三騎士英雄譚〜第八章〜

エドワード・レザースミス(23歳)男 愛称=エド
セルディア王国第六近衛騎士団所属。
革鎧職人の息子として生を受け16歳で戦時召集により兵士となる。
王都で開催されたトーナメント(馬上試合)の前座で行われた
勝ち抜き剣術試合で脅威の60人抜きを果たし近衛騎士の叙勲を受ける。
民衆寄りの考え方から上官との諍い(イサカイ)は絶えないが
剣の腕は王国一とも大陸一とも噂される。

グレゴール・ファントム(25歳)男 愛称=グレイ
エスティア人の傭兵。
通り名は死神グレイ。彼は今まで危険な任務をこなして来たのだが、
その為、彼の戦友のほとんどは戦死を遂げている。
戦場から、ただ一人生き帰る彼を傭兵仲間は死神だと噂するようになった。
無口で一見、無骨だが本当は心優しい男。

サナウジャール(54歳)男
セルジア伯爵領の山地に住む野盗の頭。
元、宮廷占星学者であり、隠居の身にあった。
伯爵夫人の横暴から領民を守る為、現在野盗に身を落としていた。

フォルテウス・エイブス(41歳)男
近衛騎士団団長。船乗りあがりの騎士。
元海賊であったという噂もあるが
その噂に似合う豪胆な性格。
エドを近衛騎士に引き立てた人物でもある。

ガーランド・ボリスタン(36歳)男
近衛騎士団中隊長。エドの直属の上官であり
騎士の家の生まれである事から
民間出身のエドを認めようとしない。
剣の腕は確かだが独断的であり周りの意見を聞こうとしない。

コルネリア・ケアード(21歳)女 愛称=コニー
アスエル教団の女司祭。ガルビア・フォン・クライセン枢機卿の姪にあたる。
薬草学に精通しており、治療行為は得意としているが
人前に立つ説教は苦手で、布教活動をする事は少ない。

舞台説明



サナウN:フォルテウス卿が謀反を起こして幽閉されたとの報告を受け
     フランソワーズ子爵はティナ殿に真偽のほどを確かめさせた・・・
     フランソワーズ子爵の読みに遠からず、
     フォルテウス卿はガルビア・フォン・クライセン侯爵の謀略により
     陥れられた様子だという事じゃった・・・

エド:フォルテウス様の救出に同行して戴いてありがとうございます。

サナウ:なぁに、ティナ殿の報告じゃ・・あの伯爵夫人めも絡んでおったそうだしの・・・

グレイ:俺は傭兵だからな、命令受けりゃ断れんさ。

エド:無事でいてくれれば良いんだけど・・・

グレイ:心配すんな!近衛騎士の団長さんなんだろ?
    少々痛めつけられたってくたばりゃしねぇよ。

エド:そうですね!

グレイ:しかしよぉ・・・大丈夫なのか?

エド:何がです?

グレイ:ハメられたとは言え、罪人として捕まってるんだろ?
    下手に助けたりして・・とばっちりとか喰わねぇのか?

サナウ:いらぬ心配じゃな・・・
    軍議法廷も開かれんままの幽閉じゃ。
    クライセン侯の独断じゃろう・・・
    今は身柄の確保だけが目的じゃろうな。

グレイ:軍議法廷ってのが開かれるまでは
    その騎士団長さんの身は安全って事か・・・
    
サナウ:そうとも言い切れんが・・・
    今、救出に向かえば間に合うじゃろうて

エド:酷い目にあってなければ良いのだけど・・・

サナウ:幽閉されている地下牢はアスエル教団の旧教会じゃ
    警備も薄手になっておるようじゃし

エド:とにかく、急ぎましょう!

【アスエル教団旧教会】

コニー:食事をお持ちしました。

ボリス:これはケアード司祭。
    しかしながら夕食はもう済ませてしまいました。

コニー:いえ、これは牢にいる罪人の方の分でございます。

ボリス:いらぬ、ご心配ですな。
    罪人めの管理は私めが務めております。
    あー、食事も、もう済ませたはず・・・

コニー:何を・・・、ここ1週間、食事どころか一滴の水すらも
    与えてないのではないですか?
    どんな罪を犯したのかは知りませんが・・・
    罪人とて最後の日まで生きる権利はありますのよ?

ボリス:生きる権利・・・ですか?
    あの男は明日にも命のない男・・・
    いらぬ気遣いというものです。

コニー:そんな・・・

【茂みの中】

グレイ:あの女、帰るフリをしてどこかに行くぞ・・・

エド:それより、食事も与えられていないなんて・・・
   早く助け出さなきゃ!

グレイ:まー待て、こういう時は焦っちゃ駄目だ。
    あの女の動きが気になる。

サナウ:後をつけるのじゃな?

グレイ:そういうこった!

【地下牢】

エイブス:ぐっ・・・ぅぅ・・・、
     ん?また、お主か・・・

コニー:今日の夕食です。

エイブス:すまない・・・
     こんな事をしては、お主にも迷惑がかかろう?

コニー:いいえ、罪を犯した者にも生きる権利はあります。
    それより、夕食にしか食事を運べなくて・・・ごめんなさい。

エイブス:いや、十分だ。
     ん?・・・・誰だ!?

コニー:ハッ・・・!

エド:・・・フォルテウス様!

エイブス:エドワード!

コニー:貴方達は!?

エイブス:心配いらん。
     わしの部下、私の息子の様な奴だ。

グレイ:しかし、こんな抜け道があったとはな・・・
    お嬢ちゃん案内ご苦労さん。

コニー:貴方達・・・どうするつもりですか?

グレイ:この旦那を助けに来たに決まってんだろ?

コニー:人を呼びますよ!?

エド:待って!この方は何も罪など犯してはいない!

サナウ:ガルビア・フォン・クライセン候の謀略に陥れられた・・・
    そう言う訳じゃよ。

コニー:クライセン家の叔父様が?

グレイ:って、事は・・・あんたガルビアの姪っ子かい?

コニー:はい・・・

グレイ:血筋ってのも、案外あてにならないもんだな・・・

コニー:どういう事でしょう?

グレイ:顔立ちが似つきもしねぇからな・・・
    あー、こっちの事だ、気にせんでくれ。

コニー:??・・・はぃ・・・

エド:とにかく、この方には・・フォルテウス様には
   こんな地下牢に幽閉されるような罪はないんだ。

エイブス:そんな事を、このお嬢さんに話しても迷惑をかけるだけだ。
     それよりエド・・・ガルビア・クライセン候は甥のマグナルークを使って
     何か企んでおるようだ。

エド:はい、フォルテウス様に代わりマグナルークが歩兵団を率いて
   ガルニア要塞には一向に向かわず、ホニフの村に駐留、
   村で横暴を働いてました。

エイブス:何!?、つまりは・・ガルニアの増強阻止が目的か・・・
     ・・・っ、ました・・だと?

エド:こちらのグレゴールさんとグリマン男爵家に乗り込み
   マグナルーク卿と対決し、すでにカタはつき、
   歩兵団はガルニア要塞守備に就いています。

エイブス:そうか・・・
     しかし、クライセン候には気をつけろ。
     あやつはアスター殿下を担ぎ、ルーク皇太子派の
     失脚を狙っておる!

エド:フランソワーズ様も同じ様な事を仰られていたな・・・

エイブス:今、ルーク皇太子派の騎士の大半がガルニア要塞守備に
     あたっているはずだ・・・
     クライセン候が歩兵の増援を邪魔した事からも解る様に
     今、狙われているのは、あのガルニア要塞だ。

サナウ:枢機卿にして内務大臣のガルビア・クライセン候爵だ
    教団も宮廷も、ヤツめの息がかかっていることでしょうな・・・

グレイ:そりゃ不味いぜ?要塞の騎士さん等がいくら腕利きとは言え
    五百名程度の兵力じゃ国を相手にできるもんじゃない。

エイブス:そういう訳で、お嬢さん。
     ワシは脱獄する事になるが、邪魔はせんでくれ・・・
     世話になったあんたを斬りたくないんでな。

コニー:私だって、子供じゃありません。
    貴方が悪い人でない事は薄々感づいてました・・・
    抜け道からお逃げ下さい。

ボリス:そうはいかん・・・
    馬鹿な真似をしてくれましたね・・・ケアード司祭。
    ・・・レザースミス。
    貴様、どこまで俺の邪魔をするつもりだ!
    まぁいい・・・誰一人、生きて帰さんのだからな!

エド:ボリスタン隊長・・・

ボリス:衛兵!何をしている!早くこやつ等を血祭りにあげてしまえ!!
    ただしケアード司祭は生け捕りにしろ・・・
    すぐに殺すには惜しい女だからな・・・

グレイ:1・・2・・3・・4・・・雑魚は6人か・・・
    エド、あの野郎はあんたに譲るよ。
    後の雑魚は俺が纏めて頂くぜ?
    
エド:ああ!

ボリス:調子付くな!レザースミス!!

エド:近衛騎士の誇りを捨てたかっ!!

ボリス:誇りで何が買える!?うぉおりゃぁ!!

エド:騎士の誇りは民を守る為のものだ!!ダァー!

ボリス:ぬぅぅ・・・足場が良ければ・・・こんな男に・・・

エド:もう、後はないですよ!ボリスタン隊長・・・

ボリス:貴様などに負けるかぁ!!・・・ぐふっ・・・

エド:隊長・・・貴方はもっと民衆を守る為に剣を取るべきだった・・・
   終わりだ・・・!!ボリスタン!!

ボリス:ぐあぁあぁぁ〜〜!!

グレイ:こっちもケリがついたぜ?

エド:あぁ・・・

サナウ:さぁ、脱出しますぞ!

エイブス:お嬢さんはどうする?

コニー:貴方がたについていきます・・・
    そして、貴方がたの言っている事が真実か確かめます。

グレイ:で、俺等の方が嘘だったらどうする?

コニー:その時は、貴方がたを・・・私が討ちます。

グレイ:気に入った!着いて来な!

サナウ:フォルテウス卿・・・して、主はこれからどうするのじゃ?

エイブス:暫くは王都に戻れまい・・・
     昔のツテを頼って港町の歓楽街にでも身を潜める事にする。

エド:ガルニア要塞にはいらっしゃらないのですか!?

エイブス:脱獄犯がお前達と一緒にいては何かと困ろう・・・
     昔取った杵柄でな、海賊連中には敵も多いが
     隠れ家を提供してくれる奴ぐらいはそこら中にいる
     まだまだ、顔は利くんでな。

エド:解りました。


サナウ:フォルテウス・エイブス卿を地下牢より救出し
    港町アムシーダで道を別にする。
    ガルビア内務大臣の次なる手は、
    ガルニア要塞の政治的な孤立であろう・・・
    さて、いかなモノかな・・・
    これは御忍びでルーク皇太子殿下にお会いせねばならんの・・
    ワシも忙しくなりそうじゃわ・・・





                  九章へつづく・・・
                           次回に続く。