1.
「ごめん、よしこ。遅くなっちゃって」
「いいよいいよ。私も今来た所だから」
「そう?まいちんだけ置いてきて、後ですごい怒られそうじゃない?」
「そうだよねぇ。まぁ、たまにはいいんじゃない?後で報告でもすれば」
「なおさら怒られそうな気がするんだけど。何よしこを独り占めしてんの!って」
「細かい事は気にしない。また今度三人で行けばいい訳だし」
「そうだね。んじゃ、いこっか」
アヤカは自然と吉澤の腕に手を回した。
二人は何度も行った事のあるファミレスへと向かった。
三人でつるむようになってからそれ程時間は経っていないにも関わらず、
何度もそのファミレスへ行ったりし、それぞれの繋がりは確実に増している。
ふと周りを二人同時に見渡した。
真っ赤に映えた西の空が、にわかに黒くなり始めていた。
他のメンバーが吉澤を目にしたのは、これが最後だと証言する。
新聞記事になる2週間前の事である。
最後に会ったのはこの時に一緒に食事をしたアヤカ。
ある一人のメンバーを除いて。
今日誘ったのはアヤカの方だった。
それには理由があった。
それは、親友のまいにも言っていない、自分の中にある真実が限界を迎えたからだった。
今ある三人の関係性は最高の状態だと言い切れると思う。
二人ともが大好きで、これからもずっと一緒にいられるような関係でいたいとも思っている。
が、まいと吉澤への真実は、実際は違っていた。
いつそれに気付いたかというよりも、最初から違っていた。
ただ単純にそれを認めず、嘘で塗り固めていただけだった。
最初から吉澤は特別だった。
「ほら、またミートつけてる」
アヤカは吉澤の口の横についたミートスパゲティのミートを取り、自分の口に放り込んだ。
吉澤はここに来ると必ずこれを頼み、そして必ずミートを口の端につける。
他人事ながら、白い服なんて物を着ている時にはハラハラしっぱなしになる。
普段とても落ち着いていてとても年下には思わないのに、どこか危なっかしいところもある。
自称世話好きとしては、たまに見せるそのどうしようもなさにドキドキしている。
「ん?あぁ、ありがと」
「よっちゃんってさあ、意外と手がかかるよね」
「すんませんねぇ」
「そんでリアクションは親父だし」
傍から見れば甘い瞬間のような場面が訪れたとしても、この人はそ知らぬ顔。
何事も無かったかのように食事を続けている。
まいちんがいたら二人で色々サプライズを考える事が出来るけど、
こうして二人だけになるとなかなかいいアイディアは浮かばない。
こういう時にこそ、ビッグなサプライズを出したいのに。
だけど今日は、超ビッグなサプライズを考えてある。
考えたというよりも、一大決心といった方がはやそう。
ほんの些細な事で揺らいでしまいそうなそのサプライズを出したら、
もしかしたら今ある最高に大切なものを失う可能性がある。
それが恐くて今までしまっていた。
何でそれを今日出そうかと思ったかというと、朝見た全てのTV占いが良かったからだ。
きっかけなんてそんなものなのかもしれない。
食事が終わったら何処か夜景の綺麗な所にでも行って、そこで。
色んなシュミレーションを頭に描いていたせいか、
自分の皿のものがほとんど減っていない事に気付いた。
「よっちゃん」
吉澤の方は、3分の2ほど減っていた。
一応この後何かあるか聞いておきたかった。
どこかで『ごめん、これから用事があるんだ』と言って欲しい気持ちもあった。
「ん、何?」
「あ、あの今日この後さ・・・」
話している途中で吉澤の携帯電話が鳴った。
「あ、ごめん」
吉澤は携帯でその名前を確かめると、その場に立った。
「ごめん、ちょっと待ってて。すぐ戻ってくるから。話は後で聞くよ」
「う、うん」
携帯を耳に当てながら小走りで出て行く吉澤の背中を見ると、大きなため息が出た。
その電話の主に対しては、複雑な気持ちだった。
「今の間にちゃんとまとめておこ」
頭の中で言葉をまとめながら、全く減っていない食事を続けた。
「アヤカ、ごめん」
「どうしたの?」
2分程経って吉澤は戻ってきた。
少し暗い顔をしている。
「用事が出来ちゃった。この埋め合わせはまた今度するからさ」
吉澤は1000円札を財布から出してテーブルの上に置いた。
「え?ちょ、ちょっと待って」
「ほんとにゴメン。後でメールするから、それじゃ」
吉澤は颯爽とその場から去った。
あまりにスピーディーで唐突な展開に、ただその後姿を見送る事しか出来なかった。
あれから5日経った。
吉澤からはメールも電話もない。
今日は生放送の番組があり、30分前からテレビの前にかじり付いていた。
相当忙しくて連絡できなかったのか、こっちから電話しても一向に出ない
その姿を一目見て早く安心したかった。
が、その姿を見る事が出来なかった。
番組放送内では「体調不良」による欠席という事だった。
その番組が終了後、事務所の人から連絡がきた。
調べた所、最後に吉澤に会ったのが自分だという事だった。
その日二人で一緒に食事に行ったのを話した。
勿論、その時に話そうと思っていた事を喋ったりなんかしていない。
あれからずっと胸騒ぎがしていた。
どこか抜けているような所はあるけれど、わざと人を心配させるような人じゃない事は分かっている。
きっと何かあったんだ、あの電話の後に。
あの電話がキーになるとピンときていたから、この事は誰にも話さなかった。
すぐに家を飛び出し、吉澤を探しに出かけた。
あてといえば、3人で遊びにいったような場所しかないけれど、じっとなんかしていられない。
自分の気持ちを整理し、全てを伝えようと思っていたあの夜。
たった1つの電話でぶち壊された。
自分にとっては悪魔のような電話だった。
アヤカもその日から姿を消した。
3.
『モーニング娘。の吉澤ひとみさん、生放送番組を欠席。長期離脱、あるいは脱退も?』
ある新聞の一面に載った、この言葉。とある生放送歌番組を一度休んだだけで、
ここまで書かれてしまうのは、まだまだ人気はある、という裏づけになるのであろうか。
「ほんま、好き勝手書いてくれんな」
事務所でこの新聞を目にしたつんくは、大きくため息をつき、くわえていた煙草を乱暴に揉み消した。
なまじっか外れていないマスコミ記事に、先読みされた事からいらいらし、
その気分を一掃出来ないままつんくは自分の部屋を出て、同じ事務所内の会議室へと向かった。
つんくが会議室のドアを開けると、そこにはあらかじめ呼び出しておいた3人が椅子に座っていた。
3人とも、つんくが入ってきたと同時に立ち上がり、深く挨拶をした。
めんどくさがったつんくは、軽く手を挙げてそれを挨拶代わりにし、3人を座るように促した。
そして、その対面に腰をおろす。
「忙しい所、悪いな。3人に色々話したい事があってな」
きっと吉澤の事である、という事は3人はすぐに分かった。
つんくは胸のポケットから煙草を取り出し、火をつけた。
大きく煙を吸い込み、一気に吐き出す。それと同時に言葉を続けた。
「吉澤の事なんやけどな。何の知らせもなしに番組休みよった。親御さんにも全く連絡無いそうや。
警察にも届け出したらしい」
「・・・」
「でも、まだ何の手がかりもないそうや」
「そうですか」
飯田が落胆した様子で呟く。
「スケジュールも大変や。そんな事はみんなが一番良く分かってると思う」
3人は、つんくの意図している事が全くわからない。
何が言いたいのだろうか。
「で、あいつのここ最近の態度を考えたら、あんまやる気があるようには俺には映らん。
だからいっその事、卒業って形を取ろうとおもてんねんや」
「えっ!!」
あまりにも突然の言葉に声をあげたのは、リーダーの飯田だった。
「そ、そんないきなり!」
「まぁ、いきなりっていやいきなりやけど、理由付けなんて何とでもなる。
学業に専念、って所が無難かな」
「ほ、本気で言ってるんですか?」
「俺はいつでもマジや。俺も慈善事業でやってる訳やない。
リーマンやったらもうとっくに首飛んでるわ。それと一緒。
おらん奴の事なんか、いつまでもかまってられへん。
あいつが家出しようが誰かに誘拐されようがそんな事に興味は無い。
金を稼ぐかどうか、俺にとって大切なんはそれだけや」
「そ、そんな・・・」
「マスコミもあれこれゆうかも分からんけど、その辺はこっちに任せとけ。
何とかするわ。とりあえず他のメンバーには言うなよ」
そこまで言い終えると、つんくは灰皿にではなく床に煙草を落とし、足で火を揉み消した。
「矢口、何かきづかへんかったか?」
そこに本当に興味があるのか、無機質なトーンで問う。
「い、いえ。何も・・・」
「そうか」
「なぁ」
そして、つんくはもう一人呼び出したメンバーに声をかけた。
「あいつと一番仲良かったんはお前やと思ってるんやけど、どうや?」
「は、はい。仲は良かったですけど・・・」
「何も知らんか・・・まぁ、みんないつも一緒におるからプライベートな所まで
入りたくないんかもしれんしな」
そういうとつんくは立ち上がり、「そういう事やから」と言い残して部屋を後にした。
残された三人は突然の通達にまともな思考能力が働かず、頭の中は混乱を極めた。
最後に付け加えられた言葉。
「あ、これは相談やなくて報告やから。」
この言葉が頭を反芻する。
「ね、ねぇ。カオリ。どうしよう?」
「う、うん」
「うん、て何よ!カオリ、リーダーでしょ!?何とかしてよ!」
興奮していた矢口は、つい大きな声で怒鳴ってしまった。
何も出来ない自分の苛立ちを、他人にぶつけた。
飯田は頭を垂れ、言葉を発せずにいた。目には少し涙が溜まっている。
「ご、ごめん。いらついちゃって。カオリに当たってもどうにもならないのに」
「ううん。いいの。カオリ、頼りないリーダーだから」
「そんな事ないって。とにかく、よっすぃを探そ」
「どうやって?」
「・・・」
皆目検討もつかない吉澤の失踪に、二人はどうしていいのか分からなかった。
とっかかりさえも見つからない。
茫然自失としている二人を見つめる、もう一人のメンバー。
彼女も悲しい顔をしていた。が、心の中では違っていた。
ドラマや映画で磨いた演技力を惜しみなく発揮した。
そうだ、こういう時に役に立つんだね
「とにかく、なっちや裕ちゃんに相談してみよ?」
「うん」
矢口の提案に、飯田は頷いた。自分ではどうにも出来ない。
もしかしたら、中澤なら何かいいアドバイスをくれるかもしれない。
本体を抜けた後も、リーダーとして何をすべきか、迷った時には常に相談をもち掛け、
いつも解決してくれていた。
そんな中澤に、自分のふがいなさを嘆くと同時に、微かな期待を抱いていた。
「いこっか」
矢口の言葉に、飯田が立ち上がる。
そして、もう一人のメンバーもその後に続いた。
先に会議室を出て行った二人の背中を確認して、ここで初めて彼女は本当の感情を出した。
「ぷっ。バカばっかり」
そう呟くと、彼女は込上げてくる笑いを押し殺した。
肩を震わせ、お腹を押える彼女。早く出て行かないと何か思われるかもしれない、
そう思った彼女は改めて顔を作り直し、ドアを開け二人を追いかけた。
会議室に置かれた熱いお茶が注がれていた湯飲みは、一つだけ飲み干されていた。
4.
都内を離れた郊外に家を買った。条件はただ一つ。
地下室がある、という事だけ。
今まで仕事で貯めたお金もあるし、両親も特に反対しなかった。
条件はたった一つだったので、予想以上に早く見つける事が出来た。
仕事場へ行くには不便ではあるけれども、そんな事は気にならない。
目的を達成する為ならば。
他のメンバーに知られる要素も少ない。
ここまで遠い所に来たいとも思われない。
最も他のメンバーに何て言われようとも、家に入れるつもりはないのだけれども。
何故なら、そこは二人だけの空間だから。
誰にも邪魔されたくないし、邪魔させない。
何時間もかけて電車とバスを乗り継ぎ、家に帰る。
家に帰る為だけに家を出る。
バスを降りると、四方八方から虫の鳴き声が聞こえる。
お帰り、と言われてるような錯覚に陥りそうになりつつも、
無視して家路へのたった一つの獣道に入る。
常時持つようにしている懐中電灯のスイッチを押す。
真っ暗で鬱蒼とした森の中を歩くのにも少しずつ慣れてきた。
奥へ進むにつれ大きくなっていく虫の鳴き声は、初めはかなり怖かった。
早く帰って顔が見たい。
それだけを考え、狭くて暗い獣道を歩く足を速める。
そして何時の間にかダッシュしている。
転んで膝をすりむいて、血が流れてもどうでもよかった。
早く帰らなきゃ、今心にあるものはこれだけである。
メキメキと小枝を踏み、走り続ける。
七転び八起き。
まさにこの言葉の通り、転んだり立ち上がったりしながら30分程走り続け、漸く家に着いた。
汗だくになりながらふと腕時計を見ると、もうすぐ曜日が変わろうとしていた。
ぱっとみは、この薄汚れた洋館はちょっとしたお化け屋敷。
知らない人がここを見たらきっと入る気にはならない雰囲気。
汗でしわくちゃになった、スカートのポケットから鍵を取り出してドアを開ける。
「ただいまー」
真っ暗な空間に、その声は反響する。他の人の声は何も返ってこない。
そのせいもあってか、家に入ると外との温度差を感じる。
電気をつける事もなく、真っ先に向かう所はキッチン。
帰ってくる時にコンビニで買ってきたお弁当。
そして、彼女の大好きなベーグルも忘れずに。
レンジでチンして、それを地下室に運ぶ。
帰ってする事はまずそれ。
いや、他にやる事はない。彼女に食事を運び、お話をする。
暖めた弁当とペットボトルの水を持って、地下室へと向かう。
ガッチャン
頑丈な地下室の鍵を開け、階段を下りる。
唯一の窓から淡い月の光が差し込んでいる。
古い家のせいもあってか、少しかび臭い。
階段を降りきると、そこにはたくさんのダンボールが乱雑に積まれてある。
そして、壁際に1つ、鉄格子のついた檻がある。
その中に、1人の少女が膝に顔をうずめていた。
他に中にあるものといえば、毛布が一枚あるだけだった。
石川は檻の鍵を開けて、食事を吉澤の前に置いた。
「よっすぃ。ちょっと遅くなってごめんね。今日3本撮りだったんだ。あり得ないよねぇ。
疲れちゃった。はい、ご飯持ってきたから。ちゃんと食べてね」
そう言っても、彼女は顔をあげなかった。
彼女の横には、今朝置いてあったトーストが置きっぱなしになっていた。
朝は半熟だったゆで卵も、すでに硬くなっていた。
「朝も食べなかったの?お腹空いたでしょ?食べて?」
2度目の言葉に彼女は反応した。
ゆっくりと顔を上げたその表情は、何も感情を持たない人間のようだった。
「・・・いらない・・・」
「何で?ベーグルも買ってきたよ。ね、食べて」
「いらない、ってば!」
そういうと、彼女は弁当とベーグルの入った袋を払いのけた。
そして、また顔を膝に埋めた。
「いつまで私をここに入れておくの?」
「いつまで、って。いつまでも」
「何で・・・?」
「だって、こうでもしないと、よっすぃを独り占め出来ないんだもん」
石川はさも平然とこう言った。
顔をあげた吉澤の目に、月夜に照らされて不気味に映る石川の笑顔があった。
「私の人生はどうなるの?」
「私がいればそれでいいでしょ?ずっと傍にいるよ?」
「モーニングはどうなってるの?」
「そりゃぁ、よっすぃがいなくなって大騒ぎだよ。でも、私が誤魔化してるから全然大丈夫だよ」
「・・・そういう事じゃ・・・」
「最近、ずっとアヤカさんとかと仲がいいみたいじゃない?」
「・・・うん」
「そんな事で私から逃げられると思ったの?」
「逃げるって、そんな・・・」
石川の頭の中はどうなっているのだろうか?
吉澤には分からなかった。
分かりたくなかったと言った方がいいのかもしれない。
毎夜毎夜繰り返される、分かりきった話のエンディング。
「ねぇ。せっかく二人きりなんだから、楽しいお話しよ。えっとね、今日ね・・・」
コロコロと表情を変え、石川の一方的な話が始まる。
一人で喋り、一人で笑う。時にメンバーの話題も出しつつ。
吉澤はただ呆然と聞いているだけ。何も耳に残らない。
「じゃ、お休み。ご飯置いていくからちゃんと食べるんだよ?」
満足した石川はこの重苦しい空気の地下室から出て行った。
吉澤は石川の背中を見送って、運び込まれた弁当に一瞥をくれた。
もしかしたら力ずくでやれば、石川が食事を運ぶ為にこの鍵を開けた瞬間を狙えば、
ここを出られるのかもしれない。
力なら負けない自信はある。でも、ここに入ってもう2週間。
ろくな食事もとっていない為、頬もこけてきた。
運び込まれた遅すぎる夕食のベーグルに手を伸ばし、1つ手に取った。
あんなに大好きだったベーグルも、今見るとただの塊のようにしか見えない。
ゆっくりとそれを口に含む。
「あれ?こんな味だったっけか?」
吉澤はベーグルをかみ締めた。
だけど、何年も食べ続けているはずのその味の記憶を引き出してくれない。
何度も何度も味わってみる。思い出せない。
「みんなどうしてるかな・・・心配させてるよね。ごめんね。
でも、どうしたらいいのか分からない・・・」
一人ぼっちの鉄格子の中で、真っ白な月を眺めながら、そう呟いた。
そして、吉澤の中にある思いがあった。
何でここにいるの?
石川のすねから流れ出ていた血は、吉澤の目には止まらなかった。
5.
ゆっくりと目を開けると、薄暗い天井が見えた。
体はだるさを訴え、激しい虚脱感を感じる。
喉がカラカラだ。水が欲しい。
視線と天井の間に、ぼんやりとした見覚えのある顔が出てきた。
「やっと起きた。はぁ、心配したんだからね」
「まいちん」
自分の思っていた事を先読みされたのか、まいちんは私の体をそっと起こしてくれ、
水差しで水を飲ませてくれた。
砂漠に落としたように私はその水を一気に飲み干した。
ゴホゴホとむせると、まいちんは優しく背中をさすってくれた。
大丈夫?3日も眠り続けてたんだよ」
「え?そんなに?」
曖昧な記憶を手繰り寄せた。
吉澤を探し始めてから1週間、ほとんど飲まず食わず、そして眠らずの状態で歩き回っていた。
吉澤の実家とその周辺、二人で、もしくは3人で旅行に行った場所。
思い当たる所は全て回った。
役に立ちそうな情報を手に入れる事が出来ずに探す所が無くなり、
朦朧とした意識の仲で東京に帰ろうとしていた。
ここまでは何とか記憶がある。
「東京駅のまん前で倒れたたんだよ。通りかかった人が病院に連絡してくれて、
今に至るって訳。ほんと、もう起きないのかと思ったよ」
その説明を聞いてはっとした。
「まいちん!よしこは!?」
まいちんは黙って首を横に振った。
目を覚ました時以上に頭がクラクラした。
「まいちん、私・・私・・・」
堪えていたものが一気に噴出した。
顔を覆って目を抑えても、自分で止める事は出来なかった。
「アヤカ、よしこに言いたい事があるんだよね」
「えっ?」
「あたし達、もう何年の付き合いだと思ってんの?」
「まいちん」
「ちゃんとよしこに伝えようよ、ね?」
「うん」
体をベッドから下ろし両足で立ってみると、少し足がガタガタと震え頭がクラクラした。
ぐぅー
「アヤカ、お腹空いてるの?呑気なもんだねぇ」
「だって三日も何も食べずに寝てたんだよ」
「とりあえず何か食べに行こう」
「うん」
真夜中の病室を抜け出し、外へ出た。
まずはご飯を食べれる所を探して、それから人探し。
ファミレスだったら24時間やっているだろうし。
必ず見つける。
私の気持ちを知ってまいちんに何て思われるか、それを考えると
相談も出来なかったけど、今は二人。二人だと心強い。
見逃している所もあるかもしれない。
「行くよ、アヤカ」
2人は夜の闇に消えた。
1人、二人と消え、こうして3人目が消えた。
それから数日後、テレビのニュースでハロープロジェクトのメンバー3人の解雇が発表された。