三騎士英雄譚〜第十四章〜

フォルテウス・エイブス(41歳)男
近衛騎士団団長。船乗りあがりの騎士。
元海賊であったという噂もあるが
その噂に似合う豪胆な性格。
エドを近衛騎士に引き立てた人物でもある。

サーバルド・アンセル(29歳)男 愛称=セル
セルディア王国第三紺碧騎士団中隊長。
ランスの同期であり親友。
槍術、馬術ともに長けているのだが
不真面目な所があり騎士としては優秀とは言えない。

アルフレッド・ローランド(26歳)男 愛称=アル
セルディア王国第三紺碧騎士団小隊長。
ランス、セルの部下。
弓術の名手であり中隊長昇格も間近と言われている。
セルと対照的に真面目。

ギルバート・アシュレイ(31歳)男 愛称=ギル
フォルテウス・エイブスの知人
セルディア人の貿易商であり、また海賊でもある
港町アムシーダを拠点に大規模な海賊団を率いている。
月の湾曲刀の所有者

シュティーナ・リンドホルム(23歳)女
エスティア人の暗殺者
踊り子の一員として身を潜めている。
マデリーネと偽名を名乗る。

舞台説明



シュティN:三聖剣の探索の命を受け、
      このデミドーラ王国貿易都市バルマへとやって来たが・・・
      あの偃月刀(エンゲツトウ)の持ち主もバルマにやって来ているとは・・・
      まぁいい・・・上手く行けば聖剣を二振り一気に入手出来るという事だ。

エイブス:流石は貿易都市バルマ・・・凄い活気だな。

ギル:出航したアムシーダから近隣の港の中じゃ、
   このバルマが一番、岩塩を高く捌けるんでさ〜

エイブス:しかし海沿いの街で塩が売れるなど・・・理解に苦しむな・・・

ギル:まぁ俺達にとっちゃ海塩(カイエン)も岩塩も変わりはしませんけどね?
   舌の肥えた金持ち共にゃ、違いがあるそうで〜。
   貴族の屋敷や高級料理店なんかで買い取ってくれるんでさ。

エイブス:腹に入りゃ・・・同じ塩だろうに・・・

ギル:まぁ、そうは言っても俺達にとっちゃオイシイ仕事ですぜ。
   一日二日、船を動かしゃ、二割増しで売れるんですから。

エイブス:まぁな・・・そういや、お前のお目付け役はどうした?

ギル:ウォルターなら市場漁(イチバアサ)りでさぁ
   岩塩を売っ払って、次の積荷を買い込んでる筈ですぜ?

エイブス:ほぉ〜、ちゃんと商売もしてるんだな?

ギル:馬鹿言っちゃ困りますぜ!?
   『アシュレイ』海運商会はアムシーダで一番の貿易商会ですぜ?
   海賊を狩るのは自衛の為の正当な行為でさー。
   ・・・とは言え、ウォルターの奴が会計に就く様になってから、
   ウチの商売は上手く行き出したんですがね・・・

エイブス:はっはっは!お前が頭(カシラ)じゃ商売より
     海賊虐めの私略(シリャク)にしか目が向かんだろうからな!

ギル:旦那・・・そりゃヒドイですぜ・・・



アル:『星の剣(ツルギ)』を海底から引き上げるって言っても・・・
   何処に沈んでるのか判っているんですか?

セル:一応な・・・
   百年も昔、このバルマの街が、まだ独立した都市国家だった頃の話だ。

アル:旧バルマ王国の時代ですね・・・?

セル:『星の剣』は、この国の国宝として代々国王の腰に飾られていた物だった。
   しかし、当時、新興国家だったデミドーラ王国が
   領土拡大とバルマの交通網を狙って侵略を開始したのさ。

アル:当初優勢に戦ったバルマ軍もデミドーラの傭兵部隊投入によって
   数で劣勢を敷かれ、王家の者は陸路を使って
   エスティア王国に亡命を求め逃亡したんでしたっけ・・・

セル:で、逃亡中の王は待ち伏せをしていたデミドーラの騎士の一隊に捕まり
   その場で処刑された・・・まぁ斬り合って、おっ死んだって訳だな・・・

アル:それで、どうして海に聖剣が?

セル:当時のデミドーラは海に接していない内陸の国だ・・・
   そりゃどちらにしろ多少の危険はあったろうが・・・逃げるなら海路と陸路、
   どっちを使うよ?

アル:あ、海!

セル:そうさ、陸路を使った奴らは囮だったって訳だ!
   しかし、残念ながら・・・当時の船は今の船程、耐波性に優れちゃいなかった。
   まんまと敵の裏はかけたは良いが・・・自然の脅威にさらされ・・・
   哀れ、海の藻屑と消えちまったのさ・・・聖剣と共にな・・・

アル:でも、私達でも思い付く事なら、
   もうすでに他の誰かに先を越されていませんか?

セル:それは無いとは言えんな・・・が、
   広い海の何処に聖剣を載せた沈没船があるか・・・
   手懸り無しには探せるものでは無いだろう・・・

アル:確かに・・・

セル:だが最近、この街のやんちゃ坊主どもが見つけたのさ。
   バルマ王家の紋章が入った沈没船をな・・・

アル:本物なんですか?

セル:わからねぇ・・・が、自慢気に見せてくれた
   その船で見つけたという金の指輪には
   バルマ王家の紋章が入ってやがった。

アル:本物である可能性はあるって事ですね・・・

セル:ああ、そういうこった。

シュティM:・・・・とんだところで・・・面白い話聞かせて貰ったわ・・・

アル:仮に聖剣の在り処がわかったとしても、
   とりあえず船を用意しないと・・・
   岸から泳いで行くのは無謀ですからね!

シュティ:あら、お兄さん達、船を探されているの?

セル:ん?イイ女だな・・・確かに船を探してるが・・・
   あんたが紹介してくれるのかい?

シュティ:まさか、でも私も知り合いの船を探してるの・・・
     探すのを手伝ってくれたら、
     船を出して貰える様にお願いして差し上げるわよ?

アル:本当ですか!?

セル:はぁー、アル・・・お前は単純だなぁ・・・
   まぁいいか・・・こっちにとっても悪い話じゃねぇ。
   ネェさんを手伝ってやるぜ!

シュティ:本当ですの!?助かりますわ!

セル:で、なんて奴の船だい?

シュティ:ギルバート・アシュレイ提督の船よ。

セル:ギルバート・・アシュレイ・・・
   アシュレイ海運商会か・・・確か海賊紛いの貿易商だな・・・

アル:そんな危険な男なのですか?

シュティ:いえ、気さくでお優しい方がたですわよ。

セル:男ってのは美人には弱いのかね?

シュティ:そういう訳ではないと思いますけど・・・

アル:兎に角、港湾地区の方に行ってみましょう。

セル:そうだな・・・そういや、あんた名前はなんていうんだい?

シュティ:マデリーネ・・・踊り子のマデリーネですわ。

セル:俺はセル、で、こっちはアルだ。

シュティ:よろしくお願いしますわ。

アル:こちらこそ・・よろしくお願いします。

【港湾地区】

セル:アシュレイ・・・アシュレイ・・・

アル:あの船じゃないですか?

シュティ:ええ、きっとそう!

セル:ん?あれは・・・フォルテウス卿!?

エイブス:ん?誰だ!?

アル:私は第三紺碧騎士団中隊長アルフレッド・ローランドです。
   近衛騎士団長フォルテウス・エイブス卿

セル:同じく、サーバルド・アンセル。
   ランスフォード副団長と一緒にお会いした事があったと思いますが・・・

エイブス:あぁ、あの時の・・・
     紺碧騎士団の者か・・・そうか、こんな所で会うとは奇遇だな・・・

ギル:旦那ぁ〜誰ですかぃ?・・・ってあんた・・・!?
   確か・・マデリーネだったかな?アムシーダの酒場で会った・・・

シュティ:先日はどうも有難う御座いました・・・
     あの後、仕事がうまくいきまして・・・そのお礼を言いたくて
     貴方がたを探していたの。

ギル:へぇ・・・律儀なこったな・・・まぁあんたが会いに来てくれたって知ったら
   ウォルターの奴が喜ぶぜ!

シュティ:元々お知り合いの様でしたけど・・・
     こちらの方がたが船を出してくれる方を探されていたので、
     勝手に紹介する約束をしてしまいましたのだけど・・・
     宜しかったかしら?

ギル:旦那のお知り合いですかぃ?

エイブス:あぁ、セルディアの騎士仲間だ
     親しいという程の間柄ではないが・・・顔を合わせた事ぐらいはある。
     気の悪い奴らではないはずだ。

ギル:なら、こちらとしても手を貸すのに異存はありやせんぜ。

セル:そいつは助かる。

エイブス:で、船を使って何をしようって言うんだ?

アル:ええ、入り江付近に沈んでいる沈没船から
   引き上げたい品があるのです。

ギル:!?まさか・・・聖剣のうちの一振りだなんて言わねぇだろうな!?

アル:どうしてそれを・・・!?

ギル:旦那・・・同じ事を考えてる奴らが居ましたぜ?
   如何します?

エイブス:元より見つけた聖剣はガルニア要塞に送るつもりだったんだ。
     彼らに聖剣を届けてもらうさ。

シュティ:まぁ宝探しね!?
     面白そう!私も連れて行ってくださる?

ギル:まぁ・・・俺はかまわねぇが・・・

エイブス:まぁいいだろう。

シュティ:ありがと♪楽しみだわぁ♪

アル:フォルテウス卿も聖剣の探索をされていたのですか?

エイブス:ああ、先日ガルビアの手の者にワシではなく
     このギルバートが狙われてな。
     こんな厄介な男を敵にまわす程の目的となれば
     こやつの持つ聖剣『月の湾曲刀』目当てぐらいのモノだろう・・・

ギル:で、どうやらガルビアって旦那も聖剣を集めさせてるんじゃねぇかってんで・・・
   それなら先にこっちが残りの聖剣も見つけちまおうって話になった訳よ。
   遣られっ放しってのは俺の性に合わないんでねぇ・・・

アル:なるほど・・・って、聖剣『月の湾曲刀』を持っているですって!?

ギル:あぁ、硝子細工を運んで大陸東方の国シラルドに航海した時によ・・・
   偶然見つけてねぇ・・・ほれ、こいつがそうさ。
   意匠もそうだが、切れ味も本物だぜ?俺自身が使って実証済みさー!

アル:シラルドですか・・・そんな国が東方に?

ギル:そういや、東方の国は曲刀の優れた国々だぜぇ
   ほら、ウチのモンの腰に吊るしてある剣を見てみなよ?

シュティ:変わった曲刀ね・・・細くて・・・それに独特のデザインだわ。

ギル:『カタナ』っていう東方の島国の曲刀だ。
   切れ味に特化した造りになってるが・・・あれで意外と丈夫なんだぜ?
   舶刀(カトラス)より実用的だしよ
   まぁ面白いんでウチの一般武装に買い込んで来たんだ。
   ま、俺の偃月刀にゃかなわねぇがな!

シュティ:素敵ね!東方の曲刀『カタナ』ですかぁ・・・

ギル:気に入ったかぃ?
   なんなら、お近付きの印に一振り進呈するぜ?

シュティ:え?ホントに!?

ギル:あぁ、あんたの剣の舞いにも似合いそうだしな!
   えっと、一振りだけ船倉に仕舞ってあったな・・・
   『カタナ』じゃなく『オオワザモノ』って名前の曲刀らしいんだがよ・・・
   まぁ見た目は『カタナ』と変わらねぇんだがな?(笑)
   ブレードに付いてる模様が神秘的でよ、あんたに似合う綺麗な曲刀だからよ!

シュティ:まぁ嬉しい!有難く頂くわ♪

エイブス:よし、積荷の積み込みも終わった頃だろう。
     聖剣探索に出発するとしよう。

ギル:アイアイサー!!



エイブス:ランスフォード卿の部下との奇妙な出会いを果たし
     同じく聖剣を求める我々は交友を深め船上の人となる。
     しかし、踊り子と称するマデリーネという女・・・
     偶然だとするにも一抹の不安を感じざる得ないのは
     ワシの思い過ごしならば良いのだが・・・
     入り江の穏やかな波に小さく揺れる船体は
     ワシの不安を表す様に、いつまでも揺れていた・・・
     
   


                  十五章へつづく・・・
                           次回に続く。