三騎士英雄譚〜第三十八章〜

セドリック・フォン・ラグワルト(32歳)男 愛称=セディ
セルディア王国ラグワルト伯爵家の次男。第二白銀騎士団中隊長。
貴族の名家の生まれだが華やかな社交界を嫌う変わり者。
いまだ独身を通しており、剣の道に進むが
うらはらに婦人からの人気は高い。
物腰は柔らかく、文才に長けるが剣の腕は白銀騎士団随一の腕を持つ

ティナ(15歳)女
ラグワルト家に盗みに入った泥棒。
セディに一目惚れして付き纏う。

バーナード・オズワルド(37歳)男 愛称=バーニィ
ラグワルト家に代々仕えるオズワルド家に生まれ。
セディが生まれた時から従者として仕えている。
騎士の武装を禁じられている為、戦斧を愛用している。

シャルル・フォン・フランソワーズ(29歳)男 愛称=シャル
セルディア王国フランソワーズ子爵家の当主。
剣より学問に通じ、第一黄金騎士団に所属するも
自領の統治に尽力を尽くしている。
セディとは幼少からの付き合いがある。
学者肌の貴族。

リーゼロッテ・イレーネ・セルディア(17歳)女 愛称=リズ
セルディア王国アスベールU世王の娘。
ルーク皇太子の妹にあたる。
王女として厳格に育てられたが
元来の活発な性格で姫らしくない。

ユーリー・アルゲエーフ(28歳)男 愛称=ユーリ
北方ローゼルク王国出身の
小型の竪琴ライアーを奏でる吟遊詩人。
時として密偵として働いている。

ローゼマリー・ブラウンフェルズ(35歳)女 愛称=ローズ
ルーク皇太子の侍女長
お淑やかで大人しい女性ですが
侍女として職務は器用にこなす。

舞台説明



ローズN:マグナルーク・フォン・クライセン子爵が進めている
     ミーティア計画の内状を探る為、ユーリー様とティナさんが
     密偵として遣わされる事となりました。
     要塞守備司令のフランソワーズ子爵様もアスター殿下派の動きに
     対策を練られている様で・・・
     要塞内は遽(アワタダ)しくなっている様で御座います。

【ガルニア要塞】

リズ:ねぇ!ティナさんって子、凄いわね!

ローズ:何がでしょうか?リーゼロッテ様。

リズ:だって私よりも年下なのに、密偵なんて危険な事しているのよ?

ローズ:そうで御座いますね。

リズ:私なんて、何かと言えば『危のう御座います!』とか言われてさ・・・
   前線のガルニア要塞に来てすら、何もさせて貰ってないですもの!

シャル:姫様は退屈でおられますか?

ローズ:これは、フランソワーズ子爵様。

リズ:シャルル卿・・・ええ、退屈よ。
   何か刺激的な事件でも起きて欲しいものですわ。

シャル:はは、刺激的な事件ですか?
    その様な事が起きては私は大変ですよ。
    只でさえ忙しい最中なのですから・・・

リズ:それなら、私が何か手伝いますわ?

シャル:ん〜そうですね・・・リーゼロッテ王女には、この要塞の視察という
    お仕事があるのではありませんか?

リズ:ええ、でもガルニア要塞の方々はとても真面目に働いておられますわ。
   視察で目を光らせる必要も心配も御座いませんもの。

シャル:それはよい事ですね。

リズ:ですから、こうして身が空いているのです。

ローズ:でしたら宮廷作法のお勉強でもされては如何ですか?

リズ:イーヤ!・・・もぉ、ローズはすぐ其れなんだから・・・

シャル:リーゼロッテ王女がこの要塞に滞在されているという事実が、
    私達には重要なのです。其れに・・・退屈に思われても、
    見えない動きが何時起きているか・・・分からないのですよ?

ローズ:ガルビア卿はリーゼロッテ様のお命をも狙って
    来るかも知れないと仰られるのですか?

シャル:そんな大それた事をするとは思いたくないですが・・・
    可能性は無い訳ではありませんね。

リズ:大丈夫よ。こんなに強い騎士達が集まっている要塞に
   のこのこやって来る奴なんて居ない筈だもの。

シャル:そうだと助かるのですがね・・・
    でも、リーゼロッテ王女がお考えになられている程、
    今のお立場は安全では無いという事です。

リズ:ホントかしら??

シャル:ええ・・・ですから、あまり侍女の方をお困らせにならない様に、
    お願いしますよ?

リズ:シャルル卿はローズの味方なのね!?
   はぁー、美人は良いわねぇ〜味方が多くって。

ローズ:リーゼロッテ様っ!

シャル:リーゼロッテ王女、別に私は彼女の味方をしてる訳ではありませんよ。

リズ:分かったわ・・そういう事にしてあげる。で、
   ユーリーから何か報告でも入ったの?

シャル:定期連絡は届いていますけどね・・・

【クライセン子爵領】

ユーリ:あれは・・・攻城兵器でしょうか!?

ティナ:多分・・・でもあんなに大きなモノ・・・

ユーリ:何やら石が運ばれて来ましたよ?

ティナ:うん。・・・巨大な投石器?

ユーリ:まさか・・・?あんな巨大なカタパルトなんて・・・
    それに戦場に運び込める様なモノには見えませんよ。

ティナ:そうよね・・・防衛用に使うのかなぁ?

≪60プフント(ポンド)はありそうな岩が放物線を描いて遠方へ飛んで行く≫

ユーリ:何という・・・あの様な巨岩を・・・

ティナ:今の百フィートはすっ飛んだんじゃないか!?

ユーリ:そうですね・・・あの様子じゃ、城壁すら一撃でしょうね・・・

ティナ:今度は大工が解体し始めたみたいだよ?

ユーリ:成る程・・・如何やら組立て式の様ですね・・・
    戦場で組み立てるつもりでしょうか?

ティナ:戦場に大工を引き連れて行くつもりなのかな?

ユーリ:訓練を積めば春迄には兵練は間に合うでしょうからねぇ。

ティナ:まぁ結局、戦場に出ても大工仕事しかしない訳だしね。

ユーリ:ええ、そうですね。
    もし、この巨大カタパルトが実戦に配備可能になれば・・・
    要塞を使った篭城は出来なくなりますよ。

ティナ:そうよね・・・あれじゃ要塞の作りが幾ら堅固でも
    意味が無いもの・・・
    これがガルニア要塞対策って訳か・・・

ユーリ:戦場で組み立てられる前に、破壊するしかないですね・・・

ティナ:ん〜、何とか仕組みだけでも調べられないかな?

ユーリ:設計図を盗み出すのは・・・流石に危険過ぎますし・・・
    見ただけじゃ、仕組みなんて理解出来そうにありませんよ?

ティナ:普通のカタパルトとは形が全く違うからね・・・
    あの、中心部の機械さえ如何なってるか解れば良いんだけど。

ユーリ:投石の発射時の音からして・・・
    滑車になっているのでしょうか?

ティナ:かも知れないね。
    でも、設計図をちゃんと見ない事には・・・
    きちんとした報告は出来ないよ。

ユーリ:ですが・・・

ティナ:大丈夫!私の本業は盗賊だよ?
    こんくらい、ちょろいもんだよ♪

ユーリ:あっ!!待って下さい・・・

ティナ:大丈夫だって♪

ユーリ:・・・気を付けて下さいね。

【ガルニア要塞】

セディ:ティナは無事かな・・・

バーニィ:セドリック様・・・ティナが心配ですか?

セディ:まぁな・・・ティナの事ですから大丈夫だとは思うのですが・・・

バーニィ:はぁ・・・セドリック様はティナの事、如何思われているのですか?

セディ:ティナの事ですか?
    そうですね・・・今はまだ何も答える事が出来ませんけども・・・
    こうして離れてみると、心配になりますね。

バーニィ:只の使用人として見ていないと?

セディ:それはそうです。
    ティナを失いたくは無い。それだけははっきりと意識出来ます。

バーニィ:・・・・そう・・・ですか。
     私の立場では、何も言う事は出来ません。
     ですが、敢て言わせて貰えば、ティナと関係は飽く迄、
     主従の一線を越えるべきでは無いと・・・

セディ:身分を考えろと言うのだろ?

バーニィ:はい。セドリック様にとっても良い結果を生まないでしょう。

セディ:頭には留めておきます。
    ですが・・・正直、自分の地位には執着は無いのです。

シャル:豪く物騒な話をしていますね。

セディ:シャル・・・

シャル:セディは昔から身分や地位を疎ましく思っていたのでしょう?

バーニィ:・・・そうだとしても、セドリック様はラグワルト家の血筋。
     代々ラグワルト家に仕えてきたバーナード・オズワルドとして
     セドリック様には没落して貰う訳には参りません。

シャル:セディ・・・ティナの事を本気で想うのなら、
    フランソワーズ家で養子としても構わないのですよ?
    子爵家の令嬢となればバーニィにとっても不服はないのだろう?

バーニィ:それは・・・しかし、フランソワーズ家に盗賊の娘を養子に入れる等・・・

シャル:ふふっ・・セディと違って私は当主ですからね。
    私が許可すれば、盗賊だろうか娼婦だろうが関係ない。
    それにティナとセディの為と言うのなら、歓迎すらする思いだよ?

セディ:兎に角、答えを急がせないで欲しいな・・・
    私はティナを女性として意識している。
    特別な存在だとも認識している。
    ですが、彼女を妻に迎え入れたいとか・・・
    そういう事を求めている訳でもないのです。

シャル:でも、アレだぞ?ティナだって年頃だ・・・
    うかうかしていると、他の男に先を越されるぞ?
    ティナは中々に愛らしい顔立ちをしていますからね。

バーニィ:フランソワーズ子爵様・・・
     その様な火に油を注ぐ様な・・・

シャル:まぁ良いじゃないか、本当の事なのだから。
    ティナの気持ちは知っているのだろう?
    つまりはセディ、君の気持ち次第だという事だ。

セディ:そうだな・・・

【クライセン子爵領】

ティナ:設計図・・設計図・・・あ、あった!
    後はトンズラかますだけね♪


ユーリ:あ、ご無事でしたか・・・

ティナ:当然♪組み立てに使う図面しか見つからなかったけど、
    セディ様やシャルル卿ならこれを見せるだけで十分だと思うしね♪

ユーリ:そうですね。こちらも辺りを見て回ってみましたが、
    予想通り、大工にも戦闘訓練をさせている様ですね。

ティナ:へぇ・・・案外抜け目ないなぁ〜

ユーリ:そりゃ私も密偵として遣わされていますからね。

ティナ:・・・平衡錘投石機(ヘイコウスイトウセキキ)、これが化け物カタパルトの名前みたいね。
    ミーティア計画かぁ・・・正に流星計画ね・・・

ユーリ:そうですね・・・

ティナ:兎に角、これで情報は掴めたし、
    そろそろ一度要塞に帰りましょ♪



ローズ:ユーリー様とティナさんがガルニア要塞にお戻りになられたのは
    其の数日後の事で御座います。
    持ち帰られた設計図と情報により
    ミーティア計画の全容が明らかになろうとしております。

リズ:セドリック卿の貴族との次ぎの会談は外務大臣を務める
   アルマント・フォン・アルムホルト公爵。
   アスター叔父様の従兄弟に当る、セルディア国内で
   最も有力な貴族と言える方なの。
   ティナさんとセドリック卿の恋の行方の気になるところですわ・・・
   何か進展があれば少しは退屈も紛れるんですけど♪
   セルディアの混迷は、まだ続いて行くようです。





                  三十九章へつづく・・・
                           次回に続く。