三騎士英雄譚〜プロローグその1〜    

エドワード・レザースミス(23歳)男 愛称=エド
セルディア王国第六近衛騎士団所属。
革鎧職人の息子として生を受け16歳で戦時召集により兵士となる。
王都で開催されたトーナメント(馬上試合)の前座で行われた
勝ち抜き剣術試合で脅威の60人抜きを果たし近衛騎士の叙勲を受ける。
民衆寄りの考え方から上官との諍い(イサカイ)は絶えないが
剣の腕は王国一とも大陸一とも噂される。

アニス・ベル(24歳)女
酒場で働く娘。エドの幼馴染であり
エドに想いを寄せる。
性格は勝気だが本当は寂しがり屋

ガーランド・ボリスタン(36歳)男
近衛騎士団中隊長。エドの直属の上官であり
騎士の家の生まれである事から
民間出身のエドを認めようとしない。
剣の腕は確かだが独断的であり周りの意見を聞こうとしない。

デュレク・フォン・グリマン男爵(38歳)男
ホニフの村を含むグリマン領を収める領主。
悪政を振るう。

トルム(57歳)男
ホニフの村の村長。
領主の悪政に頭を痛めている。

舞台説明





アニスN:大陸中央南岸に位置する我が母国・・・セルディア王国
西にエスティア王国、北東にデミドーラ王国という敵対国に挟まれ
大きな争いは近年ないものの・・・この数十年間、各地で小競り合いを続けている。
幼馴染のエドが騎士になって、もう3年・・・
まわりの人達は大した出世だと喜ぶけれど・・・私はあの泣き虫だったエドが
無事帰って来てくれる事だけを望んでいる。

【近衛騎士団駐屯】

ボリス:レザースミス!聞こえているか!エドワード・レザースミス!!

エド:はっ、ボリスタン中隊長殿!

ボリス:貴様のような剣しか取り柄の無い男は
    素直に命令だけ聞いていれば良いのだ!

エド:しかし・・・

ボリス:しかしもクソもない!ホニフの村は王国に収める税を滞納しておるのだ
    それを許せば他の村にも不届きな考えを持つ村が現れる!
    これは重大な反逆なのだぞ!?

エド:しかし・・・ボリスタン中隊長殿!申し上げますが・・・村は領主に国税を含め
   通常通り税を支払っております。
   国税の滞納は領主による怠慢ではないでしょうか!?

ボリス:なに!?貴様、領主であるグリマン男爵様が怠慢だと言うのか!?
    領地の管理の為の地方税は各領主様方の自治権で認められておる
    グリマン男爵様が地方税として受け取ったと仰られる限り
    国税は支払われてないのだ!!

エド:そ、そんな・・・

ボリス:この件はレザースミス。貴様に任せる。
    ホニフの村より税を納めさせるのだ。
    もし、村が逆らうようであれば村長をはじめ数名を捕らえ
    見せしめに処刑する。

エド:ばかな・・・

ボリス:貴様!馬鹿とはなんだ!!
    まぁよい・・・期限は一週間だ。それまでに税を納める様子がなければ
    兵を派遣する。そのつもりで居ろ。

エドM:ホニフの村・・・そんな豊かな村じゃない・・・今以上の税を納める余裕なんて・・・
    アニスのヤツ、元気にしているだろうか・・・
    やっと帰ってきた俺が村に無理な徴税をさせる為だなんて知ったらなんていうだろうな・・・

【ホニフの村】

トルム:エドワード・・・エドワードじゃないか!?

エド:お久しぶりです。トルム村長。

トルム:エド・・・元気そうで何よりじゃ・・・おっと、今は近衛騎士様じゃったなぁ

エド:村長・・・いつも通りエドで良いですよ。

トルム:しかし、久しぶりじゃ・・・で、今日は何の用で来たんじゃ?
    まさか、近衛騎士をクビになった訳でもあるまい?

エド:それは・・・・ 
   ・・・・・
   ・・・・・

トルム:・・・・うむ、・・・・この村の税の滞納についてじゃな・・・?

エド:はい・・・、国税分を一週間以内に支払ってもらう為に・・・

トルム:エド、いや・・レザースミス殿、聞いてくれ・・・

エド:はい・・・わかっております。
   国税を領主にすでに収めた事。これ以上税を収める余裕がこの村に無い事。

トルム:そうじゃ。この村の出身のお前さんなら・・・良く知っておろう?

エド:はい、しかし・・・グリマン男爵は地方税として受け取ったと・・・
   このままでは、この村は反逆の意思ありとみなされてしまいます。

トルム:エド・・・・お前は・・・事情を知っていながら領主様に味方すると言うのか?

エド:・・・・期限は一週間・・・それまでに税を納める意思を見せない場合は・・・
   この村に兵が派遣され、あなたをはじめ、村人数名が処刑される・・・

トルム:なんと言うことじゃ・・・どうにかならんのか・・・

エド:近衛騎士と言っても一介の騎士にしか過ぎません・・・
   俺の力じゃ・・・どうすることも・・・

トルム:わかった・・・税の事は村の者と相談して決めよう。
    一週間はこの村に滞在しておるんじゃろ?
    アニスに会いに行ってやってくれ。
    あの娘も寂しがっておったでな・・・

エド:トルム村長・・・    

【村の酒場】

アニス:いらっしゃ・・・!?、・・・エド!?

エド:ただいま・・・

アニス:エド!!・・・・おかえりなさい。

エド:アニス、元気にしてたか?

アニス:当たり前でしょ!?エドこそホームシックにでもなって
    騎士団逃げ出して来たんでしょ?

エド:バカ!任務だよ!・・・・・そ、任務なんだ・・・

アニス:エド?

エド:いや、何でもない。

アニス:エド!!何があったのか言いなさい!
    昔から隠し事出来ないんだから・・・
    何か大変な任務でも受けたんでしょ?

エド:とりあえずワインでも貰おうかな?

アニス:ダメ、言わないと何も出してあげない!
    ・・あ、・・・・もしかして、この村に税の取立てに来たの・・・?

エド:・・・・

アニス:信じられない!エドには、わかってるんでしょ!?
    この村の状況・・・それなのに・・・

エド:仕方ないんだ・・・それが任務だし・・・
   もし一週間経っても税を払わない様なら・・・
   村人が見せしめに処刑されるんだ・・・

アニス:・・・・うそ、でしょ?

エド:こんなタチの悪い冗談言うかよ!

アニス:エドはこのまま黙って村の人が殺されるの、見てるんだ・・・

エド:・・・・

アニス:収めたくても、この村に税に納める物なんて無いのよ?
    しかも一週間だなんて・・・払える訳ない!

エド:・・・・・

アニス:エド?どうしたの・・・

エド:わかった。俺、グリマン男爵に掛け合ってくる。

アニス:男爵様に直接!?そんなの無理よ!!

エド:無理かもしれない、けど・・・このまま村の人を見過ごせないよ!

アニス:・・・・・だけど。

エド:決めたんだ。・・・じゃあ、今から行って来る。

アニス:わかった。絶対無茶はしないでね。
    それと何があっても必ずここに一度は戻って来て!

エド:うん、わかった。

【グリマン男爵邸】

グリマン:徴税官代理として派遣されたのは君か・・・
     確か60人抜きのエドワード卿だったね・・・
     噂は聞いているよ・・・・で、何かね?

エド:村からの税は国税も含めたものと聞いております。
   国税分を納めてもらいに来ました。

グリマン:なにを馬鹿な事を、あの税はあくまで領地を管理する為の地方税。
     今年は色々と経費がかさんでいつもより多く収めさせただけの事。
     地方税の増減は領主に一任されている事を知らんのかね?

エド:知っております。しかし、領地の管理の為の地方税のせいで
   領民の命が失われては元も子もない。
   また、村に支払う能力が無ければ、それは領主たるグリマン男爵様の責任。
   グリマン男爵様より村の国税を納めて頂くしかありません。

グリマン:平民数名の命でコトが収まるのであれば安いモノではないか・・・

エド:!?、それが、領地を管理する領主の言葉か!!?

グリマン:な!?なんだその言い草は・・・

エド:民あっての国、民あっての領主ではないですか!
   その民を犠牲にして何とも思わないとは・・・

グリマン:私は貴族だ、領地の民は私の財産の一部に過ぎん。
     私の財産をどう使おうとそれは自由ではないかね?

エド:民を犠牲にしても国税を納めぬと言うのであれば、グリマン男爵。
   あなたを国税横領の罪人としてこの場で成敗する!
   私の噂は聞いていると仰られたですな・・・

グリマン:ま、待て!平民あがりの近衛騎士風情が貴族であるこの私を斬ればどうなるか・・・
     分かっておるのだろうな!?

エド:人間数名の命と・・・私一人の命・・・比べればどちらが重いかすぐに分かりましょう?
   私は平民あがりの近衛騎士ですからな!

グリマン:くっ・・・分かった・・・国税は我が男爵家から収めよう。
     それでよかろう・・・

エド:はい。それでは後日、近衛騎士団より受け取りに参りますので。
   では、失礼致しました・・・

グリマン:くっ・・・エドワード・レザースミスめ・・・覚えておれ・・・

【村の酒場】

アニス:エド!良かった・・・無事で・・・

エド:グリマン男爵から国へ税を収めるよう話してきた。

アニス:え?ホントなの!?

エド:うん、これで俺の騎士生活も終わるだろうけどな・・・

アニス:何か・・・したの・・・

エド:一介の騎士が貴族にたてついたんだ・・・ただでは済まないよ

アニス:そんな・・・悪いのは男爵のほうなのに・・・

トルム:アニス・・・そういうもんじゃよ・・・エド、すまなんだ・・・

エド:村長・・・

トルム:領主館からエドが思い詰めた顔で戻ってくるのを見かけたと聞いたもんでな
    こんな事だろうと思ったよ・・・

アニス:村長さん・・・エドはどうなるの?

トルム:ワシには分からんよ・・・しかしの、良くて騎士資格剥奪、悪くすれば・・・

アニス:・・・悪くすれば・・・?

エド:死刑だってありえるさ。

アニス:そんな・・・

エド:覚悟してやったことだ。

アニス:ごめん・・・私、そんなつもりじゃ・・・

エド:いいんだ。

アニス:だって・・・私・・・

【グリマン男爵邸】

ボリス:デュレク様・・・

グリマン:遅いぞ!ボリスタン!

ボリス:申し訳ありません。

グリマン:あのレザースミスという騎士はお前の部下らしいな?

ボリス:はっ、まさかこんな出方をするとは・・・・

グリマン:えぇ〜ぃ!忌々しい・・・

ボリス:あの男、早速捕らえて処罰しますか?

グリマン:レザースミスを血祭りにあげるは簡単だか、
     今回の件が公けになってみろ・・・
     国からの徴税が厳しくなるのは目に見えておる。

ボリス:はっ・・・

グリマン:お前の所の団長はそう甘い男ではないぞ?

ボリス:確かに・・・では、いかがなさいますか?

グリマン:決まっておる。ヤツには戦死してもらう。
     デミドーラ国のガルニア要塞攻略の先遣隊・・・
     ヤツをあの特別編成部隊に放り込め。

ボリス:なるほど・・・・あの特編隊ですか・・・



エド:処罰を受けるまで村で休息をしよう・・・
   覚悟を決めた俺の・・・運命の輪は廻り始める。
   


                   本章へつづく・・・
                           次回に続く。