三騎士英雄譚〜第十三章〜

ローゼマリー・ブラウンフェルズ(35歳)女
ルーク皇太子の侍女長
お淑やかで大人しい女性ですが
侍女として職務は器用にこなす。

ユーリー・アルゲエーフ(28歳)男 愛称=ユーリ
北方ローゼルク王国出身の
小型の竪琴ライアーを奏でる吟遊詩人。
時として密偵として働いている。

サーバルド・アンセル(29歳)男 愛称=セル
セルディア王国第三紺碧騎士団中隊長。
ランスの同期であり親友。
槍術、馬術ともに長けているのだが
不真面目な所があり騎士としては優秀とは言えない。

アルフレッド・ローランド(26歳)男 愛称=アル
セルディア王国第三紺碧騎士団小隊長。
ランス、セルの部下。
弓術の名手であり中隊長昇格も間近と言われている。
セルと対照的に真面目。

ベアトリス(37歳)女 愛称=トリス
貿易都市バルマで雑貨商店の経営をするデミドーラ人の女主人。
ローゼマリーと古くから付き合いを持つ
本人は歳を気にしているが、
年齢より若く見え、女性として魅力的。

舞台説明



ローズN:デミドーラ王国の貿易都市バルマ
     セルディアの海岸沿いを東に行った所に位置し
     陸路、海路共に運搬に適したその街は
     揃わない物は無いと言われる巨大市場となっている・・・
     そう言えばバルマで店を開いているトリスは元気かしら

ユーリ:ローズさん本当にデミドーラ国に行かれるのですか?

ローズ:ユーリー様、ご心配要りませんわ。
    商人、特に貿易商においては国籍は意味を成しませんの。
    信用さえあるなら取引は行われますわ。

ユーリ:それは存じております。
    ・・・ですが、もしもの事もある。

ローズ:直接出向くのは、最初の取引契約のみ・・・
    後は定期的に商品を納めてくれるはずですし・・・
    バルマの商品は質も良く値段も安いのですのよ?

ユーリ:ええ、私もバルマに居た事もあります。

ローズ:ユーリー様は色んな所を旅されているのですね・・・

ユーリ:まあ吟遊詩人ですから・・・
    兎に角、その取引契約の際は私も同行致します。

ローズ:ええ、お手数をお掛けしますけども・・・
    お願い致しますわ。

【貿易都市バルマ】

セル:うぅ〜頭痛てぇ・・・

アル:サーバルド卿・・・昨晩、あんな、いかがわしい店に行かれるからですよ?

セル:うっせい!しかし、あの店の酒は何混ぜてんだ!?
   臭せぇーし、不味いし、悪酔いするしよぉー!
   まぁねぇちゃん達は美人揃いだったけどな(笑)

アル:たくっ貴方って人は・・・

セル:それよりサーバルド卿なんて呼び方はやめろ・・・
   ここは商業都市とはいえ、敵国内なんだぞ?
   セルって呼びな!俺は気にしねぇから。

アル:そうですね・・・
   ガルニア要塞の方は陥落に成功したみたいですけど・・・
   我々は捕虜にされてましたからね・・・

セル:ああ、捕虜護送の隊長があの坊っちゃん騎士で良かったぜ。
   逃げ出す隙がごまんとあったからな!

アル:デミドーラ側のガルビア内務大臣との内通者の情報を探る為に
   このデミドーラ国に残ったのはいいですが・・・
   サーバル・・・ぃや、セルさんが酒場通いばかりしてるせいで
   まったく捜査が進みませんけどね

セル:何を言ってる?捜査なら順調だろう?

アル:どこが順調なんですか!?

セル:いいから。
   それよりよぉ、これから昨日のねぇちゃんと待ち合わせなんだよぉ
   わりぃけど、ちょっと出掛けてくらぁ

アル:まったく・・・少しは真面目に出来ないんですか!?

セル:へへっ・・・じゃあな!


ユーリ:店の場所・・・わからないんですか?

ローズ:えぇ、店を移転した様で・・・困りましたわ。

アル:どこかお探しですか?

ユーリ:はい、『鈴蘭の朝露』商店という雑貨商なのですが・・・

アル:すずらんの・・・ああ、それなら表街道沿いに見かけましたよ。

ユーリ:本当ですか?よかった見つかって・・・

アル:良かったら案内致しましょうか?

ユーリ:それは助かります。
    でも、悪いですねぇ・・・

アル:いえ、丁度連れの者が野暮用で出掛けてましてね・・・
   私も今は手が空いてるんです。

ユーリ:そうですか・・・そういう事ならお願いしましょうか。

アル:では、こちらですよ。

ローズ:御迷惑お掛けしますわ。

アル:あ、いや・・・このぐらい何でもないです。
   すぐそこですから・・・

ローズ:でも、表街道に移るなんて・・・
    商売巧くいってるみたいで良かったわ

【表街道『鈴蘭の朝露』商店前】

アル:そこのお店なんですが・・・
   この店で間違いないでしょうか?

ローズ:すずらんのあさつゆ・・
    ええ、たぶん間違いないと思うわ

トリス:あれ?ローゼマリー!マリィじゃないの!?

ローズ:えぇ!?貴女・・トリス!お久しぶりね!

トリス:どうしたの?貴女セルディアのお城で勤めてたんじゃ?

ローズ:ええ、今は諸事情でガルニア要塞で働いてるの。

アル:ガルニア要塞!?

ローズ:ええ、デミドーラの方には気分の良い話ではないわね・・・

アル:いえ、私はデミドーラの人間ではありませんので・・・
   失礼ながらランスフォード副団長は今、如何されてますか?

ユーリ:ランスフォード卿・・・
    要塞ではお見かけしませんでしたが・・・
    確か、ホニフの村で代理領主をされている方では?

アル:副団長が領主代理!?

ユーリ:はい、付かぬ事をお聞きしますが・・・
    貴方はランスフォード卿と如何いったご関係で・・・?

アル:私は・・・私は元紺碧騎士団中隊長アルフレッド・ローランドと申します。
   ランスフォード副団長と共にガルニア要塞攻略戦に赴き
   恥ずかしながら・・・私と連れの者は捕虜としてこの国に・・・

ローズ:そうでしたの・・・

トリス:大変でしたわね・・・でも店先で話す話題ではないわね。

アル:いや・・・これは失敬・・・

トリス:まぁ兎に角、中にお入りになられて・・・
    マリィも私の顔を見に来た訳ではないのでしょう?

ローズ:そうね・・・

【『鈴蘭の朝露』商店内】

ユーリ:では、こちらも本題に入りましょうか?

トリス:そうね、聞きましょうか。

ローズ:実は、ガルニア要塞へ食料や物資の納品を頼みたいのよ

トリス:あら、お客様として来たの?

ユーリ:ですが・・・他国との・・・それも最近占拠されたばかりの
    ガルニア要塞なのですが・・・宜しいのですか?

トリス:あたし達、商人達にとっては自国も敵国もないわ
    以前からセルディアとも取引はあったし
    不謹慎だけど、多少の争いがあった方が需要が増えて
    商売は儲かるモノなの。

ユーリ:ふふっ・・・その言葉は逆に信用できますね。

ローズ:じゃあ取引契約、トリスの店でお願い出来るかしら?

トリス:ええ、もちろんよ!
    他でもないマリィのお願いですもの・・・
    あたしが断る筈ないわ。

ユーリ:では契約成立という事で。

トリス:で、マリィ?この足でガルニアに戻るわけではないんでしょう?
    久しぶりですもの・・・奥でお茶でもご一緒しない?

ローゼ:そうね・・・そうゆっくりも出来ないけど、
    お茶を御馳走になる時間ぐらいあるわ。

アル:では、私はこれで失礼します。宿をとっておりますし・・・
   連れの者がいつ戻るかもわかりませんので・・・

ローゼ:そう・・・案内頂けて助かりましたわ・・・アルフレッド様。
    お礼もしたかったのですけど・・・

ユーリ:では、お礼は私の方から致す事にしましょう・・・

アル:いえ、謝礼を目当てにお声をかけた訳ではありませんので・・・

ユーリM:ぃぇ・・・貴方様がランスフォード卿の仲間であるのなら
     私としても、もう少し詳しい話を聞かせて頂きたいのです。
     宜しければ同行させて頂けませんでしょうか?

アル:なるほど・・・そういう事でしたら・・・

ユーリ:そういう訳で、暫(シバ)しアルフレッド卿に同行して外出して参ります。
    ガルニア要塞へと出立するまでには戻りますので・・・
    ローズさん、それまでお一人での外出などはなさらない様に・・・

ローズ:わかったわ。

ユーリ:では、ベアトリス店主。
    私が迎えに来るまで・・・
    ローズさんを宜しくお願いします。

トリス:ええ、ゆっくりと旧交を温める時間が出来そうね♪
    マリィの事は任せて頂戴。

【港宿】

セル:ふぅ・・・ガルビアの奴、デミドーラの外務大臣と連んでいやがったとはな・・・
   厄介な相手になりそうだぜ・・・

アル:セルさん戻っているのですか?

セル:アルじゃねぇ〜か、こんな時間までどこ行ってやがったんだ?
   ん?そいつは?

ユーリ:ルーク皇太子殿下の命によりガルニア要塞より
    密偵兼、護衛任務を受けて参りました・・・
    ユーリー・アルゲエーフと申します。

セル:ルーク皇太子様の!?

ユーリ:アルフレッド様とこの街でお会いしたのは偶然ですが・・・
    ランスフォード・シュタイン卿と懇意の仲と聞きまして
    こちらにお伺いさせて頂いた次第で・・・

セル:へぇ〜、で、その証拠は何かあるのかい?

ユーリ:ルーク王子より与かりました王家の紋章を刻印された銀の竪琴・・・
    と言っても・・・証拠としては弱いですね・・・
    ガルニア要塞の現状についての質問を答えるという事で
    証拠になりませんでしょうか?

セル:いや、そんなモノは証拠にはならんが・・・
   あんたが嘘をついてない事はわかったぜ?

ユーリ:それは良かった。

アル:それより、今言ってた・・・

セル:ああ、ガルビアのこっちの相棒は割れたぜ?

アル:デミドーラ国、外務大臣って・・・
   ボドワン・アンデルソン外務大臣ですか!?
   どこでそんな情報を・・・!?

セル:バーカ!毎日頑張って捜査してただろうが?

アル:毎日捜査って・・・酒場を呑み歩いてただけじゃないですか!?

セル:まー、アルにゃ理解出来ねぇーか・・・

ユーリ:このバルマの様な貿易都市の酒場は情報の宝庫なのですよ。
    もちろん根も葉も無い噂も多いですが・・・

セル:だから噂の真偽を確かめる為に色んな酒場で情報を聞き出して
   矛盾の無い話を推察して答えを出すしかないのさ。

アル:貴方らしい・・・というか・・・何と言うか・・・
   けど、これで副団長への土産は出来ましたね!

セル:ああ、当面の目的は達成って訳だ・・・
   だが、もう一つランスの奴に土産が出来そうだぜ?

アル:もう一つ?

セル:ああ、アスエルの三聖剣っての知ってるか?

アル:そのぐらい知ってますよ!『太陽の大剣』『月の湾曲刀』『星の剣』
   二百年前に鍛えられたとは思えない程の精巧な三振りの刀剣・・・
   大神殿にそのイミテーションが奉納されてるとかいうやつでしょ?

セル:そのうちの一振り『星の剣』のオリジナルがこの港にあるらしい。
   ただし・・・海の底だがな・・・

ユーリ:それはまた・・・面白そうな話ですね・・・



セル:ランス、待ってろよ・・・汚名返上の大きな土産持って
   お前の元に帰るからよ!
   さーて、港の入り江とはいえ、海の底のお宝ってか・・・
   どうやって引き上げりゃ良いもんかなぁ?
   ま、アルの奴なら俺よかマシに泳ぐだろう・・・

   俺達を待つ意外な再開も予期せぬまま・・・
   港町の夜の喧騒は騒がしさを増していった。






                  十四章へつづく・・・
                           次回に続く。