三騎士英雄譚〜第十二章〜

ランスフォード・シュタイン(29歳)男 愛称=ランス
セルディア王国の無名の騎士の家生まれる。第三紺碧騎士団副団長。
父アーデル・シュタインは国王命令無視の罪により
騎士資格剥奪という憂いに遇うが、当時14歳であったランスに
異例の騎士叙勲を与え御家断絶の危機を逃れる。
また、29歳で騎士団副団長の要職への出世も異例。

アンジェリカ・アンセル(24歳)女 愛称=アン
セルの腹違いの妹。
婚約者がいるがランスと相思相愛の関係にある。
剣術を学んでおり、細身の剣の試合での実力は兄にも勝っている。

エドワード・レザースミス(23歳)男 愛称=エド
セルディア王国第六近衛騎士団所属。
革鎧職人の息子として生を受け16歳で戦時召集により兵士となる。
王都で開催されたトーナメント(馬上試合)の前座で行われた
勝ち抜き剣術試合で脅威の60人抜きを果たし近衛騎士の叙勲を受ける。
民衆寄りの考え方から上官との諍い(イサカイ)は絶えないが
剣の腕は王国一とも大陸一とも噂される。

アニス・ベル(24歳)女
酒場で働く娘。エドの幼馴染であり
エドに想いを寄せる。
性格は勝気だが本当は寂しがり屋

エディラン・フォン・オルヴィス(27歳)男 愛称=エディ
セルディア王国オルヴィス伯爵家の御曹司
アンの婚約者であり、
第一黄金騎士団に所属している騎士であるが
剣の腕は平凡以下。

舞台説明



エディN:我がオルヴィス伯爵家に騎士爵の男が楯突くなど・・・
     許すまじ・・・ランスフォードめ!
     しかし、今の私にはミカエル卿がついておる。
     のうのうとド田舎で村の領主の真似事などしているそうだが、
     今度こそ目に物見せてやるわ!

【ホニフの村、領主館】

エド:<コンコン>
   ランスフォード卿!御在ですか!?
   居ないのかなぁ・・・

アン:これはエドワード卿ではありませんか。

エド:あ、これはアンジェリカ嬢!
   丁度良いところにお帰りになられました。
   今、貴女とランスフォード卿をお探ししてたんです。

アン:私とランス様を?

エド:はい、ランスフォード卿がこの村を統治されるようになって
   今まで滞っていた街道の整備や水路の修復も進み、
   数を増やしていた森の狼退治までやって頂いて・・・
   村人達の生活は以前より豊かになりました。

アン:あの母親を失った狼の仔はどうなりましたの?

エド:村で飼育されています。
   子供の頃から人に馴らせば、狼も猟犬の様に
   人間には危害を与えなくなるそうですから。

アン:そう、よかった・・・

エド:それでですね、村の者達が感謝の意を籠めて
   お二人の歓迎会を開こうと言う事になりまして・・・

アン:まぁ!それは楽しみですわ!

エド:今日の夕方、アニスの店・・村の酒場の『夢見る麦穂(バクスイ)』亭で
   お二人をお待ちしておりますので、
   ランスフォード卿にもお声をかけて頂けませんか?

アン:ええ、喜んで・・・
   ランス様を誘って寄らせて頂くわ!

エド:ホントですか!?じゃあお待ちしてますんで・・・
   では!失礼します。

【村の酒場】

アニス:エド、どうだった?
    ランスフォード様達来てくださるって?

エド:あぁ、アンジェリカ嬢がランスフォード卿を誘って
   来てくださるってさ!

アニス:よかったぁ〜
    じゃあ、腕に縒(ヨ)りを掛けて御馳走作らなくっちゃ♪
    エドも手伝ってね!

エド:はいはい・・・

アニス:返事は一回!

エド:はぁ〜い。

アニス:よろしい。
    じゃあ、床に敷いた藁を新しいのに敷き直してくれる?
    古い藁を掻き出したら、新しい藁を入れる前に
    ちゃんとホウキで掃いてね!

エド:わかってるよ〜。
   まったく、人使い荒いんだから・・・
   ・・・俺だってランスフォード卿と同じ騎士なんだぞ!

アニス:そんなのわかってるわよぉ〜
    エドはこの村を二度も救った英雄だもんね♪

エド:ふん・・・煽てたって駄目だぞ〜!

アニス:わかってるって(笑)

【領主館】

ランス:どうしたアン?
    今日はやけに機嫌がいいな・・・

アン:あ、ランス様!
   貴方も早く支度して。

ランス:え?何事だい?

アン:今日の夕方、村の皆さんがエドワード卿の幼馴染さんのお店で
   私達の歓迎会を開いてくれるそうですの!

ランス:『夢見る麦穂(バクスイ)』亭か・・・
    そうだな・・・今日の執務は書類整理だけだし
    有難く誘いを受けるとしようか。

アン:まったく、前の領主はいったい何をなさっていたのでしょう?

ランス:まったくだ・・・
    お陰で、この村に入って退屈する暇もない・・・
    執務関係は苦手なんだがな・・・

アン:先日の狼狩りは、良い息抜きになられたのではなくて?

ランス:はは、狼とはいえ生き物を殺す事は喜べる事じゃないさ、
    とはいえ、憂さ晴らしになったのも確かだな・・・

アン:今日は本当の息抜きになりそうね。

ランス:はは、そうだな・・・

【ホニフの村、表通り】

エディ:待て、そこのお前・・・

エド:はい、なんでしょう?

エディ:ホニフの村というのは、この村か?

エド:ええ、そうですよ・・・

エディ:ならば、ランスフォード・シュタインという男が居るだろう?

エド:はい・・・ランスフォード卿ならば
   代理領主としていらっしゃいますが?
   貴方がたはランスフォード卿のお知り合いでしょうか?

エディ:知り合い・・・か、そうだな、知り合いではある。
    案内してもらいたいのだが・・・

エド:はあ・・構いませんけど・・・
   今どちらにいらっしゃるかなぁ・・・?

エディ:ならばそこの広場にて待っておってやるから、
    呼び出したまえ。

エド:わかりました・・・ではお待ち下さい。

【村の酒場】

アニス:お帰りなさい。
    遅かったじゃない?果物類は揃ったの?

エド:ああ、途中・・帰り道にランスフォード卿の知り合いに呼び止められさ。

アニス:領主様のお知り合い?

エド:らしいんだけど、妙に威張っててさ・・・
   何処かの上位貴族かも知れないけど
   フランソワーズ様達とはえらく違ったなぁ

ランス:やぁ!エドワード卿。
    少し早かったかな?

エド:ランスフォード卿!
   今、話してたんですが・・・
   ランスフォード卿のお知り合いという方がいらっしゃってまして・・・

ランス:私の知り合い?

エド:ええ、貴族らしき人なんですけど・・・

ランス:貴族らしき私の知り合いですか・・・
    思い当たりませんが・・・わかりました。
    その方はどちらに?

エド:村の広場の方でお連れの者と、お待ちになられてます。

ランス:そうですか・・・
    では、少し会って来ましょうか。
    歓迎会までには戻るようにしますが・・・

エド:ええ、なら案内しますよ。
   主役が居なくては、ここに居ても仕方ありませんし。

ランス:そうか、では、案内願おう。

アン:私も行った方が宜しいかしら?

ランス:いや、もし帰りが遅くなって
    皆さんをお待たせしても悪いしな。
    アンはここで待って居てくれ。

アン:わかったわ。
   できるだけ、皆さんを待たさないでね。

ランス:ああ、わかった。
    アン、君も待たせる事になるからな。
    できるだけ早く戻るとしよう。

アニス:あらあら、仲のよろしいこと♪

エド:では、行きましょうか。ランスフォード卿

ランス:ああ、お願いする。

【村の広場】

エド:あ、居た居た!
   ランスフォード卿、こちらの方々ですよ。

ランス:貴方は・・・

エディ:久しぶりだねぇ、ランスフォード卿
    アンジェリカは元気かね?

ランス:ああ、元気だ・・・
    しかし今日は大勢で御目見えで・・・
    どういった御用件かな?

エディ:私は覚えていろと言ったはずだ。
    お前に受けた屈辱を忘れぬと・・・

ランス:私も・・・今度はその首刎ね飛ばすと
    答えた筈だが?

エド:もしかして・・・敵同士(カタキドウシ)だったとか!?

ランス:まあ、そんなところだ・・・

エディ:今度は貴様の命を貰う!

ランス:やめておけ・・・実力の差は前回で思い知っているだろう?

エディ:今の私をあの時の私だと思っていると、後悔する事になるぞ!
    剣技の訓練を重ね、今や私から一本をとれる者が居なくなった程だ!!

ランス:ならば、お相手いたそう。

エディ:フン、誰が1対1だと言った?
    皆の者・・・かかれぃ!!

エド:卑怯な!
   ランスフォード卿!手助け致します。

ランス:かたじけない!

エディ:ランスフォード!貴様の相手は私だ!!

ランス:・・・踏込みが甘すぎる!!

エディ:くそぅ・・・何故だ!?私があれ程の訓練をしたというのに・・・
    てぃやぁあああああ!!!

ランス:フンッ!

エディ:ぐっ・・・熱い・・・!?
    なんだ・・?・・・剣が刺さっている?

ランス:戦いは、自らの命を賭としての命の遣り取りだ・・・

エディ:あー・・・あぁ・・・イヤだ・・・

ランス:その事を・・・覚えておけ!!ハアッ!!!

エディ:ぎゃふっ・・・≪首を刎ねられ即死する≫

エド:お前等!待てぇ!!

ランス:追っても無駄だ・・・
    正規の兵じゃない。傭兵か何かだろう・・・

エド:そうですね・・・

ランス:それよりも酒場に戻る前に
    彼の遺体を埋めてやるのを手伝ってくれないか?

エド:いいですけど・・・敵(カタキ)なのにですか?

ランス:この男はエディラン・フォン・オルヴィス
    アンジェリカの元婚約者だ・・・

エド:な・・・そうだったんですか・・・

ランス:アンには・・・まだ、この事は伝えたくないんだ・・・

エド:私達は見知らぬ暴漢に襲われ、無事撃退した。
   それで良いじゃないですか!

ランス:そうだな・・・

エド:早く埋めてしまいましょう。
   歓迎会に間に合わなくなったら、お互い女性陣が怖いですよ?

ランス:ははは!
    まったくだ(笑)

【村の酒場】

ランス:えー、私は村の代理領主として当然の職務を全うするのみであり、
    また、至らぬ点もまだ多々あるとは思いますが・・・

アン:ランス様・・・堅苦しいのは嫌われましてよ?

ランス:え、あぁ・・・

アニス:大丈夫!ランスフォード様が頑張ってくれている事は
    村人の全員がわかってますって!

エド:ランスフォード卿!その通りですよ!

ランス:ああ・・兎に角、私も皆さんが村人で嬉しく思っています。
    では、乾杯!



アン:サーバルド兄様の失踪後、滅入りがちに過ごしてきたけれど・・・
   村の人達、そしてランス様の笑顔を見ていると、
   私も元気を出さなくっちゃって思うの・・・
   兄様もどこかで、きっと元気になさっている事だわ!
   『今日は書類整理のお手伝いでもしましょうかしら』
   ホニフの平和な日々が、これからも続きますように・・・





                十三章へつづく・・・
                           次回に続く。