三騎士英雄譚〜第四章〜

ガルビア・フォン・クライセン(44歳)男
セルディア王国クライセン侯爵家当主。
内務大臣にしてアスエル教団の枢機卿。

マグナルーク・フォン・クライセン(31歳)男
セルディア王国、第一黄金騎士団中隊長。
ガルビア侯の甥にあたる。同クライセン家であるが爵位は子爵
ガルビアの懐刀として暗躍する。

クラウディア・セルジア伯爵夫人(28歳)女
セルディア王国ハウゼン・セルジア伯爵の未亡人。
恋多き情熱の女性。セディに執拗なアプローチをする。

フォルテウス・エイブス(41歳)男
近衛騎士団団長。船乗りあがりの騎士。
元海賊であったという噂もあるが
その噂に似合う豪胆な性格。
エドを近衛騎士に引き立てた人物でもある。

舞台説明



エイブスN:セルディア王国、王都セルデンにガルニア要塞攻略の吉報が
      届いたのは今朝一番の出来事である。
      ガルニア攻略の特編隊の中で唯一、爵位を持つ
      シャルル・フォン・フランソワーズ子爵には引き続き
      ガルニア要塞守備任務が下された。
      私は子爵とは面識がないが・・・噂通りの人物であれば
      適任だと思われる・・・
      ・・・・しかし、我が第六近衛騎士団より参加した、
      エドワード・レザースミスの無事が何より私の心を安心させた。

【内務大臣室】

ガルビア:ガルニア要塞が落ちたとは・・・まことか?

マグナ:はい、叔父上・・・特編隊の出撃より4日、要塞司令を務めた
    ブライセン子爵の戦死により、デミドーラ兵の士気は崩れ
    敗走したとの事です・・・

ガルビア:なんと言うことだ・・・ガルニアの兵力は特編隊の倍以上あったのだぞ?
     して、特編の被害は・・・?

マグナ:戦死者32名、行方不明者4名・・・主立ったルーク皇太子派の騎士は
    皆、存命とか・・・・

ガルビア:これでは皇太子派に手柄をやったのも同じではないか!

マグナ:はっ・・・・しかし、ガルニア要塞が攻められたには違いありません・・・
    デミドーラがセルディアに宣戦布告するに問題はないかと・・・

ガルビア:甘いわ!デミドーラとセルディアの国境において
     唯一大軍を侵攻させる道となるガルニア峡谷だからこそ
     あのような要塞が建設されたのだ!
     その要塞がセルディア側にある限り・・・
     デミドーラ王家は宣戦布告などするまい。

マグナ:では、如何なさいましょう?

ガルビア:ガルニア要塞の兵力を孤立化させるしかあるまい・・・

マグナ:孤立化・・・ですか・・・

ガルビア:そうだ。今ガルニア要塞にあるセルディアの兵力は160名程度
     篭城の策をとるにも援軍無くば持ち堪えられまい・・・

マグナ:しかし、明日の朝一番にでもフォルテウス騎士団長が
    歩兵、三百名を率いて後詰めに就くとか・・・
    五百名近い兵力となると・・・

ガルビア:だからこそだ!フォルテウスを足止めさせるのだ!

マグナ:確かに・・・

クラウ:宜しいかしら?

ガルビア:なんだ・・・クラウディア・・・

クラウ:フォルテウス・エイブス卿は海賊あがりの騎士とか・・・
    私欲の為にデミドーラ国の者と共謀し我が国を滅ぼそうと
    しているとの噂・・・

ガルビア:まことか・・・!?

クラウ:いえ、そんな噂聞いた事もございませんわ。

マグナ:は?今しがた噂を聞いたと申してたではないか!

クラウ:との噂・・・と申しただけですわ・・・
    しかし、そんな噂はすぐに流せましょう?

ガルビア:なるほどのぉ・・・流言でフォルテウスを陥れるか・・・

クラウ:私にお任せあれ・・・

ガルビア:うむ。

【近衛騎士寄宿舎】

エイブス:これはセルジア伯爵夫人。
     こんなむさ苦しい騎士の寄宿舎に何の御用ですかな?

クラウ:実はフォルテウス・エイブス卿に聞きたい事がございますの

エイブス:何でしょうかな?

クラウ:宮中の噂ではフォルテウス卿は以前海賊行為を行なっていたとか・・・

エイブス:あぁ、古い話ですな・・・海賊と言っても私掠船団
     他国の軍船や海賊どもを相手にしておりましたがな・・・

クラウ:まぁ・・・噂は本当でしたの!?

エイブス:まったくの嘘ではございませんな・・・

クラウ:まぁ、なんて恐ろしい・・・失礼させて頂きますわ!
    この事は国王様、大臣様の耳に入れなければいけませんわね!

エイブス:・・・・・そんな大層な事では・・・国王様にも既に周知の事実・・・

クラウ:開き直りをなさるおつもりね!?
    では失礼させてもらうわ・・・

エイブス:行ってしまわれたか・・・
     いったい・・・何を騒いでおいでになるやら・・・

【内務大臣室】

マグナ:フォルテウス・エイブス卿が参られました!

ガルビア:うむ、入ってもらいなさい。

マグナ:はっ、フォルテウス卿こちらへ・・・

エイブス:クライセン候、火急の呼びたて・・・何の御用でしょう?

ガルビア:しらばくれるでないわ!

エイブス:何のことやら?

マグナ:フォルテウス卿!貴様はデミドーラと通じ・・・
    我が国を陥れんとしているとの情報を掴んでいるのだぞ!

エイブス:まさか・・・

ガルビア:そなた・・・ガルニア要塞攻略の際にも
     作戦の反対を唱えておったな?
     デミドーラとの共謀を謀るに要塞を落とされては
     困ったからであろう!?

エイブス:何を馬鹿な事を・・・要塞の攻略に失敗した時、
     デミドーラに侵略を許す口実を与える事になる為でございます。

ガルビア:ええぃ!見苦しいぞ!!
     そなたが宮中の噂は本当であるとセルジア伯爵夫人に
     認めた事は伝わっておるのだ!

エイブス:お待ちください!その事はまったくの無関係でございます!!

ガルビア:聞く耳もたん!マグナルーク卿!
     この反逆者フォルテウス・エイブスを地下牢に幽閉せよ!

マグナ:反逆者エイブス!謀反の罪により貴様を拘束する!

エイブス:待て!!間違いだ!話を最後まで聞けぇ!

ガルビア:引っ立てぃ!!


クラウ:上手くいきましたわね・・・

ガルビア:うむ、剣の腕など宮中においては何の役にも立たんわ・・・

クラウ:噂は宮中ほか民衆の巷にも広げております。

ガルビア:後詰めの任は我が甥マグナルークに任せておく。

クラウ:ガルニア要塞は前後に敵に挟まれ孤立無援・・・
    でも・・・心配ですわ・・・

ガルビア:何がだ?

クラウ:たった二百人の騎士で要塞に守られた五百人のデミドーラ兵を破った
    セドリック卿を要塞から離した方が良いのではないかしら?

ガルビア:ふむ、確かに・・・他にも腕の良いのが参加しておったな・・・

クラウ:セルジア伯爵領には不可思議な術を使う野盗が棲みついております・・・
    是非ともセドリック卿に退治してもらいたいわ・・・

ガルビア:ふむ、いいだろう・・・・

【地下牢】

エイブス:私が謀反などと・・・何かの間違いじゃ!
     なぜ軍議法廷が開かれん!?

マグナ:うるさいオッサンだ・・・罪人は黙ってつながれてろ!

エイブス:貴様ぁ〜何が狙いだ!?

マグナ:あんたの代わりは俺がちゃんとしてやるよ。
    カタが付くまで、おとなしくしてるんだな・・・

エイブス:カタが付くだと?
     やはり何か企んでおったか!!

マグナ:チッ・・・勘のいいオッサンだ・・・
    でも、気付くのが遅かったな!

エイブス:おのれぇ〜!!

マグナ:いまさら暴れたところで遅いわ!
    そうそう、この地下牢は最近は使われていなくてね・・・
    食事を運んでくれる者が居ないが・・・気にせんでくれ。

エイブス:私をこのまま餓死させる腹づもりか・・・

マグナ:人間誰しもミスと言うものはある。
    ただ罪人への食事を出し忘れたぐらい・・・
    国王もお咎めになるまい。

エイブス:クライセン!!

マグナ:では、ごきげんよう・・・近衛騎士団長殿・・・

エイブス:うおぉぉぉ〜〜〜!!!

【セルデン凱旋広場】

マグナ:これより、我が軍はホニフの村まで進軍!
    ホニフの村を拠点に駐留する!

ガルビア:マグナルーク・・・上手くやるのだぞ?

マグナ:わかっております・・・叔父上。

ガルビア:後、ホニフの村にアニスという村娘がおる・・・

マグナ:はぁ〜、その娘が何か?

ガルビア:ガルニア要塞におるエドワード卿と親しい間柄らしくてな。

マグナ:エドワード・・・あぁ剣術試合で60人抜きをしたという
    フォルテウスの部下ですな?

ガルビア:何かの役にたとう・・・身柄を確保しておけ。

マグナ:解りました。確かホニフはデュレク・グリマンの領地でしたな・・・

ガルビア:グリマンは、なかなか人付き合いの心得た男よ。
     接待に抜かりはあるまいて。

マグナ:叔父上には悪いですが、楽しませてもらいますよ。

ガルビア:あぁ、ただし抜かるなよ?

マグナ:その辺はご心配なく・・・

ガルビア:ワシへの土産も心配いらんという事だな?

マグナ:はは、お楽しみになさってください・・・叔父上。


エイブスN:前門の虎・・・後門の狼・・・ガルニア要塞は孤立無援へと追いやられてゆく
      真っ暗な地下牢で生涯を終えようとするこの私には
      最早いらぬ心配かも知れぬが・・・
      この腐りきった貴族社会の闇にエドワードが一矢報いてくれる事を
      願いながら目を閉じた・・・
      暗闇の中ではその変化さえ判らないが・・・




                    〜五章につづく・・・
                           次回に続く。