三騎士英雄譚〜第十五章〜

フォルテウス・エイブス(41歳)男
近衛騎士団団長。船乗りあがりの騎士。
元海賊であったという噂もあるが
その噂に似合う豪胆な性格。
エドを近衛騎士に引き立てた人物でもある。

サーバルド・アンセル(29歳)男 愛称=セル
セルディア王国第三紺碧騎士団中隊長。
ランスの同期であり親友。
槍術、馬術ともに長けているのだが
不真面目な所があり騎士としては優秀とは言えない。

アルフレッド・ローランド(26歳)男 愛称=アル
セルディア王国第三紺碧騎士団小隊長。
ランス、セルの部下。
弓術の名手であり中隊長昇格も間近と言われている。
セルと対照的に真面目。

ギルバート・アシュレイ(31歳)男 愛称=ギル
フォルテウス・エイブスの知人
セルディア人の貿易商であり、また海賊でもある
港町アムシーダを拠点に大規模な海賊団を率いている。
月の湾曲刀の所有者

ウォルター・ラザフォード(24歳)男
ギルバート提督の参謀を務める地理学者
剣の腕はないが連射式弩弓を持ち、
その威力は素人のウォルターを強力な弓兵へと変える。
新測量技術を考案したり、巧みな会計術により
ギルバートの海賊団を支えている。

シュティーナ・リンドホルム(23歳)女
エスティア人の暗殺者
踊り子の一員として身を潜めている。
マデリーネと偽名を名乗る。

舞台説明



アルN:風を孕み大きな帆が船体を押し進める。
    貿易都市バルマを後方に入り江近くの岩礁地帯へと船は進む。
    フォルテウス近衛騎士団長と合流した私たちは
    アスエルの三聖剣の一つ『星の剣(ツルギ)』を探索する為
    アシュレイ海運商会の船に搭乗していた。

ウォルター:提督!そろそろ例のポイントに着きますよ!

ギル:よっしゃ!岩礁に気をつけて碇(イカリ)を下ろせ!
   甲板の連中は鎧を脱いで準備しろぃ!楽しい海水浴だぜぇー!!

アル:すみません、海中の探索をアシュレイさんに任せてしまって・・・

ギル:なぁに、構わんよ!

ウォルター:そうですよ。海の事は海の男に任せておけばいいのです。

ギル:お前が海の男などというと似合わんがなぁ〜(笑)

ウォルター:私は提督のような荒くれ者の仲間入りするつもりはありませんよ!

ギル:てめぇ・・・

エイブス:で、貴候らはどこまでの情報を押さえているのだ?

セル:聖剣を積んだ沈没船の位置までバッチリ押さえてますよ?
   ほら、岩礁がまばらになったあたり・・・
   入り江から外洋に出てすぐの所で・・・。

ウォルター:あの岩礁のあたりですか?

セル:あぁ、ここからでも沈没船が影に見えるだろう?

ギル:あいつかぁ・・・
   野郎ども!聞いたか?あの岩礁の影になった部分だ!
   張りきって行ってこい!!

≪甲板の水夫達が一斉に海に飛び込む≫

シュティ:きゃ!
     ・・・ボートを使わず泳いで行かれるの?

ギル:泳ぎの得意な連中だからな。
   このぐらいの仕事は海水浴でピクニックみたいなもんだ

ウォルター:後は彼らが引き上げて来るまで、
      ゆっくり待つとしましょう。

シュティ:案外、あっさりとしてるのね・・・
     もっと大変な冒険なのかと思ってましたのに。

ギル:そいつは残念だったな。

ウォルター:探索というのはその作業の大半が情報収集の調査なんですよ。
      サーバルド様達がその調査を十分になさっていたようですから
      今回は、目的の品を海底から引き上げて終了。
      そんなところです。

シュティM:フフッ・・・目的の品を引き上げて貰わないと、私の仕事も始まらないものね・・・

ウォルター:ただ待っていても仕方ありません。
      お茶と焼き菓子でも用意しましょう。

シュティ:素敵、海の上でティータイムだなんて!

セル:ぉ、俺の焼き菓子は大盛りで頼むぜ?

ギル:はっはっ!!航海用の食料じゃねぇからな
   好きなだけ食ってくれや!

セル:へへっ・・ありがてぇ!腹減ってたんだ!

アル:サーバルド卿!・・・はしたないですよ・・・

ギル:あんたならお茶より酒の方がいいんじゃねぇか?

セル:ぉ〜いいねぇ♪けど、今はやめにしとくわ・・・
   あんたの所の若いのが戻ってきたら、品定めしねぇといけねぇしな。

ギル:じゃあ、こっちで勝手やらせてもらうぜ?
   旦那ぁ〜!エイブスの旦那も一緒にやりましょうや!

エイブス:お前は、いつもそれだな・・・
     が、まぁ頂くとしよう。

ギル:そう来なくっちゃ♪

エイブス:で、サーバルド卿にアルフレッド卿。
     聖剣の探索が成功したらガルニアに戻るつもりなのか?

アル:ええ、ランス副団長も心配して下さってるでしょうし・・・
   サーバルド卿は妹さんも心配でしょうから。

エイブス:妹?あー・・ランスフォード卿の許嫁のアンジェリカ嬢は
     確か紺碧騎士団員の妹君だったか・・・

アル:えぇ、サーバルド卿の似ても似つかぬ妹君、アンジェリカ嬢です。

セル:うっせぇ・・・上品なのはソトヅラだけだっつぅーの!
   あいつだって今や真紅騎士団の騎士じゃねぇか・・・

アル:確かに、剣の腕もなかなかのものでしたものね。
   ガルニア要塞攻略の際は幾度か助けられもしましたし。

エイブス:そうか、それは初耳だったな・・・
     ならばセルディア最強の夫婦かもしれんな(笑)

セル:まったくだ・・・

エイブス:いや、実は貴候らがガルニアに戻るのであれば伝言を頼もうと思ってな

アル:伝言・・ですか?

エイブス:クライセン候がどうやらエスティア人の暗殺者を
     子飼いにしているらしいのだ。
     まだ明確ではないのだが・・・注意するに越した事はない。

セル:暗殺者とは・・・また厄介な・・・
   こっちもガルビア内務大臣がデミドーラの外務大臣
   ボドワン卿とつるんでるって事を掴みましたよ。
   厄介な相手になりそうですぜ・・・

シュティ:怖い顔して、何を話していらっしゃるの?

アル:あぁ・・マデリーネさん・・・

ウォルター:お茶、用意できましたよ。

シュティ:さぁ、皆さんも行きましょう?

エイブス:あぁ・・・

セル:フォルテウス卿・・・彼女は・・・

エイブス:・・・・うむ。

ギル:旦那ぁ〜、バルマで仕入れたコイツ・・・
   結構イケますぜぇ〜?

エイブス:早速、ご機嫌だな・・・
     大麦の蒸留酒か・・・

ギル:ローゼルク王国のスピリッツでさ〜

シュティ:あらあら、提督さん。
     海に出かけた方達が戻ってこられたみたいですわよ?

ギル:おっと・・・のんびり呑んでる場合じゃねぇ〜な・・・
   野郎ども!ご苦労だったな!!

ウォルター:皆さんお疲れ様です。
      ロープを下ろしますので、回収した物を固定してください。
      乗船したら休んでくださって結構ですから!
      ・・・・じゃあ、引き上げお願いします!

アル:あんな大きな箱まで・・・あれで、よく泳げますねぇ      
      
ウォルター:羊の皮で作った浮きをいくつか持って行かせてますからね。
      少々の重さの物でも海中で運ぶなら楽なもんです。

アル:流石に手慣れたものですね・・・

ウォルター:積荷で慣れていますから。
      ・・・・引き上げた物は甲板にお願いします。
      さぁ、ここからは貴方がたの仕事ですよ?

セル:まずは、この箱からいくか・・・

アル:宝箱ですね・・・腐食が進んでるけど、確かにバルマ王家の紋章が入ってる。

セル:開けるぜ?・・・フンっ・・と

エイブス:これは・・・硝子のゴブレット・・か?
     ほとんど割れておるな・・・

ウォルター:当時なら硝子製の品物は大変高価でしたでしょうからね・・・

シュティ:こっちの箱は大きさの割りに随分重いわ・・・

ギル:よし、開けてみようぜ!

シュティ:・・・金貨。

ウォルター:バルマ王国期の金貨ですよ!好事家に売れば・・・

エイブス:金の価値より骨董品として価値の方が高いって訳か。

ウォルター:ええ、バルマ王国の金貨は歴代の王妃の肖像が彫られ
      美術価値が高いんです。
      中でも、この金貨の肖像・・・
      四代目の王妃シャルロッテ妃は
      その美しさを嫉まれ、毒殺により若くしてこの世を去っています。

ギル:発行枚数が少ない上、人気も高いってんで、いい値がついてたよなぁ?

シュティ:美しい人は亡くなっても愛され続けるのね・・・

ギル:俺は死んだ女より、生きた女が好きだがね!

セル:しかし、なかなかお目当ての物が出てこねぇな・・・

ウォルター:剣はこちらに束ねてありますよ!

セル:どれどれ・・・?

エイブス:どいつもこいつも錆だらけで原型すら危ういな・・・

アル:!?・・・・これ!

セル:あ?・・・これは・・・

エイブス:鞘(サヤ)や柄(ツカ)は他のと同じく錆び付いておるが・・・

アル:ええ、刀身は曇り一つない。

セル:間違いねぇな・・・こいつが『星の剣(ツルギ)』だ

シュティ:海の潮に浸かって百年も経つというのに・・・
     まさに聖剣のなせる奇跡ね。

ギル:よぉ〜し、お目当ての宝は手に入れたんだ!
   港に戻るとするか!!

セル:アシュレイの旦那!
   ちょっと頼みがあるんだが?

ギル:あん?サーバルド卿・・・如何かしたかい?

セル:バルマに戻るのもいいんだが・・・
   このままアムシーダに向かう事はできねぇか?

ウォルター:バルマでの積み込みも終わってますし
      別に問題はないですが・・・

セル:いや、俺たちゃ脱走捕虜だからよ・・・
   デミドーラの国境を街道で抜けるのは拙いんだ。

アル:サーバルド卿?
   そこまで慎重にならなくても手配は薄いんじゃないですか?

エイブス:いや、サーバルド卿の意見が正しかろう・・・
     ギルバート、そうしてやってくれるか?

ギル:まぁ、俺はどっちでもかまいやせんが・・・

シュティ:ちょっと待って・・・

ウォルター:マデリーネさん、どうしました?

シュティ:それは困るわ・・・

エイブス:そなたはアムシーダの酒場で仕事が見つかったのであろう?

シュティ:え?えぇ・・・でも・・・

シュティM:シーギスムンドがバルマ港で待ち伏せているというのに・・・
      船の上からじゃ連絡も取れないじゃない!

セル:・・・・決まったな。

エイブス:うむ。

ギル:おぃおぃ、船の責任者は俺だぜ!?
   勝手に決めないでおくんなせぃよ!

エイブス:ん?あぁ・・で、アムシーダに向かってくれるのか?

ギル:旦那に言われりゃ仕方ないですからねぇ・・・
   野郎ども!!南南西に進路を取れぇ!!
   向かうは我らが母港アムシーダだ!!

シュティM:拙い・・・聖剣がガルニア要塞に到着すれば、
      簡単に手出しできなくなる・・・
      それまでに隙をみて奪い去らなければ・・・



セル:マデリーネなる女・・・フン、それもどうせ偽名か・・・
   フォルテウス卿は気が付いている様だが、
   どうやらガルビアの子飼いと見て間違いなさそうだ・・・
   何故フォルテウス卿が女の正体をバラさないか真意は見えないが
   ここはそれに付き合ってみるか・・・
   「夜が明ければ、母国セルディアか・・・」
   船上から眺める星空に・・・あいつの顔を思い出していた。






                  十六章へつづく・・・
                           次回に続く。