三騎士英雄譚〜第二十三章〜

シーギスムンド・ベールヴァルド(26歳)男
エスティア人の暗殺者
ミカエルの側近であり腕利きの暗殺者

シュティーナ・リンドホルム(23歳)女
エスティア人の暗殺者
踊り子の一員として身を潜めている。
マデリーネと偽名を名乗る。

イヴァン・ビリュコフ(26歳)男
ローゼルク人のアスエル教会騎士
戦斧を愛用する豪腕の聖騎士
ガルビア枢機卿からの依頼によりシーギスムンド等に協力する。

イリーナ・アヴェルチェフ(21歳)女
ローゼルク人のアスエル教会騎士
槍を使う女聖騎士。
信心深く、争いを好まない。

アラム・ブラゴヴォリン(38歳)男
ローゼルクの吸血鬼
関節を破壊する関節技の使い手。
大鎌を持ち黒装束に身を包んでいる。

イーゴリ・バラノフスキー(34歳)男
ローゼルクの吸血鬼
白装束を着た8フィートの体躯を持つ巨漢。
その動きは素早く。鉄球棍棒で人間を叩き潰す。

マイア・アスタフィエフ(19歳)女
ローゼルクの吸血鬼
小剣と短弓の名手。
透き通る白い肌と流れる美しい金髪を
黒い毛皮の帽子と外套で隠している。

舞台説明



シーギスN:氷と雪に閉ざされたローゼルク王国にまで
      聖剣探索阻止の命を受けやっては来たが・・・
      聖剣を探索する騎士共を追跡中
      俺は正体不明の大男に襲われ、追跡を中断せざるえなく
      近くの街「ベルホルム」の教会で治療の為、休養する事になる。

シュティ:貴方が後れを取るなんて・・・
     一体、何者なのかしらね?

シーギス:分からん・・・
     しかしあの力・・・常人では無いな。

シュティ:あの体躯で、あの俊敏さは異常ですものね。

シーギス:ああ、が・・次はこうはいかん。

シュティ:そう願うわ。
     あのガルニアの騎士共を仕留めるのは
     私一人では骨が折れるでしょうから。



イリーナ:シーギスムンド卿・・・傷の加減は如何かしら?

シーギス:悪くない。

イリーナ:そうですか・・・任務中に大男に襲われたとの事でしたわね・・・
     無事で何よりでしたわ。

シーギス:ああ、だが大した傷じゃない。
     傷さえ塞がれば不自由はないだろう。

イヴァン:・・・・貴卿を襲った大男だが、白装束の大男だと言ったな?

シーギス:お前は誰だ?

イリーナ:アスエル教会騎士団、聖騎士イヴァン卿です。

イヴァン:イヴァンだ。ガルビア猊下から貴卿等の援護を命じられている。

シーギス:そうか、俺がシーギスムンドだ。

イヴァン:で、大男は黒い円盤を胸にぶら下げていなかったか?

シュティ:どうしてそれを!?

シーギス:何か奴について知っているのか?

イリーナ:それって・・・・人狼

シュティ:人狼?

イヴァン:この地方に伝わっている人を喰らう怪物さ。

シーギス:確かに人間離れしてやがったが・・・
     怪物には見えなかったぜ?

イヴァン:人狼・・・不死の肉体を持ち、人の血肉を喰らう。
     その姿は人と変わらねど、胸に闇の太陽を下げている。

シュティ:フーン・・・あの黒い円盤の首飾りが闇の太陽って訳?

イリーナ:でも、人狼に血を吸われなくて良かったですわ。

シーギス:奴等は血を吸うのか?

イリーナ:ええ、人狼に血を吸われた者は、
     新たな人狼となり、人を襲い始める・・・
     生きてはいても、その魂は死人となり果てるのです。

シーギス:安心しな・・・俺の魂は死んでない、
     無差別に誰かを襲いたいとも感じないからな。

イリーナ:アスエルの加護のおかげです。

シーギス:そーかい、それは有難い事だな・・・

イヴァン:教会からも密命で聖剣の探索を始めている。
     しかし、探索を命じられた聖騎士がこの人狼に襲われているのだ。

イリーナ:ある者は体をあらぬ方向に折られ、
     またある者は肉塊へと潰されて亡くなりました。

シュティ:それはご愁傷様ね。

イリーナ:これが人間の業でしょうか?
     いいえ、人狼の仕業なのです・・・そうとしか考えられません。

イヴァン:で、ガルビア猊下から貴卿等の援護を請け賜っている訳だが・・・
     人狼がまた現れた際には、これを討つ事に専念したい。
     勝手とは判っているが、承諾願いたい。

シーギス:別に俺が援護を頼んだ訳じゃない。
     手伝ってくれるなら断りもしないが、好きにやってくれればいい。

イヴァン:忝(カタジケナ)い。

【谷の集落】

アラム:イーゴリ・・・戻ったか?

イーゴリ:・・・・・戻った。

アラム:教会の奴等は性懲りも無く太陽を狙っているのか・・・

マイア:我等フライデスの民の秘宝を狙う略奪者に死を!

イーゴリ:教会ではない。

マイア:今日、彼方が仕留め損なった者は教会の者ではなかったと言う事?

イーゴリ:ああ、強い奴だ。

アラム:そうか・・・お前が仕留め損なうぐらいだ・・・
    余程の手練なのだろう。

マイア:教会は我々フライデスの民を人狼と恐れて、
    他国から傭兵でも雇ったのではないか?

アラム:かも知れんな。

マイア:失礼な話だ!フライデスの民はこの地に古(イニシエ)より住んでいると言うのに
    人を怪物扱いしおって!

アラム:良いのだ、我々は人を喰らう怪物『人狼』で良い・・・
    あの者達は居もしない神を崇(アガ)め、我等を勝手に恐れる。
    このまま人狼として太陽を狙う者を襲えば・・・
    自らが作り出した幻影に怯え、いずれ諦めるだろう。

イーゴリ:奴は違う。

マイア:余所者は我々を恐れないと?

イーゴリ:大丈夫だ、大地に還す。

マイア:そうね。

アラム:マイア、イーゴリを連れて余所者達の動きに気を配ってくれ。
    
マイア:分かった。

イーゴリ:だが奴等は二手いる。

マイア:余所者達は教会の雇った傭兵以外にもいるのね?

アラム:そうか・・・ならば教会側は私が見張って居よう。

マイア:もう一方は任して!

アラム:気を付けるのだぞ?

イーゴリ:行くぞ・・・。

マイア:おい、待て。
    置いて行くな!

【ベルホルムの教会】

イヴァン:イリーナ、客人の治療はもう良いのか?

イリーナ:はい、

イヴァン:・・・どうした?

イリーナ:あの方は、あまり私を近づけさせようとしませんから・・・

イヴァン:そうか・・・しかし、他にも何か言いたそうだな?

イリーナ:あの方がたは何者なのですか?
     ガルビア枢機卿からの紹介を受けている事は知っていますが・・・

イヴァン:ガルビア猊下の直属の部下だそうだ。

イリーナ:信仰心も薄く、どこか陰気な影がある様に思えます。

イヴァン:彼等の今回のローゼルク王国訪問も、きっと重大な特務なのだろう。
     そういった特務を任せる程の人材だ・・・
     並ならぬ経験を得ている者達に違いない。

イリーナ:それは分かりますが・・・

イヴァン:責任の重圧というものもある。
     重要任務をこなす上で、警戒心も強くなっているのだろう・・・
     特に、慣れぬ土地での任務では、それも仕方あるまい。

イリーナ:そうですか・・・
     彼等は聖剣の探索をする者達の阻止をする為に
     このローゼルクまで追って来たのですよね?

イヴァン:そう聞いている。

イリーナ:では、その追われている者達は何者なのでしょう?

イヴァン:それについては・・・詳しくは聞かされていない。
     南方の三大国の一国、セルディア王国にて内乱を画策する者の一派と聞く。

イリーナM:このまま彼等を信用していいの?
      自分の目で確かめたい・・・
      この不安が神の導きだとするならば・・・

イヴァン:シーギスムンド卿の回復を待って、我々はフェンリル峡谷へと進む。
     イリーナ、お前はどうする?

イリーナ:考えさせてください。

【翌日】

シーギス:キャスカル峡谷に残してきた我等の部下が戻り次第、
     フェンリル峡谷へと馬を進める。

イヴァン:ならば道中の先導を務めさせて貰おう。

シーギス:部下達は今日中にでも戻る。
     先導、宜しく頼む。

シュティ:戦力が増えるのは良いけど・・・
     邪魔にならない?

シーギス:邪魔をする様なら消えて貰うさ・・・

シュティ:それもそうね・・・

イリーナ:お尋ねします。

シュティ:どうした?

イリーナ:シーギスムンド卿の兵を戻らせるという事は
     追っている筈の者達を自由にさせるという事になりませんか?

シーギス:確かに・・だか、その者共が狙うのも聖剣。
     先手を打ってフェンリル峡谷に向うに何の疑問がある?

イリーナ:いえ、疑問はありません。
     ですが、その者達を監視、時に足止めをする隊も必要と考えます。

シュティ:こちらは少数だ。
     貴卿等、教会騎士団の手を借りて手数は増えたとは言え、
     使い捨てにする様な人員はおらん!

イリーナ:ですから、私が参ります。
     数名ですが教会より与(アズカ)った兵もおりますので・・・

シュティ:そうかい・・・あんたが勝手に行くというなら止めはしないよ。

シーギス:おい、勝手に決めるな。

シュティ:いいじゃないか・・・
     奴等の監視役はいた方が良いのは確かだ。
     こちらの戦力を割かずに監視してくれるなら有難いだろう?

イリーナ:シーギスムンド卿。
     先日、好きにやってくれれば良いと・・仰って下さったではないですか?

シーギス:フンっ・・・まぁいい・・・好きにしろ。

イリーナ:はい。有難う御座います。


アラム:どうやら教会が雇った訳でも無い様だな・・・
    しかしフェンリルに向うか・・・どこで嗅ぎ付けたのやら・・・
    氷狼(ヒョウロウ)の部族に手を貸してもらうとするか・・・

【キャスバル峡谷】

マイア:この辺なんでしょ?

イーゴリ:ああ、

マイア:昨夜は吹雪いていたのだから、あまり遠くには行ってない筈・・・

イーゴリ:あそこだ。

マイア:蹄の跡・・・そうか、馬に乗っているのね?

イーゴリ:そうだ。

マイア:犬橇(イヌゾリ)で追うわよ!
    日が暮れるまでには追い付きそうね・・・



イリーナ:人狼が現れたというキャスカル峡谷・・・
     わずかな手勢を率いて、この谷に潜むという他国で内乱を企む一派と
     接触する為、歩を進ませていた。
     シーギスムンド卿に感じる不安は彼等に会う事で確かめられる様な・・・
     そんな気がして已(ヤ)まないのだ・・・
     遠くに聞こえる狼達の遠吠えに・・・私の心の中の不安は
     徐々に広がりを見せていた。





                  二十四章へつづく・・・
                           次回に続く。