三騎士英雄譚〜第三十二章〜 エドワード・レザースミス(23歳)男 愛称=エド セルディア王国第六近衛騎士団所属。 革鎧職人の息子として生を受け16歳で戦時召集により兵士となる。 王都で開催されたトーナメント(馬上試合)の前座で行われた 勝ち抜き剣術試合で脅威の60人抜きを果たし近衛騎士の叙勲を受ける。 民衆寄りの考え方から上官との諍い(イサカイ)は絶えないが 剣の腕は王国一とも大陸一とも噂される。 グレゴール・ファントム(25歳)男 愛称=グレイ エスティア人の傭兵。 通り名は死神グレイ。彼は今まで危険な任務をこなして来たのだが、 その為、彼の戦友のほとんどは戦死を遂げている。 戦場から、ただ一人生き帰る彼を傭兵仲間は死神だと噂するようになった。 無口で一見、無骨だが本当は心優しい男。 サナウジャール(54歳)男 セルジア伯爵領の山地に住む野盗の頭。 元、宮廷占星学者であり、隠居の身にあった。 伯爵夫人の横暴から領民を守る為、現在野盗に身を落としていた。 マイア・アスタフィエフ(19歳)女 ローゼルクの吸血鬼 小剣と短弓の名手。 透き通る白い肌と流れる美しい金髪を 黒い毛皮の帽子と外套で隠している。 舞台説明 エドN:コルネリアさんが死んで、その葬儀も済まないまま 俺達はローゼルク王都ローゼンブルグへと向う。 ローゼルク国王と謁見を果たし、フライデスの民の安住を約束する為だ。 ・・・・コルネリアさんは俺達の目の前で殺された・・・ 暗殺者の放った毒矢を受けて・・・倒れたその姿は 一生、脳裏から消えないだろう。 そして、グレゴールさんの記憶からも・・・決して消える事はないのだと思う。 マイア:・・・・お前等、少しは元気出しなよ。 エド:俺は元気ですよ?大丈夫です。 マイア:はぁ・・・無理してるのがバレバレなんだよ・・・まったく。 エド:はは・・・ マイア:お前が元気ないと・・・心配になるだろ? エド:・・・そうですね、俺にはフライデスの民の未来が懸かっているんですもんね。 マイア:・・・そうだよ。お前は太陽の勇者だからな! サナウ:そうじゃな。これから国王との謁見をせねばならんのじゃ・・・ 辛い気持ちは心の中に収めて、気を取り直さないとな。 グレイ:・・・そうだな。 エド:・・・そうですよね。 マイア:おい。なんだ?これ・・・ グレイ:ん?・・・張り紙? セルディア人エドワード、賞金 金貨千枚。 潜伏先の有力情報にも報奨金!? サナウ:シーギスムンドの奴め、エドワード卿の首に賞金を懸けよったか? グレイ:その様だ・・・、このまま王都に入るのは拙(マズ)そうだな。 エド:でも、俺がいない事には・・・謁見は適(カナ)いませんよ? サナウ:街の者にも見付からぬ様に王城まで辿り着くしかないのぉ・・・ マイア:大丈夫なのだろうな? エド:集まっていては目立ちます。別々に行動するしかありませんね・・・ 一人は危険ですから二手に分かれましょう。 サナウ:そうじゃな。 マイア:なら私はエドワードと組む。 太陽を預けているしな。 私はエドから離れる訳にはいかない。 サナウ:ならば、ワシはグレゴール殿とじゃな。 エド:1時間後、城門前で落合いましょう。 グレイ:わかった。 サナウ:ケアード司祭を守れなかった事を気にしておるのか? グレイ:悔やんではいる。だが、気にしている訳じゃない。 サナウ:にしては、えらく落ち込んでおる様じゃの? グレイ:嬢ちゃんは俺の傍に居た。自分に向けられた矢は全て叩(ハタ)き落としていた。 嬢ちゃんに放たれた矢からだって俺が守ってやれた筈だ。 サナウ:あの乱戦では自分の身を守るのが精一杯じゃっただろう。 グレイ:俺はいつもそうだったんだ・・・だから今まで生き残れた。 やっぱり俺の剣は敵を倒すだけの剣なんだな・・・ サナウ:悔やんでも何も変わらない事は、お主も分かっているじゃろう? グレイ:ああ、分かってるさ・・・・十分過ぎる位にな。 サナウ:ワシがお主にケアード司祭を守ってやってくれと頼んだ事が 今のお主の枷(カセ)になっておるのなら、もう気にせんでもええ。 グレイ:なぁに、爺さんのせいで落ち込んでる訳じゃねぇさ。 俺が嬢ちゃんと約束したんだ・・・守ってやるってよ。 なのに、俺は・・・ サナウ:・・・・死神の名を気にしておるのか? グレイ:俺は死神だ。誰も救えねぇ・・・誰も守れねぇ。 ただ目の前の敵の命を奪うだけの男。 爺さんも俺と一緒じゃ命がねぇぜ? サナウ:ワシの命など敵に奪われんでもそう長くないわい。 お主の人生はこれからじゃがな・・・ グレイ:これから・・・ね。 これから何をしろって言うんだい? 女一人守れねぇ、約束一つ守れねぇ俺に・・・何をしろって言うんだ! サナウ:お主に出来る事じゃ。 グレイ:俺に出来る事だ? サナウ:お主は何の為にこの北方の地に来たのじゃ? ケアード司祭は何を助けようとしておったのじゃ? グレイ:俺はエドの聖剣の探索を手伝う為に・・・ コニーは・・・・フライデスの民が人狼(ジンロウ)なんていう怪物じゃないって事を 大司教に伝えようとして・・・そうだ、教会の奴等・・許せねぇ・・・・ サナウ:エドは今、聖剣を手に入れる為にフライデスの民との約束を守ろうとして 国王の謁見に望もうとしておる。 ケアード司祭も教会とフライデスの民との誤解を解こうとして大教会に向ったのじゃ。 グレイ:ああ、そうだな。 サナウ:お主には剣の力があってじゃ、エドワード卿に何をしてやれるのじゃ? エドワード卿の使命を果たさせてやるのが、ケアード司祭の想いを 果たしてやる事にもなるじゃろうて・・・ グレイ:・・・・エドの使命か・・・そう・・だな。 サナウ:・・・・これは詭弁かのぉ、じゃが今はその位の事しか出来まい。 グレイM:コニーよ。お前は俺を許してくれるのか・・・約束を守れなかった、この俺を・・・ エドの奴を助けて聖剣を持ち帰れば、お前は満足してくれるのか? 確かに俺には敵を蹴散らす剣しかねぇ・・・今は、ただの戦士に戻らせてくれ。 お前の事を考えながら他の事をやれる程、頭が良くないんでな。スマン・・・ マイア:顔をフードで隠してな。 エド:ああ。 マイア:教会ってのは一体何なんだ? コニーみたいな奴も居れば、お前に賞金を懸ける様な奴も居る。 お前等の信じる神とは何なんだ? エド:光神アスエルは人の幸せや正義と秩序を司る神様ですよ。 俺はそれ程敬虔な信者じゃないけど・・・ それでもその教えは正しいと思ってます。 マイア:なら、何故その信者のエドワードが命を狙われる? エド:教団が大きくなり過ぎたんだと思います。 始めは、ただ人を救う筈の教えだったアスエル教が、 今では複数の国の政治にまで関与出来る権力を有してます。 聖アスエル自治区が建設されてからは各国の有力貴族が 枢機卿団に加入してますし。 正直、教団の上層部は強力な権力を維持する為の教えに変貌しています。 マイア:神を祀(マツ)る者が如何してそんな事を許す・・・? 神は怒(イカ)らないのか!? エド:光神アスエルは人間の過ちを正す者が現れる事を願っているのかも知れませんね。 俺やグレゴールさんが今の教会を許せないと感じてる様に・・・ マイア:えらく他人任せな神なのだな。 エド:・・・・そうですね。でもこの世界で生きているのは人間です。 神の力で無理やり正しても、人間自体が変わらないと駄目って事じゃないですか? マイア:そういう考え方もあるんだな・・・ エド:フライデスの太陽が勇者を待ったのと同じですよ。 マイア:そうか・・・。ん?シッ・・・ エド:如何しました? マイア:・・・・・ エド:酒場内の客の声? マイア:エドワードに賞金を懸けた奴は王城の近くの宿屋で 王城に向う奴を見張っているらしい。 エド:くそう・・・先を読まれてたか・・・ マイア:城門前にノコノコ顔を出したら、敵の思う壺の様だな・・・ エド:でも、グレゴールさんとサナウジャール殿が・・・ マイア:見張っているのは『白鳥の羽休め』亭という宿らしい。 相手の場所さえ分かれば、気付かれない様に潜伏する事ぐらい簡単だ。 あの二人なら、心配しなくてもドジは踏まないだろ? エド:だと良いのですが・・・。 マイア:もし状況を知らずに二人が城門前に現れても こちらが潜伏している事がバレてなきゃ、 助ける隙だって幾らでも出来るさ。 エド:分かりました。 兎に角、まずは誰にも見付からない様に、城門近くまで移動しましょう。 マイア:そうだな。 グレイ:城門前に着いたか・・・ サナウ:エドワード卿達はまだ来ておらん様じゃな。 グレイ:まぁ一時間にはまだ時間がありそうだからな。 サナウ:そうじゃのぉ、そろそろじゃとは思うが・・・ グレイ:それより爺さん・・・さっきから嫌な気配がしやがるんだ・・・ 爺さんは俺の後ろに立って居てくれないか? サナウ:ふむ、賞金稼ぎ等に嗅ぎ付かれたのかの? グレイ:その様だ・・・ サナウ:そろそろエドワード卿達も到着する頃じゃろう・・・ マイア:二人は到着してた様だな。 エド:でも、どうやらサナウジャール殿達は見張られてるみたいだ・・・ マイア:そうだな・・・どうする? エド:潜伏して隙を突くにも・・・結構な人数が潜んでいる様だし、 一旦、囲まれたら救出は難しいと思います。 マイア:爺さんもいるしね。 エド:ああ、ここは一気に走り抜けて城門の門番に保護して貰うのが得策かな・・・ マイア:そうか・・・じゃあ行くぞ! エド:ああ! グレイ:ん?あ、エド!! サナウ:何じゃ・・走って来おる・・・ エド:城門前はシーギスムンド達に見張られてます! 城門を守る門番の兵所まで走り抜けますよ!! グレイ:んぁ!?・・・ああ、爺さん走るぜ? サナウ:ん?ぉお・・・全く・・何じゃ・・・。 マイア:爺さん早く走れ。 サナウ:ほぃほぃ・・・ グレイ:爺さん、大丈夫かい? サナウ:これ位大丈夫じゃ。 エド:でも、これなら、シーギスムンドが見張ってても 手出しする事出来ませんからね! サナウ:単純じゃが、してやったりか・・・ しかし・・息があがるのぉ・・・ グレイ:ほれ、爺さん!手ぇ貸しな! サナウ:爺(ジジイ)とじゃ色気がないのぉ? グレイ:馬鹿言ってんじゃねぇ!急ぐぜ? マイア:なら、私が背中を押してやる。 サナウ:これ!そう急(セ)かすな・・・ エド:慌て顔で物陰から飛び出してくる人影に振り向きもせず、城門へと走り抜ける。 遥か後方から金属鎧のガチャガチャという金属音を響かせながら、 十数名の武装した男達が追い掛けて来る。 城門で驚き警戒の色を見せる門番の衛士にルーク皇太子からの親書を托し、 半ば強引に詰め所の中に潜り込んだ。 暫(シバラ)くして城門前に立ち尽くすシーギスムンド等を尻目に城門の通過が許される。 ローゼルク国王との謁見の後、彼等の襲撃は避けられないだろう。 シーギスムンドとの決戦の覚悟を決め。 これからの大仕事に心を移した。ローゼルク王国の旅は終盤を迎え様としている。 三十三章へつづく・・・ 次回に続く。