三騎士英雄譚〜第五十四章〜

エドワード・レザースミス(23歳)男 愛称=エド
セルディア王国第六近衛騎士団所属。
革鎧職人の息子として生を受け16歳で戦時召集により兵士となる。
王都で開催されたトーナメント(馬上試合)の前座で行われた
勝ち抜き剣術試合で脅威の60人抜きを果たし近衛騎士の叙勲を受ける。
民衆寄りの考え方から上官との諍い(イサカイ)は絶えないが
剣の腕は王国一とも大陸一とも噂される。

サナウジャール(54歳)男
セルジア伯爵領の山地に住む野盗の頭。
元、宮廷占星学者であり、隠居の身にあった。
伯爵夫人の横暴から領民を守る為、現在野盗に身を落としていた。

マイア・アスタフィエフ(19歳)女
ローゼルクの吸血鬼
小剣と短弓の名手。
透き通る白い肌と流れる美しい金髪を
黒い毛皮の帽子と外套で隠している。

ランスフォード・シュタイン(29歳)男 愛称=ランス
セルディア王国の無名の騎士の家生まれる。第三紺碧騎士団副団長。
父アーデル・シュタインは国王命令無視の罪により
騎士資格剥奪という憂いに遇うが、当時14歳であったランスに
異例の騎士叙勲を与え御家断絶の危機を逃れる。
また、29歳で騎士団副団長の要職への出世も異例。

アンジェリカ・シュタイン(24歳)女 愛称=アン
セルの腹違いの妹。真紅騎士団の一員。
婚約者がいたが、今はランスと結婚しシュタイン家に入る。
剣術を学んでおり、細身の剣の試合での実力は兄にも勝っている。

舞台説明



マイアN:フライデスの故郷を離れ、エドの故郷セルディアへとやって来た。
     まだ白氷(ハクヒョウ)の月であるにも関わらず、肌が凍てつく事もない。
     何と温暖な事だろう・・・

エド:マイアさん、こんな所で何をされているんですか?
   夜風は冷えますよ?

マイア:こんな夜風で冷えるものか・・・
    山岳の吹雪に比べれば焚き火の傍にいるのと変わらん!

サナウ:ふぉっふぉっ・・・ローゼルクに比べればセルディアの冬など
    比べるにも値せぬか?

マイア:爺さんか・・・

エド:やはり、異国での祝宴は落ち着きませんか?

マイア:そんな事はない。
    お前こそ、皆の者に挨拶をして回らねばならぬのではないのか?
    私に構ってる暇などないだろう?

エド:帰還の挨拶は済みましたし・・・
   今は忙しい訳では・・・

マイア:それなら良いが・・・
    エド、お前は此の国でも勇者なのだな。

エド:そんな事は・・・

マイア:今も、お前を見つけては会釈をしていったではないか。
    あの者も此の国の戦士なのだろう?

エド:そうですね。彼等も俺と同じ騎士です。
   今夜は我々の帰還を祝しての宴なので主賓扱いですが・・・
   別に俺が勇者な訳ではないですよ。

マイア:・・・・だが、私達にとってはエド、お前は勇者なのだ。
    私はお前の傍にいつも居るからな。

エド:はは・・・宜しく・・・

サナウ:お主・・・エドワードを皆に取られて妬いておったのか?

マイア:バカっ!そんな訳ないだろう!!
    ・・・・全く、爺さんの癖に要らぬ気を回すなっ!

サナウ:ふぉっふぉ。

ランス:エドワード卿にサナウ殿、主賓方がこんな所に居られたか。

アン:エドワード卿、凱旋おめでとう御座います。

エド:ランスフォード卿、それにシュタイン夫人。

ランス:で、それが例の太陽の・・・

エド:はい。ランスフォード卿も星の剣(ツルギ)の修復を終えられたとか?

ランス:ああ、此の腰の剣がそうだ。

エド:此れがアスエル三聖剣の一振り『星の剣(ツルギ)』ですか・・・

マイア:なんだ・・・此れが前に話していた太陽と並ぶ剣か?
    太陽に星、確かに関係がありそうだな。
    我等の太陽に比べれば少々小振りの様だが・・・

エド:ま、マイアっ!

ランス:此方のお嬢さんがローゼルクでエドワード卿を助けたという
    山岳民族の娘さんかな?

エド:ぁ、はい。

アン:可愛らしい方ね。
   マイアさんと仰るの?

マイア:そうだ。お前はシュタインフジンというのか?

アン:ええ、アンジェリカよ。
   アンでいいわ。

マイア:ん?アンでいいのか?シュタインフジン。

アン:ふふ、そうね。アンと呼んでくださる?

マイア:良いだろう。マイアだ、宜しくな。

アン:ええ、此方こそ宜しくお願いしますわ。

マイア:で、そのお腹は身篭っているのか?

アン:あら、目立つかしら?

マイア:ああ、此れからもっと大きくなる。
    強い子が生まれると良いな。

アン:そうね。きっとランスに似て強い子が生まれるわ。

マイア:・・・そうか、星を持つ此の男も勇者なのだな?
    エド、私も早く強い子が欲しいな!

アン:まぁ・・・

エド:ま、マイア!何を変な事言ってるんだっ!?

マイア:何も変な事は言ってはいない。
    強い子が欲しいと女が願って何が可笑しいというのだ?

ランス:フフ・・・如何やらエドワード卿はローゼルクへの旅で
    聖剣と共に未来の妻も探索していたようだな。

エド:ランスフォード卿っ!

ランス:なに、可愛らしい娘さんではないか。

マイア:星の勇者よ。別に可愛いと言われても喜べんぞ!
    私は誇り高きフライデスの戦士だ。

ランス:それは失礼した。
    ならば、二人の間に生まれる子は大陸一の戦士に育つやも知れんな。

マイア:うむ。

サナウ:して、ランスフォード卿。
    本国でのガルビアの動きは如何なっておりますかの?

ランス:外交任務と称して諸国へ出奔したようですね。

サナウ:足取りは掴めておらぬのか?

ランス:其れは判明しておりません。
    ですが、恐らくデミドーラでしょう。
    エスティアは今回の内乱に関与しない事に決め込んでる様です。

エド:しかし、ガルビアの下には、エスティアの暗殺者がいるでしょう?

サナウ:あれは、ガルビアの私兵の様なモノじゃろう・・・

ランス:ガルビアは我がセルディアの内務大臣でもあるが
    アスエル教団の枢機卿でもある。
    エスティアの貴族にとって、ガルビアに此れ以上の権限が集中する事を
    よしとしないのでしょう。

サナウ:エスティアの貴族は大き過ぎる権力にはアレルギーがある様じゃからな・・・

エド:矢張り、デミドーラの外務大臣ボドワン・アンデルソンでしょうか?

サナウ:其れも違うじゃろうな。
    確かにガルビアが優勢になれば嗅ぎ付けてくるやも知れん。
    じゃが、今の情勢・・・客観的に見ても今のガルビアは優勢とは言えん。

エド:じゃあ、何処へ?

ランス:エスティアで無いとする為らば、行く先はデミドーラしかあるまい。

サナウ:そうじゃな。

エド:でも、国内にガルビアが居ないのでしたら、そろそろフォルテウス様を
   迎え入れても良いのではないですか?

アン:そうよね、『月の湾曲刀』を持つ御友人も一緒に・・・
   此れでアスエルの三聖剣が此のガルニア要塞に揃う訳でしょ?

マイア:我らの太陽に、その男の持つ星、そして月か・・・

エド:なら、私が迎えに参ります!

ランス:そうしてくれるか?

エド:はい!

マイア:エドが行く為らば、私も付いて行く!
    爺さんも来るのか?

サナウ:いや、今回はワシは遠慮させて頂くとしようかの。

マイア:どうしてだ?

サナウ:此の要塞を長く留守にしておったからの・・・
    ワシがすべき仕事が残っておるわい。
    それに、お主が同行するというならば、
    ワシ等が付いて行っても足手纏いになるだけじゃろうて。

マイア:そんな事も無いだろう。

サナウ:まぁ今回は人を迎えに行くだけの御遣いじゃ、
    そんな大勢で押し掛ける必要もあるまい。

マイア:それもそうだな・・・

アン:そういえばランス様?
   フランソワーズ子爵様がお話があると仰ってましたわよ?

ランス:ん?そうか。

アン:新しい任務かしら?

ランス:かも知れんな、
    マグナルーク卿が何やら要塞攻略の策を巡らせている様だからな。

エド:フランソワーズ様がお知りになられてるなら大丈夫ですよ!
   きっと良い手をご用意されている筈です。

ランス:だろうな。
    エドワード卿は明日にでも発たれるのか?

エド:はい。道中にホニフの村にも寄って行こうかと思います。

ランス:そうか。
    村の酒場の娘も喜ぶだろう。

アン:・・・・。

マイア:酒場の娘?それはエドと如何いう関係だ?

エド:アニスはっ!只の幼馴染だよっ!

マイア:ふ〜ん・・・そうなのか?アン。

アン:ぇ?まぁその様ですわね。

マイア:何か怪しいな・・・もしかして、その女もエドに気があるか?
    まー、別に私は構わんが・・・

アン:あら?如何して?

マイア:エド程の勇者だ。子を産みたいという女の一人や二人居ても
    可笑しくないだろう?
    私はエドの子さえ産めれば、他の嫁に嫉妬等しないぞ?

サナウ:そうか、フライデスの民は一夫多妻制じゃったな・・・

マイア:なんだ!?セルディアでは違うのか?

アン:ええ、一人の夫と結ばれるのは一人の妻だけですわよ。

マイア:そうなのか!?為らばエド!私と契りを交わせ!
    私なら強く丈夫な子を産んでやれるぞ!

エド:ちょ・・ちょっと行き成り何を・・・

マイア:行き成り等ではない。先程からずっと言っていたではないか!
    まさか他にも契りを交わす約束をしている女が居るのではないだろうな!?

エド:い、居ませんよ!そんな人!!

アン:でもエドワード卿?婦人から此処迄はっきりとプロポーズされては
   男として返事をなさらない訳に参りませんわね。

エド:っ・・・・そうは言われても・・・

サナウ:何、此れからもずっと傍で行動を共にするのじゃ。
    マイアの想いを理解した上で考えていけば良かろう・・・

ランス:マイア嬢といい、アニス嬢といい
    エドワード卿は愛らしい婦人からよくモテて羨ましい限りだな。

アン:・・・貴方ぁ?

ランス:ぃゃ、これは言葉の綾という奴だ・・・

アン:もぉ、知りません!



エド:突然のプロポーズ・・・
   急にマイアの顔を見るのが恥ずかしくなってしまった。
   アニスの事は皆の思い込みだとしても
   マイアには何らかの答えを返さなくてはならない・・・
   明日には港町アムシーダへ出発だ。
   久しぶりに団長に会える。
   元気にしているだろうか・・・
   色々考えてるうちに朝日が昇ってしまいそうだった。





                  五十五章へつづく・・・
                           次回に続く。