三騎士英雄譚〜第四十二章〜

ティナ(15歳)女
ラグワルト家に盗みに入った泥棒。
セディに一目惚れして付き纏う。

バーナード・オズワルド(37歳)男 愛称=バーニィ
ラグワルト家に代々仕えるオズワルド家に生まれ。
セディが生まれた時から従者として仕えている。
騎士の武装を禁じられている為、戦斧を愛用している。

ゲオルク・ベーレンドルフ(32歳)男
アルムホルト家に仕える執事で、第四深緑騎士団の中隊長。
常に慇懃な態度で、アルムホルト家の職務を一手に管理している。
密偵として活動していた事もあり短剣術に秀でている。

ロブ(26歳)男
盗賊組織を足抜けした、殺し屋を生業とする男。
汚れ仕事を好み、卑劣な手段を好んで使います。
現在はゲオルグの子飼いとして雇い込まれています。

舞台説明



バーニィN:セドリック様の御婚礼を知らせる為、
      ゲオルグ卿の馬車でラグワルト家とガルニア要塞に
      向かっていた。
      ティナとセドリック様の仲を勘繰られているのか
      不審な点はあったが・・・

ゲオルグ:如何されました?
     何か考え事ですか?

バーニィ:いえ・・・セドリック様の婚礼が突然お決まりになられたので・・・

ゲオルグ:そうですか・・・

バーニィ:ええ・・・

ゲオルグ:そういえば、密偵のお嬢さんはどちらに?

バーニィ:ティナですか?
     彼女には所用を頼みました。

ゲオルグ:そうですか・・・所用ですか・・・

【数刻前】

ティナ:バーニィ、私はちょっとゲオルグ卿の事を調べてみる。

バーニィ:今からか?もうガルニアに向けて進んでいるのだぞ?

ティナ:目的地が分かってるなら合流は簡単でしょ?
    小休止を取ってる間に馬車を降りるわ。

バーニィ:卿には如何言うのだ?

ティナ:適当に用事を押し付けたとでも言っといてよ。

バーニィ:解った。
 
【アルムホルト領内】

ティナM:短剣使いのゲオルグ、元密偵だったとはねぇ・・・
     セディ様の周辺も色々嗅ぎ回っていたって事は
     私の事も調べがついてたって事か・・・
     でも悪い噂もないみたいだし、ただの身元調査?
     私の考え過ぎだったかな?

ロブM:標的が自ら一人になってくれるたぁ・・・
    有難いねぇ・・・

ティナ:!?・・・・つけられてる?
    何処から?・・・でも、相手から尻尾を出してくれて助かっちゃったなぁ。

ロブ:チッ・・・気付きやがったか・・・

ティナ:コソコソとご苦労な事ね!

ロブ:へへっ・・・勘の良いことだな。

ティナ:そう?ありがと。でも彼方の尾行も大したモノよ?
    今まで気付かせないなんて。

ロブ:そりゃ、ありがとよ。

ティナ:で、此れから如何する心算(ツモリ)?

ロブ:尾行もバレちゃあ、しょうがねぇ・・・
   本来の仕事をするだけよ。

ティナ:本来の仕事?私を襲うとでも言うの?

ロブ:ひゃひゃ・・・察しが良いじゃねぇか。

ティナ:下品な笑い・・・
    ゲオルグにでも頼まれたって訳?

ロブ:誰だ、そいつ?
   俺は女の一人歩きは危ないって教えに来てやっただけだぜ?

ティナ:ふぅ〜ん。ま、飼い犬としては心得てるって訳ね。

ロブ:ほら・・・楽しませろよ・・・
   大人しくするなら、優しくしてやるぜ?

ティナ:御免だね!

ロブ:ヒヒヒッ・・・なら腕づくだ・・・
   そういうのも悪くねぇからなぁ・・・

ティナ:誰がお前なんかに!

【ガルニアに向かう馬車】

ティナOFF:嫌な予感がするのよね・・・

バーニィM:ティナ・・・一人行かせて良かったのか・・・

ゲオルグ:バーナード殿、気分が優れぬ様ですな・・・
     何か心配事でもお有りですかな?

バーニィ:はぁ、ティナの奴に伝え忘れた用事が有りましてな・・・

ゲオルグ:それは、お気になりましょうな。
     しかし今からでは間に合いませんでしょう?
     急用でしたら手の者に伝言させますが?

バーニィ:あ、いや・・・構いません。
     馬車を止めて下され。

ゲオルグ:如何したのです?

バーニィ:直接伝えておきたいので、
     私も降りさせて頂きます。

ゲオルグ:良いではないですか。
     そう焦られる必要もないでしょう?

バーニィ:失礼ですが・・・ゲオルグ卿はお先にガルニアにお向かい下さい。
     私も用を済ませ次第、後を追いますゆえ。

ゲオルグ:どうしても行かれるのですか?

バーニィ:私めにも役目が有りますゆえ。

ゲオルグ:馭者(ギョシャ)、馬車を止めよ。

バーニィ:では、此れにて・・・
     ゲオルグ卿もお役目を果たされます様。

ゲオルグ:そう致しましょう。
     しかし、ガルニアに向かう前に一仕事増えた様で・・・

バーニィ:ゲオルグ卿・・・何を・・・

ゲオルグ:あまり勝手を言われては困ります・・・バーナード殿。

バーニィ:矢張り・・・

ゲオルグ:矢張り?矢張りとは何の事です?

バーニィ:私はティナの元に行かねばならぬ様だ・・・
     失礼する!

ゲオルグ:バーナード殿をお止しろ!
     抵抗するならば剣を抜いても構わん!

バーニィ:如何言う心算(ツモリ)だ!ゲオルグ卿!!

ゲオルグ:残念ですが死んで頂く。

バーニィ:ええぃ!どけぇい!!

【アルムホルト領内】

ティナ:・・・・くっ、案外にやる・・・コイツ・・・

ロブ:そろそろ観念したら如何だ?

ティナ:誰が!

ロブ:ぉ〜コワ・・・仕方ねぇなぁ・・・
   キレイなまま楽しみたかったんだがなぁ・・・

ティナ:クソっ・・・カタールを使った暗殺術か・・・
    盗賊崩れだと思ったのに、戦い慣れしてやがる・・・

ロブ:ボーっとしてんじゃねぇ!ほらよっ!

ティナ:きゃっ!・・・投げナイフなんか隠し持ってやがったのかよ・・・

ロブ:ひゃひゃひゃひゃっ!良いツラしてるぜぇ?

ティナ:左足がやられた・・・此れじゃ走れない・・・

ロブ:暴れんじゃねぇぞ?切り刻むのは俺様を楽しませた後だ。
   そうだな・・・先に手足の腱を切っちまおうか・・・

ティナ:・・・・っ。

ロブ:如何した?顔色が良くないぜぇ?

ティナ:このままじゃ殺られる・・・

ロブ:逃げないならこっちから行くぜ?

ティナ:きゃあ!!

ロブ:おっと・・・ベルトが切れちまったなぁ・・・
   下着が丸見えだぁ・・・

ティナ:このぉ〜っ!!

ロブ:よっと、危ない危ない・・・

ティナ:変態っ!!

ロブ:口の利き方に気をつけろよ・・・餓鬼。

ティナ:きゃああ!!

ロブ:少々小振りだが・・・綺麗な形してるじゃねぇか・・・
   ひひひっ!じゃあ、残りもとっとと剥いちまうか。

ティナ:やめろぉ!!

ロブ:あひゃひゃひゃひゃっ!!
   盗賊の小娘が今更何言ってやがる!
   その歳で其れだけ体持ってんだ、今まで何度も売って来たんだろ?
   其れとも貴族の上玉相手にしか股は開かねぇってか!?

ティナ:ふざけんな!そこ等の売女(バイタ)と一緒にすんな!

ロブ:じゃあ、何か?まだ男も知らねぇってかぁ?

ティナ:・・・・悪いかよっ!

ロブ:ふひゃひゃひゃ!そりゃ良いや。
   お前の生涯唯一の男になってやれるとはなぁ・・・

ティナ:誰がお前なんかと!!

ロブ:お前に拒否権なんてねぇんだよぉ!オラっ!!

ティナ:ぐはっ・・・

ロブ:さぁ〜て・・・大人しく・・グホッ!

バーニィ:ティナ、何て格好だ・・・はしたないぞ。

ティナ:バーニィ!!

ロブ:てめぇ!!

ティナ:危ないっ!!

バーニィ:ぐっ・・・でぇりゃぁ!!

ロブ:ぎゃあああ!!腕がっ!!俺の腕がぁ!!!

バーニィ:お前の雇い主、ゲオルグは死んだ!
     それでもまだやるか?

ロブ:ゲオルグの野郎が!?

バーニィ:矢張りゲオルグの差し金か・・・

ロブ:チッ!!くそっ・・・お前らも道連れだぁ!!!

バーニィ:フンッ!!

ロブ:ごはっ!

バーニィ:大丈夫か・・・ティナ。

ティナ:うん・・・何とか・・・

バーニィ:良かった・・・

ティナ:其れより血が・・・

バーニィ:お前の元へ行くと言ったら、ゲオルグ達に襲われた・・・
     意外と苦戦してな。

ティナ:良いから早く手当てしないと!

バーニィ:そうだな・・・フンッ!

ティナ:駄目っ!!!
    あいつのナイフが深く刺さってる!
    今抜いたら止血出来ないよ!

バーニィ:そいつは拙いな・・・

ティナ:あの位、華麗に避けなさいよね!
    何時も偉そうな事言ってる癖に・・・

バーニィ:はは・・・無茶を言ってくれる・・・
     私が避ければお前がやられていたではないか・・・

ティナ:私だって巧く避けれたわよ。

バーニィ:その血だらけの足でか?
     其れに・・・あの時にはゲオルグにやられた傷で・・・
     正直、躱(カワ)す事が出来なかったのだ・・・くっ・・・

ティナ:いいから!其処に居て!
    誰か呼んで来るから!

バーニィ:ああ・・・

ティナ:すぐ呼んで来るから!
    動いちゃ駄目だからね!

バーニィ:ああ・・・・
     
【数刻前】

ゲオルグ:ぐふっ・・・一人相手だと油断した・・・

バーニィ:何が目的だ!ティナに何かする心算(ツモリ)だったのか!?

ゲオルグ:ふふっ・・・クリスティアーネ様の為だ・・・
     想いを寄せる女が居ながら・・・公爵の地位に目が眩んだ
     セドリック卿が悪いのよ・・・
     セドリック卿がクリスティアーネ様とご結婚されるというなら・・・
     他の女の存在等・・・許しておけるか・・・

バーニィ:それでティナを襲う心算(ツモリ)だったのか!

ゲオルグ:もう・・遅い・・・
     今頃・・・あの女盗賊は躯(ムクロ)と成り果てて・・・・いる・・さ・・・

バーニィ:チィ!急がねば!

【アルムホルト領】

ティナ:こっちです!

バーニィ:ティナ・・・セドリック様はお前の事を愛しておられる・・・
     意外に鈍いお方だから、その気持ちに中々気付かれないでおられるが・・・
     お前もセドリック様を愛しているんだったな・・・
     もう、小煩い事は言わん・・・好きにすればいい・・・

ティナ:バーニィ!呼んできたよ!!

バーニィ:・・・・・

ティナ:気を失ったの?
    ねぇ・・・
    っ!?
    嘘でしょ!?あんな、ちっぽけなナイフで死んだりしないよねぇ?
    息・・・してないよ・・・?
    ちょっとぉ!息しないと死んじゃうでしょ!?
    ・・・・なんでよぉ〜!!!

バーニィM:後は頼んだぞ・・・ティナ。



ティナ:バーニィを近くの医療所まで運び、
    無理を承知で治療をお願いした・・・
    でも、バーニィが再び息を吹き返す事はなく・・・
    突然の呆気無いバーニィの死に、私の思考は停止した。
    バーナード・オズワルド、小煩い頑固親仁。
    何気ない口喧嘩も案外楽しかったのに・・・
    勝手に死ぬなよ!私がセディ様を誘惑しても知らないぞ!
    あの世で文句言っても聞こえないんだからな!!
    そうだ、小言を言いに帰って来る迄、
    あんたの大切なセディ様を困らせてやるんだから・・・

    彼の訃報は、セディ様の婚礼の報告と共にガルニア要塞へと伝えられた。





                  四十三章へつづく・・・
                           次回に続く。