「キンリョウヘン」にも、思ったほどには興味を示さないミツバチ?  分蜂したミツバチは、非ニホンミツバチか?  そうなんだ、きっと。

取り込んだ巣箱


動画(スタートボタンを押してください)
 「合成誘引物質」にも「キンリョウヘン」にも興味を示さないとしたら、このまま放っておくと、どこかに飛び去ってしまうに違いない。 仕方がない。 蜂玉を捕獲しなければ。
 蜂玉になっているミツバチを、できるだけ多くポリバケツに掻き入れる。 ただ、数を欲張ると、ポリバケツに入れたミツバチが飛び出し始めて始末に負えなくなってしまう。 ミツバチの7・8割がポリバケツに入ったところで、それを、ポリバケツから重箱型巣箱に落とし込む。 蜂玉のあったところに集合している取り残してしまったミツバチを、再度、ポリバケツに落とし込む。 今度のミツバチは、巣箱の中には、落とし入れない。 ポリバケツに入っているミツバチを巣箱に入れるために天蓋を開けると、最初に入れたミツバチがワァッと飛び出してくるから。 ポリバケツを巣箱の近くに置く。 ポリバケツにいるミツバチは、巣箱と蜂玉のあった場所を飛び交いながら、二度目でも取り逃がしたミツバチを連れて巣箱に入っていく。 分蜂の兆しを見せてから、この間、ジャスト25分。 蜂玉のあった桃の幹に、ミツバチは残っていない。
 巣箱に入ったミツバチは、花蜜を集めるかのように、巣門から遠くへ飛んでいっては戻ってきている。
 
取り込んでから1週間後
 分蜂して蜂玉をつくったミツバチを、重箱型巣箱に収容して1週間が過ぎた。 花蜜や花粉を盛んに運んできているので、巣板は相当に大きくなっているものと思われる。
 その巣箱内部の写真が、左に示す2枚である。 左側は巣箱の中央から真上に向かって撮ったもので、巣箱の左奥にあるミツバチの塊の一部が写っていない。 それを考慮して撮ったのが右側で、画角は回転していない(上下左右は同じ)。 巣箱の内法寸法は左右が28センチメートル、奥行が30センチメートルであって、十文字の巣落ち防止棒は巣箱の中央にある。 このミツバチ群の大きさが推計できよう。
 巣板は、ミツバチに隠れて写っていない。

捕獲して21日後
 蜂玉を捕獲して、ジャスト3週間。 この巣箱生まれの働き蜂が、羽化する直前である。 写っているミツバチは、蜂玉を形成していたハチである。 捕獲以後の3週間で死んでしまったミツバチもいるだろうから、徐々にではあるが減ってきているはずである。 2週間前の写真と比べると減少していないように見えるのは、巣板の体積が増えているためであろう。
 明日あたりから働き蜂の羽化が始まって、ミツバチの数が急速に増えていくことが期待される。
 
取り込んでから5週間後
 この巣箱で育った働き蜂は10日ほど前から羽化しているはず。 羽化前の「捕獲して21日後」では、2段目の重箱の巣落ち防止棒辺りまでミツバチが群がっていた。 それが、その下にまで群がっている。 ただ、巣板は4枚ほどであって、巣箱に空き部分が多い。 巣箱全面が巣板で満たされるようなことを期待しているのであるが・・・。

7週間後
 
王台

蓋掛けされた王台
 上記の写真撮影の直後に、人工分蜂のため、中央寄りの巣板1枚を切り取った。 その2週間後の様子を見ると、切り取った部分の巣板は、元通りに修復されていることが分かる。 その人工分蜂時に、新しい巣箱へ戻り蜂として相当数の働き蜂を導入しているので、この巣箱にいる働き蜂はその分だけ減ってしまったことになる。 その減少した働き蜂は、それから2週間経過しても、完全には補充されていない。 産卵から羽化するまでに働き蜂では20日間を要するので、働き蜂の減少を察知して大急ぎで産卵数を増やしたとしても、その効果が見えるのは現時点から1週間後か?
 働き蜂が減少したためか、巣板の下部が見えるようになった。
 王台が2つあるのが見える。 この巣箱の女王蜂は越冬したものであるから、女王蜂の「更新」であるかも知れない。 「2週間前の人工分蜂時に女王蜂を失ってしまった」という可能性はない。 何故なら、女王蜂の羽化日数が15日であるので、王台の卵が産み付けられた時期は人工分蜂の数日後に相当するから。
 現時点では働き蜂の数が少ないので、2匹の女王蜂が誕生することはないかも知れない。 もし2匹とも誕生すれば、分蜂することになる。 そのようになることも想定して、頻繁に見巡る必要がある。
 このミツバチ群は、「人工分蜂法によりミツバチ群を入手」→「越冬」→「初春の自然分蜂で蜂玉形成」→「蜂玉の捕獲」→「人工分蜂法によって一部を割譲」→「王台の形成」と変遷している。 なお、このミツバチ群の「親」は「キンリョウヘン」に誘われて入居した群であるが、このミツバチ群は「キンリョウヘン」や「化学合成誘引物質」には無関心である。
 蓋掛けされている王台もある。 昆虫一般での「繭」である。 女王蜂として育てられた場合、繭の形成は、産卵後8日目で、5齢の「幼虫」後期ステージである。 このステージで4日間を過ごして、12日目には、繭の中で6齢の「蛹(さなぎ)」になる。 蛹として4日目に、女王蜂として羽化する。 卵が産み付けられてから、15日後である。 蓋掛けされた時点から1週間後に、女王蜂が誕生することになる。
 このように観察できるのも、ミツバチの数が少ないからである。 通常であれば、ミツバチを払わなければ見えないところである。 ミツバチ群が小さいことの利点である。

E-Mailアドレスはこちら
totchane@yahoo.co.jp
上記アドレスをコピーの上、
ご使用のメールソフトを使用して、
ご意見を送信して下さい。


(since June 15th, 2014)
「井戸を掘って」 「温室を建てる」 「土に有機物を」 「トマトの実は」 「キュウリの夏」 「茄子の花は」 「ピーマンとトウガラシ」 「メロンを露地で」 「ニホンミツバチとともに」 「イチジクの長い実は」 「春の訪れは」 「烏骨鶏のことは」