三騎士英雄譚〜第一章〜


エドワード・レザースミス(23歳)男 愛称=エド
セルディア王国第六近衛騎士団所属。
革鎧職人の息子として生を受け16歳で戦時召集により兵士となる。
王都で開催されたトーナメント(馬上試合)の前座で行われた
勝ち抜き剣術試合で脅威の60人抜きを果たし近衛騎士の叙勲を受ける。
民衆寄りの考え方から上官との諍い(イサカイ)は絶えないが
剣の腕は王国一とも大陸一とも噂される。

セドリック・フォン・ラグワルト(32歳)男 愛称=セディ
セルディア王国ラグワルト伯爵家の次男。第二白銀騎士団中隊長。
貴族の名家の生まれだが華やかな社交界を嫌う変わり者。
いまだ独身を通しており、剣の道に進むが
うらはらに婦人からの人気は高い。
物腰は柔らかく、文才に長けるが剣の腕は白銀騎士団随一の腕を持つ

シャルル・フォン・フランソワーズ(29歳)男 愛称=シャル
セルディア王国フランソワーズ子爵家の当主。
剣より学問に通じ、第一黄金騎士団に所属するも
自領の統治に尽力を尽くしている。
セディとは幼少からの付き合いがある。
学者肌の貴族。

バーナード・オズワルド(37歳)男 愛称=バーニィ
ラグワルト家に代々仕えるオズワルド家に生まれ。
セディが生まれた時から従者として仕えている。
騎士の武装を禁じられている為、戦斧を愛用している。

ティナ(15歳)女
ラグワルト家に盗みに入った泥棒。
セディに一目惚れし、セディ専属の密偵として志願する。

舞台説明



エドN:槍先が列をなす渓谷。
様々な鎧の色が混成し特別編成された混成部隊である事が分かる。
その数二百・・・隣国デミドーラ王国への侵攻への足がかりとして
セルディア王国が六団ある騎士団より新たに編成したこの部隊は
国境を堅固に守るガルニア要塞の攻略を任務としていた。
指揮を取るのはラグワルト伯爵家血筋の白銀騎士団中隊長
セドリック・フォン・ラグワルト卿である。

バーニィ:ガルニアの要塞が見えてきましたぞ。

セディ:あれが難攻不落の噂高いガルニア要塞か・・・

シャル:ここからでは兵の姿は見受けられませんね。

ティナ:あたしが調べた限りでは五百人は詰めてるはずだよ?

セディ:兵力は倍以上・・・しかも少数のこちらが攻め手側ですか・・・

シャル:見張り塔にすら兵の姿が見られないのは明らかに変ですよ。

セディ:何か手を打っているという事ですね・・・

シャル:崖に挟まれた山道、崖上から落石や弓矢を仕掛けるという手も
    考えられますが・・・

セディ:要塞を空にするとも考えられませんね・・・

バーニィ:相手は五百、要塞に二百を残しても残り三百は伏兵として
     まわせるのでないでしょうか?

ティナ:崖上の様子をあたしが探って来ようか?

シャル:いえ、全軍で崖上に進みましょう。

バーニィ:崖からは要塞へと進めませんぞ?

シャル:しかし要塞は崖より下にあります。

セディ:崖上より矢で攻める訳ですか?

シャル:えぇ、ただし・・・油と共に火矢でね。

ティナ:ダメだよ。あの要塞は見ての通り石造りだよ?
    多少の被害は出せても、火矢じゃ落とせないよ。

シャル:それでいいんですよ。

ティナ:え?

セディ:何か考えがあるんですね?

シャル:もちろん。

セディ:わかりました・・・
    全軍!進路を南側、崖に向け進軍!
    伏兵が潜んでいる可能性もあります!周囲に気を配り警戒を
    怠らないよう!では、全軍前進!



ティナ:伏兵の予想は当たりだったね・・・

セディ:伏兵を・・・見つけたのですか?

ティナ:ほら、あそこ・・・草が踏み荒らされてるでしょ

バーニィ:確かに・・・姿は見えずとも伏兵がいる事は確認できるという訳か・・・

シャル:そうと分かれば馬を降りましょう。
    この木々の中では馬に乗っていても戦いには不利です。

ティナ:あたし1人ならどこに隠れてるか探して来れるんだけど?

シャル:では、今回はティナ嬢にお願いしましょう。良いですかセディ?

セディ:ティナ、やってくれますか?

ティナ:もちろんよ♪

バーニィ:伏兵を見つけたら気づかれずに何もせず戻ってくるのだぞ!?

ティナ:当たり前でしょ!そうそうドジ踏むもんか!

シャル:敵の位置が確認出来次第、後方より矢で奇襲をかけます。

バーニィ:相手もこちらの存在に気づいているのではないか?

シャル:今が夜ならば森の中を進む松明の明かりで我々の位置を知る事が
    出来たでしょうが・・・
    木々によって姿を隠しているのはお互い様・・・

バーニィ:敵も我々が崖の真下に姿を見せない限り
     我々を見ることが出来ないということか・・・

セディ:しかし敵も偵察を出しているのではないのか?

シャル:その恐れはありましたよ、ですが・・・小鳥や栗鼠が逃げていく姿を
    先ほどから見かけています。

バーニィ:栗鼠?

セディ:敵兵が潜んでいれば、我々が通る前に敵兵の姿に怯えて
    小動物もすでに姿を隠しているという訳か・・・

シャル:えぇ、人間よりはるかに優れた感覚を持った偵察隊ですよ。

バーニィ:なるほど・・・

セディ:敵側はよほど自信があるのですね・・・偵察も見張り出さずに
    敵を迎え撃つなど・・・

シャル:クライセン候より、我々の正確な情報が流れているからでしょう・・・
    兵力、進軍日時、主だった騎士の名前まで
    その上、難攻不落の要塞に守られ、攻め手の数は半数ともなれば

セディ:でしたら全軍で要塞に立て籠もっていれば良いものを・・・

バーニィ:挟撃・・・我々の全滅が本当の目的ではないでしょうか?
     この部隊の顔ぶれを見ると・・・

セディ:先王派の顔ぶれが目立ちますね・・・

シャル:先王派というよりはルーク皇太子派と言うべきでしょう・・・
    クライセン候は王弟派の筆頭ですから。

バーニィ:王弟アスター殿下は穏健な人物なれど・・・
     王としての器は・・・いえ、私の申す事ではありませんでしたな・・・

シャル:クライセン候にとって、もっとも傀儡にしやすい人物。
    王弟派である理由はそれで理解できます・・・
    とにかく、候のシナリオはこの隊の全滅となっているのしょう・・・

ティナ:ただいま〜♪この先の崖脇に警戒もしないでタムロしてたよ。
    そうだね・・・数は120人ぐらい・・・

セディ:ティナ、ご苦労様。
    全軍!静かに敵後方へ進軍。
    私の合図と共に矢を放て!

ティナ:こっちだよ!

シャル:慢心は無駄に兵を失う事を教えてあげましょう。

バーニィ:では兵力差を詰めてやりましょうか・・・



セディ:・・・・いましたね・・・全軍一斉射撃!

エド:構え!・・・撃てっ!

バーニィ:敵軍、奇襲に慌てこちらに向かってきます。

セディ:態勢を整えさせてはいけません!
    このまま撃ち崩してください!

シャル:セディ、敵は混乱してます。このまま押し切りましょう。

セディ:ですね・・・では、全軍突撃!

エド:全軍突撃!!うぉりゃぁーーーーっ!!

バーニィ:セドリック様、敵は総崩れ!全滅も時間の問題ですぞ!

ティナ:セディ様ぁ!反対側の崖からこっちに敵が来るよ!?

セディ:まずいですね・・・挟まれては勢いづかれてしまう・・・

エド:セドリック卿!私にお任せを・・・

セディ:エドワード卿・・・いくら60人抜きの貴方でも1人では・・・

エド:今来た崖への登り坂は並べて二人の細道・・・
   食い止めるだけなら私だけでも十分です!

セディ:わかりました。・・・・バーニィ!エドワード卿と共に行ってください!

バーニィ:心得ました。

エド:バーナード殿、参りましょう!

バーニィ:御意!

エド:セルディア第6騎士団・・・
   60人抜きのエドワード・レザースミス。いざ参る!

バーニィ:バーナード・オズワルド。ここからは通さぬ!

エド:とりゃぁぁ〜っ!!

バーニィ:さすが、60人抜きのエドワード卿・・・
     盾ごと叩き割るとは・・・フンッ!

エド:バーナード殿もなかなか・・・
   貴方が騎士なら騎士団の中でも名が残るのでは?

バーニィ:しかし・・・やはり2人で百人以上の相手はきついですな・・・

エド:かの英雄・・・青き自由騎士ラファエルは
   1人で百人を斬ったそうですよ。

バーニィ:バニシュ城の百人斬りですか・・・?
     伝説上の人物にはかないませんな・・・

エド:かなわなくとも・・・ハァッ!・・・その半分ですよ!・・・・うぐっ・・・

バーニィ:っ!?・・どぉりゃっ!!・・・エドワード卿!?

エド:すまない・・・大丈夫だ!・・・せりゃっ!!・・・甘いっ!

バーニィ:うぉりゃっ!!・・・ぬっ・・・クソッ!斧が・・・

エド:くっ・・・こっちも血脂と刃こぼれでガタガタだ・・・

バーニィ:2人で50もいきませんでしたな・・・

エド:次、100人斬りに挑戦する時は
   換えの武器も用意しないといけないようだね・・・

ティナ:応援に来たよぉ〜!

バーニィ:ティナ!・・・セドリック様!!

エド:セドリック卿!上は・・・もう片付いたんですか?

セディ:えぇ、後はランスフォード卿に任せてきました。

シャル:さすがですね・・・たった2人で半分も斬り捨てたのですか!?

エド:剣の方がもう使い物になりませんけどね・・・

セディ:後は任せてください。

エド:ありがたい!けど・・・換えの剣は敵兵から頂戴しましたよ!

セディ:では、このまま押しますよ!ハァッ!

エド:速い!?

セディ:これでも白銀騎士団の中隊長を務めるんですよ?

エド:では、俺も遠慮なく!とりゃぁっ!!

ティナ:すごい・・・2人とも・・・セディ様も強いんだ!?

シャル:後方の敵に矢をかけろ!

バーニィ:おう!

エド:どうやら勝敗は決まったみたいですね。

セディ:しかし、深追いはやめましょう・・・
    要塞内にはまだ敵本隊が残っているのですから。

【要塞見下ろす崖上】

エド:蹴散らした伏兵の数は250・・・
   いや、二百人強と言ったところですか・・・

セディ:こちらの被害は31人、数的には差が縮まりましたが・・・

ティナ:これからどうするんだ?問題はあの要塞だよ?

シャル:隊を3つに分けます。

バーニィ:シャルル様・・・
     ただでさえ少ない味方を分散させるのは危険ではないですか?

シャル:闇雲に要塞へ突撃しても、兵を無駄にするだけですよ。

セディ:それで、どう分けるのです?

シャル:セディ率いる本隊100名は崖下に待機していてください。

セディ:ふむ。

シャル:残る60名は私と共に、この崖から火矢を使って要塞を攻めます。
    石造りの要塞は落ちなくとも・・・敵兵は要塞内部に立て籠もり
    火矢をやり過ごそうとするでしょう・・・

ティナ:あと1つは?

シャル:腕の立つ者数名にて・・・要塞へと忍び込んでもらいます。

エド:その役、私にやらせてください。

シャル:ええ、エドワード卿なら適役でしょう。
    侵入したら城門を内から開けてください。

セディ:それに合わせて我々本隊が突撃する訳ですね・・・?

シャル:火矢隊も後を追って突撃します。

エド:後は正面対決という訳か・・・

シャル:それでも、数では相手側の方が勝っています。
    全滅を目標とせず、ガルニア要塞の城主を狙いましょう。

セディ:頭を叩けば勝敗が決するという訳だね?

シャル:ええ、一旦、要塞を手に入れてしまえば・・・
    守るのは簡単です。
    本来は難攻不落のガルニア要塞なのですから。

セディ:浸入部隊はエドワード卿・・・
    後は、紺碧騎士団ランスフォード卿にお願いしよう。

エド:あの紺碧騎士副団長の・・・ランスフォード・シュタイン卿ですか!?

セディ:彼は精鋭を集める紺碧騎士の中でも最強を誇るそうですから

シャル:エドワード卿と2人で二百人斬りをしてくれれば・・・
    私達の仕事は楽なんですけどね!

エド:シャルル卿・・・冗談でしょう?

シャル:ええ、冗談です。やっていただけるなら止めはしませんけど・・・

エド:またの機会にさせて貰いますよ。

シャル:それは残念です・・・

ティナ:エド、浸入はあの小川から行きなよ。

エド:あの小川?

ティナ:ちょっとばかり泳がないといけないけどさ・・・
    あの先は地下水脈の流れる洞穴になってて
    要塞内の井戸につながってるんだ。

エド:抜け道ってヤツか・・・

ティナ:そんな良いもんじゃないよ。
    ただの井戸の水源が地下水脈に繋がってるだけだからさ・・・
    井戸から出たら要塞内の中庭で敵さんから丸見えだし・・・

エド:おぃおぃ・・・

ティナ:でも。城壁を登って行くよりは安全だよ!
    登攀中に見つかったら、
    いくら強くたって戦えないんだから・・・

エド:確かになぁ・・・今が冬でなくて良かったと言うことか・・・

セディ:決行は夜まで待とう・・・
    日も傾いてきた・・・

エド:干し肉とパンと水が支給され、戦場の晩餐となる・・・
   大勝を期したこの戦いは、要塞攻略の前哨戦に過ぎない。
   夕焼けが夕闇に変わる頃・・・
   俺を含めた5人の騎士が
   小川の上流にある洞窟へと姿を消した・・・
   


                  二章へつづく・・・
                           次回に続く。