『道連れなるままに』 清水 涼(しみず りょう) 男 黒谷 毅(くろや つよし) 男 森宮 楓(もりみや かえで)女 涼 空には満天の星 夜風は少し冷える。 「いったい僕は何してるんだろ?」 風呂あがりで濡れた髪がヒヤリと首筋に張り付いてる。 毅 「風邪ひくぜ?」 こいつはいつも空ばかり見てやがる。 そんなに愛しい女が大事なら旅になど出なければ良いものを 涼 「あ、わりぃ・・・そろそろ寝ないとな。」 明日には街に着かなければ食料が底をつく。 日の出と共に出発の予定だ。 毅 「あの子の事思い出してたんだろ?」 残り少ないタバコに火を付け近くの岩に腰を降ろした。 涼 「星を・・・見てたんだ。」 毅 「星をあの子に見立ててか?」 涼 「な、ぁ・・・いや、そうなんだろうなぁ」 毅 「なんだ?ヤケに素直だな・・・そんなに大事に想うなら なんで旅になんて出たんだよ?」 涼 「自信をつける為かな?」 毅 「自信?」 涼 「自分の弱さが嫌なんだ・・・日頃は優しいフリしてるけど いざという時には自分の事しか考えられなくなる。」 毅 「ほぉ〜ん、ま、みんなそんなモンなんじゃねぇ〜の?」 涼 「それじゃ人を幸せには出来ないだろ?」 毅 「あの子をか?」 涼 「だから違っ・・・まぁ彼女も守る事が出来ない。」 毅 「はは、大事な彼女はついでかよ?」 涼 「そんなんじゃないって、茶化すなよ・・・」 毅 「スマンな・・・けど、待ってるあの子は寂しがってるはずだぜ?」 涼 「だろうなぁ〜けど、まだ僕は生きていかなきゃいけないんだ・・・」 毅 「はぁ?どうして生きていく事に繋がるんだ!?」 涼 「彼女のもとに行けないって事さ・・・」 毅 「それってお前・・・・」 涼 「僕は彼女を守りきれなかったんだ・・・」 毅 「・・・・さ、寝るか・・・明日は早いんだ・・・」 旅を続ける訳、それは人それぞれだ。 俺はただ自分の居場所を求めてるだけ・・・ なんてカッコつけてるが本当は人付き合いが苦手なだけだ。 世間から逃げただけなんだよな・・・弱ぇ〜なぁ俺・・・ 楓 「涼・・・今どこで何をしているのかな?」 列車の窓には知らない街並みが後方へと流れている。 私は愚かだ・・・いつも人を信用できない。 信じて傷つけられるのが怖いんだ。 死ぬ気もないのに書いた遺書・・・誰かが読んだ跡があった 「やっぱり涼だよね・・・」 突然いなくなったあたしを探してくれたのかな・・・? 毅 レトロな匂いを残す街並み。今や張りぼての観光地だ。 「俺には似合わねぇな・・・」 楓 「っ!痛い・・・」 毅 「ん?大丈夫か?」 足でも痛めたか?・・・面倒だが俺の目の前でしゃがみ込まれては さすがに無視もできん・・・ 楓 「あ、いえ・・・ちょっと挫いただけですから・・・」 駅に着いて早々ツイてない・・・ 毅 「そうは言っても歩けるのか?」 面倒は面倒だが、こいつは綺麗な子だな・・・ ナンパなどガラではないが、 休める所までなら送ってやっても良いと思えた。 楓 「大丈夫ですから・・・っ・・・」 毅 「大丈夫そうじゃないな。心配すんなw 別に獲って喰ったりしねぇよ」 楓 「はぁ・・・じゃあどこか薬局まで・・・」 ちょっと怪しげな風貌だけど悪い人には見えなかった。 毅 「あ〜薬局な、まぁどっかにあんだろ・・・」 リュックを担ぐように女を担ぐ・・・ 楓 「きゃ・・」 毅 「あ?痛かったか?スマン・・・」 男と違う感覚と匂い。妙に照れちまう。 「あんまりしがみつくなよ、首絞まる・・・てか胸が・・・」 楓 「え!?ゴメンさない!」 毅 薬局ぐらいそこらにあると思ったんだが・・・ まったくみつからねぇ・・・ 「すまんな・・・」 楓 「ん〜ん、仕方ないよ。それよりありがとう。もういいよ・・・」 かなり歩き回った。ずっとあたしを担いで。 石のベンチで降ろしてもらう。足の痛みは少し和らいでる気がする 「あなた旅人なの?」 毅 「あぁ、まぁそんなもんだ」 楓 「あの人もどこかを旅してるのかな?」 毅 「あの人?好きな男か何かか?」 楓 「うん・・・いつか会えないかと思ってるの」 毅 「旅に出るヤツってのはそんなヤツが多いのかな?」 楓 「毅さんも恋人を追って?」 毅 「いや、旅の道中によく一緒になるヤツがな・・・ 忘れられない女を追って旅している。」 そいつの女はこの世には居ないけどな・・・ それは言葉にしないで良いだろう・・・ 楓 「やっぱり・・・この広い世界・・・出会えないのかな・・・」 毅 「なぁ俺と一緒に旅しねぇか? 女の一人旅はあぶねぇし、お前の事嫌いじゃねぇ お前って美人だしな」 楓 「それって告白!?あたし、それに美人なんかじゃないよ」 毅 「バカ!そんなんじゃねぇ〜よ。変な事言っちまったなぁ…」 楓 「ごめんなさい。今は彼の事が忘れられないから・・・」 毅さんもホントに素敵だと思うんだけどな。 今はまだ彼を裏切りたくないの・・・ 毅 「わかったよ。ま、足治るまで付き合うよ。 旅は道づれってな。」 涼 「そろそろ峠だ、また毅のヤツと一緒になるかもなぁ・・・」 徒歩で旅をする人は少ない。 毅とは追いついたり、追いつかれたり・・・ 約束をした訳でもないのに、いつの間にか道連れになっている 涼 あれは毅か?・・・でも誰か連れてる・・・女? 「お〜ぃ!毅ぃ〜!」 楓 「今の声・・・」 涼 そんな、あれは・・・・ 「楓っ!?」 楓 「涼っ!!嘘っ・・・本当に涼!?」 涼 「楓、君は遺書を残して・・・」 楓 「ゴメン!涼が愛してくれている事が怖かったの・・・ いつか別れが来るんじゃないかって・・・怖かったの・・・」 涼 「あきれた・・・僕がバカみたいだろ? 僕は・・・もぅなんて言っていいか解らないよ・・・」 楓 「ホントにゴメンなさい。」 毅 「なぁ、もう俺喋ってもいいか?」 涼 「あ、毅・・・ごめん忘れてた・・・」 毅 「ひでぇっ!?まぁ感動の再会だしな。大目に見てやるよ。」 楓 「毅さん・・・その・・・ありがと」 毅 「いいって、良かったなこれでお前らの旅は終りだろ?」 涼 「いや、まだ旅は続けるよ」 毅 「どうしてだよ?」 涼 「僕はまだ強くない・・・それに楓と一緒にいろいろ考えたいし これからは2人で答えを出そうと思うんだ。」 楓 「あたしも少し強くならないとね。」 涼 「そうだね、もう偽の遺書を書かないぐらいにはね?」 毅 「そうか・・・じゃあ俺はここで別れるぜ? 横でイチャつかれちゃ、かなわんからな・・・」 涼 「あぁ・・・毅ありがと。けど次の街までにはまた会うだろうね」 毅 「バツの悪い道ずれだな・・・」 涼 空には満天の星空。僕の隣には楓が寄り添っている。 少し道の先で毅の焚く火の灯がもれている・・・ これからも僕達の道は続いていく。 道の続く限り、答えは見つからないのかもしれない。 でも、いくつか分かった事がある。 毅 限られた日常の中に幸せなんてモノは隠れてるんだ。 見つける事が出来るのは当たり前の事に気付いたヤツだけ そろそろ旅も終りにするか・・・次の街で仕事探さねぇーとな・・・ イチャつくアイツらと道連れるのもイイ加減カンベンして欲しい。 ま、そんなアイツらも嫌いじゃないけどな。 楓 他人は私達を気にかけたりしないでしょう・・・ でも、あの人はきっと他人ではないのね。 人を信じる事。それは信じれる人がいると言う事に気付く事。 涼、ずっと一緒に居てね・・・ 毅さんありがとう・・・ 涼 道連れなるままに・・・僕達は歩き始める。