三騎士英雄譚〜第三十五章〜

エドワード・レザースミス(23歳)男 愛称=エド
セルディア王国第六近衛騎士団所属。
革鎧職人の息子として生を受け16歳で戦時召集により兵士となる。
王都で開催されたトーナメント(馬上試合)の前座で行われた
勝ち抜き剣術試合で脅威の60人抜きを果たし近衛騎士の叙勲を受ける。
民衆寄りの考え方から上官との諍い(イサカイ)は絶えないが
剣の腕は王国一とも大陸一とも噂される。

サナウジャール(54歳)男
セルジア伯爵領の山地に住む野盗の頭。
元、宮廷占星学者であり、隠居の身にあった。
伯爵夫人の横暴から領民を守る為、現在野盗に身を落としていた。

マイア・アスタフィエフ(19歳)女
ローゼルクの吸血鬼
小剣と短弓の名手。
透き通る白い肌と流れる美しい金髪を
黒い毛皮の帽子と外套で隠している。

アラム・ブラゴヴォリン(38歳)男
ローゼルクの吸血鬼
関節を破壊する関節技の使い手。
大鎌を持ち黒装束に身を包んでいる。

ヴェルチェフ(26歳)男 通称=ヴェル
ローゼルク人の傭兵。
ヴェルチェフはローゼルクの言葉で烈風を意味し本名ではない。
馬術と槍斧(ハルバード)の使い手であり。烈風の如き速さで戦場を駆け巡る。
死神グレイとは戦場で轡を並べた事のある人物。

グロム(25歳)男
シラルド人の傭兵。
ヴェルチェフの相棒で名はローゼルクの言葉で迅雷、激しい雷鳴。
稲妻型の矛先を持つ蛇矛(ダボウ)という武器を愛用しており
また、ヴェルチェフから贈られた炎状剣(フランベルジェ)を
モルニヤ(ローゼルクの言葉での稲妻の意)と称し愛剣としている。

レイラ・アウロフ(25歳)女
ローゼルク人の傭兵。
没落したローゼルクの騎士家の令嬢。
アウロフ家復興の為、傭兵へと身を落とし武勲を上げる事を夢見ている。
女としての筋力の無さを素早い体捌きと巧みな剣捌きで補っている。
所持している方形盾(ヒーターシールド)はアウロフ家の家紋を装飾した名品。
『家名を守る』の誓いを込めている。

舞台説明



アラムN:太陽を持つ勇者エドワードの活躍により・・・
     我がフライデスの民は、安住の地を手に入れた。
     ロジオン大族長と平地の民ローゼルク王との会談は
     終始、穏やかに進められ、
     アルトゥールW世は、我等に安住の地を割譲(カツジョウ)し
     我々のその他の要求の殆ども快く聞き入れたのだった。

マイア:エドワード!

エド:マイアさん。如何ですか?新しい暮らしは・・・

マイア:ああ、順調だ。

サナウ:それは良かったのぉ。

マイア:教会の使っていた建物は、そのまま使えるし
    畑も手入れされていて、すぐに使える。

エド:そうでしょうね。

マイア:お前のお陰だ・・・感謝している。本当に・・・

エド:俺はただ、自分の立場を利用して国王に謁見をして頂いただけです。
   今の状況は今までのフライデスの民の皆の頑張りと、
   会談を成功させた、ロジオン族長の手柄だよ。

マイア:フライデスの民だけでは会談を持つ事も出来なかった。
    いや、それ以前に教会共に滅ぼされていたかも知れない。
    やっぱり、お前のお陰だ。
    エドワード・・・お前に出会えて良かった。

エド:マイアさん・・・

マイア:なぁ・・・エドワード・・・

エド:如何したんですか?

マイア:故郷の国には・・・その・・誰か待っているのか?

エド:・・・・待ってるって?

マイア:つまり・・・だな。約束をした女は居るのかと聞いている・・・

エド:え・・・いや、その・・・

マイア:居ないのか?

エド:居ると言うか・・居ないと言うか・・・

マイア:・・・・・どっちなんだ!?

サナウ:約束はしとらんが、待っとるオナゴはおる・・・と
    そんな所かのぉ?

エド:サナウジャール殿〜・・・

マイア:なんだ・・・そんな人が居るのか・・・

エド:そんなんじゃないですよぉ!
   幼馴染って言うか・・・
   でも、待ってる人かぁ・・・早くまた会いたいなぁ〜

マイア:なんだ、やっぱり待ってるんじゃないか・・・

エド:いや、そうじゃなくて!
   ガルニア要塞の仲間にだよ。

サナウ:何じゃ・・・?オナゴじゃなく、むさ苦しい連中かいよ・・・

マイア:あははは!そうか・・・お前らしいな。

アラム:なんだ、豪く賑やかだと思ったら、
    太陽の勇者か。

エド:アラムさん・・・
   お久しぶりです。

アラム:連れの男の事、残念だったな・・・

エド:あ、・・・ええ。

アラム:そう落ち込むな。
    お前も戦士なら分かるだろう?

エド:でも・・・

アラム:戦士は何時自分に迎えが来るか分からない。
    だから、悔いを残さない様に、毎日を全力で生きてるんだ。
    あの戦士もそうやって生きて来た筈だ。

エド:そうですかね?・・・そうだと良いですね。

アラム:仲間のお前が分からんのか?
    あの男はお前を生かす為に自らの死を選んだ。
    悔いを残していなかった証拠だ。

サナウ:そうじゃよ、グレゴール殿は自ら進んで足止め役を
    買って出たのじゃろう?
    ワシだって残念には思っておる。
    出来る事ならばワシの命と代わってやりたい位じゃ・・・
    じゃが、エドワード卿が気を病む事は無い。

アラム:爺さんの命と代わっても先は短そうだがな。
    あの男の分もお前が生きろ!
    ・・・そういえば、あの男には子供は居たのか?

エド:え?確か、居ない筈ですよ?

アラム:そうか・・・それは残念だったな。
    太陽の勇者も早く作っておく事だ。
    生命(イノチ)のある内にしか作れんのだからな。
    子が居れば、お前が死んだ後も生を育んでくれる。

エド:はは・・・考えておきます。

アラム:何なら部族の女を紹介してやろうか?
    お前は太陽の勇者なのだからな、断る女もおらんだろう。

マイア:大族長!!

アラム:ん?何を怒っている。・・・ああ、何ならマイア。
    お前が勇者の子を産んでも良いな。
    きっと強い子に育つぞ?

マイア:そういう事ではない!

エド:あっ、そういえばアラムさん大族長に就任なさったんですね。
   おめでとう御座います。

アラム:いや、本来フライデスの民を救ったお前の権利だ。
    俺は一度は太陽を預けられたというのに、
    集落を守る事が出来なかった・・・
    お前が我が部族の者であれば大族長になってたのはお前だ。

エド:いえ、そんな・・・

アラム:なに、真実だ。
    だが、大族長になったからには民を引張って行くつもりだ。
    ローゼルクの民との交流もこれから摸索していこうと思う。

エド:ええ、頑張って下さい。
   イーゴリさんやロジオン族長は如何されてるんですか?
   お顔を見かけませんけど・・・

アラム:今も氷狼(ヒョウロウ)の集落で暮らしているよ。
    山岳民族としての風習も残していかねばならんからな。
    平地に降りて来た者は、部族の若い衆だけだ。

エド:そうですか・・・
   最後に挨拶ぐらいして行きたかったんですけどね。

アラム:そう太陽の勇者が言っていたと伝えておくよ。

エド:はは・・・その、太陽の勇者っての、やめて貰えませんか?
   その何だか恥ずかしくって・・・

アラム:何だ?先代大族長から太陽を譲られた、太陽の勇者なのだから
    何も恥ずかしがる事はないだろう?

エド:そうですけど・・・呼ばれ慣れてなくて・・・

アラム:そうか、なら仕方ないな・・・
    しかし太陽の勇者よ、お前はこのフライデスの英雄だ。
    何時でも歓迎するからな、また顔を見せに来てくれ。

エド:あ、はい。

【ローゼルク南側国境】

ヴェル:ったく・・・あの女、自国までトンズラしやがったな?

グロム:これから如何するのだ?

ヴェル:セルディアの人間なら、
    セルディアに行けば嫌でも会えるだろうよ。
    残り金貨五百枚・・まだ貰ってねぇからな。

レイラ:セルディアまで集金に行く気?

ヴェル:ああ、それによ・・・
    セルディアではこれから稼ぎ口が増えそうだとは思わねぇか?

レイラ:騎士の一派が謀反を起こしてるって話だったわね。

ヴェル:ああ、だが俺の見た所、どっちが謀反を起こしてるのか・・・
    分からねぇぜ?

グロム:雇い主の方が謀反を起こした側と申すか?

ヴェル:ああ、まーどっちにしろ内乱が起きるのは必至だ。
    俺達傭兵にとっちゃ、稼ぎ時ってこったな。

レイラ:ふ〜ん。それじゃ私も話に乗ろうかしら。
    残り金貨五百枚の件もあるしね。

グロム:拙者はヴェルチェフと共に行く。
    お主がセルディアに行くのであれば、
    拙者もセルディアに向うしかあるまい。

ヴェル:決まったな。

レイラ:南方の国だから暖かいんでしょうね。

グロム:この地よりは良い気候だ。
    それに此方のウイスキーが高く売れる。

レイラ:変に詳しいのね?

グロム:故郷から船で渡って来た時に
    南方の国の一つデミドーラで船を降りたのだ。

ヴェル:へぇ〜、なら道中に飲む分も含めて
    ウイスキーでも買い込んでおくか・・・
    今は懐も暖かいからな!

レイラ:行商人みたいな真似をするのね・・・

ヴェル:旅の序(ツイ)でに稼げるなら有難てぇじゃねぇか。
    金は幾ら有っても困らねぇからなぁ

グロム:風土が変われば装備も変えねばならんかも知れぬ。
    拙者も行商の真似事、させて貰うとするか・・・

レイラ:私は遠慮するわ。
    今の所持金でも困らないだろうし、
    セルディアに着けば仕事は有るでしょうから。

ヴェル:なぁグロム、南方の女はどんなだった?
    美人揃いか?

グロム:拙者に聞かんで貰いたい。

ヴェル:黒色の肌は俺の好みじゃねぇんだがなぁ〜
    いや、あれはあれで、そそるか・・・

レイラ:・・・依頼主の奴等は白い肌じゃなかったっけ?
    ・・・黒いのは居ないんじゃない?残念だったわね。

ヴェル:そういや、そうか・・・
    ま、かまやしねぇ、楽しみだぜ!

グロム:・・・・あまり女のケツを追い掛け回しておると
    ロクな目に遭わんで御座るぞ・・・

ヴェル:へへっ、人生楽しまなくっちゃ損だぜ?

レイラ:楽しみ方を間違ってる事に早く気付くべきね・・・

ヴェル:そうかい、その内な!

【フライデスの新領地】

サナウ:エドワード卿。そろそろ本国へ帰還するかの。

エド:・・・・そうですね。

アラム:道中、気を付けられよ。

エド:はい。有難う御座います。

アラム:それとな・・・

エド:はい?何です?

マイア:私もお前の故郷を見せてくれ。

サナウ:何じゃと?

マイア:エドワードは我等を救ってくれた。
    だが、エドワードの敵はまだ残っているのだろう?

サナウ:確かにそうじゃが・・・

マイア:次は私がお前達を助ける番だ。

エド:そんな、自分達の使命を果たしただけで・・・
   聖剣も・・・太陽もこうして戴いた訳ですし・・・

マイア:私が居ると邪魔なのか?

エド:そういう訳ではありませんが・・・

マイア:それに・・・グレイやコニーも死んでしまって・・・
    代わりにお前を守る者も要るだろ?

サナウ:マイア殿、お主が付いてくれるのは心強いがの。
    フライデスの民もこれからじゃ、
    お主の様な若い者の力が必要な時じゃろう?

アラム:それについては問題ない。
    マイアが太陽の勇者に付いて行く事は私も賛成しているのだ。
    我が部族の者ではないが、太陽の勇者は我等の勇者だ。
    マイアが太陽の勇者と結ばれれば、
    勇者の血筋を我が部族に残せる。

エド:ちょっと待って下さいよ・・・

マイア:私はただ、お前の故郷を見たいと思っただけだ!
    それでも駄目なのか!?

エド:いや、それは駄目じゃないですけど・・・

サナウ:エドワード卿は若いのぉ・・・
    それにしても、よぉモテよる。

エド:サナウジャール殿まで・・・

サナウ:良いじゃろう・・・何も付いて来るだけなら
    断る事もない。・・・そうじゃろ?エドワード卿。

エド:ええ、まぁ・・・

マイア:そうか。ならば、支度をしてくる。
    心配するな、準備はしてある!すぐ戻るから!

エド:はぁ・・・アニスと顔合わせたら・・・何だか心配だなぁ・・・
   いや・・・何考えてるんだ・・どちらとも交際してる訳でもないじゃないか!
   不謹慎だ、俺は何を不謹慎な事を考えている!!

サナウ:ふぉっふぉっ、若いのぉ・・・



エド:こうして、俺のローゼルク王国での旅は終わりを告げた。
   新たにマイアさんという仲間を加え、故郷のセルディア王国の
   ガルニア峡谷を目指す。
   グレゴールさんやコルネリアさんの犠牲は決して無駄にはしません。
   ガルビア・フォン・クライセンを倒し、
   必ずセルディアに平和な生活を取り戻してみせます。
   遺骨と遺品が馬車の片隅でコトリと音を立てる。
   まるで、俺の決意に頷いてくれる様に・・・





                  三十六章へつづく・・・
                           次回に続く。