三騎士英雄譚〜第五十五章〜

エドワード・レザースミス(23歳)男 愛称=エド
セルディア王国第六近衛騎士団所属。
革鎧職人の息子として生を受け16歳で戦時召集により兵士となる。
王都で開催されたトーナメント(馬上試合)の前座で行われた
勝ち抜き剣術試合で脅威の60人抜きを果たし近衛騎士の叙勲を受ける。
民衆寄りの考え方から上官との諍い(イサカイ)は絶えないが
剣の腕は王国一とも大陸一とも噂される。

マイア・アスタフィエフ(19歳)女
ローゼルクの吸血鬼
小剣と短弓の名手。
透き通る白い肌と流れる美しい金髪を
黒い毛皮の帽子と外套で隠している。

アニス・ベル(24歳)女
酒場で働く娘。エドの幼馴染であり
エドに想いを寄せる。
性格は勝気だが本当は寂しがり屋

レイラ・アウロフ(25歳)女
ローゼルク人の傭兵。
没落したローゼルクの騎士家の令嬢。
アウロフ家復興の為、傭兵へと身を落とし武勲を上げる事を夢見ている。
女としての筋力の無さを素早い体捌きと巧みな剣捌きで補っている。
所持している方形盾(ヒーターシールド)はアウロフ家の家紋を装飾した名品。
『家名を守る』の誓いを込めている。




舞台説明



マイアN:エドの生まれ故郷の村、ホニフにやってきている。
     月の勇者である船乗りの男を向かえに行く途中
     立ち寄った訳だが・・・

レイラ:食事を頼む。

アニス:は〜い。あ、今朝焼いた梨のタルトがあるのだけど、
    甘いモノは・・・好きかしら?

レイラ:ん?・・・・ええ、嫌いじゃないわ
    ・・・何だか機嫌が良さそうね。

アニス:あは、分かります?
    実は幼馴染が帰って来るんです。
    ま、忙しいみたいで少し寄るだけらしいんですけどね。

レイラ:なんだ、そういう事か・・・好きな男か何かか?

アニス:好きとかそういうんじゃ・・・

レイラ:そうかい。
    処で此処の村からガルニア要塞は近いのだろう?
    要塞の騎士が此処の村を訪れたりはしないのか?

アニス:さー、色々とお世話にはなってますけど、
    騎士の方が頻繁に来られる事は無いですよ。
    何か要塞に御用でも?

レイラ:何、私は見ての通り、傭兵だ。
    最近、仕事を失ってな・・・ま、職探しという奴だ。

アニス:其れなら、今話した私の幼馴染が要塞で働いている
    近衛騎士なんですよ?
    此の店に顔を出すと思うから、紹介してあげましょうか?

レイラ:へぇー、店主にそんな知り合いが居たとはね。
    恐れ入ったよ!

アニス:はい、お待ちどう様。
    「アイントプフ(雑煮スープ)」に「ウルスト(ソーセージ)」。
    あとはライ麦の黒パンとサービスのタルトね

レイラ:ぉ、中々に美味しそうね。
    頂くわ。

エド:アニス、いるかい?

アニス:おかえりっ、丁度良かった、今貴方の・・

エド:・・・お前はっ!

レイラ:なに!?店主の知り合いってのは・・・こいつの事か!?

アニス:あら知り合いだったの?

エド:態々(ワザワザ)ローゼルクから何の用だ!?
   アニス!何もされてないか?

アニス:いいえ、普通にお客様としていらっしゃったのよ?
    仕事を失ったから仕事を探していらっしゃるって・・・
    だから、エドを紹介するつもりだったのだけど。

マイア:エド、こいつはあの暗殺者の仲間じゃないのか?

レイラ:暗殺者の仲間とはご大層だね。
    まー、あの雇い主が暗殺者だったのだから似た様なものか・・・
    安心しな。私はあの雇い主ともヴェルチェフ達とも縁を切ったんだ。
    今は、只の傭兵レイラさ。

エド:信用できるものか!

レイラ:豪く嫌われたもんだね。

エド:お前達はグレゴールさん達の仇なんだからな!

レイラ:まぁいいさ。
    あんたを紹介されても仕事にあり付けそうに無い事は分かったからね。
    他を当たるとするよ。

アニス:ねぇ、何があったの?

エド:ローゼルクでグレゴールさんを殺したのはこいつ等なんだ!

アニス:あの、私を助けに来てくれた時に一緒だった・・・?

エド:ああ。

レイラ:私は傭兵だ。依頼を受ければ友人だって殺す。
    ・・・ま、友人を殺すって事を最初から分かってりゃ、
    そんな依頼は受けないがね?
    アイツも私も傭兵同士、そんな二人がお互い敵勢力に雇われてたら
    殺し合う事に何の言い訳が必要?

エド:っ・・・それでもっ!
   俺は・・・お前達を許せない。

マイア:エド、私はこの女の言っている事は理解できる。
    私も戦士だからだ。

エド:・・・・。

アニス:戦士って冷たいのね・・・。

エド:そうじゃないんだ、アニス。
   俺も分かってるんだ・・・頭では・・・でも。

アニス:そう・・・
    ・・・・ねぇ、そちらのお嬢さんはどちらさんなの?

エド:紹介が遅れたね・・・ローゼルクで俺達を助けてくれたフライデスの戦士マイアさん。
   こちらが、ホニフの村唯一の酒場『夢見る麦穂(バクスイ)』亭の女主人で
   俺の幼馴染のアニスだよ。

アニス:マイアさんね、宜しく。

マイア:宜しく・・・だが一つ言っておく。
    エドの子を産むのは私だ。
    お前には悪いが諦めてもらおう。

エド:わっ!な、何言ってるんだマイア!!
   ゃ、だから、ぇーと・・・

マイア:エドにとってこの娘は、只の幼馴染なのだろう?
    私は先日もエドと契りを交わしたいと宣言したばかりだ。
    この国の男は一人しか嫁を取らぬらしいからな。
    エドの周りにいる親しい女達には、伝えておいた方が面倒がないだろう?

アニス:エド?マイアさんって、そういう関係の人だったんだ〜?
    わざとらしく女戦士だなんて言っちゃって・・・最初からそう言えば良いじゃない。

エド:だからそう言う訳じゃなくて・・・

アニス:じゃあ、如何いう訳よ?

エド:だから、マイアさんが勝手に言ってるだけで・・・
   俺はまだ返事をした訳じゃないし・・・

マイア:エドは私に子を産ませるのが嫌なのか!?

エド:嫌と言ってる訳じゃなくて・・・

アニス:じゃあ、やっぱりエドもその気なんじゃない!

エド:・・・・・。

レイラ:ぷっ、ぶはははっ!
    久しく顔を合わせたと思ったら行き成り修羅場とはな!
    六十人斬りとやらも形無しだな!

エド:くっ・・・・

レイラ:で、店主はエドワード卿の事を如何思ってるんだ?
    只の幼馴染ならば、祝福してやれば良いだけの事だろう?

アニス:そりゃ・・・だから、
    嫌いじゃないわよ。

レイラ:嫌いじゃない?じゃあ好きでもない?

アニス:・・・・。
    そうよ、好きじゃ悪い!?
    ずっと見てきたんだもの。
    今じゃ立派に近衛騎士なんかやってて、
    何度も私やこの村を救ってくれて・・・

レイラ:だそうだぞ?エドワード卿。

エド:もぉ・・・余計な事を・・・

アニス:余計な事じゃない!!
    ねぇレイラさん?貴女、料理は出来て?

レイラ:は?急に如何した?
    そりゃ、国に居た頃は自分で食事の支度ぐらいはしていたが・・・

アニス:じゃあ、合格!
    仕事探してるって言ってたわよね?
    エドが雇わないなら、私が雇ってあげる!

エド:えぇ!?

アニス:此の国の人間でも無いマイアさんを連れて、2人きりで、それが任務だなんて
    それなら、此の国の国民である私が付いて行っても問題ない筈でしょ!?

レイラ:まさか其の間、私に店番をさせると言うのか?

アニス:駄目かしら?

レイラ:駄目じゃないけど・・・んー・・・・
    ふふ、そうね、店主の酒場で雇って貰いましょうか。

エド:おい!

マイア:アニスは私と勝負する気か?
    エド、こいつと私のどちらに子を産ませたいのだ!?

エド:ちょ、ちょっと待ってよ・・・

マイア:待つのは構わんが、選んでは貰えないのか?

エド:ぁ、ぃゃ・・・・

アニス:そんなに問い詰めてもエドが困ってるじゃない!
    どういう関係かは知らないけど・・・行き成り、子を産むとか、はしたないとか思わないの!?

マイア:何を言ってる。より強い子孫を残そうと思うのは自然な事だろう?
    エドは我が部族の勇者なのだから、その子を戦士である私が欲しても何も可笑しくあるまい。

アニス:・・・・。強いだけの男ならエドじゃなくても良いでしょ!?

マイア:エドは我が部族の勇者、私ですら自ら認めた勇者だ。
    代われる男などいない。

レイラ:クックッ、良いじゃないか。
    この店の事は私が面倒をみる。
    売り上げがどうなるかは知らんが、それで良ければ安心しろ。
    二人はエドを賭けて、思う存分、女を競えば良い。

アニス:レイラさんありがと。マイアさん?エドが貴女と私、どちらを選ぶか勝負よ!
    此れからは抜け駆けは許しませんからね!

マイア:ふんっ、望むところだ。
    しかし、旅のお荷物になって、エドに愛想が尽かされない様、気を付ける事だな。

アニス:ええ、貴女もあんまりガサツ過ぎると嫌われてよ。
    で!?此れから何処に向かうの、エド?

エド:ぇ?フォルテウス団長を迎えに行く為に、南岸の港町『アムシーダ』に・・・

マイア:月の勇者も共に迎えに行くのだろう?

アニス:月の勇者?

エド:団長の御友人で聖剣『月の湾曲刀』を持つギルバートと仰る方だよ。

アニス:聖剣ってあのアスエルの三聖剣!?

レイラ:店主は知らぬのか?エドの持つ大剣もアスエルの三聖剣『太陽の大剣』だぞ?

アニス:其れが!?・・・本物なの?

マイア:当然だ。我がフライデスが守り続けた秘宝、闇払う太陽だからな。

エド:この聖剣の行く末を見守る為に、マイアさんはローゼルクの地から着いて来たんだ。

アニス:なんだ、そういう事だったの?

マイア:其れだけではない。
    新族長より、太陽を所持する勇者であるエドとの間に勇者の血を引く
    戦士を授かる様にと、命令を受けている。

アニス:あなた・・・族長の命令で結婚する心算なの?

マイア:そうだ。だが、私自身、エドには好意を抱いているし
    エドの子を宿せる事を嬉しく思っているのだから何の問題もない。

アニス:そう・・・命令以前にエドの事を愛していると言うのね?

マイア:そうだ。

アニス:本当にはっきりとモノを言うのね・・・

マイア:恥じる事ではないからな。

アニス:分かったわ。
    なら、ライバルとして認めてあげる。

マイア:お前に認められなければならない理由は分からんが・・・
    認めるというのであれば、そうして貰おう。

レイラ:エドワード卿、フォルテウス達に会いに行くのならば急いだ方が良いと思うぞ?
    ヴェルチェフ達は、ギルバートが雇った若い娘を人質に
    聖剣を強奪する心算でいた筈だからな。

エド:なんだってっ!?

レイラ:私は、幾ら仕事とはいえ、女を人質にする様な遣り方に不満を持って
    奴らと縁を切ったのだ。

エド:そんな事は如何でも良い!急がないと!!

アニス:待ってよ!私も直ぐに支度するからぁ!!



エド:フォルテウス団長・・・無事で居て下さい!!
   団長が傭兵如きに後れを取るとは考えなかったが、
   嫌な予感がしてならない・・・
   新たに旅の仲間にアニスを加え、先行きに不安を隠せなかったが
   今はただ、アムシーダへ続く街道を南に急ぐしかなかった・・・・。





                  五十六章へつづく・・・
                           次回に続く。