三騎士英雄譚〜第四十四章〜

シャルル・フォン・フランソワーズ(29歳)男 愛称=シャル
セルディア王国フランソワーズ子爵家の当主。
剣より学問に通じ、第一黄金騎士団に所属するも
自領の統治に尽力を尽くしている。
セディとは幼少からの付き合いがある。
学者肌の貴族。

リーゼロッテ・イレーネ・セルディア(17歳)女 愛称=リズ
セルディア王国アスベールU世王の娘。
ルーク皇太子の妹にあたる。
王女として厳格に育てられたが
元来の活発な性格で姫らしくない。

ローゼマリー・ブラウンフェルズ(35歳)女 愛称=ローズ
ルーク皇太子の侍女長
お淑やかで大人しい女性ですが
侍女として職務は器用にこなす。

アンジェリカ・シュタイン(24歳)女 愛称=アン
セルの腹違いの妹。真紅騎士団の一員。
婚約者がいたが、今はランスと結婚しシュタイン家に入る。
剣術を学んでおり、細身の剣の試合での実力は兄にも勝っている。

ハインツ・ベルマン(28歳)男 
ガルニア要塞に忍び込んだ刺客。

マグヌス(21歳)男
ハインツの弟分。

舞台説明



ハインツ:ミカエル様・・・
     はい・・経路は確保しております。
     しかし、小娘一人の命等・・・何故狙う必要が・・・
     いえ、要らぬ疑問でした・・・。

アンN:新年を迎えてすぐ、夫のランスは密命を受け、
    要塞を旅立ちました。
    私と言えば、日に日に育っていく生命をその身に感じながら
    ガルニア要塞内部の詳細を図に纏め、
    行動経路の整理に忙しく、退屈のない生活を送っています。
    そんな折、セドリック卿の婚礼の報を聞き、
    シャルル卿を始め、主立った騎士、貴族達は
    アルムホルト家へと出払って居たのでした。

ローズ:素敵なお式でしたわね。
    夫人と成られたクリスティアーネ様もお美しい方で・・・

リズ:・・・・。

ローズ:リーゼロッテ様?・・・如何かなさいまして?

リズ:・・・だって、私、セドリック卿はティナさんと結ばれるものと
   思ってましたわ!

ローズ:そうですわね・・・でもセドリック卿になされても、
    アルムホルト家とのご婚礼は大変名誉な事でも御座いましょうし・・・

リズ:でも、ティナさんが何か可哀想・・・
   絶対、両思いだったよ!?

ローズ:其の様にもお見受け出来ましたが・・・

シャル:余り責めないでやって下さい・・姫様。
    セディ・・いや、セドリック卿も考えた末の結論でしょう・・・
    私も、ティナとの仲を応援していましたから、
    残念と言えば残念なのですが・・・

リズ:そうよねぇ〜!
   ティナさんと結ばれるべきでしたわぁ!
   ま、クリスティアーナって子も可愛くないとは言わないけど・・・
   何か暗そうだし〜?

ローズ:大人しそうな方でしたね。

リズ:それにまだ子供じゃない!?

シャル:そうですねぇ・・・我々の間では珍しい事でもありませんが・・・
    セドリック卿は社交に染まった派手やかな婦人は苦手ですからね
    家柄も考えれば、理想の夫人かも知れませんよ?

ローズ:それよりも、要塞は無事でしょうか?
    事が事ですから仕方無いのですが・・・
    上級騎士の方々や貴族の出の方々は皆、式に出席された訳ですし・・・

シャル:歩兵隊やセドリック卿との親交の浅い騎士達には残って貰ってますし、
    心配は要らないと思います。
    ・・・ですが、私としても早く戻りたい気持ちはありますね。

リズ:だから、今帰って来た訳でしょ?
   何なら馬車を急がせる?

シャル:いえいえ、焦っても仕方ありません。
    慌てては怪我の元ですから。

ローズ:ご安心下さいリーゼロッテ様。
    この森を抜ければ、もうガルニア渓谷ですわ。



アン:フランソワーズ司令とリーゼロッテ王女が戻られたの?
   分かりました。すぐに迎えに上がります。


リズ:ただいまぁ〜っと♪

アン:お帰りなさいませリーゼロッテ様。
   それにシャルル卿もご無事で何よりです。

シャル:其の様子だと、何事も起きなかった様ですね。

アン:ええ、ガルニア要塞は平穏無事。
   何の支障も御座いませんでしたわ。

シャル:其れは良かった。

アン:ところで他の方々は如何なされたのですか?

シャル:アルムホルト家に捉まってね・・・
    あの家には何かと恩義を受けている者も多い様で
    余りいそいそと帰り支度をするのも失礼があるかと
    そこで、私達だけ、一足先に戻って来たのです。

アン:それでは皆さんお疲れの様ですし、
   今日は早くにお休みになって・・・
   明日からはバリバリ働いて頂きませんとね?

シャル:これは手厳しい・・・
    ですが、気も使ったせいかクタクタです。
    お言葉に甘えて早くに休ませて貰いましょうか・・・

ローズ:リーゼロッテ様、お食事は如何(イカガ)なさいますか?

リズ:ん〜。お腹は丁度減ってるんだけど・・・

ローズ:お疲れで食欲が出ないのですね?

リズ:うん。

ローズ:では暖かいミルクのシチューでも作らせましょう。
    食後のデザートに林檎のパイを作って差し上げますわ。

リズ:あ、それなら食べる!
   ローズのアップルパイは甘くて温かくて絶品なのよね♪

シャル:暖かいシチューですか・・・
    それは私も御相伴に預かりたいですね。

ローズ:では中央食堂の方にご用意させますわ。

シャル:有難う。


マグヌス:兄貴・・・先日、手に入れた見取り図と豪(エラ)く違いますね。
     警備も嫌な配置をされてる様で・・・

ハインツ:改修工事をしてやがったか・・・
     まぁ、ここの司令官シャルル・フォン・フランソワーズ卿は
     中々の切れ者だとの噂だ。
     この位は想定の内だ。

マグヌス:如何します?出直しますか?

ハインツ:馬鹿言え、偶発的とは言え、貴族の結婚式とやらで
     警備が薄くなってる今を逃して如何する!

マグヌス:でも、計画してたココの通路は塞がれちゃってますし・・・
     こっちの緊急用の隠し通路は警備が厳重で・・・

ハインツ:なぁに・・こちら側の通路を使えば良いだけの事だ。

マグヌス:兄貴、そこも塞がれちゃってますよ。

ハインツ:わぁってる!だがな?木材で塞いだだけの状態だ。
     まだ工事の最中なんだろうよ。
     警備も就いては居るが・・・少数だ。

マグヌス:成る程。

ハインツ:ほら!ボヤボヤするな!

マグヌス:へぃ・・・


アン:シャルル卿、これがこのガルニア要塞の見取りなんですが・・・

シャル:ん?なるほど、デミドーラに知られている隠し通路は
    既に隠されていないですからね。

アン:はい、歩兵隊の中に土木技術を持った者が居ましたので、
   其の者を中心に改修を図ったんですが・・・

シャル:良いと思いますよ。
    しかし、身重の貴女が・・・余り無理をなさらないで下さいね。

アン:有難う御座います。
   でも、この位の職務はしていませんと・・・
   頑張っている他の方々に心苦しくて、精神的に良くないですわ。

シャル:では、引き続き改修の指揮をお任せしましょうか。
    私も現状を把握しておきたいですので、
    改修作業の前に報告書をお願いしますね。

アン:心得ておりますわ。

シャル:それと、ここの改修中の警備ですが・・・
    少し人数が少なくありませんか?

アン:そこは改修中とは言え、木組みで完全に塞がれてますし・・・
   万が一に備えて兵を配置はしているんですけど・・・

シャル:そうですか・・・まぁ念の為、明日視察してみましょう。

アン:はい、お手数お掛けします。

シャル:そこは私の職務ですからね。

アン:視察でしたら・・・
   リーゼロッテ様にもご同行していただけば如何ですか?

シャル:そうですねぇ、見ていて面白いモノではありませんが・・・
    視察の為にお越し頂いているのですから、
    お仕事をして頂いた方が退屈をなさらないでしょうね。

アン:ええ。

シャル:では、お休み前に一言ご挨拶をして、其の時にでも
    伝えておくと致しましょう。



ハインツ:ガルニア要塞の精鋭ったって大した事ねぇな。
     大人しくお寝んねしてな。

マグヌス:紐で木って切れるモンなんですねぇ・・・

ハインツ:この紐は油と研磨材を練り込んだ特別製だ。
     時間を掛ければ鉄でも切れる。

マグヌス:兄貴、確かこっちです。

ハインツ:頼んねぇ奴だな・・・



ローズ:リーゼロッテ様、まだ寝ておられませんね?

リズ:・・・・ぅん、どうしてローズは分かっちゃうの!?

ローズ:ふふっ、リーゼロッテ様の事は何でもお見通しで御座います。

リズ:もぉ〜、それじゃ隠し事一つ出来ないじゃない!

ローズ:では、隠し事をなさらないで下さい。

リズ:別に何も隠してないもん。

ローズN:ふふっ・・・本当にお眠りになられている時は
     お返事なさいませんものね。

≪ノックの音≫

ローズ:こんな時間に誰かしら?

リズ:フランソワーズ子爵じゃないかしら?
   お休み前の挨拶に来たんだわ。

ローズ:今参ります・・・っ!?何者です!?

リズ:きゃあぁぁ!!!何っ!?誰っ!?

ハインツ:騒ぐな!!
     騒いだら如何なるか分かってるだろうな?

ローズ:っ・・・・。

ハインツ:女が二人か・・・
     年増だが中々上玉だぁ・・・

ローズ:何が目的です!?

ハインツ:心配するな・・・用さえ済んだら可愛がってやるからよ。

ローズ:リーゼロッテ様!お逃げになって!

マグヌス:そうは行かないよ?

ローズ:何時の間に・・・

マグヌス:さぁ〜て、大人しくしてもらおうか・・・

リズ:イヤ!!

マグヌス:コイツっ・・・!!

リズ:助けて・・ローズっ!!

シャル:姫様に何をしているのです!!

リズ:フランソワーズ子爵・・・

マグヌス:ちっ、死ねっ!!・・・あれぇ??

シャル:賊ですか・・・
    エスティアの人間ですね。
    ガルビアが雇った暗殺者の様ですが・・・

マグヌス:兄貴ぃ〜コイツ結構強いっすよ?

シャル:姫様?水差しを一つ壊す事をお許しを・・・
    ふんっ!

ハインツ:ぅあ!?野郎っ!!

シャル:ローゼマリーさん今の内に此方(コチラ)へ!

ハインツ:くそっ・・マグヌス!二人で掛かるぞ!

シャル:全く・・・こういう仕事は私の専門じゃないんですけどね・・・

ハインツ:知った事かよ!ウラァ!!

シャル:くぅっ!!・・・失礼っ!

ハインツ:ぐぉ・・・てめ・・

シャル:遅いですよ。セィ!

マグヌス:あ、兄貴ぃ!!

シャル:余所見はイケませんね・・・

マグヌス:ぇ?ぐはっ!

ハインツ:マグヌスの間抜けが・・・

シャル:彼方も人の事を言えた状態では無いと思いますが?

ハインツ:ウルセェ!!

シャル:斬りつけの正確さは見事ですが、守りが甘いのが欠点ですね。
    反撃に弱いのは後ろからしか人を殺めて来なかったせいですか?

ハインツ:何とでも言いやがれ・・・
     御託(ゴタク)なんざ聞きたくねぇ!殺すなら早く殺せ!

シャル:ローゼマリーさん、衛兵を呼んで下さい。

ローズ:ぁ・・・・はい。

シャル:彼方の命を奪うか如何かは・・・
    彼方に利用価値がないか分かった時にしましょう。
    其れ迄は生かせておきます。

ハインツ:・・・何も吐かねぇぜ?

シャル:端から期待はしていません。

ハインツ:ちっ・・・


リズ:シャルル卿・・・

シャル:怖い思いをさせましたね・・・
    申し訳ありません。

リズ:ん〜ん。助けに来てくれて有難う。

ローズ:フランソワーズ子爵様、衛兵の方々をお連れしました。

シャル:姫様の部屋に忍び込んだ侵入者です。
    地下牢に投獄しておいて下さい。

ローズ:リーゼロッテ様、お怪我はありませんか!?

リズ:うん。大丈夫よ。

シャル:私は他に不審な状況が無いか確かめて来ますので・・・
    あ、それと明日、シュタイン夫人が進めている
    要塞改修の現場視察をするのですが、
    姫様は如何(イカガ)なさいますか?
    ご同行願おうかと思って居たのですが・・・
    この様な事態の後では、無理にお誘いも出来ませんし・・・

リズ:大丈夫よ。視察は私の仕事ですもの。
   ご一緒させて頂くわ。
   それにシャルル卿がご一緒なら、
   万が一、今日の様な事があっても守って下さるでしょうし。

シャル:万が一が無い事祈りますが、
    其の時は一命に代えましても・・・

リズ:一命に代えられては困るわ・・・
   シャルル卿もご無事でないと。

シャル:分かりました。心得ておきましょう。

リズ:では、見回りお気を付けて下さいね。

シャル:ええ、では失礼。



アン:今夜の騒動の責任は私の判断ミスによるモノ・・・
   賊の侵入の可能性を無意識に軽視していたのかも知れません。
   難攻不落の要塞、しかし、その神話を打ち破ったのは
   他でもない私達であるというのに・・・
   この数日後には、婚礼に出席した騎士、貴族達も
   帰途につき、警備も強化される事となりましたが。
   ガルニア要塞には、新たな微笑ましい騒動が待っているのでした。





                  四十五章へつづく・・・
                           次回に続く。