砂上のマルアーク 第二話『出撃』 

レナート(16歳)男:裕福な医者の家に生まれた戦災孤児の少年。
マルコ(16歳)男:貧民街の孤児。掃除夫の仕事をしている。
エルモ(16歳)男:貧民街の孤児。かっぱらいで生計を立てている。
ジルダ(16歳)女:酒場で働く少女。同じく戦災孤児。
ウーゴ(38歳)男:スループ『酔いどれ鼻唄』号の艦長
ガスパーレ(42歳)男:帝国軍少佐
リザ(29歳)女:帝国軍中尉



ジルダ:レーダーに反応!北西より大型艦影1隻。
    これ『ガレアス』クラスよ!?

レナート:ガレアスって帝国軍の戦艦クラスじゃないか!!

ジルダ:狙いは多分、あいつらの乗ったスループの方でしょうね・・・

レナート:ジャミングはそのまま、速力最大、取り舵40度、
     スループの左側を迂回!俺、マルアークで出るよ!

ウーゴN:カナンの遺跡調査を依頼され自慢の『酔いどれ鼻唄』号を出航させた。
     しかし、俺達みたいな盗掘屋に軍用甲冑レギオンの支給って・・・
     まぁ、くれるってんだから有り難く貰っとくけどよぉ。
     きな臭せぇ仕事は慣れてるが、ただでは済まねぇんだろうなぁ。

マルコ:エルモ、どうだ?やれそうか?

エルモ:・・・何とか?

マルコ:しっかりしてくれよ・・・

エルモ:ぃゃ、乗れねぇ訳じゃねぇよ。
    通常装備の扱いなら何とかなる。

マルコ:で?

エルモ:はは・・・支援用火器の使い方が・・・よくわからん・・・

マルコ:兵装の変更方法か?

エルモ:次弾装填とか固定アンカーの使い方とか・・・
    アンカーを出したらその場から動けなくなるんだろ!?

マルコ:ったりめぇーじゃねぇか・・・
    それに、使い方って言っても殆んどオートマだぜ?

エルモ:大体、支援とかよく分からねぇよ!
    射程ギリギリに離れて撃ったってあっという間に接近されるじゃん!

マルコ:お前・・・前衛の僚機もいないのに支援攻撃してたのか!?

エルモ:はは・・俺はアサルトライフルとマシンガンが一番使いやすいな!
    見ろよ?これならランクAだぜ?

マルコ:マジかよ・・・俺はランクCだ・・・

エルモ:へへっ俺の勝ちだな!

マルコ:ばーか、俺は支援ではランクB取ってんの!
    お前は初級ミッションすらクリアできずにランク外じゃねぇか!

エルモ:じゃあ俺の支援はお前に任せたぜ?

マルコ:あいよ。

ウーゴ:お前ぇら!早速だが出撃だ!
    甲冑に乗り込め!

エルモ:オッケ〜!マルコ、行くぞ!

マルコ:緊張すんなぁ〜

ウーゴ:お前ぇら、ハッチ開けるぞ!



リザ:前方6マイル、レーダーにスループと思わしき小型船の反応!
   目標の『酔いどれ鼻唄』号だと思われます。

ガス:そうか・・・見つけたか。
   奴等は反乱分子の旧大公派から渡った
   レギオンタイプの機動装甲兵を所有している。
   小型船の搭載数など知れているが、侮っては思わぬ被害を出すやも知れん・・・
   機動装甲兵部隊はカタパルトデッキにて待機。
   私もレガトゥスで出る!



ウーゴ:なにぃ!?接近中の大型艦から甲冑が出撃しただとっ!?
    こっちに向かって来てるのか・・・!?


エルモ:ひゃっほぉ〜ぃ!!
    見ろよ、この加速!工業用の甲冑とは流石違うぜ!

マルコ:あんま調子に乗んなよ?
    でも、確かにこりゃイイや!

エルモ:俺らを含めて全部で6機か・・・
    みんな結構やるけどさ、俺が一番上手いんじゃね?

マルコ:シミュレーションの白兵戦じゃお前がトップの成績だったしな。

エルモ:まぁなw

ウーゴ:(通信)お前ぇら聞こえてっか!?模擬戦の予定は中止だ!
    今、こっちに甲冑の部隊が迫って来てやがる。
    初っ端から実戦に放り込むのは気の毒だが、こっちもそうは言ってられねぇ
    最初の任務だ!接近する甲冑部隊を追い払え!

エルモ:って、おぃおぃマジかよ・・・実戦だってよ!?

マルコ:敵は何者なんだ?海賊か!?

エルモ:やるしかねぇんだよな?

マルコ:とりあえず仕事だしな・・・エルモ、いざと言う時は助けてくれよな?

エルモ:び、びびんなって・・・



ガス:レギオン隊、横並びの隊形で敵陣に砲火を浴びせる!
   ショルダーキャノンに榴弾装填、機体固定アンカー用意!
   二斉射のちの突撃に備えてアサルトライフルの装備も忘れるなよ!

リザ:(通信)ガスパーレ少佐、目標まで距離4.7マイル。まもなく射程圏内に入ります。

ガス:目標の進路は変わらずか?

リザ:(通信)はい。しかし、あちらもレギオンを展開させた模様。
   布陣はランダムで組織的行動は見られません。

ガス:大方こちらに気づいて慌てふためいておるのだろう・・・
   砂海の火蜥蜴と称されるこのガスパーレの実力を見せてやろうではないか。

リザ:(通信)射程、入ります!

ガス:ショルダーキャノン2斉射、撃てぇ!!

リザ:(通信)目標スループに命中確認。航行停止しました。

ウーゴ:(通信)うぉ!?船の機関部がやられた!!
    敵さん、いきなり撃ってきやがったぜ・・・
    相手さんは問答無用のようだ!てめぇら、しくじんじゃねぇぞ!?

エルモ:わかってらぁ!こっちは命掛かってんだよ!!

マルコ:で!敵は何機なんですか!?

ウーゴ:(通信)甲冑9機、横並びから突撃を掛けて来てる!

マルコ:模擬戦だっていうから実弾詰めてきたのサブマシンガンだけですよ!?

ウーゴ:(通信)仕方ねぇだろ!予期せぬ奇襲ってヤツなんだからよ!
    つべこべ言ってねぇで何とかしろぃ!もう近くにいるぞ!!

マルコ:ぅわっ!来た!!

エルモ:遅せぇ!これでも喰らえぇ!!

マルコ:ふぃー・・・エルモ、サンキューな。



ジルダ:ガレアスから出撃した甲冑部隊がエルモ達と交戦状態に入ったわ!

レナート:アルマーク始動、カタパルトの射出よろしく。
     アイツらは俺がきっと守るよ!ジルダ達は通信距離を保ったまま
     岩陰に非難してくれ。

ジルダ:分かった。

レナート:アルマーク出撃します!



ガス:敵兵力は少数、しかも素人同然の動きだ!
   一気に掃討するぞ!

リザ:(通信)少佐!新たな機影発見!4時の方向・・・は、速い!

ガス:どうした!

リザ:(通信)分かりません・・・敵方の士官機でしょうか!?
   少佐のレガトゥス機よりさらに速い機影が急速接近しています!

ガス:うろたえるな!状況を正確に報告しろ!
   各機、通信は聞こえているか!?聞いての通り新手が出現した。
   私はその士官機を追う。後の雑魚は任せたぞ!?



レナート:対装甲砲、徹甲弾装填。
     フットアンカー固定・・・当たれぇ!!

ウーゴ:何だ!?敵のレギオンを大破させやがった!!
    この白い甲冑・・・味方なのか!?

レナート:次弾装填完了・・・エルモ、マルコ、どこだ!

ジルダ:(通信)レナート!10時の方向から敵が来るわ!

レナート:このっ!

ガス:当たらぬ!
   そこの白い機体!お前は何者だ!!

レナート:レギオンじゃない!?士官機か・・・

リザ:(通信)モニターに映る機動装甲兵を照合しましたが、
   帝国のデータバンクには該当機がありません!

ガス:新型?・・・旧大公派の作った試作機とでも言ったところか・・・

レナート:こんな奴の相手をしてる場合じゃないのに・・・
     邪魔をするなっ!!

ガス:どこを狙っている!
   性能は悪くないが・・・乗り手が悪いな。
   対装甲砲はこうやって使うものだ!!

レナート:避けるぐらい・・俺だってっ!!

ガス:甘いな、機動性は高いようだが・・・ホバー走行では慣性の法則に逆らえんよ!
   そこだ!

レナート:ダメだ・・このままじゃ!ならっ!!

ガス:なに!?ホバー中に急ターンだと!?
   前言撤回だ、やってくれる・・・
   片足のみアンカーを固定し、それを支点に弾道をかわすとは・・・

ジルダ:(通信)レナート!急いで!
    戦艦ガレアスからの砲撃が始まったわ!
    このままじゃエルモ達の部隊が全滅させられちゃう・・・

レナート:わかってるよ!・・・こいつには徹甲弾じゃダメだ・・・

ガス:いい加減に落ちろ!

レナート:バーニア出力最大!

ガス:馬鹿め・・・飛び上がれば狙い撃ちだ!    

レナート:いっけぇぇ!!

ガス:っ!?
   しまったっ!目がぁー!!

レナート:次は照明弾じゃないぞ!当たれぇ!!



ガス:くっ・・・・してやられたか・・・

リザ:(通信)少佐!大丈夫ですか!!

ガス:大丈夫だ・・・それより戦況は!?

リザ:(通信)ハッ、目標のスループおよびレギオンは全機沈黙
   しかし我がレギオン隊も5機が大破・・・
   ガレアスに受けた損傷は軽微で運行に問題ありません。

ガス:そうか。こちらは新型を捕り逃した。
   自走は可能だが戦闘行動をとれん・・・
   電気系統をやられたらしい。

リザ:(通信)ガレアスの戦力があれば、目標の拿捕も可能だと思いますが・・・
   どうされますか?

ガス:取り逃がした白い機動装甲兵は、なかなかやってくれる。
   深追いすればこちらも危険だ、一旦後退し軍備を整える。

リザ:(通信)了解。
   少佐、迎えをよこしますか?

ガス:かまわん。自走で帰艦できる。



レナート:エルモォー!!マルコォー!!

ジルダ:ホントに全滅しちゃったの・・・!?

レナート:そんな訳ない。あいつらが簡単に死ぬもんか!

ジルダ:エルモ〜!どこに居るの〜!?隠れてないで出て来ないさいよぉ〜!

レナート:マルコォー!

エルモ:・・・・・うるせぇよ。

ジルダ:エルモ!

エルモ:なんでお前らがココに居んだよ・・・?

ジルダ:あんたねー!あんた達がレナートに心配掛けるから
    わざわざ様子を見に来てやったんでしょ!

エルモ:頼んでもねぇのに・・・

ジルダ:あら?じゃあ、このまま砂海の上に放って帰ればいい訳?

エルモ:ぁ・・・いゃ、その〜・・・

レナート:それよりマルコは?マルコは無事なのか?

エルモ:へへっ、当然だろ?
    むこうの岩陰でぶっ壊れたレギオンの使える部品を漁ってるよ。

レナート:なんだ・・・よかった。

ジルダ:それより、何なの!?
    あんた達を襲ったのって帝国正規軍じゃないの!?

エルモ:やっぱ、そう思う?

ジルダ:そう思う?・・・じゃないわよ!
    一体、何の仕事をしてんのよあんた達は!

エルモ:何の仕事って・・・遺跡調査だって聞いたぜ?

ジルダ:ただの遺跡調査で正規軍が戦艦まで動員して現れる訳ないでしょ!?

レナート:うん。きっとその遺跡調査・・・何かあるんだと思う。

エルモ:何かってなんだよ?

レナート:それは・・・

ウーゴ:お嬢ちゃん達。
    助けてくれてありがとよ。

ジルダ:あなたは?

マルコ:俺達の雇い主、ウーゴ船長だよ。

ウーゴ:艦長だって言ってんだろ!

ジルダ:で、遺跡調査の裏に何があるの!?
    なぜ帝国正規軍に狙われてるのよ!

ウーゴ:おいおい・・・いきなりだねぇ〜

ジルダ:帝国正規軍相手に戦って、あなた達を助けたんだから
    それを聞く権利はあると思うわよ?

ウーゴ:こりゃしっかりした娘さんだわ・・・
    そうだな。お嬢ちゃんの意見には一理ある。
    実はな、俺の依頼主は旧大公家なんだ。

レナート:旧大公家!?前皇帝の弟の血筋にあたる、あの?

ウーゴ:そうさ、でなきゃ俺みたいな奴がレギオンなんて軍用甲冑
    手に入れられる訳ねぇだろ?
    で、問題のカナンの遺跡に眠るお宝ってのは・・・
    前皇帝暗殺事件に隠された真実さ。

ジルダ:皇帝暗殺の真実ですって!?

ウーゴ:ああ、こいつは形のあるお宝じゃねぇが、
    大したお宝には違げぇねぇ。
    そこで相談なんだがよ・・・
    俺の船は帝国軍の攻撃で動力部をやられて動かねぇ。
    助けついでって言っちゃぁなんだが、
    お嬢ちゃんの船でカナンまで連れっててくれねぇか?
    もちろん報酬は払うぜ?

ジルダ:そう言われてもねぇ・・・

レナート:なぁ、カナンってフェニキアの民の聖地なんだろ?

ジルダ:そうよ?『約束の地』って意味の言葉
    それがどうかしたの?

レナート:マルアークを帝国軍に見られちゃったし、
     カナンに行けばマルアークをかくまってくれる人達も
     居るんじゃないかって思って・・・
     これから帝国領に帰るのも危険だろ?

ジルダ:・・・・んー。わかった、レナートはこのオジサンも助けたい訳ね?
    いいわよ・・・全く人がいいんだから。
    そういう事で、報酬はしっかり払って貰いますからね!

ウーゴ:いや〜ありがてぇ!恩に着るぜ。

                       第三話『廻航』に続く。