三騎士英雄譚〜第四十五章〜

シャルル・フォン・フランソワーズ(29歳)男 愛称=シャル
セルディア王国フランソワーズ子爵家の当主。
剣より学問に通じ、第一黄金騎士団に所属するも
自領の統治に尽力を尽くしている。
セディとは幼少からの付き合いがある。
学者肌の貴族。

リーゼロッテ・イレーネ・セルディア(17歳)女 愛称=リズ
セルディア王国アスベールU世王の娘。
ルーク皇太子の妹にあたる。
王女として厳格に育てられたが
元来の活発な性格で姫らしくない。

ローゼマリー・ブラウンフェルズ(35歳)女 愛称=ローズ
ルーク皇太子の侍女長
お淑やかで大人しい女性ですが
侍女として職務は器用にこなす。

ユーリー・アルゲエーフ(28歳)男 愛称=ユーリ
北方ローゼルク王国出身の
小型の竪琴ライアーを奏でる吟遊詩人。
時として密偵として働いている。

舞台説明



シャルN:昨夜ガルニア要塞に侵入した賊はリーゼロッテ王女様の命を狙っていた。
     私の指揮の下、衛兵を使い、要塞内を再捜索したが、
     他に侵入した形跡はなく。
     現在は捕らえた侵入者を尋問している。
     しかし彼等が情報を漏らす事はないでしょう。
     今後の策として警備を考え直さなければならないでしょうね。

ローズ:リーゼロッテ様。
    早くお召し物をお決め下さいな。
    フランソワーズ様が視察の同行にお迎えに来ますわよ?

リズ:・・・・んーーっ
   だから迷ってるんじゃな〜い!
   是が良いかなぁ・・・でも、公務な訳だし・・・派手すぎる?

ローズ:いつものお召し物で宜しいのではないですか?
    隠し通路等にも参られるそうですから
    動き易い服装が宜しいのでしょうかねぇ?

リズ:動き易い服ねぇ・・・
   ドレスって訳にもいかないかぁ〜

ローズ:急に如何されたんです?

リズ:ぇ?

ローズ:そんなにお召し物に迷われる事なんて無かったでしょう?

リズ:・・・・ほら、昨夜シャルル卿に助けてもらったじゃない?
   失礼があってもいけないし・・・今日ぐらいはきちんとしないとね〜

ローズ:それはそうですけども・・・
    迎えに来られたフランソワーズ様をお待たせするのも
    失礼ですわよ?

リズ:ぁー・・・もう、是で良い!
   ローズ!急いで!

ローズ:はいはい。動かないで下さいましね。



ユーリ:シャルル卿・・・是から姫様の所へ?

シャル:ええ、この要塞の改修工事の視察に同行していただこうと思いましてね。

ユーリ:ふふっ・・・それは丁度良いですね。
    姫様も暇を持て余しておられる様ですし・・・

シャル:シュタイン夫人からの助言がありましてね。

ユーリ:なるほど。

シャル:そう言えばミーティア計画の平衡錘投石機(ヘイコウスイトウセキキ)でしたか?

ユーリ:私の見てきた巨大なカタパルトですね・・・

シャル:ええ、かなりの脅威となりそうです。
    既存の投石器とは射程距離も破壊力も違います・・・
    何とか打開策を練らないと拙(マズ)いのですが・・・

ユーリ:シャルル卿の智を以っても打開は難しいですか?

シャル:難しいですね・・・
    まず射程距離が長すぎます。
    300メートル先からの攻撃となれば
    騎兵による突撃をかけるしかありませんが・・・
    それでは防衛側の利を自ら捨てる事になります。
    かと言って篭城は封じられる訳ですから・・・

ユーリ:そうですね・・・

シャル:ま、手が無い訳ではありませんけどね。

ユーリ:流石ですね。
    あー、そろそろ私は失礼しないと・・・
    婦人方に楽器演奏をお教えすると約束しておりますので・・・

シャル:そうですか。私もいずれご教授願いましょうか・・・

ユーリ:ふふっ、ではその時は丁寧にお教え致します。

シャル:ああ、お手柔らかに頼みますよ。

ユーリ:心得ました。では・・・



ローズ:リーゼロッテ様、出来ましたよ。

リズ:ありがとー♪

≪ノックの音≫

ローズ:はい、只今・・・

シャル:昨日お約束しました通り、視察の同行をお願いに参りました。

ローズ:リーゼロッテ様もご準備を終えられてお待ち兼ねでしたのよ。

シャル:これはこれは・・・

リズ:シャルル卿?・・・遅いわよぉ?

シャル:其れは申し訳ありませんでした。

ローズ:ふふっ・・・リーゼロッテ様の準備も
    今しがた終えたばかりではないですか・・・

リズ:いいの!さ、シャルル卿?参りますわよ。

シャル:はは・・・そんなに急がなくとも
    改修工事は終わったり致しませんよ。

【改修を進めている地下道】

ローズ:地下道を塞いでいると聞いたのですけど・・・
    
シャル:以前よりあった抜け道はデミドーラ軍には知られていますからね
    しかし、抜け道というのも必要になるでしょうから

ローズ:それで新しく地下道を掘っておられるのですね。

シャル:ええ。

リズ:其れよりシャルル卿?

シャル:はい?

リズ:昨日は・・・・その・・有難う御座いました。

シャル:いえ、当然の事をしたまでですよ。

リズ:でもシャルル卿って結構お強いのね。

シャル:はは、これでも黄金騎士団に所属する騎士でもありますからね

リズ:そうだったわね♪
   でも私、今まで誤解してたみたい。

シャル:如何誤解されていたか分かりませんが、
    誤解が解けた様なら良かったですよ。

リズ:ねぇ、シャルル卿は独身でいらっしゃるんですよね?

シャル:ぇ?あ、はぁ・・・まだ身は固めておりませんが・・・
    豪く話題が突然ですねぇ・・・

リズ:え?・・・ん〜、シャルル卿もフランソワーズ子爵家の当主でしょ?
   縁談の話とか来るんじゃなくって?

シャル:ははは、確かにそういう話はよく届きますけどもね。
    今のところはお目当ての女性も居ませんし、
    実務の方が忙しいですから。

リズ:そう・・なんだ♪

シャル:さて、次の改修場所に行きましょうか。

リズ:ぇ?あ、はいはい・・・次の改修ね♪

ローズ:リーゼロッテ様・・・

リズ:・・・何?

ローズ:もしやフランソワーズ子爵様を婿様にお考えなのですか?

リズ:ぇ!?そんな事ある訳ないじゃない!?

ローズ:ふふっ昨日の事で見直されたのでしょう?

リズ:だから違う〜確かにその・・格好良いとは思うわよ・・・?
   仮にもフランソワーズ家の当主だしー、
   政治的な手腕も、昨日の様な勇ましさもお持ちで・・・
   条件としては悪くはないって言うか・・・

ローズ:それで如何お思いなのです?

リズ:ぅ・・・・ま、シャルル卿が如何してもって言うなら・・・
   考えない事もないかなって・・・

ローズ:素敵ですわね・・・ルーク皇太子様もフランソワーズ子爵様なら
    賛成なさると思いますわ。

リズ:ちょっとローズ!?

ローズ:照れる事は御座いませんわ。
    私もフランソワーズ様がお相手ならば安心ですもの。

リズ:私はまだ決めたって訳じゃないんだからね!

ローズ:でも、お好きになられたんでしょう?
    今朝も急にお洒落なさって・・・フランソワーズ様とのご同行を
    お気になされておられたのですね。

リズ:・・・・それは・・・

ローズ:良いではありませんか?
    フランソワーズ様のお気持ちは分かりませんが・・・
    リーゼロッテ様ならきっと大丈夫ですわ!

リズ:そうかなぁ・・・

ローズ:そうですとも!



シャル:ここが最後の改修場所になりますね。

ユーリ:これは姫様・・・皆さんお揃いでご視察の任務ですか?

リズ:ユーリー、貴方も改修の視察ですの?

ユーリ:いえいえ、私は通りかかっただけですよ。
    姫様は視察の公務中でしたね。

リズ:ええ、何の役にも立ちませんが、
   皆の仕事を見るのも役目だと思うから・・・

ユーリ:姫様がお越しになられれば、
    工事に当たる者達の励みにもなりましょう

リズ:だと良いんだけど・・・

ローズ:ところでフランソワーズ様?

シャル:何でしょう?

ローズ:私は侍女長として常々、リーゼロッテ様にそろそろお相手をと
    考えているのですが・・・フランソワーズ様から見て、
    リーゼロッテ様はどの様にお見えになられてるでしょうか?
    殿方から見て・・女性として魅力的かしら?

シャル:リーゼロッテ王女ですか?
    そうですね・・・活発で愛らしい方ですから
    どんな殿方でもお断りしないと思いますが・・・

リズ:ホント!?

シャル:ええ、こんな事で嘘はつきませんよ。
    それにお世辞ではなく可愛らしいと思ってます。

リズ:じゃ、じゃぁ・・・

シャル:ん?

リズ:仮に、仮によ?
   シャルル卿に私との縁談が持ち上がったら断りませんの?

シャル:わ、私と姫様がですか!?
    いえ、勿論断りは致しませんが・・・
    私の様な者と姫様とに縁談の話等・・・考えた事もありませんよ。

ユーリ:ほぅ・・・シャルル卿と姫様ですか・・・
    それはお似合いになる事でしょうね。

シャル:ユーリー殿まで・・・何を言っているんです・・・

ローズ:だそうですわよ?リーゼロッテ様。

リズ:・・・・だから・・・私はっ!

ローズ:リーゼロッテ様、良いではありませんか・・・
    フランソワーズ様。
    昨夜の一件以降・・・リーゼロッテ様は
    フランソワーズ子爵様にご好意を寄せられているのです。

リズ:ローズっ!!

ローズ:出過ぎた真似をしているのは重々承知しておりますわ。
    でもリーゼロッテ様。
    お気持ちは相手に伝えなければ何も始まりませんのよ?

リズ:其の位知ってるわよ・・・

シャル:その・・・姫様のお気持ち・・・大変嬉しく思います。
    今ここでお気持ちに応えても結構なのですが・・・
    何分急な事にて、私自身の心の準備が出来ておりません。
    夕食までの時間を私に頂けないでしょうか?

リズ:ぁ・・・うん。

シャル:ぃゃ・・・では今日の視察の件も書類に纏めておきたいですし・・・
    少し、失礼致します・・・では。

リズ:・・・は、はい。

ユーリ:ふふふ、シャルル卿も豪く取り乱しているようですね。

リズ:そうなの?

ローズ:そうですわね。
    フランソワーズ様も姫様を悪く思っておられないようですし・・・
    きっと良い返事を頂けると思いますわ。

リズ:ねぇ、ユーリーもそう思う?

ユーリ:ええ、そう思いますよ。

リズ:ホント!?

ユーリ:矢張り姫様はシャルル卿にご執心だったのですね?

リズ:いゃ・・・その・・・別に良いじゃない!
   私の危機に颯爽と現れて暴漢から救い出してくれたのよ!?
   普段があんな感じだし・・・意外だったって言うか・・・

ユーリ:別に悪いとは誰も言ってません。
    そうですかぁ・・・姫様もそんなお年頃になられたのですねぇ・・・

リズ:そりゃ恋の一つ位しますぅ〜!!
   何時迄もユーリーに付いて回ってたお子様じゃないんですからね!

ユーリ:そうですね・・・
    私の知っている姫様は掌(テノヒラ)に乗る様な小さな姫様でしたからね。

リズ:そこまで小さくありません!
   ていうか、掌(テノヒラ)サイズの人間って最早小人か妖精じゃない!!

ユーリ:そうですよ?姫様はまるで妖精の様な少女だったんです。
    私にとってはね・・・

リズ:なんか話を上手く纏めようとしてない?

ユーリ:ふふっ・・・バレました?

リズ:吟遊詩人なんて信用出来ないわね!

ユーリ:はい、世渡りは上手ですので・・・

ローズ:リーゼロッテ様。
    じゃれ合うのは其処までにして、お部屋に戻られませんか?
    夕食の刻迄その格好でおいでになられる訳ではないのでしょう?

リズ:あ・・・そうね。
   ねぇ、どんなドレスが良いかしら?
   少しは大人っぽい方が良い!?

ローズ:いつものままで十分ですよ。
    でも、少しお洒落しちゃいましょうか♪

リズ:うんっ♪



シャル:自室に戻った私は視察の結果を纏め、
    シュタイン夫人の計画書と共に警備の有効な配置と
    改修作業の予定調整の作成を急いだ・・・
    リーゼロッテ王女からの思わぬ想いを聞かされ、
    正直、動揺を隠せないでいる自分に苦笑を覚えていた。
    ・・・この私が姫様のお相手ですか?
    意表を突いた出題をして下さるものですね・・・





                  四十六章へつづく・・・
                           次回に続く。