三騎士英雄譚〜第三十一章〜 シーギスムンド・ベールヴァルド(26歳)男 エスティア人の暗殺者 ミカエルの側近であり腕利きの暗殺者 シュティーナ・リンドホルム(23歳)女 エスティア人の暗殺者 踊り子の一員として身を潜めている。 マデリーネと偽名を名乗る。 イヴァン・ビリュコフ(26歳)男 ローゼルク人のアスエル教会騎士 戦斧を愛用する豪腕の聖騎士 ガルビア枢機卿からの依頼によりシーギスムンド等に協力する。 ヴェルチェフ(26歳)男 通称=ヴェル ローゼルク人の傭兵。 ヴェルチェフはローゼルクの言葉で烈風を意味し本名ではない。 馬術と槍斧(ハルバード)の使い手であり。烈風の如き速さで戦場を駆け巡る。 死神グレイとは戦場で轡を並べた事のある人物。 グロム(25歳)男 シラルド人の傭兵。 ヴェルチェフの相棒で名はローゼルクの言葉で迅雷、激しい雷鳴。 稲妻型の矛先を持つ蛇矛(ダボウ)という武器を愛用しており また、ヴェルチェフから贈られた炎状剣(フランベルジェ)を モルニヤ(ローゼルクの言葉での稲妻の意)と称し愛剣としている。 レイラ・アウロフ(25歳)女 ローゼルク人の傭兵。 没落したローゼルクの騎士家の令嬢。 アウロフ家復興の為、傭兵へと身を落とし武勲を上げる事を夢見ている。 女としての筋力の無さを素早い体捌きと巧みな剣捌きで補っている。 所持している方形盾(ヒーターシールド)はアウロフ家の家紋を装飾した名品。 『家名を守る』の誓いを込めている。 舞台説明 イヴァンN:大教会のある王都ローゼンブルグに一足早く到着した私は フェンリル峡谷で人狼(ジンロウ)の集団に襲われた事を 教会騎士団長である。アルカディー卿を訪ね報告した。 人狼(ジンロウ)討伐の承認にはそれなり時が必要かと思われたのだが、 大司教であられるセルゲイ猊下からの思わぬ承認により 即決で可決され、部隊編成が進められた。 シーギス:イヴァン卿、傭兵の雇用資金の用立ては如何だった? イヴァン:それが・・・ シュティ:駄目だったのかい? イヴァン:いや・・・金貨四千枚の借用が・・・ シュティ:四千枚ですって? イヴァン:はい、ローゼンブルグ大教会の大司教セルゲイ猊下が ガルビア猊下とは懇意の仲であるから助力は惜しむなと・・・ シーギス:ほぉ・・・まぁ有難く厚意に与るとするか。 シュティ:じゃあ、早速傭兵を当たりに行くとしましょうか・・・。 イヴァン:傭兵の募集でしたら、一角獣傭兵団に声を掛けてみては如何でしょう? シュティ:聞いた名ね? イヴァン:ローゼルク王国で一番優秀と言われている傭兵組織です。 シーギス:いや、鉄の牙戦士団に行く。 イヴァン:鉄の牙ですと!? いや、確かに実力的には一角獣傭兵団に優るとも劣らないと 言われておりますが・・・ あれは荒くれ者の集まりですぞ? シュティ:荒くれ者ねぇ・・・ いいじゃない。 シーギス:規律も無ければ、出生も厭(イト)わない。 無頼共であるが・・・それ故、己の腕前には自信を持っている連中だ。 化け物退治には打って付けっだと思わないか? イヴァン:それはそうですが・・・ シーギス:それに俺はそういう奴等の方が扱い易い。 イヴァン:そうですか・・・では鉄の牙戦士団が溜り場にしている酒場があります。 案内しましょう。 【『水晶森の梢』亭】 ヴェル:なんだぁ?お前等。 イヴァン:依頼主ですぞ。少しは口の利き方に気をつけなさい! ヴェル:ほぉ〜ん。 まぁ金を貰うまでは客じゃねぇ、あまり調子に乗ってると・・・ 首と胴体が生き別れになるぜ? イヴァン:・・・・何たる無礼な・・・ シーギスムンド卿・・・やはり別の傭兵団になされては? ヴェル:いい度胸じゃねぇ〜か? シーギス:お前、腕には自信がありそうだな? ヴェル:あ?何だてめぇは?・・・・・うわっと!!? シーギス:良い反応だ。 ヴェル:行き成り何しやがる!? シーギス:腕試しだ。 大口叩く割には洞察力もある。 俺の不意打ちにも素早く反応した・・・大した危険感知だ。 ヴェル:へんっ!あんたの不意打ちも見事なもんだ。 不意を突いたくせに反撃に備えて隙を作ってやがらねぇ・・・ シーギス:お前を雇いたいが、いくらだ? ヴェル:へっ、面白れぇ・・・そうだな、あんたなら金貨千枚でいいぜ? イヴァン:傭兵如きで金貨千枚の報酬だと!? シーギス:良いだろう・・・交渉成立だ。 ヴェル:わ〜ぉ!値切り無しかよ!?気前いいねぇ〜? シュティ:但し、一つの依頼に対しての報酬だよ。 必要経費は持つけど、追加報酬は期待するんじゃないよ? ヴェル:へっ!そこまで業突くじゃねぇ〜よ。 シュティ:それと、後数人、腕の立つ奴を雇いたい。 心当たりはあるかい? ヴェル:それならグロムって奴がいい。東方の異人だが腕は立つ。 最近は俺の相棒として背中を任せている奴だ。 シュティ:腕は確かなんだろうね? ヴェル:俺達、傭兵の中で背中を任せるってのは、 互いに実力を認め合った時だけだ。 それで十分な答えになってねぇか? シュティ:そう、まぁいいわ。 ヴェル:なら、ちょっくらグロムの野郎を呼んでくるぜ。 シーギス:あぁ。 レイラ:面白そうな話ね? シーギス:女の傭兵か。 レイラ:あら、女が傭兵してちゃいけない? シーギス:実力さえあれば文句は言わん。 レイラ:そう、良かったわ。 最近の男はすぐに女の癖に・・・なんて言うのよね。 シーギス:なるほどな・・・だが、ここにいるシュティーナも女だ。 だが、部下の男よりも優秀だ。 性別で実力を計るつもりはない。 レイラ:ふぅん・・・気に入ったわ。気前も良いみたいだしね。 シュティ:それはお前の腕次第だけどさ。 レイラ:鉄の牙には小隊長を務める傭兵が七人いるわ。 シュティ:お前がその七人の内の一人だというのかい? レイラ:残念ながら・・・女は信用されないみたいでね。 シュティ:それはお生憎様だったな。 レイラ:けど、その七人の内、五人は私より腕が劣るわ。 シーギス:大した自信だな? レイラ:訓練で団員の実力は把握しているからな。 シーギス:さっきの男の実力はどんなものなんだ? レイラ:ヴェルチェフ?あの男の実力は鉄の牙のbQよ。 団長程ではないけど小隊長格の中でも一番の腕でしょうね。 連れて来ると言ってたグロムも腕は確かよ。 イヴァン:そいつも小隊長なのか? レイラ:いや、私が女だというのと同じ様に、 異人だという理由で小隊を任せられる事がないわ。 グロム:拙者は気にしておらぬ。 レイラ:来ていたの、グロム。 ヴェル:待たせたなぁ。こいつが相棒のグロムだ。 シーギス:良い体付きをしている。その槍がお前の武器か? グロム:東方で作られし武器。蛇矛(ダボウ)という矛だ。 イヴァン:シーギスムンド卿、 ここは実力を見る為にも手合わせしてみては如何でしょう? シーギス:ならばイヴァン卿が手合わせしてみれば如何だ? イヴァン:私がですか?良いでしょう。 誰からにしますか? レイラ:そうね、私からお手合わせ願おうか。 イヴァン:女性からですか・・・手加減しませんぞ? レイラ:そういう事は自分より弱い者に言う事よ。 イヴァン:ぬ・・・行きますぞ!はっ!! レイラ:ふふっ、遅いわ・・・ イヴァン:なっ!? レイラ:頼りない事ね、もう降参? シュティ:あんたやるねぇ? イヴァン卿の攻撃を完全に見切って回避し喉に突きかい。 レイラ:・・・どうも。 グロム:次は拙者か? イヴァン:ふぅ〜・・・では、気を取り直して・・・ 次ぎは油断しませんぞ。 グロム:フンっ! イヴァン:うぉぉぅ!! グロム:おぉぅ! シュティ:あの長槍(チョウソウ)を巧く使うものね・・・ ヴェル:東方の槍術だそうだぜ? 突くより斬る。こっちじゃあまり見ない戦法だろ? グロム:御免っ! イヴァン:ガハッ・・・! グロム:さて・・・拙者は合格で御座ろうか? シーギス:ああ、合格だ。 レイラ:報酬は金貨千枚で間違いないでしょうね? シーギス:構わん。 イヴァン:ケホっ・・・三人で三千枚・・・後一人は雇われるのですか? シーギス:いや、借り受けた金貨を全て使う必要もあるまい。 シュティ:これからの経費もあるからな。 シーギス:そういう事だ・・・ お前達宜しく頼む。 ヴェル:ああ、宜しくな。 グロム:宜しくお願い致す。 レイラ:で・・・肝心の依頼の内容は何なんです? イヴァン:セルディア王国より謀反の罪で追われている 騎士エドワード率いる一行の抹殺と ローゼルク国内を騒がせる人狼(ジンロウ)の討伐、 それと聖剣の探索の護衛が主な依頼内容です。 ヴェル:おぃおぃ・・・依頼内容が三つもあるじゃねぇ〜か。 シュティ:エドワード等の抹殺さえ遂行してくれれば文句はないよ。 後の二つはついでみたいなもんだ。 グロム:つまり正式な依頼は騎士一行抹殺という事で良いのだな? シーギス:そう取ってもらって構わん。 グロム:しかし人狼(ジンロウ)の討伐ともなれば・・・ついでという訳にいかんと思うが? レイラ:そうよね?別に後れを取るつもりは無いけど、 化け物相手じゃ別依頼として貰わないとねぇ。 シーギス:標的のエドワードも聖剣を狙っている。 そして人狼(ジンロウ)も聖剣に関係を持っている様だからな エドワードを狙う限り人狼(ジンロウ)の妨害も考えられる。 グロム:そして聖剣探索をするそなた達と行動を共にすれば 自動的に護衛任務も果たすという事か・・・ シーギス:そういう事だ。 ヴェル:ま、金貨千枚も貰ってんだ。 贅沢も言えねぇか・・・ レイラ:そうね。必要に応じてって事なら、了承するしかないわね。 シュティ:人狼(ジンロウ)討伐はイヴァン卿や教会騎士に任せればいい。 教会騎士団は討伐に乗り出すのだろう? イヴァン:もちろんです。 セルゲイ猊下も乗り気でおられて、教会騎士、教会兵連合の大部隊が 人狼(ジンロウ)駆逐に乗り出す予定です。 レイラ:それはまた、大事(オオゴト)ね。 シーギス:まぁ俺達の標的はどこにいるのかも不明だ。 ローゼルク国内にいるって事以外はな。 ヴェル:食事と宿さえ用意してくれりゃあ、そいつぁ〜構わねぇが・・・ 如何行動するかの予定はあるのかい? イヴァン:逆賊エドワードの仲間が我が同志聖騎士イリーナを誑(タブラ)かし 大教会に出没したそうです。 王都で何かしたい事があるのではないでしょうかな? シュティ:確かに奴らはフェンリル峡谷から王都に向う道で出会ったな・・・ イヴァン:教会騎士団に追われて逃げたそうですから・・・ 教会には寄り付かぬと思いますが・・・ レイラ:王都に用って事は大教会か王城ぐらいだろうね? ヴェル:国王に会って亡命でも願い出るつもりか? シュティ:さてね、だが国王と謁見を望む可能性はあるな。 イヴァン:なんと恥知らずな・・・ シーギス:まだ決まった訳ではないが、闇雲に探して見つかるものでもあるまい。 手の者には各街を見張らせるとして・・・ イヴァン卿は教会騎士団と共に人狼(ジンロウ)討伐に向ってくれればいい。 もし、エドワード等がフェンリル峡谷に居れば報告してくれ。 イヴァン:分かりました。その時には伝令を走らせましょう。 シーギス:俺達は王都で奴らが姿を現すのを待つとしよう。 ヴェル:旦那。首謀者がエドワードって騎士一人なら、そいつの首に 金貨千枚の賞金を懸けりゃ良い事じゃねぇか? 有力情報にも報奨金を便宜する。って事にすりゃ、 暇な奴がわんさかネタを上げて来ますぜ? シュティ:案外あんた使えるじゃないのさ? グロム:拠点の宿で楽をしようって言うんじゃないだろうな? ヴェル:仕事は標的が見付かってからだろう? それまでは自由にさせて貰うさ。 シーギス:こちらとしては仕事さえ、こなしてくれれば文句はない。 だが酒代までは負担せんからな。 シュティ:呑み過ぎて使い物にならなかったら、その首刎ねるからね? その辺はよーく考えなよ? ヴェル:ヘーヘー・・・ま、話が分かる依頼主さんで良かったよ。 グロム:心配ない。ヴェルチェフは不真面目だが任務には支障は出さない。 レイラ:ヴェルチェフは酒より女でしょ?・・・せいぜい腰を労わるんだね! ヴェル:お前が相手してくれるなら、浮気はしないぜ? レイラ:誰がっ!ふざけるなっ! ヴェル:おーこわっ。 シーギス:方針が決まったなら行動だ。 王城に出来るだけ近い宿を取って待機する。 賞金稼ぎの手配はヴェルチェフ、お前に任せたぞ? ヴェル:了解だ、旦那。 シュティ:私は他の街への警戒の指示を部下に出してくる。 シーギス:分かった。 イヴァン:では、私は早速、大教会に戻り出陣の用意に取り掛からせて頂きますぞ。 シーギス:ああ。 グロム:王城近くの宿ならば良い宿を知っている。 拙者が案内致そう。 イヴァン:大教会が人狼(ジンロウ)討伐に準備した兵力は 教会騎士団50名、教会兵団120名の軍勢である。 また街々の警備強化を含めると教会の全戦力が駆り出される事になる。 出立は明後日(ミョウゴニチ)の正午。 シーギスムンド卿と別れ、私もこの出陣に参加する。 例え怪物の集団が相手であろうとも、この軍勢の前には成す術もあるまい。 我らには光神アスエルのご加護があるのだ。 銀の帷子(カタビラ)と白き陣羽織(タバード)が大教会の前庭を埋め尽くすのを見、 私は勝利の確信を堅固なものにしていた。 三十二章へつづく・・・ 次回に続く。