三騎士英雄譚〜第九章〜

アスター・エイルファン・セルディア(27歳)男
セルディア現国王アスベールU世の弟であり
歳の離れた兄王が早くに皇太子となる長男ルークをつくった為
王家でありながら王位とは無関係に育った。
放蕩な性分だが、人がよく、財務大臣の要職に就くも
その能力は凡庸である。

ガルビア・フォン・クライセン(44歳)男
セルディア王国クライセン侯爵家当主。
内務大臣にしてアスエル教団の枢機卿。

クラウディア・セルジア伯爵夫人(28歳)女
セルディア王国ハウゼン・セルジア伯爵の未亡人。
恋多き情熱の女性。セディに執拗なアプローチをする。

ミカエル・フォシュマン(27歳)男
エスティア王国からの亡命貴族、元辺境伯
クライセン侯からの庇護を受け
暗殺などの裏稼業の斡旋で財を成している。

舞台説明



ガルビアN:ガルニア要塞に立て篭もる騎士共めに悉(コトゴト)く邪魔をされ
      ワシの計画はおおい狂ってしまった。
      こうなれば・・・アスター殿下の擁立を急がねばならんな・・・
      邪魔者の始末はあやつめに任せるとするか・・・

クラウ:火急でのお呼びたて・・・いったい何ですの?

ガルビア:おぉ、着いたかクラウディア・・・
     実はの、アスター殿下にガルニア要塞への資金援助停止を
     承認して頂こうと思うてな・・・

クラウ:私が説得させて頂けばよろしいのね。

ガルビア:うむ、お前が事前に吹き込んでおれば
     ワシとの会談では話が早く進もう・・・
   
クラウ:時に・・・・こちらの御仁は?

ガルビア:あぁ、紹介が遅れたな、
     顔を合わすのは初めてだったか・・・
     エスティア国より亡命した
     ミカエル・フォシュマン辺境伯じゃ

ミカエル:お初にお目にかかります・・・セルジア伯爵夫人。
     
クラウ:お会いできて光栄ですわ、ミカエル卿。

ガルビア:今は我がクライセン侯爵領にて客分の身だが
     事が片付けば、このセルディアでの爵位も授与される予定だ
     まぁ、侯爵家の力添えでは伯爵とするのが限界だがな・・・

ミカエル:私めは故郷の国を捨てた身、
     伯爵位でも身に余る光栄と言うもの。

ガルビア:エスティア国の辺境伯だったミカエル卿が
     その程度で身に余られてもワシは困るのだがな?

クラウ:そうですわよ?私も御活躍を期待しておりますわ

ミカエル:ガルビア閣下の御好意に応えませんとな・・・
     その点においてはご安心ください。

ガルビア:ふむ、心強い言葉じゃな。

【財務省】

アスター:これはクラウディア、よく参られた!

クラウ:アスター殿下、お久しぶりですわ。

アスター:うむ、して・・今日は何用であるかな?
     そなたの元気な顔を見れただけでも私は嬉しい限りだが・・・

クラウ:まぁ殿下、嬉しいですわ!
    実は殿下のお耳に入れたいお話がありますのよ。

アスター:ほぅ、それはどんな話かな?

クラウ:あまり良い話ではないのですけども・・・
    先日、ガルニア要塞の攻略に成功いたしましたが・・・

アスター:うむ、それは最近一番の吉報だな!

クラウ:そのガルニア要塞の攻略に参加した騎士が
    アスター殿下の失脚を画策している様子なんですの

アスター:なんと!?

クラウ:ガルニア要塞守備に就いている騎士達は
    ルーク皇太子を支持する過激派達ですもの・・・

アスター:過激派?
     ・・・確かに甥のルークを支持する騎士貴族の参加は目立ったが・・・

クラウ:そうですの。アスター殿下を陥(オトシイ)れて
    アスター殿下を支持する貴族を一掃するつもりなんですわ!

アスター:それは一大事だ!・・・私はどうすれば良いのだ!?

クラウ:私には分かりかねますわ・・・
    そう・・・クライセン侯爵様なら、良いお知恵をお持ちかも知れませんが・・・

アスター:ガルビア内務大臣か・・・

【アスター私室】

ガルビア:アスター殿下。お呼びでしょうかな?

アスター:おぉ、ガルビア内務大臣!待っておったのだ!

ガルビア:遅くなりまして、失礼致しましたな

アスター:よいよい、それよりそなたに相談があるのだ。

ガルビア:相談・・・私にですかな?
     殿下からの相談なればこのガルビア
     身命にかけて解決に向け尽力致しましょう。

アスター:そうか!それは頼もしい。

ガルビア:で、どの様なご相談で・・・

アスター:それがな・・・ルーク派の貴族どもが
     この私を陥れようとしているとの噂を聞いたのだ

ガルビア:ルーク派の中でも過激派の連中ですな?

アスター:うむ、助言をくれた者もその様に話しておったな・・・

ガルビア:ならば、ガルニア要塞を封鎖し、孤立を図るのが宜しいでしょうな
     なにせ、ガルニア峡谷守備の騎士共こそ
     ルーク過激派の中枢でありますからな。

アスター:しかし、デミドーラ国からの侵略に防衛をせねばなるまい?

ガルビア:ですから、ガルニア要塞の守備はそのままに
     資金援助を打ち切ってしまうのです。
     無理に要塞の放棄を命じても
     立て篭もり、抵抗されればあの要塞は厄介ですからな

アスター:つまり、援助はしないが守備任務は続けさせるという事か?
     それでデミドーラを防げるのか?

ガルビア:足止めになりましょう・・・その間に軍を率いれば、十分間に合います。

アスター:よし、では財務大臣としてガルニアの援助打ち切りを承認しよう!

ガルビア:それと・・・

アスター:まだ何かあるのか?

ガルビア:ルーク皇太子様に代わってアスター殿下に
     次期王位を狙ってもらわねばなりませぬな。

アスター:なんと!?

ガルビア:現国王アスベールU世陛下も最近は病に臥せりがち・・・
     このままルーク皇太子様が王位を継げば
     アスター殿下も我々アスター殿下派の貴族も
     行き場を失ってしまいますぞ。

アスター:そんな事もあるまい・・・?
     甥のルークとて、身内のみを贔屓(ヒイキ)する男ではない。

ガルビア:いえ、ルーク皇太子様は兎も角・・・
     今回、アスター殿下を陥れようとしているルーク派の者共は
     ルーク皇太子様の台頭により益々横暴を働きましょう。

アスター:それを防ぐ事はできんのか?

ガルビア:はい、アスター殿下が台頭なされ、
     王位について頂かねば・・・我々の未来はありませんでしょうなぁ。

アスター:むぅ・・・

ガルビア:皇太子様を裏切る形にはなりましょうが・・・
     ご決断されませ!

アスター:・・・・・ぬぅ・・・あいわかった・・・
     しかし、どうすれば良いか分らぬ・・・
     以後はそなたに任せてもよいか?

ガルビア:殿下の命とあらば・・・

【内務大臣室】

クラウ:巧く事が進んだ様ですわね・・・

ガルビア:まんまと思惑に嵌りおったわ!

クラウ:後は要塞にいる騎士達ですわね

ミカエル:私めの仕事の様ですね

ガルビア:うむ、まずはグリマン男爵領の領主代理に納まった
     ランスフォード・シュタインの暗殺を頼む。

ミカエル:ランスフォード卿
     ・・・そういえばオルヴィス伯の嫡子エディラン卿との間に
     因縁がありましたな・・・

クラウ:面白そうな話ですわね

ミカエル:なんでも、騎士家系のアンセル家、アンジェリカ嬢との婚約を巡って
     決闘に至るほど・・・結果はランスフォード卿の勝利に終わり
     現在、そのアンジェリカ嬢と共にランスフォードは
     ホニフの村で代官の任・・・
     エディラン卿にとって面白くないでしょうな

クラウ:きっと、妬けるわね

ミカエル:我が部下を差し向けるのも良いですが・・・
     ここは、エディラン卿の恨みを晴らすお手伝いを
     させて頂きましょうか・・・

ガルビア:しかし、ランスフォードは紺碧騎士団の副団長をも務める男ぞ?
     エディラン卿とやらで大丈夫なのか?

ミカエル:まぁ、無理でしょうな・・・

ガルビア:無理では意味がなかろう!

ミカエル:まぁまぁ、相手の力量を測らねば暗殺も成功致しませんでしょう・・・
     エディラン卿はランスフォード卿とも因縁のある仲・・・
     嗾(ケシカ)けたところで、我々の動向に感づかれる恐れもありません。

ガルビア:捨て駒には、うってつけという訳か・・・

ミカエル:御意・・・

クラウ:まぁ、恐ろしいこと。

ミカエル:それと・・・我が部下のシーギスムンド・ベールヴァルドという者に
     聖剣の探索を命じております。

ガルビア:聖剣?・・・アスエルの三聖剣の事か!?

ミカエル:はい、大聖堂には「太陽の大剣」「月の湾曲刀」「星の剣」の
     イミテーションが奉納されていますが・・・
     そのオリジナルは所有者を祝福し、勝利を与えると言われております。

クラウ:それは言い伝え・・・伝説ではないですの?

ミカエル:さて、神の祝福などが剣に宿るのかどうかは別としても
     ガルニア要塞のセドリック・フォン・ラグワルト卿所有の
     宝剣「アディマイア」に匹敵する切れ味とか・・・
     手に入れて損はないものと・・・

ガルビア:確かにのぉ・・・では、三聖剣の捜索も任せたぞ?

ミカエル:お任せ下さい。

クラウ:アスター殿下の方は、これから如何なさいますの?

ガルビア:そうだな・・・ガルニア要塞におる輩以外の
     小五月蝿いルーク派貴族共を順に懐柔させるのがよいじゃろう・・・
     あまり聞き分けの悪い連中は、適当に罪を被せて
     政治犯として投獄すればよかろう

クラウ:まぁ、ガルビア様ったら・・・ウフフ・・・


ミカエル:折角、亡命までして、このセルディアにやって来たのだ・・・
     裏社会を纏めるぐらいの力は手にしたいものだ。
     その為にもこの国をガルビア閣下の手中に収めさせねば
     諜報と暗殺の恐ろしさ・・・
     セルディアの貴族共に享受してやるか・・・





                  十章へつづく・・・
                           次回に続く。