三騎士英雄譚〜第十七章〜

ランスフォード・シュタイン(29歳)男 愛称=ランス
セルディア王国の無名の騎士の家生まれる。第三紺碧騎士団副団長。
父アーデル・シュタインは国王命令無視の罪により
騎士資格剥奪という憂いに遇うが、当時14歳であったランスに
異例の騎士叙勲を与え御家断絶の危機を逃れる。
また、29歳で騎士団副団長の要職への出世も異例。

アンジェリカ・アンセル(24歳)女 愛称=アン
セルの腹違いの妹。
婚約者がいるがランスと相思相愛の関係にある。
剣術を学んでおり、細身の剣の試合での実力は兄にも勝っている。

シャルル・フォン・フランソワーズ(29歳)男 愛称=シャル
セルディア王国フランソワーズ子爵家の当主。
剣より学問に通じ、第一黄金騎士団に所属するも
自領の統治に尽力を尽くしている。
セディとは幼少からの付き合いがある。
学者肌の貴族。

リーゼロッテ・イレーネ・セルディア(17歳)女 愛称=リズ
セルディア王国アスベールU世王の娘。
ルーク皇太子の妹にあたる。
王女として厳格に育てられたが
元来の活発な性格で姫らしくない。

ミカエル・フォシュマン(27歳)男
エスティア王国からの亡命貴族、元辺境伯
クライセン侯からの庇護を受け
暗殺などの裏稼業の斡旋で財を成している。

舞台説明



ミカエルN:ガルビア様の邪魔をする輩を排除する事が俺の使命・・・
      手始めにランスフォード卿の暗殺を命じられた訳だが、
      貴族のエディランという男は俺の予想通り
      ランスフォードの殺害に失敗した。
      まぁ、使えぬ捨て駒であったが、
      エドワードという腕の立つ騎士が共に居る事が判った・・・
      あの噛ませ犬では、それだけで十分か・・・
      
リズ:フランソワーズ子爵、私に出来る事はありませんの?

シャル:これはリーゼロッテ王女。
    姫様にお手を煩わす様な事は御座いません。

リズ:そうじゃなくて、何かさせて欲しいの!
   前線の要塞というから、どんな危険な場所かと思っておりましたのに・・・
   まったく平和なんですもの!!

シャル:そう言われましても・・・
    デミドーラ国からの進撃は何時あっても可笑しくはありません。
    それに敵は外からやって来るものとも限っておりませんので・・・

リズ:どういう事?

シャル:最大の敵は国内に居る・・・そういう事です。

リズ:ガルビア内務大臣の事ね

シャル:ご存知だったのですか・・・

リズ:だからこそ、私がこのガルニア要塞に視察に来たのよ?
   私が滞在中はガルビアも手を出せないでしょ?

シャル:それが・・・財務大臣を務められるアスター殿下より、
    このガルニア要塞への資金援助の打ち切りが通達されたのです。

リズ:叔父様から!?

シャル:ええ、兵員も軍備も整ったこの要塞を武力で落とすのは難しい。
    そう踏んだガルビア卿は、私達を燻り出す事にしたのでしょう・・・
    資金援助を打ち切られ、兵糧攻めにあった私達は焦って決起する・・・
    そんな筋書きでしょうね。

リズ:で、フランソワーズ子爵は如何なさるおつもり?

シャル:そういう手段を取って来ると思っていましたので(笑)
    食料や物資は十分に確保してあります。
    今のところ、近隣の村からも調達できる状態ですし・・・

リズ:何もしないというの?
   それなら私が、叔父様に直接話をつけてくるわ!

シャル:お待ちください!
    何もしない訳ではありません。
    それより姫様が敵の手に落ちる危険の方が心配です。

リズ:じゃあ如何するっていうの?

シャル:最終的にはガルビア卿の思惑通り、決起します。
    いずれは白黒を着けねばなりませんからね・・・
    しかし、今はガルビア卿の勢力の方が大きいでしょう。

リズ:ガルビアを裁く事は出来ないの!?

シャル:関与は明白でも証拠がありません。
    それに無理に責めれば内乱を惹き起こすでしょう・・・
    その時、有利なのは・・・内乱の準備を続けているガルビア卿側です
    デミドーラ軍もガルビア卿の友軍なのですから・・・

リズ:そんなぁ〜!!

シャル:慌てないで下さって結構ですよ。
    証拠さえあればいいのです。

リズ:証拠?

シャル:そう・・・現在、内乱はまだ起きていません。
    ですから、何か仕掛けてくるには直接ガルビア卿に従う者が動く筈です。
    これを向かえ討てば、敵から証拠を持って来てくれる事になります(笑)

リズ:それで上手く行く策があるのですか?

シャル:我が友人でもあるセドリック・フォン・ラグワルト卿
    剣の腕は王国一と噂されるエドワード・レザースミス卿
    そして・・・現在、ホニフの村の代理領主を務めている、
    ランスフォード・シュタイン卿・・・・彼らに働いて貰います。

リズ:我が王国を守る・・・栄光の三騎士ですわね!

シャル:栄光の三騎士ですか・・・それは良い!
    まるで伝説に残る騎士物語の様ですね。
    ホニフの村もランスフォード卿のお蔭で安定した暮らしぶりに
    なりつつあります。
    そこで、後の事はホニフの村の村長にお任せして、
    ランスフォード卿を呼び戻す事にしたのです。

【ホニフの村】

アン:ガルニア要塞のシャルル卿からお呼び立てがあったんですって?

ランス:ああ、財務大臣アスター殿下より、ガルニア要塞への資金援助が
    打ち切られたとの事だ。

アン:アスター殿下が何故!?

ランス:内務大臣クライセン侯爵が裏で工作をしているというのだ・・・
    詳しい事情は分からんが・・・ガルニア要塞攻略の作戦も
    内務大臣の意思によるもの・・・
    私はクライセン侯爵の野望を打ち砕かねばならない!
    アン、ついて来てくれるか?

アン:当然ですわ、お兄様やアルフレッド卿と生き別れる事となったのも
   クライセン侯爵のせいという事になるのでしょう!?

ランス:そういう事にもなるな・・・

アン:なら、ランス様を差し置いてでも、
   私、クライセン侯爵の野望を打ち砕かせて頂きますわ!

ランス:そうだな、ならば二人で・・・
    いや、今はガルニア要塞を中心に大勢の仲間が居るのだったな。
    皆でヤツのくだらぬ野望とやらを打ち砕こうではないか!

アン:ええ、そうですわね!

【街道の宿場町】

ミカエル:ホニフの村からランスフォードが出て行くだと?
     そうか・・・漸(ヨウヤ)く何か動きを見せるか・・・
     しかし、お誂(アツラ)え向きと言うものだ・・・
     引き続き監視を怠るな!村から離れた所で襲撃をかける!

【ガルニア要塞への街道】

ランス:アン、如何した?
    少し顔色が悪いようだが・・・

アン:いいえ・・・大丈夫よ。

ランス:無理をするな、急ぐ旅ではない。
    少し休んでいくとしよう。

アン:ごめんなさい、迷惑かけて・・・

ランス:気にする事ではないさ。
    私がお前の心配をするのに迷惑などある訳がないに決まっているだろう。

アン:ランス様・・・もし、子供をつくるなら元気な男の子が宜しいのかしら・・・?

ランス:ん?突然・・何の話だ?

アン:まだ夫婦にもなっていないのに、はしたないかしら・・・

ランス:アン!まさか・・・
    ・・・・そうなのか!?

アン:・・・はい、授かったみたいですの・・・・

ランス:これはめでたい!男か!?女か!!?
    ・・・いや、まだ分かるまいな・・・そうか、よくやった!

アン:ランス様・・・婚約してるとはいえ、私達まだ婚礼も済ませていないのですよ?
   それでも喜んでくださるのですか?

ランス:当たり前だろう!・・・しかし、そうだな・・・
    ガルニアに着いたら早速、婚姻の誓約を立てよう

アン:・・・はい。

ランス:ならば、尚更無理はいかん。
    ゆっくり体を休めて、大事にするのだ。

アン:ランス様ったら・・・懐妊は病気ではないのですよ?
   このくらい平気です。

ランス:しかし、何かあっては大変じゃないか!

アン:大丈夫。この子はランス様の子・・・
   貴方に似て、きっと丈夫ですわ。

ランス:そうだな、容姿はアンに似て美しい子になるだろう。

アン:まぁ・・・ランス様ったら・・・

ミカエル:これは・・めでたい・・・・めでたい話を聞かせて貰った・・・

ランス:っ!?・・・何奴だ!!

ミカエル:この国では、まだ名乗るほどの者ではない。
     ・・・だが、折角のめでたい話も、
     父親の顔も見ずに育つなると・・・これはまた、不憫な事だ。

アン:ふざけないで!

ミカエル:なんと・・・怖いご婦人だな・・・

アン:クライセン侯爵の手の者ね!?

ミカエル:さて・・・誰の事だろう?
     街道を荒らす追剥ぎやも知れん。
     そこの騎士に恨みを持つ者かも・・・

アン:ランス様は人に恨みを持たれる様な事、ある訳ありません!

ミカエル:人とは解らんものだ・・・貴女の知らない所で、
     そこの騎士様が何をしているか・・・分かったものではない。
     それに、恨みなどというものは、
     その気がなくとも、抱(イダ)かれてしまう・・・厄介なものですよ?

ランス:アン、下がっていろ・・・

ミカエル:お相手願えるのですか?

ランス:貴様ごときに後れを取るつもりはない!

アン:・・・ランス様っ!

ランス:大丈夫だ、それよりもお前は大事な身体だ。
    もう、一人だけの体ではないのだからな・・・

ミカエル:俺も悪魔じゃない・・・
     お前の命さえ貰えば、女は生かしてやる。

ランス:そうか、それには礼を言うが・・・
    俺の命もくれてやるつもりはないっ!!

ミカエル:良い打ち下ろしだ・・・
     流石は紺碧騎士団・・副団長・・・

アン:ランス様の初太刀を躱(カワ)した!?

ランス:ぬぅ・・・なかなかやるようだな・・・

ミカエル:では、次は俺の剣を見せてやろう・・・

ランス:軽いっ!!ぬっ!?・・・・がァ・・・!!

ミカエル:剣は一振りだけとは限らないぞ?

ランス:両手に二振りの剣とは・・・油断した・・・

ミカエル:油断?ふふっ・・・では、次は見事躱(カワ)してみろ!!

ランス:くっ!?をわ!!

アン:ランス様っ!!
   身を返して蹴り?・・・ランス様を吹き飛ばすなんて・・・

ランスM:なんという戦い方だ・・・
     しかし、強い・・・今は鎧も着てはいない。
     次に斬撃を受けては致命傷になってしまうぞ・・・・

ミカエル:遣られっ放しは不服か?だが・・・終わりだ、死ね。

ランスM:この体勢からでは・・・突きに賭けるしかない!!

ミカエル:とどめだっ!!

ランス:ハァーッ!!!

ミカエル:なっ!?

ランス:左手の剣で流されたか・・・!?

ミカエル:流石・・・騎士団の副将といったところか・・・

ランス:ここでやられる訳にはいかないのでな!

ミカエル:ぬかせ!
     ・・・・下からの振り上げの構え・・・か

ランス:うぉりゃ〜〜〜ぁ!!

ミカエル:速い!?・・・が甘いぜ?・・何ッ!?

ランス:くらえッハァァッ!!!

ミカエル:グゥ・・・・!!

ランス:チィ!!・・・僅かに軌道を逸らされた!

ミカエル:危なかったぜ・・・振り上げた剣を返して打ち落としとは・・・
  
ランスM:なんて男だ・・・しかし、今の一撃で奴の右手は封じた・・・

ミカエル:フンッ・・右肩がやられたか・・・
     どうやら、状況は不利な様だな・・・
     まぁいい、今回は挨拶代わりという事にしようか・・・
     ・・・・さらば!

ランス:待てっ!

ミカエル:ランスフォード・シュタイン卿!
     次に会った時こそ、卿の命は頂く!!

ランス:うぐっ・・・腹の傷がっ・・・!?

アン:・・・ランス様っ!?

ランス:大丈夫だ・・・しかし・・・

アン:早く止血を・・手当てしないと。

ランス:あぁ・・・不覚を取った。

アン:何者なのかしら・・・?

ランス:まずクライセン侯爵の手の者と見て間違いないだろう・・・
    しかし、恐ろしく腕の立つ奴だ・・・

アン:ランス様がここまでの手傷を負わされるなんて・・・

ランス:あぁ・・・だが・・・

アン:・・・何?

ランス:これで、アンの身を気遣わなくとも、歩みはゆっくりになるな・・・

アン:・・・・ランス様の馬鹿・・・


ミカエル:思わぬ深手を負ってしまったな・・・
     ランスフォード・シュタイン卿か、面白い・・・
     


アン:ガルニア要塞に着いた私達は、
   ランス様の傷の回復を待って婚姻の誓約を結ぶ事になりました。
   要塞内のみんなに祝福され、質素ではありましたが、
   私達の素敵な記念日となった事は言うまでもありません。
   フランソワーズ様の厚意により、私達は要塞内に二間続きの私室を頂き
   出産までの期間、要塞内の書類整理などの軽作業を与えられ、
   少し退屈ではあるものの、静養できる時間を過ごす事が出来そうです。
   お兄様・・・生きているのなら、
   早く帰って甥の誕生を喜んで下さいまし・・・





                  十八章へつづく・・・
                           次回に続く。