三騎士英雄譚〜第十八章〜

ランスフォード・シュタイン(29歳)男 愛称=ランス
セルディア王国の無名の騎士の家生まれる。第三紺碧騎士団副団長。
父アーデル・シュタインは国王命令無視の罪により
騎士資格剥奪という憂いに遇うが、当時14歳であったランスに
異例の騎士叙勲を与え御家断絶の危機を逃れる。
また、29歳で騎士団副団長の要職への出世も異例。

アンジェリカ・シュタイン(24歳)女 愛称=アン
セルの腹違いの妹。真紅騎士団の一員。
婚約者がいたが、今はランスと結婚しシュタイン家に入る。
剣術を学んでおり、細身の剣の試合での実力は兄にも勝っている。

フォルテウス・エイブス(41歳)男
近衛騎士団団長。船乗りあがりの騎士。
元海賊であったという噂もあるが
その噂に似合う豪胆な性格。
エドを近衛騎士に引き立てた人物でもある。

サーバルド・アンセル(29歳)男 愛称=セル
セルディア王国第三紺碧騎士団中隊長。
ランスの同期であり親友。
槍術、馬術ともに長けているのだが
不真面目な所があり騎士としては優秀とは言えない。

アルフレッド・ローランド(26歳)男 愛称=アル
セルディア王国第三紺碧騎士団中隊長。
ランスの部下。セルの同僚
弓術の名手でありガルニア要塞攻略参加を以って中隊長昇格
セルと対照的に真面目。

シュティーナ・リンドホルム(23歳)女
エスティア人の暗殺者
踊り子の一員として身を潜めている。
マデリーネと偽名を名乗る。

舞台説明



シュティN:アスエルの三聖剣『星の剣(ツルギ)』
      ミカエル様より探索の命を受け、探索行の果て・・・
      デミドーラ王国のバルマ港、沿岸にて発見された。
      しかし、その聖剣を手にした者は
      対立するルーク皇太子派の騎士だった。
      身を窶(ヤツ)して彼らに潜入していた私は・・・
      聖剣を奪取すべく、隙を窺(ウカガ)っていた。

エイブス:ここ、アムシーダからガルニア峡谷までは3日ほどの道程だ。
     要塞に聖剣を持ち帰るまでは油断せぬ方が良かろう。

アル:そうですね・・・油断は禁物です。気を引き締めます!
   そう言えば・・・アシュレイ海運商会から馬まで用意してもらって、
   ギルバートさんには挨拶したかったんですけど・・・

エイブス:ヤツもあれで忙しくてな。
     一応、表向きは貿易商だからな。
     (小声)サーバルド卿・・・警戒してくれ・・・

セル:・・・まぁ油断はしませんよ。

シュティ:では私も、ここでお別れしますわね

アル:あ、マデリーネさん。
   この街でお仕事があったんでしたね。

シュティ:えぇ・・・まぁ・・・

アル:お忙しいところ見送って頂いて・・・ありがとう御座いました。

シュティ:いえ、私も色々助かりましたわ。

エイブス:ワシもこの港に残る。
     ランスフォード卿に宜しく言っておいてくれ。

アル:はい。

シュティ:では、皆さんお気をつけて!

アル:はい、アシュレイ海運商会の皆さんにも宜しく言っておいてください!

シュティM:本当に気を付ける事ね・・・

【アムシーダ郊外の街道】

セル:アル、ついてくる奴はいないか?

アル:サーバルド卿?まだアムシーダを出てすぐですよ?
   確かに気を付けるに越した事はありませんけど・・・
   警戒し過ぎじゃないですか?

セル:・・・そう思うか?

アル:ええ、最近変ですよ?
   ギルバートさんの船に乗ったぐらい以降、妙に警戒心が強いというか・・・

セル:まったく・・・アル、お前は気付いてないだろう?
   マデリーネって女・・・あれはガルビアの手の者だ・・・

アル:えっ!?・・・マデリーネさんが!?

セル:ギルバート提督やフォルテウス卿がマデリーネと出会ったのは
   アムシーダの酒場だ、それが数日後にバルマに姿を現した・・・
   アムシーダの酒場で仕事を見つけたと言うのにだ。

アル:そういえば・・・変ですね・・・
   けど、ギルバートさんにお世話になったからって言ってましたよ?

セル:馬鹿!いくら世話になったからって
   国境越えてまで礼を言いに行くヤツがいるかよ・・・

アル:まぁ・・・

セル:あの女は最初から怪しかったんだよ・・・だからずっと注意していた。
   フォルテウス卿も正体に気付いていたみたいだがな・・・

アル:何が目的なんでしょう?

セル:聖剣だな・・・ギルバート提督も狙われたって言ってたろ?
   今の俺達とギルバート提督の共通点は聖剣ぐらいだろ?

アル:そうですね・・・

セル:聖剣を狙うあの女が、ギルバート提督の傍を離れて
   俺達を見送りにくるなんざ・・・月の聖剣を後回しにして
   俺達の星の聖剣を奪いにくるのを優先したって事だろ?

アル:じゃあ、私達をつけて来てるって事ですか?

セル:馬で先を急いでいれば、身を隠して着いて来るなんて事は出来ない筈だ・・・
   それを考えてフォルテウス卿は馬を用意してくれるよう、
   アシュレイ海運商会に頼んでくれたのだろう・・・

アル:なら、急ぎましょう!

【アムシーダ郊外の林道】

シュティ:急ぐわよ!
     相手は馬でガルニア要塞に街道を一直線に進んでいるわ!
     我等は奇襲を防がれている。
     この林道を抜け、回り込んで聖剣を持つ騎士を討つ!

エイブス:やはり・・・な。
     あの女の他は覆面の男が4人か・・・

シュティ:襲歩(ギャロップ)で駆けろ!!
     馬は追い付くまでの足だ!使い捨てるつもりで駆けさせろ!

【アムシーダ郊外の街道】

アル:んっ?蹄の音・・・!!
   ・・・サーバルド卿!

セル:わかってる。4つ・・いや、5つか・・・

アル:そこっ!!

セル:飛び出し様(ザマ)に矢で射抜かれちゃ・・・たまらんだろうな・・・

シュティ:・・・くっ!!掠(カス)ったか!?
     けど・・毒も塗られていない矢なんて怖くもないわ!

セル:漸(ヨウヤ)く尻尾を出しやがったな?

シュティ:ふんっ不意打ちを期待していた訳ではないの・・・
     しかし、これ以上この先には進ませないわ!
     さぁ・・・死にたくなければ、聖剣『星の剣(ツルギ)』を渡しなさい?

アル:マデリーネさん、残念ですけど・・・・
   貴女に聖剣を渡す訳にはいきません。

シュティ:そう・・・それは残念ね。
     では、ここで死になさい!!

セル:お生憎様・・俺たちゃ結構・・・強いんだぜ?

アル:サーバルド卿・・・先に行って下さい。
   ここは私が引き受けますから。

セル:おぃ!?流石に一人じゃ辛いだろう?
   コイツら・・・案外、精鋭部隊の様だぜ?

シュティ:流石ね、セル様♪
     喰えない男・・・

セル:女を見る目を鍛えてると・・・
   人を見る目も鍛えられるんだぜ?

アル:馬鹿言ってないで、さっさと行って下さい!
   彼等の実力ぐらい私だって読んでますよ!

シュティ:あら、舐めてくれるわね・・・
     貴方一人で私達を相手出来ると思って?

エイブス:なら、ワシが加勢してやろう・・・

シュティ:っ!?

エイブス:女よ、サーバルド卿は兎も角・・・
     ワシにまで正体がバレているというのは、
     密偵として、ちと甘いな・・・

シュティ:ならば、ここでその口を塞げばよい事・・・!

エイブス:サーバルド卿!行け!!
     ここは我等に任せろ!

セル:フォルテウス卿!かたじけない!

エイブス:うぉおおおおお!!!

【数日後のガルニア要塞】

アン:ランス様ぁ〜!!

ランス:アン・・・どうした?

アン:お兄様が・・・!お兄様が戻られました!!

ランス:なに!?

セル:よぉ〜ランス。

ランス:セル・・・お前・・・・

セル:なんだよ?もっとこう・・・ないのかねぇ?
   親友が数ヶ月ぶりに帰って来たんだぜぇ?

ランス:あぁ!よく戻ったな!

セル:ケッ・・・それだけかよ・・・この薄情者(笑)

ランス:まったく・・・変わらんヤツだ(笑)
    ところで・・・アルのヤツはどうした・・・・?

セル:アムシーダからの道の途中で別れた。

ランス:アムシーダだと!?
    お前達・・・いままでどうしてたんだ!?

セル:ヘイヘイ・・・それはこれから追い追い話すよ。

ランス:ああ、わかった。
    ゆっくり疲れを取ってくれ。

アン:そうですわ。
   どうせ何日も湯浴みもなさって無いのでしょう?

セル:なんだよ。そんなに臭せぇか?

アン:もぉ・・・不潔だと言ってるんです!
   それに、落ち着かれたら報告したい事もありますもの・・・

セル:そうか・・・俺からも色々報告がある。

ランス:わかった。
    では、落ち着いたら執務室まで来てくれ。

アン:ゆっくりでいいですわよ?お兄様。
   しっかりと汚れを落としてくださいね。

【執務室】

セル:よぉ。来たぜ?

ランス:まぁ入ってくれ。

セル:ぃゃ〜。さっぱりした・・・

アン:お兄様・・・頭からまだしずくが滴(シタタ)っておりますわよ!

セル:あ"ーうるせぇなぁ〜!
   それよりランス、土産だ。

アン:何ですの?お兄様・・・

ランス:えらく古い剣だな・・・

セル:聞いて驚け、アスエルの三聖剣の内の一振り。
   ・・・・『星の剣(ツルギ)』だ!

アン:アスエルの三聖剣!?

ランス:これが『星の剣(ツルギ)』なのか!?

セル:ああ、海の底に眠っていたのでな・・・
   ギギ・・・≪鞘から引き抜く≫
   それでも聖剣だ・・・刃はこの通り、綺麗なままだ。

アン:ホント・・・刃毀(ハコボ)れ一つないわ・・・

セル:近衛騎士団団長のフォルテウス卿と貿易都市バルマで出会ってな
   聖剣の入手に世話になったんだ。
   お前に宜しくと言っていた。

ランス:フォルテウス卿と?
    そうか・・・確かアムシーダの知人を頼って身を隠しているとの事だったな・・・

セル:それと、ガルビア内務大臣が
   デミドーラ王国の誰とつるんでいるのかが割れたぜ?

アン:ホントですの?

セル:ああ、それを調べる為に今までデミドーラに残ってたんだ。

アン:それで、何方ですの?

セル:デミドーラ王国外務大臣、ボドワン・アンデルソンだ。

ランス:それは大物だな・・・
    美術品収集家でも有名な資産家・・・
    潤沢な資金にモノを言わせて政界、財界に強い勢力を持ってる。

セル:厄介な相手だろ?

アン:アルフレッド卿はご無事ですの?

セル:ああ、大丈夫な筈だ。
   俺を先に行かせる為に敵の前に残ったが・・・
   フォルテウス卿が加勢に駆けつけて来てくれたからな。

アン:・・・そう。
   ねぇ、お兄様。・・・私、ランス様と籍を入れましたの・・・

セル:なに!?ホントかランス!?

ランス:ああ、

アン:それと・・・お兄様は伯父になりましたのよ?

セル:・・・・そりゃ・・・

アン:ランス様の子を授かりましたの。

セル:なんだよ!?そんなめでたい話、何で先に言わないんだよ!!
   やるじゃねぇか〜!ランスお前ぇ〜やってくれたなぁ!?

ランス:・・・・まぁ、そう言う事だ。

アン:お祝い・・・期待してますわ。お兄様♪

セル:チッ・・・しっかりしてやがるぜ。



シュティ:はぁ・・・はぁ・・・
     不覚を取ったわ・・・セルディアの騎士があれ程の腕をもっているとは・・・
     計算外だったわ。
     部下も失い、ミカエル様になんと報告すれば良いのか・・・
     これ以上、失態は重ねられん。
     セルにアルだったな・・・それにフォルテウス・・・
     この屈辱忘れぬ・・・
     この様な報告をミカエル様にせねばならんとは・・・忌々しい限りだ!





                  十九章へつづく・・・
                           次回に続く。