三騎士英雄譚〜第四十六章〜 ガルビア・フォン・クライセン(44歳)男 セルディア王国クライセン侯爵家当主。 内務大臣にしてアスエル教団の枢機卿。 マグナルーク・フォン・クライセン(31歳)男 セルディア王国、第一黄金騎士団中隊長。 ガルビア侯の甥にあたる。同クライセン家であるが爵位は子爵 ガルビアの懐刀として暗躍する。 ミカエル・フォシュマン(27歳)男 エスティア王国からの亡命貴族、元辺境伯 クライセン侯からの庇護を受け 暗殺などの裏稼業の斡旋で財を成している。 シュティーナ・リンドホルム(23歳)女 エスティア人の暗殺者 聖剣探索行に赴くも失敗。 名誉挽回の機会を虎視眈々と狙っている。 ヴェルチェフ(26歳)男 通称=ヴェル ローゼルク人の傭兵。 ヴェルチェフはローゼルクの言葉で烈風を意味し本名ではない。 馬術と槍斧(ハルバード)の使い手であり。烈風の如き速さで戦場を駆け巡る。 死神グレイとは戦場で轡を並べた事のある人物。 グロム(25歳)男 シラルド人の傭兵。 ヴェルチェフの相棒で名はローゼルクの言葉で迅雷、激しい雷鳴。 稲妻型の矛先を持つ蛇矛(ダボウ)という武器を愛用しており また、ヴェルチェフから贈られた炎状剣(フランベルジェ)を モルニヤ(ローゼルクの言葉での稲妻の意)と称し愛剣としている。 レイラ・アウロフ(25歳)女 ローゼルク人の傭兵。 没落したローゼルクの騎士家の令嬢。 アウロフ家復興の為、傭兵へと身を落とし武勲を上げる事を夢見ている。 女としての筋力の無さを素早い体捌きと巧みな剣捌きで補っている。 所持している方形盾(ヒーターシールド)はアウロフ家の家紋を装飾した名品。 『家名を守る』の誓いを込めている。 舞台説明 グロムN:拙者達は雇い主であったシュティーナを追ってローゼルクを旅立ち、 漸く南方の王国セルディアの大地に踏み込んだ。 未払いとなっている報酬、金貨五百枚を受け取る為・・・ という建前ではあるが、本当の所は血の匂いに呼び寄せられ この地での騒乱を予期したからであろう。 【ガルビア内務大臣室】 シュティ:ミカエル様・・・戻りました・・・・ ミカエル:シュティーナか・・・その様子ではしくじったか。 シュティ:・・・・はい。申し訳御座いません。 ミカエル:まぁよい。シーギスムンドの奴は如何した。 シュティ:エドワード・レザースミスとの戦いに敗れ・・・ ミカエル:死んだか。 シュティ:はい・・・・ ガルビア:ミカエル卿・・・この失態は如何いうことだ。 アスエルの三聖剣の全てがルーク派の輩に奪われたと言うのか!? ミカエル:ガルビア閣下。ご安心なさいませ。 聖剣等は所詮御伽噺・・・本来の目的はルーク派貴族の暗殺でしょう? ガルビア:其れはそうじゃが・・・ ミカエル:聖剣の存在等、兵の指揮を上げる為の小道具に過ぎません。 其れよりも人望のある指揮官を消してやった方が効果は大きいでしょう。 マグナ:しかし、ミカエル卿。 そなたはまだ、誰の暗殺にも成功してはいないではないか! ミカエル:そのご指摘も的確ですね。 しかし、その点は此度(コタビ)の失敗を埋め合わせる為、 このシュティーナが命に代えても果たす事でしょう。 ・・・・そうだな?シュティーナ。 シュティ:はっ!仰せの通りに・・・ 【セルディア王都セルデンの街】 レイラ:セルデンの街までやって来たは良いけど・・・ あの雇い主の女の居場所、ヴェルチェフは知っているの? グロム:いや、知らぬだろう。 セルディアの枢機卿の依頼で来たと言う事しか聞いておらぬからな。 レイラ:それで、是から如何する心算(ツモリ)? グロム:拙者はヴェルチェフに付いて行く迄・・・ 其の様な事はヴェルチェフに聞いて貰いたい。 レイラ:・・・しかし、其の肝心のヴェルチェフは何処に行ったのよ? グロム:さて・・・ローゼルクより運んで来た蒸留酒を交易所に換金しに行った様なのだが・・・ レイラ:どこで油売ってんだか・・・ ヴェル:売ったのは油じゃなく酒だぜ? グロム:ヴェルチェフ・・・ レイラ:一体、今まで何処で道草食ってたの? ま、どうせ女漁りでもしてたんでしょうけど・・・ ヴェル:ぉ?察しが良いじゃねえか! セルディアの女も中々良いぜぇ? 裏街の方に行けば娼館も建ち並んでやがったし、 あっちを見てもこっちを見ても・・・いい女ばっかりだ! レイラ:まったく呆れるわ・・・ ヴェルチェフの女好きは前から知ってはいるけど・・・ あんまりがっついてると・・・しまいには誰にも相手にされなくなるわよ? ヴェル:男が女を好きで何が悪いってんだ! 俺は男色なんて高尚な趣味はねぇからな。 第一、金がありゃ娼館行けばモテモテよぉ〜! 気に入った女が出来りゃ買い取っちまえば良いんだからよ。 レイラ:あんたの品の無さは頭の中まで毒されてる様ね・・・ 精々、娼婦に毒貰って鼻がもげない様に気をつける事ね グロム:そうだな。ヴェルチェフよ・・・ 娼婦の毒は梅毒と言ってな・・・我が祖国でも不治の病として恐れられている お主の嗜好をとやかく言う心算(ツモリ)は無いが・・・気をつける事だ。 ヴェル:たくっ・・・つまんねぇ野郎達だぜ・・・ レイラ:其れよりも・・・是から如何する心算(ツモリ)? グロムはあんたに付いて行くだけだし、 私もあんた達と行動を共にする以上、行き先はあんたに掛かってるんだけど? ヴェル:ぁー?たくっしょうがねぇなぁ〜 セルディアの枢機卿に雇われてんだろ?俺等の雇い主はよぉ〜 ならセルディアの枢機卿ってのを探せば良いんだろ?簡単じゃねぇか! グロム:確かに正論だ。 ヴェル:だろ? レイラ:じゃあ、近くの教会にでも行って、聞き込みだね? グロム:了解した。 【ガルビア内務大臣室】 ガルビア:マグナルークよ・・・ミーティア計画の進みは如何なのだ? マグナ:はい、叔父上・・・ 平衡錘投石器(ヘイコウスイトウセキキ)トレビッシュは四台配備が完了しましたし 大工方の練兵も大方済んでおります。 ガルビア:そうか、しかし此れまで幾度と無く ルーク派の連中に煮え湯を呑まされて来たからな。 油断せぬよう気を引き締めて掛かれよ? マグナ:分かって下ります・・・叔父上。 しかし・・・セドリック・フォン・ラグワルト・・・ いや、今はアルムホルトでしたか・・・ 奴のお陰で、アスター派の貴族の多くがルーク派に鞍替えしております。 何か対策を練りませんと・・・ ガルビア:春には決戦と考えておったが・・・ セドリックめが、アルムホルト公爵の後継者となったのは痛かった・・・ 最早、黄金、白銀騎士団は我等には付くまい・・・ マグナ:カール・アイブリンガー率いる深緑騎士団・・・千二百騎だけが頼り。 ガルビア:・・・・デミドーラ国の馬鹿共を踊らせるしかあるまいな。 マグナ:ボドワン卿ですか? ガルビア:いや、あの腰抜けめは、ガルニア要塞の陥落に怯え 保守派に回りよったわ・・・ マグナ:では・・・? ガルビア:デミドーラの自称名門貴族共だ。 軍事国家であった頃の栄光が忘れられず燻(クスブ)っておる連中よ。 身に似合わず爵位だけは高い者が多いからな・・・ お前のミーティア計画に併せて、デミドーラ側から挟撃させる。 マグナ:此度(コタビ)の戦いは、我が命に代えても勝ってみせます。 いえ、負ける事等許されません。 ガルビア:そう信じておるよ・・・ ガルニア要塞の騎士、貴族共を一網打尽とすれば ルーク皇太子を推す者等おるまい。 ルーク派に鞍替えした者共も慌てて侘びを入れに来おるに違いないわ・・・ マグナ:ガルニア要塞等という難攻不落の守りで調子に乗り、 今迄は好き勝手遣って来た様ですが・・・ 我等が作り出す流星の前に慌てふためく姿が今から目に浮かぶようですな。 ガルビア:ぬふふっ・・・まぁよい さて、ワシは明日よりデミドーラに発つ。 此の侭、黙って奴等の勝手を許していては 本来の目的も水泡に帰すであろうからな・・・ マグナ:はっ ガルビア:後の事はくれぐれも任せたぞ? 抜かりの無いようにな? マグナ:・・・・御意。 【セルデン裏街酒場】 ミカエル:分かっているな? シュティ:はい、ガルニア要塞の守備司令シャルル・フォン・フランソワーズ子爵・・・ アルムホルト公爵家の世継ぎとなったセドリック・フォン・アルムホルト。 それに私に恥を掻かせてくれた、あのエドワード・レザースミスの小僧! ミカエル:それと、紺碧騎士団副団長ランスフォード・シュタイン。 アムシーダに身を潜める近衛騎士団長フォルテウス・エイブスも、だ・・・。 シュティ:ルーク皇太子の妹、リーゼロッテ王女は如何されます? ミカエル:放っておいて良い。 序(ツイデ)に始末出来るのであれば、それも構わんが・・・・ まぁ、お前だけでは手に余ろう・・・ 今回は失敗が許されん・・・ シュティ:申し訳ありません・・・ ミカエル:今回は私も共に動く。 シュティ:ミカエル様も!? ミカエル:不服か? シュティ:いえ・・・ ミカエル:先ずはフォルテウスを消す。 月の湾曲刀を持つアシュレイとかいう男共々な・・・ ヴェル:お〜ぃ!姉ぇちゃん酒だぁ!! シュティ:っ!?・・・あいつは・・・ ミカエル:なんだ、知り合いか? シュティ:ローゼルクで雇った傭兵です。 ミカエル:ふーん・・・悪くないな・・・ ヴェル:ぉっと、姉ぇちゃん良い尻してんなぁ〜 なぁ・・・今夜辺り、俺と付き合わねぇかぁ? レイラ:こんな所に来て迄、其れかい? 一緒に居るこっち迄恥ずかしいよ! ヴェル:そう怒んなって! ・・・・ぁ? グロム:如何かしたで御座るか? ヴェル:見つけたぜぇ〜? レイラ:何をさ? ヴェル:シュティーナとか言ったよな・・・ 俺達の報酬の半分、きっちり払って貰いてぇんだがな! シュティ:よくもまぁ、ローゼルクから遠路遥々追いかけて来たのかい? ヴェル:当然だ。俺達は命を金で売ってんだ。 命を賭けたからには代金はキッチリ払って貰わねぇとな! ミカエル:幾らだ? ヴェル:ぁ?あんた誰? ミカエル:このシュティーナの上官だ。 未払いであるならば支払わなければなるまい? ヴェル:ぉ〜こいつは話が早ぇ〜や。 ・・・一人金貨五百枚だ。 ミカエル:そいつはまた、高給取りだな? ヴェル:其れだけの実力があるんでな。 ミカエル:別に構わんよ。 レイラ:こうもあっさり話が進むなんてね。 セルディア迄、足を運んだ甲斐があったってもんだよ。 ミカエル:しかし、お前達は任務には失敗しているのだろう? ヴェル:そんなのは関係ねぇ!俺たちゃ命令通りに動いただけよ! ミカエル:何、心配するな。 払わないとは言ってはいない。 レイラ:何が言いたい訳? ミカエル:報酬は払うが、失敗の埋め合わせはしてもらうと言う事さ。 ヴェル:追加の仕事って訳かい? ミカエル:そういう事だ。実力が売りなんだろ? 失敗のままでは気持ち良く報酬も受け取れまい。 ヴェル:ちっ・・・仕方ねぇ、で、何をさせようって言うんだ? ミカエル:何、簡単な事だ・・・ グロム:ミカエルと名乗る男は拙者達に雑兵の始末を依頼した。 フォルテウスという男との勝負に邪魔が入らぬ様に・・・ 麦芽酒の酒気が滞る暗い裏街の安酒場に ミカエルを名乗る男の眼光は鋭く輝き。 彼が黒豹の如き殺気を常に纏う、この者も血の匂いを消せぬ類い者 拙者達の南方での仕事は、この先困る事が無いのであろう。 その事だけは確信出来るのであった。 四十七章へつづく・・・ 次回に続く。