三騎士英雄譚〜第二十四章〜 エドワード・レザースミス(23歳)男 愛称=エド セルディア王国第六近衛騎士団所属。 革鎧職人の息子として生を受け16歳で戦時召集により兵士となる。 王都で開催されたトーナメント(馬上試合)の前座で行われた 勝ち抜き剣術試合で脅威の60人抜きを果たし近衛騎士の叙勲を受ける。 民衆寄りの考え方から上官との諍い(イサカイ)は絶えないが 剣の腕は王国一とも大陸一とも噂される。 グレゴール・ファントム(25歳)男 愛称=グレイ エスティア人の傭兵。 通り名は死神グレイ。彼は今まで危険な任務をこなして来たのだが、 その為、彼の戦友のほとんどは戦死を遂げている。 戦場から、ただ一人生き帰る彼を傭兵仲間は死神だと噂するようになった。 無口で一見、無骨だが本当は心優しい男。 サナウジャール(54歳)男 セルジア伯爵領の山地に住む野盗の頭。 元、宮廷占星学者であり、隠居の身にあった。 伯爵夫人の横暴から領民を守る為、現在野盗に身を落としていた。 コルネリア・ケアード(21歳)女 愛称=コニー アスエル教団の女司祭。ガルビア・フォン・クライセン枢機卿の姪にあたる。 薬草学に精通しており、治療行為は得意としているが 人前に立つ説教は苦手で、布教活動をする事は少ない。 イリーナ・アヴェルチェフ(21歳)女 ローゼルク人のアスエル教会騎士 槍を使う女聖騎士。 信心深く、争いを好まない。 イーゴリ・バラノフスキー(34歳)男 ローゼルクの吸血鬼 白装束を着た8フィートの体躯を持つ巨漢。 その動きは素早く。鉄球棍棒で人間を叩き潰す。 マイア・アスタフィエフ(19歳)女 ローゼルクの吸血鬼 小剣と短弓の名手。 透き通る白い肌と流れる美しい金髪を 黒い毛皮の帽子と外套で隠している。 舞台説明 エドN:聖剣探索の為、ローゼルク王国に渡った俺達は ユーリーさんから教えられた伝承を頼りに フェンリル峡谷とキャスカル峡谷に当りをつけ 現在地より近かったキャスカル峡谷へとまず向ったのだが、 その探索はどうやら空振りに終わろうとしていた。 イリーナ:そろそろ峡谷に着く頃ね・・・ それにしても妙な静けさ・・・ マイア:・・・・あれは教会の手の者・・・また性懲りもなく・・・ イーゴリ:問題ない・・・ マイア:そうね、余所者の前に・・・ あの邪魔者から片付けてしまえば良いだけね・・・ イーゴリ:女か・・・あれはお前がやれ。 マイア:どうせ殺すのに・・・ 自分が手を下すか下さないか・・なんて、 あんまり拘らなくて良いでしょうに・・・ イーゴリ:・・・・他はやる。 マイア:まぁいいけどさ。 行くよ! イリーナ:・・・何!? マイア:教会!死んで貰うよ! イリーナ:何者!?それは闇の太陽・・・女の人狼!? マイア:人狼・・・?そうだ、お前等が人狼と呼ぶ者だ・・・ イリーナ:私達だけじゃ・・・皆さん!ここは退きます! 早く逃げて!! マイア:そうはさせないよ! イーゴリ:女は任せた・・・ イリーナ:くっ・・・挟まれたか・・・ マイア:そういう事で、あんたの相手は私だ。 イリーナ:光神アスエルの御名の許に成敗っ!・・ハァ!! マイア:そんな単調な槍に刺されるもんか! イリーナ:早いっ!なんてすばしっこい奴なの!? マイア:左がガラ空き!せゃ!! イリーナ:きゃっ! マイア:あら・・・傷が浅かった? イリーナ:うぅ・・・人狼め・・・ みんな・・・逃げて・・・ イーゴリ:ふんっ!ぅおりゃー!! イリーナ:そんな・・・アキーム!ヤコフっ!! 鎧ごと叩き潰すなんて・・・ マイア:残念ね・・・あんたのお供は皆ヤラれたみたいよ? イリーナ:白装束の大男・・・ あれがシーギスムンド卿を襲った人狼・・・ マイア:さぁ、残ったのはあんただけね。 グレイ:全く骨折り損だぜ・・・ エド:地道に当るしかないですよ。 キャスカル峡谷に聖剣がないと分かっただけでも収穫じゃないですか。 コニー:そうね、後はフェンリル峡谷。 まだ一度も暗殺部隊に襲われてないのが不気味だけど・・・ サナウ:じゃが、フェンリル峡谷に聖剣が眠ると決まった訳でもない。 フェンリルで聖剣を発見出来ぬ様なら振り出しじゃがな? グレイ:そういう後ろ向きな考えは良くないぜ? 無かったらその時はその時だ・・・ とっととフェンリルに向って、やる事遣っちまえば良いのよ。 エド:そうと決まれば、急ぎましょう! コニー:そうね! グレイ:しかし気を付けろよ? 探索で一番危険なのは帰り道だ。 お宝を帰り道で横取りするのが一番効率良いからな。 エド:俺達・・・結局、聖剣は手に入れてないですけどね・・・ グレイ:奴等にはそんな事、分からねぇからな・・・ 待ち伏せしてても可笑しくないぜ。 サナウ:それにワシ等を始末してからゆっくり聖剣を探しても 奴等の目的は狂わんじゃろうからなぁ・・・ グレイ:そういうこった。 気を抜かずに突っ走るぞ! エド:はい、分かりました。 イリーナ:駄目だ・・・これ以上躱(カワ)しきれない・・・ マイア:お得意の槍はあっちに落ちてるわよ? どうした?拾いに行かないのか? イリーナ:どうやら大男は手を出して来ないみたいだけど・・・ この女の人狼だけでも・・・逃げる事が出来ない・・・ 背中を見せれば確実にやられる・・・ マイア:そろそろ、遊びも終わりにしましょうか。 エド:ん?どこかで戦っている!? グレイ:あぁ・・・血の匂いだ・・・ すぐ傍だぜ? コニー:あれは!? エド:コルネリアさん、何か見つけましたか!? コニー:あれはアスエル教団の教会騎士・・・ あそこで聖騎士様が襲われています! エド:何者かと戦っている!? サナウ:暗殺部隊の者かの? エド:兎に角、助けないと! グレイ:そうだな、ありゃ結構ヤバそうだ。 マイア:何っ!?・・・増援!? イーゴリ:違う。 マイア:余所者の方か・・・面倒な時に・・・ イーゴリ:手伝え。 イリーナ:ぇ?助けが・・・・来た? 光神アスエルの御加護に感謝します。 マイア:チッ・・仕方ない、そらぁ!! イリーナ:ぅぐっ・・・!? ハァ・・ハァ・・ぅぅ・・・これ如きの傷・・・ エド:お前達!何者だぁーーー!!? イーゴリ:・・・・フンっ!! エド:ぐぐっ・・・なんて力だ・・・ イーゴリ:やるな。 エド:お前こそ!!ダァー!! グレイ:俺の相手は嬢ちゃんか? コニー!そこで倒れてる奴の面倒を頼むぜ? コニー:はい! グレイ:ぅらっ!! マイア:くっ!この・・・力任せが!! グレイ:へぇ〜やるねぇ・・・ マイア:こっちからも行くよ!ハァー!! グレイ:チッ・・手加減出来そうにねぇな・・・ マイア:女だと思ってナメるな!! グレイ:女だからナメてる訳じゃねぇが・・速さだけじゃ駄目なんだぜ!? ぅおりゃぁーーー!!! マイア:だからって力任せか!?甘いんだよ!! グレイ:どっちがっ!!? マイア:何ぃ!?ぐぁぁあ!!! グレイ:もう少し腕力も鍛えておくんだな? マイア:ぐぅぅ・・小剣で受けた筈の斬撃を・・・そのまま叩き込むとは・・・ イーゴリ:マイア・・・ エド:隙ありっ!!タァァーー!! イーゴリ:ぬっ!? エド:うぁ!・・・なんだ!?俺の剣が・・・折れた? イーゴリ:・・・・マイアよ・・・氷の中で安らかに・・・ ・・・ハァッ! エド:ぬっ・・・!逃げるか、待てっ!! コニー:貴女・・・大丈夫!? イリーナ:ええ・・・それより人狼は・・・? コニー:人狼?貴女を襲った二人は 一人を倒し、もう一人はエドワード卿とグレゴール様が追ってるわ。 イリーナ:そう・・・ サナウ:お前さんは一体、何者じゃ? イリーナ:ベルホルムのアスエル教会で教会自衛団を指揮しています・・・ イリーナ・アヴェルチェフ・・・教会騎士団の聖騎士です。 コニー:やはり教会騎士団の方でしたか・・・ イリーナ:その聖印、貴女もアスエル教団の・・・? コニー:セルディア王国にあるアスエルの旧教会で司祭を務めておりました。 イリーナ:司祭様であられましたか!? コニー:コルネリア・ケアードです。 司祭と言っても枢機卿を務める叔父ガルビアの威光あっての事ですけど・・・ イリーナ:ガルビア猊下の姪御様であらせられたのですか!? コニー:そう畏(カシコ)まらないで・・・私と叔父は関係ないもの・・・ それに、傷の手当が先よ。 腹部の刺し傷がかなり深いわ・・・ イリーナ:この程度、大丈夫です・・・それよりも私は ケアード司祭様の叔父上、ガルビア猊下が追われている 賊の監視をせねばなりません・・・ サナウ:ガルビアの追っている賊じゃと? ふぉっふぉっふぉっ・・・そりゃワシ等の事じゃないかの? イリーナ:まさか? コニー:叔父はセルディアの実権を握る為、王弟アスター殿下を懐柔し 傀儡政権を作り上げるつもりなのです・・・ 私達は叔父と対立する為、ある要塞を拠点に 叔父の野望を止めようとしているのですが・・・ サナウ:エスティア人の暗殺者を使って邪魔者であるワシ等を 亡き者にしようとしておるようなのじゃ・・・ イリーナ:エスティア人の暗殺者・・・ シーギスムンド卿達がですか・・・? サナウ:お主・・・何か知っておるのか? イリーナ:貴方がたを追っているのはシーギスムンド卿。 先日、このキャスカル渓谷で貴方がたを追跡している最中に 先程の人狼に襲われ・・・ベルホルムの街で私が傷の手当をしました。 サナウ:先程の二人はガルビアの手の者ではなかったか・・・ イリーナ:あの者達は人狼・・・この雪山に住む怪物です。 サナウ:人狼・・・?それは子供騙しの御伽噺ではないのかの? イリーナ:いえ、あの吸血鬼共は実際にいるのです。 サナウ:人間の血肉を喰らい、血を啜る事で仲間を増やすというアレか? とても信じられんのぉ・・・ イリーナ:でも実際に被害が出ております。 それに、そこで倒れる女の胸にも闇の太陽が・・・ サナウ:ふむ、これか・・・なるほど・・・ コニー:それでシーギスムンド卿という男は、今もベルホルムに? イリーナ:いえ、聖騎士のイヴァン卿と共に フェンリル峡谷へと旅立たれてる筈です。 サナウ:それは拙(マズ)いの・・・ グレイ:爺さん達無事かぃ? コニー:グレゴール様・・ エド:残念ながら・・大男には逃げられました。 グレイ:図体(ズウタイ)の割りに豪(エラ)く素早い奴でな・・・ サナウ:そうか・・・こちらも残念な事が分かったわい。 エド:如何されたのですか? サナウ:ガルビアの手の者が教会騎士団と共に フェンリル峡谷に向った事が分かったのじゃ・・・ グレイ:あ?暗殺者と聖騎士が一緒に・・だと?? サナウ:ガルビアはアスエル教団の枢機卿じゃ、 何も知らぬ教会に手を借りる事ぐらい出来るじゃろう? エド:だとすると、拙(マズ)いですね・・・ 急がないと先に聖剣を奪われてしまう。 コニー:でもイリーナ女史を治療しないと・・・ エド:・・・・そうですね。 サナウ:とりあえず街まで運ぶとしてじゃ・・・ ベルホルムでは奴等に目立ってしまうかの? イリーナ:それは大丈夫です。 今はシーギスムンド卿も部下共々出払ってますし、 ベルホルムには私をよく知ってくれている 小さな教会が幾つかあります。 グレイ:この女はどうする? エド:とりあえず手足だけ拘束して連れて行きましょう。 このまま放っておいては死んでしまいますから! イリーナ:人狼を助けるですって!? エド:放ってもおけないだろ? サナウ:案ずるでない。その者は人狼などではない。 イリーナ:そんな筈・・・ サナウ:イリーナ殿。この者はフライデスの民じゃよ。 イリーナ:フライデス? サナウ:そうじゃ、この国の建国前からこの地に住んでおる 山岳民族じゃ、お主が闇の太陽と言っておった、この首飾りは 太陽を奉るフライデスの民の装飾。アスエル教で言えば聖印の様な物じゃな。 イリーナ:では、そのフライデスの民が何故、私達を? エド:それを聞くにも彼女を助けないといけないって訳さ。 イリーナ:・・・・ コニー:それなら早く出発しないと。 気を失って体温を奪われてしまってる・・・ グレゴール様、毛布を頂けますか? グレイ:ああ、待ってな。 エド:俺はグレゴールさんと後から追い付きます。 コルネリアさんとサナウジャール殿は負傷した二人を連れて先に馬で行って下さい。 グレイ:チッ・・帰りは街まで歩きかよ? 仕方ねぇ・・・護衛出来る人間が居なくなるが、急ぐしな・・・ 気を付けてくれよ? イリーナ:いざとなれば・・・私が戦えます。 グレイ:そりゃ心強いこった・・・ エド:ガルビアの手の者、シーギスムンド。 ランスフォード卿に手傷を負わせた男か・・・ アムシーダでフォルテウス団長が取り逃がした男か・・・ どちらにしても強敵である事は間違いない。 フェンリル峡谷へ・・・聖剣へと、先手をかけられた事に悔しさを覚えながら 顔に突き刺さる冷たい風を受け峡谷の道を下っていった。 二十五章へつづく・・・ 次回に続く。