三騎士英雄譚〜第五十一章〜 ギルバート・アシュレイ(31歳)男 愛称=ギル フォルテウス・エイブスの知人 セルディア人の貿易商であり、また海賊でもある 港町アムシーダを拠点に大規模な海賊団を率いている。 月の湾曲刀の所有者 ウォルター・ラザフォード(24歳)男 ギルバート提督の参謀を務める地理学者 剣の腕はないが連射式弩弓を持ち、 その威力は素人のウォルターを強力な弓兵へと変える。 新測量技術を考案したり、巧みな会計術により ギルバートの海賊団を支えている。 フォルテウス・エイブス(41歳)男 近衛騎士団団長。船乗りあがりの騎士。 元海賊であったという噂もあるが その噂に似合う豪胆な性格。 エドを近衛騎士に引き立てた人物でもある。 ヴェルチェフ(26歳)男 通称=ヴェル ローゼルク人の傭兵。 ヴェルチェフはローゼルクの言葉で烈風を意味し本名ではない。 馬術と槍斧(ハルバード)の使い手であり。烈風の如き速さで戦場を駆け巡る。 死神グレイとは戦場で轡を並べた事のある人物。 グロム(25歳)男 シラルド人の傭兵。 ヴェルチェフの相棒で名はローゼルクの言葉で迅雷、激しい雷鳴。 稲妻型の矛先を持つ蛇矛(ダボウ)という武器を愛用しており また、ヴェルチェフから贈られた炎状剣(フランベルジェ)を モルニヤ(ローゼルクの言葉での稲妻の意)と称し愛剣としている。 舞台説明 エイブスN:今日は日差しも暖かく、冬の季節の合間に訪れた過ごし易い一日、 賑やかな笑顔は洗い物を抱えて部屋を出て行った。 遠くに聞こえた鼻歌も今は聞こえない。 片腕を失い、気が抜けて居たのだろうか・・・ この時、気付くべきだったのだ。 ウォルター:提督ぅー!! ギル:どうしたぃ!騒がしい。 ウォルター:入口に、こんな手紙が! エイブス:どれ?見せてみろ。 ギルバート・アシュレイ殿 そちらで働くお嬢さんを預かっている。 お嬢さんの死に顔を見たくなければ 月の聖剣を持って一人で『船倉の鼠』亭迄来い。 ウォルター:如何しましょう!? ギル:ちっ、俺様一人で来いって言ってんだ・・・ 俺が片付けてくる。 エイブス:人質がいる上に相手は罠を張っておるぞ? ギル:旦那・・・俺に売られた喧嘩を横取りしようなんて 言わねぇで下せぇよ? ウォルター:でも・・・ ギル:片腕を失った旦那に、頭でっかちのお前・・・ 付いて来た処で何の役に立つんでぇ! エイブス:ん?そうか・・・気をつけて行って来るがいい。 ウォルター:フォルテウス卿?如何かしましたか? エイブス:いや、何でもない。 ギル:じゃあ、俺様はお嬢ちゃんを取り返しに行って来るぜ! ヴェル:へへ、物分かりが良いじゃねか・・・ ギルバートの奴、如何やら一人きりで行く様だな・・・ エイブス:ウォルター・・・例の弩弓(ドキュウ)の用意をしておけ。 ウォルター:やっぱり付いて行くんですか? エイブス:ワシの片腕を奪った暗殺者と一緒に居た奴がうろついてやがる。 如何やらギルバートの動きを見張りに来た様だな。 ウォルター:解りました。でも提督怒るでしょうね・・・ 一人で行くって言い張ってましたし。 エイブス:なぁに、ワシらはギルバートに付いて行くのではない。 商会を嗅ぎ回っておる不審者を追跡するんだ。 ウォルター:はは、それは詭弁というヤツですよ。 エイブス:ではお主はお留守番でもしておるか? ウォルター:いいえ!私は提督には怒られ慣れていますから。 エイブス:はっは、違いない。 ギル:おぃ!アシュレイ海運商会、ギルバート・アシュレイ様が 約束通り一人で来てやったぞ! 隠れてねぇで、顔ぐらい出したら如何だ!! グロム:隠れている心算(ツモリ)は無かったが・・・失礼した。 拙者、傭兵のグロムと申す。 ギル:ほぉ、東方人か・・・珍しいな。 グロム:娘には何もしていない。ご安心なされよ。 ギル:そうかい。・・・・で、如何してくれるんだ? グロム:一戦、交えさせて頂く。 ギル:へぇ〜、娘を誘拐して人質に取る様な連中だから 己の卑劣さを売りにする様な奴かと思ったが・・・ 中々の礼儀だな。 グロム:お嬢さんを預かったは、手違いによる成り行き・・・ 弁明等せんが、誤解せぬ様願いたい。 ギル:そうかい・・・ま、少しは安心したぜ。 嬢ちゃんに何かしてやがったら、斬り刻んで魚の糞にでも してやろうと思ってたところだ・・・運が良かったな。 グロム:お喋りは此処迄だ。では参るぞ! ギル:心得ましたよっと!ウリヤァ〜!! ヴェル:始まったな。 エイブス:では此方も始めようか・・・ ヴェル:何っ!?・・・てめぇ・・・ エイブス:尾行に気付かんとは、お主、暗殺者の一味では無い様だな。 ヴェル:そうか、雇い主様は暗殺者であられたか。 残念ながら、俺は傭兵だ。 剣の腕以外は磨いて来なかったもんでな! エイブス:そうか、ワシもその点においては変わりない。 ヴェル:左腕は大丈夫かい? 片手で勝てる程、俺は弱くないぜ? エイブス:隻腕(セキワン)で悪いが、相手はして貰う。 しかし、両手では勝ち目が無かっただろう? 丁度良いハンデだ。 ヴェル:ケッ・・・やなオッサンだぜ・・・ グロム:おぉりゃぁ!! ギル:ひぃ〜危ねぇ危ねぇ・・・ グロム:お主も海賊とはいえ、名を馳せた戦士であろう! 逃げてばかりでは、拙者には敵わぬぞ!! ギル:たくっ無茶言ってくれちゃって・・・ そんな長物振り回されちゃあ、間合いも何も・・・ グロム:ブツブツと何を言っている!とぉおお!! ギル:意外と短気な野郎だな・・・ へっ、長い得物なら短く切り刻んでやらぁ! グロム:ふんぬっ!! ギル:げはっ・・・クソっ、ふざけんなよ・・・ グロム:誰もふざけて等おらぬ。 友より授かった、このモルニヤ・・・ 元より腰に提げていた筈。 振り回す鉾(ホコ)にばかり目を奪われたお主の失態よ。 ギル:そーですねぃ。冗談の通じねぇ野郎だ。 しかし、拙(マズ)いな・・・思いの他、強ぇじゃねぇか・・・ グロム:出血が酷いな・・・軽口は叩けても、体は動かぬか? ギル:チッ・・・馬鹿力が・・・ グロム:中々の兵(ツワモノ)であった。そろそろ終わりにしよう・・・ 止(トド)めだっ!! ギル:ヤベ!・・・ぐほっ!? グロム:避けねば良いものを・・・ ギル:何だよ・・・こりゃ・・・ うげぇっ!腹の中身が・・・ちきしょう・・・腹に戻りやがれ!! グロム:今度こそ、止(トド)めだ・・・ ウォルター:提督!フィネさんは救出しましたよ!!・・・ぇ・・・? グロム:仲間が居たか・・・ ウォルター:貴方、提督に何をしたんです!許しませんよ! グロム:聖剣は頂いていく。 ギル:てめぇ!!返しやがれ! ウォルター:何やってんですか提督・・・ ギルバート提督ぅ!!! ギル:へへっ・・・ドジ踏んじまった・・・ガハッ ウォルター:このぉ・・・喰らえぇぇ!!! グロム:ふんッ!! この剣さえ手に入れば用は無い。去らばだ! エイブス:如何した小僧?片手では勝てぬのではなかったか! ヴェル:無茶苦茶強ぇな!オッサン・・・ エイブス:片手でもハンデにならなかったか? ヴェル:そうかもなぁ・・・もうちょいハンデくれよ。 エイブス:そうもいかんでな・・・でりゃあ!!! ヴェル:ぅがあぁぁあ!!! エイブス:ぬっ!?左手を捨てただとっ!? ヴェル:腕をもう一本・・・ハンデにくれやっ!!! エイブス:ぬがっ!? ヴェル:あ"ーーーっ!!!クソ痛てぇぇ!! クックック・・・でもよぉ〜? 両手共、失っちまえばお前も終わりだよなぁ? エイブス:うぐ・・・此れ迄か・・・ グロム:ヴェル!聖剣は手に入れた! 海賊共の追手がかかる前に退却するぞ! ヴェル:ちっ、しゃあねぇ・・・オッサン!止(トド)めは無しだ! 此れからは蹴りか頭突きの練習でもするんだな!! グロム:乗れ! ヴェル:あばよっ! エイブス:ぐふぅ・・・ギルバートの奴、無事なのか・・・ ウォルター:っ!?フォルテウス卿!! エイブス:ギルバートは!?・・・お嬢さんは無事なのか!? ウォルター:無事です!其れより如何したのですか!? エイブス:残った右腕もやられた・・・すまんが起きるのを手伝ってくれ・・・ ギル:ザマねぇや・・・うっ! エイブス:ギルバート如何した!? ウォルター:腹部を斬り裂かれ・・・臓物がはみ出していて・・・ エイブス:助かるのか!? ウォルター:急いで医者に送ります。 フォルテウス卿も早く馬車へ・・・ エイブス:お互い格好付かんな・・・ ギル:俺一人で良いって言ったのに・・・付いて来るからですぜ・・・? エイブス:お主一人では、お嬢さんも助からなかっただろうが・・・ ギル:其れは、言いっこなしですぜ・・・旦那・・・ぅがっ ウォルター:急ぎますよ!少し揺れますが我慢してください? ギル:たくっ・・・少しは丁重に扱えっての・・・ ヴェル:聖剣は手に入れた。 ミカエルの旦那は工業都市グリーゼンだったな。 片腕を犠牲にしてまで手に入れたんだ。 高く買い取って貰わねぇとな・・・ レイラの抜けた分、左腕の見舞に貰うとするか。 セルディア迄くれば金になると思ったが、 全く化け物揃いでいやがる。 もっと、楽で割のいい仕事ってのは無いもんかねぇ・・・ 五十二章へつづく・・・ 次回に続く。