三騎士英雄譚〜第十一章〜

ルーク・アルベイン・セルディア(21歳)男
セルディア王国、皇太子
現国王アスベールU世の長男であり
正統な王位継承者。

サナウジャール(54歳)男
セルジア伯爵領の山地に住む野盗の頭。
元、宮廷占星学者であり、隠居の身にあった。
伯爵夫人の横暴から領民を守る為、現在野盗に身を落としていた。

ユーリー・アルゲエーフ(28歳)男 愛称=ユーリ
北方ローゼルク王国出身の
小型の竪琴ライアーを奏でる吟遊詩人。
時として密偵として働いている。

リーゼロッテ・イレーネ・セルディア(17歳)女 愛称=リズ
セルディア王国アスベールU世王の娘。
ルーク皇太子の妹にあたる。
王女として厳格に育てられたが
生来の活発な性格で姫らしくない。

ローゼマリー・ブラウンフェルズ(35歳)女
ルーク皇太子の侍女長
お淑やかで大人しい女性だが大胆な一面も
侍女として職務は器用にこなす。

舞台説明



ユーリN:木々紅葉す季節、散り散りに広がる雲の群
     豊穣なるセルディアに麦を刈る農婦達。
     故郷のローゼルクはもう初雪の季節だろうか・・・
     王都セルデン中央に聳える王城ハウツシュタイン城に
     一人の隠者が訪れていた。

ルーク:そなたが予の許を訪ねてくるとは珍しいな・・・変わりないか?

サナウ:はい、皇太子殿下・・・歳老いたとはいえ、
    天に召されるまでには、まだ使命が残されておる様ですわい。

ルーク:そうか、壮健で何よりだ。
    して、その使命と今回の訪問は関係がありそうだな?

サナウ:ご賢察の通りで御座います。

ルーク:では話して戴こう・・・

サナウ:はい・・・・

【ハウツシュタイン城内、王家の間】

リズ:お兄様?・・・お客様ですの?

ユーリ:姫様、ご機嫌麗しう・・・
    今朝方、旅より戻りました。

サナウ:これは、リーゼロッテ王女様・・・
    お久しゅうございます。

リズ:サナウジャール先生!?
   ユーリーも帰って来たなら教えてくれればいいのに・・・

ユーリ:帰ってすぐルーク王子に捉まりましたので・・・(笑)

リズ:まぁ!薄情な事!
   また、旅のお話聞かせてくださいましね!
   それで・・先生はどうして・・・?

サナウ:御無沙汰しておりましたな。
    姫様も相変わらずお元気そうで何よりですわい。

リズ:サナウジャール先生もお元気そうで何よりですわ!

ルーク:こら、リズ!いきなりやって来て失礼じゃないか!
    はしたないぞ!

リズ:あら、お兄様・・・ちゃんとご挨拶は致しましてよ?

ルーク:今はサナウジャール殿とユーリー殿に大事な話がある!
    リズは出て行ってくれないか?

リズ:なになに!?
   どうして、私は仲間外れなの!?

サナウ:ふぉっふぉっふぉ・・・
    相変わらずの様じゃのぉ〜

ルーク:まったくっ・・・

ユーリ:まぁまぁ、姫様は好奇心が人の形をとった様な方・・・
    こうなられては、隠し事は出来ませんでしょう。
    盗み聞きの様な無粋な真似をさせる訳にはいきませんし・・・

ルーク:ユーリ・・・
    これは政(マツリゴト)に関わる事なのだぞ?

リズ:お兄様、私だって王族の一員なのよ?
   政(マツリゴト)には参加させてもらう権利はあるわ!

サナウ:殿下の負けですな・・・

ルーク:ふん・・・

ユーリ:して、サナウジャール殿・・・
    問題の件とは・・・

サナウ:ふむ、実はアスター殿下の事なのでございますが・・・

リズ:叔父上の?

サナウ:まぁ、アスター殿下本人の事と言うより、
    アスター殿下を擁立しようとする者達・・・
    その筆頭のガルビア・フォン・クライセン候爵様の事、
    ・・・と申したらよいでしょうかな?

ユーリ:ガルビア枢機卿ですか・・・
    影の多い御仁ですね・・・

リズ:そうなのですか?

ユーリ:ええ、アスエル教団の枢機卿でもあられ
    セルディアの内務大臣をも務める侯爵家当主。
    その権力は公爵様や国王にも並ぶモノ・・・
    それだけでも噂の種には困りはしないでしょうが・・・
    巷では犯罪者組織を子飼いにしているとの話も聞きますし
    あまりタチの良いと言えない商人との
    癒着も取り沙汰されています。
    
ルーク:サナウジャールからの話では、
    そのガルビアがガルニア要塞の守備に就く
    騎士達の邪魔をしているというのだ・・・

リズ:それはどうしてですの?

ユーリ:ガルニア要塞の守備に就く騎士・・・
    つまりガルニア要塞攻略の任に就いた特編隊の顔ぶれは
    先代のファーディナンド先王に引継ぎルーク王子を
    支持する保守派の面々が揃っている訳です。

サナウ:要は皇太子殿下の権威を失墜させ
    アスター殿下を擁立した後、
    元老院の権威を復活させるおつもりでしょうな・・・

ルーク:大方、人の良い叔父上を利用して、
    執政官にでも納まるつもりなのだろう。

サナウ:これは盗賊めらからの情報ですがの・・・
    今ガルニア攻略も、クライセン候が
    デミドーラ王国と内通し、宣戦布告の口実作りに
    推し進めていたとの裏情報も入手しておりますのじゃ・・・

リズ:そんな個人の欲望の為に戦争を起こそうとするなんて・・・
   許せないわ!

ユーリ:まぁまぁ姫様・・・しかし放っておけませんね・・・

ルーク:しかし、今、事を荒立てては
    国民の動揺も誘おう・・・
    叔父上の立場も悪くするやも知れない・・・

リズ:では、私が参りますわ!

ユーリ:え・・・?どちらにです?

リズ:決まっているでしょう!?
   ガルニア要塞へよ!

ルーク:な、何を・・・!?

リズ:王女の私がガルニア要塞に居れば
   ガルビアも下手に手出し出来ないはずよ?
   王家としても私を護衛する為に兵も集めるはずですし。

ユーリ:確かにガルビア枢機卿が要塞の孤立化を謀っているなら
    姫様が要塞へと着任されるのは良策ではありますが・・・

ルーク:危険すぎる!!
    リズ、分かっているのか!?ガルニア要塞はデミドーラ国との
    最前線なのだぞ?

ユーリ:はい・・・姫様、私も危険だと考えます・・・
    姫様は仮にもこの国の王族なのですよ?

リズ:分かってます。
   しかし、これは大きな内乱を招く大事(ダイジ)なのでしょう?
   国を与かる王族だからこそ、
   私達王族がやらねばならないでしょう?

ルーク:しかしだな・・・

リズ:いいえ!もう決めましたから!
   もちろん、守備司令官は今まで通りフランソワーズ子爵に
   お任せする事にしますわ。
   私は長期視察として滞在するだけ・・・という事で。
   ローズ、旅の支度を!

ローズ:はいリーゼロッテ様。
    旅のご支度はもう調(トトノ)えさせております。
    今はガルニア要塞への補給資材の積み込みを急がせているところですわ。

ルーク:おい!

ローズ:殿下、ガルニア要塞には、どのみち資材は必要です。
    それに姫様が言いだしますと・・・どなたにも止められませんものね

リズ:わかってるぅ♪さすがはローズね!

ローズ:ただし、リーゼロッテ様・・・私もご一緒させていただきます。
    ガルニア要塞は王城と違い、危険なのですからね・・・
    軽率な行動を取られては、皆様に御迷惑をかける事になりますから。

リズ:はーい♪

ルーク:ハァ〜、ローゼマリー・・お前まで・・・
    わかった・・・ユーリー、悪いが2人の護衛に付いて行ってくれないか?

ユーリ:わかりました。お任せください(笑)
    では少数精鋭で行くとしましょう・・・
    ルーク王子、信頼できる騎士を数名就けて頂けますか?

ルーク:わかった。
    親衛隊の者から腕の良い者を就けさせよう

サナウ:しかし、リーゼロッテ王女様の奇策には参りましたな・・・

ルーク:まったく、呆れるばかりだ・・・

サナウ:それは良いとして・・・皇太子殿下、
    ガルビアめの動向からは目をお放しになさらぬ様・・・

ルーク:あいわかった。
    リズの事は迷惑をかけると思うが宜しなにな。
    ガルニア要塞の者にも宜しく伝えてくれ・・・

サナウ:分かり申しました。

【ガルニア峡谷への山道】

ローズ:サナウジャール様。
    少し、宜しいでしょうか?

サナウ:・・ん?如何なされたかな?

ローズ:要塞での食料の調達は如何なさっているのでしょう?

サナウ:いや・・・ワシはその辺の事は詳しく知らないのだが・・・
    近隣の村から買い付けていると思うがの?

ローズ:でしたら、バルマの街より買い付けを行われては?
    デミドーラ各地より名産の食材が届きますし
    バルマには私の知人もおりますので。

サナウ:まさか、ローゼマリー女史みずから買い付けに出向かわれるおつもりか?

ローズ:食料の調達やその他、雑務が侍女の役割と言うものですわ

サナウ:しかし、御婦人方には危険ですぞ?

ローズ:あら、第五真紅騎士団もリーゼロッテ様の親衛隊も
    皆、女性ばかりですわよ?
    それに、買い物は戦の様に危険なモノではありませんわ(笑)

サナウ:淑やかな声で結構な事を仰るわい・・・
    最近のセルディアの女性は気の強い方が増えた様ですかのぉ

ユーリ:ならば、その際は私がお供致しましょう。
    元々流浪の身、他国では一番怪しまれぬでしょうから。

サナウ:おっ、見えてきましたぞ。
    あれがガルニア渓谷、難攻不落の要塞・・・ガルニア要塞ですじゃ。



ユーリ:飾られる事もなく、無機質なその城は
    まさに要塞としての実用性だけを求めて建てられし石の城。
    しかし、私にはどこか暖かな雰囲気を
    このガルニア要塞に感じていた・・・
    まるで大家族の住む、我が家の様に・・・
    私は気が付くと愛用のライアーをひと撫でし
    想いを口にしていた。
    『平和を願う者の城・・・我も今、共に・・・』




                十二章へつづく・・・
                           次回に続く。