三騎士英雄譚〜第三十四章〜 エドワード・レザースミス(23歳)男 愛称=エド セルディア王国第六近衛騎士団所属。 革鎧職人の息子として生を受け16歳で戦時召集により兵士となる。 王都で開催されたトーナメント(馬上試合)の前座で行われた 勝ち抜き剣術試合で脅威の60人抜きを果たし近衛騎士の叙勲を受ける。 民衆寄りの考え方から上官との諍い(イサカイ)は絶えないが 剣の腕は王国一とも大陸一とも噂される。 グレゴール・ファントム(25歳)男 愛称=グレイ エスティア人の傭兵。 通り名は死神グレイ。彼は今まで危険な任務をこなして来たのだが、 その為、彼の戦友のほとんどは戦死を遂げている。 戦場から、ただ一人生き帰る彼を傭兵仲間は死神だと噂するようになった。 無口で一見、無骨だが本当は心優しい男。 レオニード・バクシェエフ(38歳)男 ローゼルク正規騎士団の騎士隊長。 何かに秀でている訳でもないが、 全てにおいて無難に優秀。 練兵の教官に向いているのかも知れない。 シーギスムンド・ベールヴァルド(26歳)男 エスティア人の暗殺者 ミカエルの側近であり腕利きの暗殺者 シュティーナ・リンドホルム(23歳)女 エスティア人の暗殺者 踊り子の一員として身を潜めている。 マデリーネと偽名を名乗る。 ヴェルチェフ(26歳)男 通称=ヴェル ローゼルク人の傭兵。 ヴェルチェフはローゼルクの言葉で烈風を意味し本名ではない。 馬術と槍斧(ハルバード)の使い手であり。烈風の如き速さで戦場を駆け巡る。 死神グレイとは戦場で轡を並べた事のある人物。 グロム(25歳)男 シラルド人の傭兵。 ヴェルチェフの相棒で名はローゼルクの言葉で迅雷、激しい雷鳴。 稲妻型の矛先を持つ蛇矛(ダボウ)という武器を愛用しており また、ヴェルチェフから贈られた炎状剣(フランベルジェ)を モルニヤ(ローゼルクの言葉での稲妻の意)と称し愛剣としている。 レイラ・アウロフ(25歳)女 ローゼルク人の傭兵。 没落したローゼルクの騎士家の令嬢。 アウロフ家復興の為、傭兵へと身を落とし武勲を上げる事を夢見ている。 女としての筋力の無さを素早い体捌きと巧みな剣捌きで補っている。 所持している方形盾(ヒーターシールド)はアウロフ家の家紋を装飾した名品。 『家名を守る』の誓いを込めている。 舞台説明 レオ:門を開けぇ、開門!! エドN:城門がゆっくりと開かれ俺とグレゴールさんの騎馬が歩調を合わせ前進する 眼前には痺れを切らせたシーギスムンド率いる 暗殺部隊と傭兵が城門前の広場を包囲している。 決戦を心に決め、背中に担いだ聖剣『太陽の大剣』を抜き構えた。 シーギス:これはエドワード卿・・・ 聖剣を手に入れられたのだな。 シュティ:悪いけど、あんたの命とその聖剣は私が頂くよ? エド:シーギスムンド卿!コルネリアさんの仇、討たせて貰うぞ! グレイ:そこの女暗殺者!お前の命だけは俺が貰い受ける! シュティ:数を見てモノを言いな! エドN:城門前の広場を扇状に展開した武装した戦士が包囲していた。 ヴェル:そこに居るのは死神じゃねぇか? グレイ:烈風か・・・。 エド:知り合いですか? グレイ:ただの傭兵仲間だ・・・ 以前に何度か戦場で会っている。 シュティ:ほぉ〜だからってヴェルチェフ。私情を挿(ハサ)むんじゃないよ。 ヴェル:分かってらぁ〜 まぁ、私情を挿(ハサ)んでも、あいつは敵だがなぁ シュティ:へぇ〜何か恨みでもあるのかい? ヴェル:い〜や、だが俺より武勲が多いってのが気にいらねぇなぁ〜 グロム:相手は二人だ。 幾ら腕利きでも、相手になるまい。 レイラ:気が乗らないわね・・・ グロム:これも仕事で御座ろう。 レイラ:そうね・・・ ヴェル:これで金貨千枚なんだぜ? ありがてぇ話じゃねぇか〜 シーギス:よし、包囲隊形を維持し、突撃!! エドN:俺達を取り囲む様に敵は一斉に押し迫ってくる。 グレイ:エド、行くぜ? エド:ああ! グレイ:ぅぉおおお!!! ヴェル:死神ぃー!貴様は俺様が相手だぁ〜!! グレイ:でりゃあっ!! レオ:今だ!騎士隊、突撃!! シーギス:なにぃ!? ローゼルクの騎士共め・・・味方についたか! レオ:エドワード卿!道は切り開きますぞ! エド:有難う御座います!レオニード卿! シーギス:突撃に備えろ!! エドN:ローゼルク騎士団の騎兵が左右に展開し シーギスムンド達を一気に包囲する。 突然の増援に混乱を来たす傭兵達。 シュティ:傭兵共は騎士を押さえな! ヴェル:ちっ!死神との勝負はお預けか!? グロム:騎士共め!邪魔をするな! とぉりゃぁあああ!! レオ:傭兵如きが・・・・怯むな!討ち取れぇ! レイラ:傭兵だからってっ!騎士に後れは取りませんのよ! セィヤっ!! レオ:ハァっ!女の癖に粋がるなっ! レイラ:無能な者程そんな事を言う! レオ:ええぃ!蹴散らせー!! グレイ:女ぁー!コニーの仇だ、覚悟しな! シュティ:この前は退いたが、借りは返すよ! グレイ:ほざけ!ぅおりゃぁああ!! レオ:エドワード卿!ここは私めが、先をお急ぎ下さい。 シーギス:逃がしはせんぞ!エドワード! エド:ああ、お前だけは許さない!シーギスムンド! レオニード卿!ご助力感謝しますが・・・我が儘お許しを! シーギス:さて聖剣の切れ味・・・試させて貰おうか! エド:うぉおお〜〜!! シーギス:ハァアッ!! 流石は近衛騎士随一の腕だな・・エドワード。 エド:セィヤ!トリャッ!うりゃあっ!! シーギス:グゥゥ・・・調子づくなぁ!!でぇぇいっ!! エド:ぐわぁ・・・!! シーギス:幾ら試合で強かろうと・・・ お前とは実戦の場数が違うんだよっ!! 止(トド)めだ・・死ね!エドワード!! シュティ:くっ・・・あんたもしつこい男だねぇ! グレイ:お前だけは許せねぇんでな。 シュティ:そうかい。 グレイ:でりゃぁ!!! シュティ:キャっ!・・・・くっ・・・この野郎・・・ グレイ:あの世で嬢ちゃんに謝ってきなっ! ヴェル:よっとっ・・・苦戦してるねぇ〜 シュティ:ちっ・・後は任せたよ! グレイ:逃げる気か!? ヴェル:おぃおぃ、俺を倒してからにしな。 グレイ:てめぇ・・・ ヴェル:おお怖っ・・久しぶりじゃねぇか? 仲良く斬り合おうぜ? グレイ:相変らずふざけた野郎だな・・・ ヴェル:あんたは良い腕だ。 だが、それが許せねぇ・・・ グレイ:つべこべ言わず掛かって来な! ヴェル:ほんじゃ行くぜ?ハァァアっ!! グレイ:フンっ!・・・これが烈風の槍斧(ハルバード)か。 重い武器をよく振り回してるもんだ・・・ だが、速さだけじゃこの先、生き残るのは出来ないぜ? ヴェル:やっぱり嫌な奴だなぁ・・・てめぇは・・・ エド:アスエルの三聖剣・・・二百年の間、刃毀(ハコボ)れ一つなかった聖武具・・・ ならっ!! シーギス:血迷ったか・・・上段からの単純な振り下ろし等・・・ エド:全てを斬り裂け!!我が太陽!!でやぁあああっ!!! シーギス:受け切れば隙だらけなんだよぉ!!何っ!?? エド:お前を斬るんだぁうわぁぁあ!!! シーギス:ぐぅわふ・・・! 剣を斬り伏せた・・だと・・・ぐふっ・・・ エド:この剣は、闇を打ち払う剣だ! お前みたいな悪を斬る為の太陽なんだよ! シーギス:ガハッ・・・鎧ごと・・・斬られるとは・・・・な・・。 バケモノか・・貴様は・・・。 シュティ:・・・・シーギスムンド!? シーギス:しくじった・・・お前だけでも・・・退け・・・ シュティ:ちっ・・・このまま遣り合っても状況は不利になるか・・・ エドワード!覚えて居ろ!!いずれ命は貰いに行くからね! エド:このまま逃がしはしないぞ!! シュティ:誰か、こいつを殺れ! レイラ:大将がやられたの・・・・ グロム:レイラ殿、二人で掛かるぞ? レイラ:その方が良さそうね。 エド:邪魔をするなっ! グロム:うぉおおお!! ヴェル:ハァ・・ハァ・・面倒臭せぇ野郎だ・・・ グレイ:ふぅ・・・お前もしつこいと思うぜ? ヴェル:大将も殺られちまったみたいだな・・・? こりゃ負け戦か? レオ:グレゴール殿ぉ!敵の幹部らしき女が逃走しましたぞ! グレイ:・・・あの女ぁ!! ヴェル:どうやら退き時か・・・勝負はお預けだぁ〜! グロム!レイラ!退くぞ! レイラ:了解よ。 グロム:仕方あるまい・・・ レオ:皆の者!一兵たりともを逃がすな!! エド:レオニード卿、我々は先に進ませて貰います。 レオ:心得ました。ご武運を・・・ エド:レオニード卿こそ、ご武運を! グレゴールさん!行きましょう! グレイ:ああ。 レオ:我等ローゼルク騎士団の名誉に掛けて敵を殲滅せよ! エドN:暗殺部隊の部下達はその大半が討ち取られ、 残りの者も自決を計った模様だ。 傭兵の三人は追撃の騎士達を何名か返り討ちにし 女暗殺者を追って逃亡する。 レオ:くそっ・・何と言う奴等だ・・・もう良い!引き上げだ! 【ローゼンブルグ街外れ】 ヴェル:ふざけやがって・・・報酬の半分はまだ受け取ってねぇってのによ! グロム:戦いに敗走したのだ・・・仕方あるまい。 ヴェル:でもよぉ〜騎士団まで出て来るなんて聞いてねぇぞ? レイラ:王城を眼前に戦うのだから、予想は出来た事よ。 グロム:そうだ。兎に角雇い主に追い付かねばな・・・ レイラ:あの最初に逃げた女ね? グロム:大将を殺られては、副将として間違った行動では御座らん。 レイラ:お陰で部下は見殺しだった様だけど? グロム:騎士の増援があった時に退却するべきであった。 あれは死んだ大将の失策であろう。 ヴェル:まぁ済んだ事をぐだぐだ言ってても始まらねぇよ。 それより、どうせあのエドワードとか言う騎士には 賞金が掛かってんだ・・・一泡吹かせてやろうじゃねぇか。 グロム:如何するつもりだ? ヴェル:賞金稼ぎ共に情報を売ってやるのさ。 レイラ:成る程ね・・・ 相手の居所は分かってるんですものね・・・ ヴェル:無いとは思うが、俺達を追われても厄介だからな。 エドワードを足止めするにも良いだろ? 死神の野郎を俺の手で始末できねぇのが残念だがな・・・ グロム:ならば賞金稼ぎ共と一緒に出陣すれば良かろう? ヴェル:あー?面倒臭せぇよ・・・要は死神さえ消えちまえば問題ねぇんだからよ! グロム:お主という奴は・・・ レイラ:私達は雇い主の女を追うのが先決でしょ? ヴェルチェフのやり方で問題ないのよ。 【ローゼンブルグ郊外】 エド:マイアさんとサナウジャール殿は無事でしょうか? グレイ:なぁに、今頃は護衛の騎士と共にフェンリル峡谷に向っている頃だろうよ。 エド:そうですよね・・・ グレイ:国王との会談をする為の使者だろ? それなりの待遇受けてんじゃねぇか? エド:まぁそうです。 今回ばかりは国賓として扱われるでしょうね。 グレイ:如何した?何か気になる事でもあるのか? エド:別に・・・何が気になるって訳ではないんですが・・・ 何か嫌な予感がするんです・・・ グレイ:まぁそう言う事もあるだろうさ・・・ さっきの戦闘で気が立ってるのかも知れねぇな。 エド:そうですよね・・・ グレイ:俺等もフェンリル峡谷に向うんだろ? エド:ええ、氷狼(ヒョウロウ)の集落に行って、 正式に太陽を譲って貰わなければなりませんし・・・ コルネリアさんの遺体もちゃんと弔(トムラ)ってあげませんとね グレイ:そうだな。漸(ヨウヤ)く俺等の任務も終了かぁ〜 ローゼルクに来て色々あったが・・・ エド:そうですね・・・色々あり過ぎました・・・ グレイ:ああ。 エド:・・・・何だ・・・? グレイ:ちっ・・・賞金稼ぎ共か・・・忘れてたぜ・・・ エド:それにしても・・・ グレイ:ああ、一寸(チョット)ばかし頭数が多いな・・・ エド:如何します? グレイ:お前は逸早くフェンリル峡谷に向わなけりゃならねぇ。 賞金が懸かってんのはエド、お前だからな! エド:グレゴールさんは如何するつもりです? グレイ:合図と共にダッシュするぞ!! 囲まれちまう前に包囲を突破するんだ! エド:はい。 グレイ:行くぞ・・・・ 走れ!!! エドN:俺達が走り出すのを見て物陰に潜伏していた賞金稼ぎ達が 一斉に飛び出して来る。 包囲網の完成を見る前に突破し、そのまま走り抜ける 少し遅れて馬に乗った賞金稼ぎ達が槍を手に追跡を開始、 不意を突いて稼いだ距離もあっと言う間に詰められ様としていた。 グレイ:やはり来やがったか・・・ エド、お前がやられる訳にはいかねぇ! エド:グレゴールさん!? グレイ:傭兵の間じゃ常識だ。 逃げ切る事が出来ず全滅してしまう恐れがある時は・・・ 誰かが足止め役を買って出る! エド!お前は必ず逃げ切れ!! エド:でも・・・・ グレイ:俺は死神だ!戦友が死んでも俺は死なねぇ! 今までもケツを持って生き残れなかった事はねぇんだよ! エド:・・・はい!必ずまた会いましょう・・・グレゴールさん! グレイ:ああ! グレイM:さてと、騎馬六騎に歩きが・・・ざっと三十か・・・ エド、お前の事は本当の弟みたいに思ってたぜ? 無事、聖剣持ち帰れよな・・・ コニー、お前に如何やら会いに行く事になりそうだ・・・ 会ったら謝るからよ、守りきれなかった俺を許してくれよな。 グレイ:うぉおおおお!!ここから先は通さねぇ!! お前等全員、あの世の道連れにしてやらぁ!! エドN:グレゴールさんの単独での突撃に対し、 賞金稼ぎ達は群れを成して取り囲む。 怒号と土煙の中、賞金稼ぎのともグレゴールさんのとも判らぬ 血飛沫が宙を舞う。 俺はグレゴールさんの意思を無駄にしない為・・・ 駆け戻ろうとする足を無理矢理前に進める。 死神は死なないとのグレゴールさんの言葉だけを僅かに信じて・・・ グレイ:ぐぉっ!?・・・まだだ・・・ガハッ!! まだ道連れが足りねぇ・・・ぞっ・・ ぶはぁ・・ちっ・・・限界だな・・・こりゃ・・・ エドの奴・・無事逃げやがっただろうな・・・ これでドジ踏んでやがったら・・あの世では相手して・・やらねぇぞ・・ もう時期だ・・・もう時期お前の許へ・・・行けるぜ・・・ なぁ・・本物の死神さんはどんな顔してるんだ? そろそろ・・・顔、見してくれや・・あの世はまだ行った事ねぇから・・ コニーの所に行くのに・・迷っちまう・・・ レオ:この一ヶ月後、大司教セルゲイ・アザロフは人狼(ジンロウ)騒ぎの責任を取り 大司教の座を返還し、聖アスエル自治区に異動。実質上の権威を失う。 また、フェンリル峡谷に向った教会騎士団の進攻は ローゼルク正規騎士団の介入によって中断され、 フライデスの民との会談は約束通り、 教団所有の荘園から分譲される事で合意された。 フライデスの民には荘園としての機能はそのままに 徴税などの責務は免除される事となる。 教会騎士団の解散も議題には上がるも、 国庫からの援助のみ打ち切りと言う事で解散だけは間逃れる事となった。 エドワード卿は本国への帰還を前に、フライデスの民の新領地に足を運ぶ。 彼のローゼルクの旅は終焉を迎えようとしている。 しかし、その顔には使命を果たした充実感は無く。 失ったモノの大きさに苦悩する・・・苦渋の表情しか見当たらなかった・・・ 三十五章へつづく・・・ 次回に続く。