三騎士英雄譚〜第二十八章〜

コルネリア・ケアード(21歳)女 愛称=コニー
アスエル教団の女司祭。ガルビア・フォン・クライセン枢機卿の姪にあたる。
薬草学に精通しており、治療行為は得意としているが
人前に立つ説教は苦手で、布教活動をする事は少ない。

イリーナ・アヴェルチェフ(21歳)女
ローゼルク人のアスエル教会騎士
槍を使う女聖騎士。
信心深く、争いを好まない。

セルゲイ・アザロフ(51歳)男
ローゼルク人のアスエル教団大司教。
ローゼルク王国内での教団最高位を持つ。
教会騎士団の設立者でもある。

イーゴリ・バラノフスキー(34歳)男
ローゼルクの吸血鬼
白装束を着た8フィートの体躯を持つ巨漢。
その動きは素早く。鉄球棍棒で人間を叩き潰す。

舞台説明



コニーN:イリーナ女史と共にローゼルク王都ローゼンブルグへと向っている。
     ローゼルク王国の大司教、セルゲイ猊下にお会いし、
     吸血鬼『人狼』と思われていた者達の正体がフライデスの民という
     山岳民族であり普通の人間であった事を伝える為でした。

イーゴリ:マイア・・・仇は討ってやる・・・

【ローゼンブルグの街】

イリーナ:ケアード司祭、ローゼルクの都ローゼンブルグの街に入りましたわ。

コニー:綺麗な街並みね。

イリーナ:この辺りは蒸留酒の酒蔵倉庫街です。
     ローゼンブルグ大教会は右手に見えてる平和の丘の上にあるんですよ。

コニー:あの丘に見える教会ね?
    セルディアの大教会より立派ですわ。
    聖アスエル自治区の大神殿の様・・・

イリーナ:私達教会騎士団の設立以降、聖騎士寄宿舎や教練所が増設されましたし。
     それに併せて礼拝の聖堂も新たに拡張されましたのよ。

コニー:ローゼルク王国での信仰は深いのですね。
    教会施設の為にそこまでの寄付が募るのですから

イリーナ:ローゼルク王国の正規騎士では軍備を整えるに隣国との外交に
     摩擦を生んでしまいますでしょ?
     軍備の拡大に国交の緊張を生まない為には
     教団としての戦力とした方が都合が良いそうです・・・
     私はそのような考えで教団の権限を行使するは本意ではないのですが・・・

コニー:そうね・・・

イリーナ:まぁそのおかげで国から多額の援助が下りているのです。

コニー:正規軍の維持に使う軍事費の一部を教団の寄付に回しているのね。

イリーナ:そういう事だと思います。

【ローゼンブルグ大教会】

セルゲイ:面会を希望するのはそなた達か?

イリーナ:はい、セルゲイ猊下。
     ベルホルムで教会自衛団を指揮しております。
     教会騎士イリーナ・アヴェルチェフです。

コニー:お初にお目にかかります。
    アスエル旧教会の司祭コルネリア・ケアードです。

セルゲイ:旧教会のケアード司祭・・・
     ふむ、ガルビア枢機卿の姪御だったか?

コニー:はい・・・伯父のガルビア卿は母の兄に当たります。

セルゲイ:それは遠方よりよく参られた。
     して、この度の訪問は如(イ)かな理由で参られたのかな?

コニー:アスエルの三聖剣の探索に同行してのローゼルク王国訪問だったのですが、
    探索を続ける中、大司教のお耳に入れたい事実を知りましたので・・・

セルゲイ:ほぉ・・それは如(イ)かな事かな?

イリーナ:それは私から御説明させて頂きます。

セルゲイ:うむ。

イリーナ:現在、我等教会騎士はローゼルク国内に出没する人狼(ジンロウ)なる怪物を
     正義の名の下に成敗して参りましたが・・・

セルゲイ:報告は受けておる。

イリーナ:この人狼(ジンロウ)なる者、人狼(ジンロウ)あらず。
     山岳にて住まう人間の部族の者と判明致しました。
     我々は御名に遵(シタガ)い。邪悪なる者を討つ為、血を流して参りました。
     ですが、この殺生が罪深きものと判った以上。
     無益な争いは今すぐにでも中断し、
     山岳の民との和睦を模索せねばならないと存じ上げます。

セルゲイ:我々教団の人間の多くが無益な殺生を続けておると申すか?

イリーナ:はい・・・残念な事ながら・・・

セルゲイ:・・・・人狼(ジンロウ)が罪無き人間であるとの証拠はあるのか?

イリーナ:それは・・・ケアード司祭と行動を共にする賢者サナウジャール殿が
     この山岳民族についての知識が深く、
     我等ローゼルクの民がこの地に住まう前からの先住の民だと
     お教え下さいました。

セルゲイ:先住民とな?・・・ではローゼルクの民の今日(コンニチ)まで被害・・・
     いや、我々教会の者にも人狼(ジンロウ)の被害は出ておる。
     もし、その先住民が人狼(ジンロウ)でないとして・・・
     その者達の所業が邪悪でないと如何証明する。

コニー:お互いの正体を知らず、また自らに危害を加えられれば
    邪悪でなくとも報復を考えましょう。
    教団も山岳民族の存在を知らず、安易に人狼(ジンロウ)だと勘違いをして
    討伐されたのではないですか?
    その報復に教会の者を襲った者を誰が責められましょう?

セルゲイ:我々は光神(コウシン)アスエルの意思を代行する者ぞ?
     全知なるアスエルの意思に過ちなどある筈もない!
     安易な決定等、行ったりはせん!

イリーナ:アスエルの意思に過ちがなくとも、
     我等人間には過ちはありましょう?
     過ちに気付いたならば、それを正すのが正しき道ではないでしょうか?

セルゲイ:聖騎士アヴェルチェフよ。
     お主は邪悪なる意思に拐(カドワカ)されておるようじゃな?

イリーナ:その様な事は・・・

セルゲイ:司祭ケアード。
     そなたがガルビア猊下の意に反し、
     セルディア王国での内乱を起こそうとした罪で
     セルディアの特使から追われておるという事を
     このワシが知らぬとでも思っておったか!?

イリーナ:それこそ誤解で御座います!

セルゲイ:うるさい!その者を捕らえよ!
     聖騎士アヴェルチェフ、そなたもこれ以上庇い立てするのであらば
     同罪と見做(ミナ)し、縄をうつぞ!!

コニー:シーギスムンドが聖騎士に応援を要請しているのだから
    伯父上の息がかかっていても可笑しくなかったのに・・・
    油断していたわ・・・

イリーナ:ケアード司祭、お逃げになられて!
     ここは私が!!

コニー:無理をしないで!傷が完治した訳ではないのよ!?

イリーナ:私も後を追います。
     まずは司祭がお逃げ下さい!

コニー:ごめん・・・必ず無事でいてね!

イリーナ:はい!

【平和の丘】

セルゲイ:此処迄の様ですな。

コニー:貴方・・・伯父上と手を結んでいたのね!?

セルゲイ:そうですぞ?
     ガルビア枢機卿は次期教皇選挙でワシに票を入れてくれる
     大切なお方です。
     それに我々教会は正義を重んじる存在。
     無益な殺生などを繰り返している等といらぬ事を言いふらされては・・・
     我等教会の権威に傷を付けられますからな。

コニー:この俗物・・・!
    恥はないのですか!?

セルゲイ:そなたのお陰で、罪も無い我が聖騎士が一人・・・
     命を落とす事になってしまった。

≪コニーの目の前にイリーナの首が転がり落ちる≫

コニー:イリーナ女史っ!?・・・・何という事を・・・

セルゲイ:皆の者!この者は我等を侮辱し、教会の権威を失墜させんとする重罪人ぞ!
     この者は司祭等ではない。魔女じゃ!
     この魔女めを正義の刃で仕留めるのじゃ!!

コニー:くっ・・・そうはさせない!

セルゲイ:戦鎚(メイス)など隠し持っておったか・・・

コニー:やぁ!やぁ!!

セルゲイ:そんな素人同然の戦い方で我が聖騎士団に敵う訳あるまい。
     無駄な抵抗ぞ・・・皆の者、一思いに殺ってしまえ!

コニー:きゃっ!?・・・大司教ぉーーー!!

セルゲイ:な、何じゃ!?来るな!!

コニー:はぁーっ!!

セルゲイ:ごはっ!

≪飛びつき様に頭を戦鎚で殴られ落馬するセルゲイ≫

コニー:お願い・・逃げ切って・・・ハァ!

セルゲイ:ぐぁぁああ!!
     ・・・・おのれ・・何をしておる!追え!!
     あの女を血祭りに上げてしまえ!

【ベルホルムへの街道】

コニー:はぁ・・はぁ・・はぁ・・・
    ここまで来れば・・・追っても振り切れたわよね・・・
    イリーナ女史・・私の為に・・・

イーゴリ:見つけた・・・

コニー:貴方は・・・!

イーゴリ:女だが・・・マイアの仇だ・・・

コニー:待って!マイアさんなら生きてるわ!

イーゴリ:何?

コニー:私が治療して、今は氷狼(ヒョウロウ)の集落にいる筈よ。

イーゴリ:しかしお前達は太陽を奪う。

コニー:それは・・・

イーゴリ:ドォリャーっ!!

コニー:きゃあっ!!

イーゴリ:フンっ!

コニー:待って・・・本当に貴方達の敵じゃないの!

イーゴリ:信用しない。

コニー:拙いわ・・・折角教会騎士を撒いたというのに・・・
    この人が相手じゃ逃げる事も出来ない・・・

イーゴリ:観念したか?

コニー:ええ、でもマイアさんが生きてるのは本当よ!
    だから抵抗しない代わりにマイアさんと合流するまで
    私を殺すのは待って貰えませんか?

イーゴリ:・・・・・わかった。

コニー:はぁ〜・・・良かった。
    有難う御座います。

イーゴリ:俺も・・女を殺るのは苦手だ。

コニー:そう・・・なら私の命はマイアさんに預けるわ。
    マイアさんに会っても私を殺さなければならない理由があったら
    私の命はマイアさんに捧げます。

イーゴリ:・・・そうだな。

コニー:そして、マイアさんが生きてないと判ったら、貴方が私を殺せばいい。
    その時は抵抗も命乞いもしません。

イーゴリ:悪かった。

コニー:・・・・え?

イーゴリ:俺はお前を仇だと思った。

コニー:それは仕方ない事ですわ。

イーゴリ:信用する。

コニー:ではフェンリル峡谷へ急ぎましょう?

イーゴリ:ああ。

コニー:貴方の馬に乗せて貰える?
    貴方に襲われて落馬した時に私の馬は逃げてしまったから・・・

イーゴリ:それはすまん。

コニー:貴方・・・名前は何て仰るの?

イーゴリ:イーゴリだ。
     イーゴリ・バラノフスキー。

コニー:イーゴリ様ね。
    暫くは宜しくお願いします。

イーゴリ:ああ。



セルゲイ:あの小娘め・・・逃してしもうたか。
     しかしワシを戦槌(メイス)で殴り付けるとは・・・
     教会騎士団の総力を上げても探し出してくれる。
     いや、教会兵団も駆り出すとしよう・・・
     見ておれよ・・・ガルビア卿の要請など
     適当に応じておれば良いと思っておったが、
     こうなれば、ワシの沽券に関わると言うもの・・・
     草の根分けてでも見つけ出し、仲間共々血祭りに上げてくれるわ。
     そうそう、人狼(ジンロウ)も正体が明らかになる前に駆逐せねばな・・・





                  二十九章へつづく・・・
                           次回に続く。