■マンション密室殺人事件■

【登場人物】

慧蔵院 善次郎(えぞういん ぜんじろう)男
慧蔵院探偵事務所所長。
今までも数々の難事件を解決してきた名探偵。
しかし切れ者には見えない独身貴族。

湯乃花 薫(ゆのはな かおる)女
慧蔵院探偵事務所の探偵助手。
善次郎の助手として行動を共にし事件と遭遇してきた。
善次郎の事を何気に使役している気の強い女性。

赤城 孝造(あかぎ こうぞう)男
県警本部の警部。
真面目な常識人と言えよう。





赤城警部:事件が起きたのは昨晩の出来事である。
     ホトケさんは布溝 津月(ふこう つづき)二十四歳、女性、独身
     池手内商事のOLで、密室にしたマンションの自室で首を吊り自殺・・・
     最近、付き合っていた男性と別れ、
     それを苦に命を絶ったのだろうと言うのが捜査当局の見方である。
     しかし、事件性がないとしながらも、
     一応の捜査は続けられる事になったのだ。
     ・・・・全く、税金の無駄遣いというものだな・・・

湯乃花:ここですね?
    昨晩、殺しがあった現場ってのは・・・

善次郎:その様だな。薫君・・・

湯乃花:下の名前で呼ぶな!きしょく悪い!!

善次郎:すまん。調子にのった・・・

湯乃花:でも、見事な吊りっぷりですね。
    あ、首吊り自殺ってした後、体内から汚物が出てしまうんですよね?

善次郎:ああ、そうだな。
    死ぬ前にはトイレに行かないと駄目だな。

湯乃花:ちょ、床に茶色いモノが・・・ぅわっクッサっ!!

善次郎:あー出しちゃってるね。
    ウン。なんて言うか・・・ウンを出しちゃってるね。

湯乃花:この死に方は最悪ですね。

善次郎:あー、死んでまで恥ずかしいなんてのは最悪だね・・・
    ついてなかったんだなぁ・・・運のない事だ。

湯乃花:いや、ウンはありますから。
    ウンがめっちゃ付いてますから・・・

善次郎:あーそうかもなぁー・・・
    運はなかったけどウンは付いてるんだよなぁ〜

赤城警部:おぃ・・・

善次郎:んあ?

赤城警部:お前ら、現場で何をしてるんだ!?
     関係者以外立ち入り禁止だぞ!

湯乃花:え?・・・えっと、亡くなった布溝津月(ふこうつづき)さんの友人と言うか・・・
    てか、ふこうつづき?さすがにその名前はないっしょ〜(笑)
    ネタですか?不幸続きで最後は殺されちゃったってオチですか!?

赤城警部:・・・・お前ら、どう見ても友人が死んだって反応じゃないだろ・・・

善次郎:さすがは刑事さん、鋭いですね!

赤城警部:鋭いも何も、分かり易過ぎだ!
     いいから、部外者は出て言ってくれ捜査の邪魔だ!

善次郎:いえ、私は私立探偵の慧蔵院善次郎(えぞういんぜんじろう)という者です。
    布溝(ふこう)さんを殺した犯人を捜す為、やってきました。

赤城警部:布溝津月(ふこうつづき)を殺害した犯人を捜す為だと?
     この事件は自殺とほぼ断定されているんだ。
     それに現場は見ての通り密室だったんだぞ!
     他殺だとするなら犯人はどうやって逃げたって言うんだ!

湯乃花:あの〜、警察の人間がそんなに部外者に捜査の情報教えないですよね?
    あなた、ホントに刑事ですか?
    なんか信用できないなぁ?もしかして犯人?
    星は必ず現場に戻っちゃったパターン?

赤城警部:何を馬鹿な!ほらっ!警察手帳だ。
     それより早くここから出て行け!公務執行妨害で逮捕するぞ!

善次郎:赤城孝造。ほー警部っすか!?
    でも、逮捕って・・・逮捕するなら布溝(ふこう)さんの元カレってヤツでしょう?
    人殺しちゃってるんですから・・・

赤城警部:だから早く出て行けと言っとるだろうが!!
     って・・・何?元カレが人を殺しているだと?

善次郎:ええ、だって布溝(ふこう)さん殺したのはその元彼じゃないですか。
    ご丁寧に自殺に見せかける為に、偽装工作までしてねぇ・・・

湯乃花:まぁウン付いてる彼女ですからねぇ・・・気持ちは分かりますけど・・・

善次郎:薫君?ウンの件は、そこまで引張る話題ではないと思うぞ?
    聞いてる人が食事中だったらどうするんだ?

湯乃花:だから、下の名前で呼ぶなって言ってんだろぉが!!
    だいたい何だよ?聞いてる人って!

善次郎:はぃスイマセン。聞いてる人ってのは大人の事情です・・・
    スンマセンでしたー。

赤城警部:だからお前ら・・・・

善次郎:警部、これを見て下さい。

赤城警部:何だ?というか、今、何かを誤魔化しただろ?

湯乃花:えーと、倒れた椅子よねぇ?これにもウンが付いちゃってるけど。

善次郎:警部さん。その椅子は何に使った思いますか?

赤城警部:何って、こう・・・首を吊る時の踏み台に使ったんじゃないのか?

善次郎:じゃあ、首を吊った時に使った様に置いてみて下さい。

赤城警部:いったい、どうしたっていうんだ・・・・こうでいいのか?

善次郎:何か気付きません?

湯乃花:あ、彼女の足が届いてない・・・
    椅子を起こしても、ウン子さんの足が宙に浮いてますね・・・

善次郎:ぉーぃ、もう名前変わってるぞー?

赤城警部:首吊りの輪を高くし過ぎて、椅子から飛びついたのかも知れんぞ?
     手で縄を持って飛びつけば、出来ない事もないだろう?

善次郎:そんなゆるゆるの輪っかじゃ、首が絞まってもがいてる時に抜けちゃいますよ。
    彼女の首の縄をよく見てください。

湯乃花:あー確かに、ウン子さんの首の縄は頭が抜けないぐらいの大きさに
    輪を作ってますね。

赤城警部:つまり首に縄をくくりつけてから天井に吊るした。という訳か。

善次郎:ええ、だとすると椅子は必ず、足の届く位置に置かないと首は吊れません。
    この事で自殺の線は消えます。

湯乃花:まぁそれに、自殺に首吊りなんて普通選ばないわよね・・・
    風呂場で手首切って睡眠薬・・なんて方が苦しまなさそうだし。
    ウンも出ないし・・・

善次郎:アレはアレで気分が悪いモノなんだぞ?
    楽な自殺の仕方なんてあるものか!

湯乃花:へぇ〜さすが!所長は自殺した経験もあるんだ?

善次郎:自殺してたら今はもう生きとらんわ!

湯乃花:でも自殺経験がない方が不思議だわ?
    楽しい事もなさそうな駄目な人生送ってて
    ・・・・よほどツラの皮が厚いんですねぇ?

善次郎:いや、楽しい事ぐらいチャントあるから!
    居酒屋で酒呑んで愚痴こぼしてる時とか至福だから!

湯乃花:寂しい至福だなぁ・・・おい。
    もう自殺した方がいいんじゃないか?

善次郎:そういう事さぁ〜さらっと言わないでくれる?
    結構、私も傷つくのよ?

赤城警部:まぁ分かるよ。上司の文句並べてる時は
     一番スッキリするからな。

善次郎:でしょう?って私が上司の立場なんですけど・・・
    私の場合、部下の文句って事でしょうか?

湯乃花:ねぇ・・・それって私の文句って事よねぇ?(ピキっ

善次郎:ぇ?ぁ・・・いやぁ〜部下ブカ・・ぁ
    夏が近づくとヤブ蚊が多くなって嫌だねぇ〜とか・・・ね?

湯乃花:誤魔化されるか〜!!!

善次郎:ぐわぁぶ!・・・・あの〜警部さん・・これって傷害とかにならないのですか?

赤城警部:民事不介入だ。

善次郎:さいですか・・・
    で、自殺の線が消えるという事は、他殺だという事です。

湯乃花:話をそらしたわね?

善次郎:いや、こちらが本分だからね?今、仕事中だからね?

赤城警部:まーわかった。これが他殺なのは確かな様だ。
     しかし、なぜ犯人が元カレだと判るのだ?

善次郎:それはですね・・・半分は勘です。

赤城警部:なめとんのか!

善次郎:あーでも、根拠もあるんですよ?
    この密室は完璧過ぎなんですよ。
    窓も全て施錠されていて、細工が出来るような隙間もない。
    不自然な細工の跡などもない。
    正に綺麗な密室です。

赤城警部:ああ、鑑識からも、
     そういった痕跡は発見されてないと報告を受けている。
     だからこそ、自殺と断定されたんだ。

善次郎:でも、これはたった一つのアイテムの登場によって
    密室でもなんでもなくなるんですよ。これが

赤城警部:一つのアイテムだと?

湯乃花:あ、合い鍵!

善次郎:そう、彼氏になら合い鍵を作って渡していた事でしょう。
    そして、フッたのは彼の方。
    彼女から合い鍵を返せなんて言ってないでしょうね。

湯乃花:ま、未練が残ってるなら、そんな事言わないでしょうね・・・
    私なら自分をフる様な男は抹殺の対象でしかないけど。
    てか沈めますけど?

赤城警部:ワシらの仕事を増やさんでくれよ?ねぇさん・・・

湯乃花:ええ、大丈夫よ。私ならきっと完全犯罪だから。

赤城警部:・・・・この子は早めに、OH!人事した方がいいじゃないか?

湯乃花:そんな事した方が警部さんの仕事増えそうだけど?
    もしくは警部さんが仕事できない体になるか・・・よね。

赤城警部:・・・ちょっとこの子マジで怖いんですけど??
     ・・・てか、言ってる事が痛いんですけど(汗

善次郎:警部さん・・・彼女の仕様なんでスルーの方向で・・・ぐはっ
    ボディーにフックは止めたまえ・・・
    で、ですよ。
    もし、この部屋を密室と呼ぶのなら、彼女が持っていた鍵の他に
    彼氏に持たしていたであろう合い鍵がもう一つこの部屋になくては
    ならない事になるんですよ。

赤城警部:確か証拠品として押収したモノの中にこの部屋の鍵は一つしかなかったな。

善次郎:つまり、こんな完璧な密室を作ってしまった彼は、
    自分しか犯人がいない事を証明してしまったんですよ!

赤城警部:よーし、わかった!元カレの男の逮捕状をとろう。
     いやぁ〜最初はただの馬鹿かと思ったが・・・なかなか名探偵ではないか。

善次郎:それほどでも・・・あるかなぁ〜?

湯乃花:警部さん、うちの所長を調子に乗らせないでください。
    お茶の入れ方一つ知らないんですから!

善次郎:薫君?一応私は探偵所長で、君は助手なんだけどねぇ?
    それに毎日お茶入れてるの私じゃないかぁ〜

湯乃花:おどれは何度言えば・・・って!?所長・・・茶色いの踏んでる!!
    フン踏んじゃってるから!!!

善次郎:ぇ?ってイヤァ〜〜!!マジでフン踏んでる〜!!!
    ぅっわ、くっさ!これクッサいよ!?

赤城警部:最後までそのネタ引張んのか!?
     って君、ワシにも近づかんでくれ!?

湯乃花:さっさと現場から出て行けぇ〜!!
    テメェ〜茶色い足跡を残すな!!!

赤城警部:こうして、名探偵 慧蔵院 善次郎の活躍により
     自殺に偽装された殺人事件は無事、犯人を挙げる事が出来た。
     しかし、この先この名探偵と事件を共にするのは
     カンベンして貰いたい。そう心の底から願う・・・