三騎士英雄譚〜プロローグその2〜

ランスフォード・シュタイン(29歳)男 愛称=ランス
セルディア王国の無名の騎士の家生まれる。第三紺碧騎士団副団長。
父アーデル・シュタインは国王命令無視の罪により
騎士資格剥奪という憂いに遇うが、当時14歳であったランスに
異例の騎士叙勲を与え御家断絶の危機を逃れる。
また、29歳で騎士団副団長の要職への出世も異例。

サーバルド・アンセル(29歳)男 愛称=セル
セルディア王国第三紺碧騎士団中隊長。
ランスの同期であり親友。
槍術、馬術ともに長けているのだが
不真面目な所があり騎士としては優秀とは言えない。

アルフレッド・ローランド(26歳)男 愛称=アル
セルディア王国第三紺碧騎士団小隊長。
ランス、セルの部下。
弓術の名手であり中隊長昇格も間近と言われている。
セルと対照的に真面目。

アンジェリカ・アンセル(24歳)女 愛称=アン
セルの腹違いの妹。
婚約者がいるがランスと相思相愛の関係にある。
剣術を学んでおり、細身の剣の試合での実力は兄にも勝っている。

エディラン・フォン・オルヴィス(27歳)男 愛称=エディ
セルディア王国オルヴィス伯爵家の御曹司
アンの婚約者であり、
第一黄金騎士団に所属している騎士であるが
剣の腕は平凡以下。

舞台説明




ランスN:第三紺碧騎士団寄宿舎。
この国にある六騎士団は実力の他、生まれによって編成が組まれている。
第三・第四騎士団は一般の騎士家系の生まれの者で構成され
我が第三紺碧騎士団は中でも精鋭を集めた実戦部隊である。
その訓練、任務共に過酷であり、
それゆえ、休息の刻は皆、思うまま羽を伸ばしている。

セル:よぉ〜ランスフォード副団長殿ぉ〜

ランス:セル・・・また飲んでたのか・・・

セル:今日の訓練はお前から3本も取ったからな♪
   その祝い酒よ。

ランス:まったく・・・それだけの腕があれば
    真面目にさえすれば、もっと早く出世しただろうに・・・

セル:なぁに、俺もいまや中隊長様だ。副団長にお前さんが居る限り
   これ以上の出世もあるまいて・・・
   俺は、のんびり美酒に酔いしれるのが似合うのさ

ランス:お前と言うやつは・・・

セル:そういえば、アンのヤツとはどうなんだ?

ランス:アンジェリカ嬢はオルヴィス伯の御曹司との
    婚約が決まったそうじゃないか・・・

セル:それで?

ランス:幸せになれる様、祈っているよ・・・

セル:馬鹿野郎ぉ!アンの気持ちはどうする!?
   お前はそれで良いのかよ!?

ランス:相手は次期伯爵家当主だ・・・これほどの良縁もあるまい・・・

セル:ふざけるな!俺はお前だから妹との仲を認めたんだ!
   伯爵か白髪か知らねぇが、あんなナマクラ貴族に妹を任せられるかよ!

ランス:俺だって・・・出来ることならば、
    この手で彼女を守ってやりたい・・と思ってるさ・・・

アル:なら・・・伯爵相手でも奪ってしまえばいいのではないですか?

ランス:アルフレッド・・・

セル:ぉ?真面目っ子アルにしちゃあ〜いい事言うじゃねぇか!

アル:私はいつも良いと思う事しか言っていませんよ。

セル:けっ!かわいくねぇ・・・

アル:団の中でも副団長とアンジェリカさんとの仲は公認のものでしたしね
   それに、相手のエディラン・オルヴィス卿はあまり良い噂を聞きません。

セル:「とにかく」だ!妹のアンはお前に会いたがっている!
   それだけは伝えておくぞ!

ランス:セル・・・すまない。夜間訓練は欠席すると団長に伝えておいてくれ。

セル:へへっ、お安い御用だ・・・
   よぉ、アル!今日は特別に一杯おごってやるよ!

アル:結構です。私は非番の前日にしかアルコールは嗜まない主義ですから

セル:けっ、人生の半分は損してやがるな・・・

【アンセル宅】

アン:ただいま戻りました〜・・・

エディ:おぉ、麗しのアンジェリカよ・・・
    今日はずいぶんと遅いご帰宅ですな。

アン:エディラン様・・・またいらっしゃっていたのですか・・・?

エディ:愛しの婚約者に会いに来てはいけないのかい?

アン:いえ・・・

エディ:ランスフォード卿のことがまだ忘れられないのか!?

アン:忘れられないなどと・・・忘れるつもりも端からありません!

エディ:ぬぅ・・・あのような騎士資格剥奪の不名誉な父を持つ男の
    どこが良いと言うのだ!
    あのような輩が副団長の地位にある事すら許しがたいと言うのに・・・

アン:ご自分の剣の腕に聞いてみてはいかがですか?
   彼は少なくとも、その地位にふさわしい技量をお持ちでいらっしゃいます。

エディ:・・・・よほど奴の腕を信じられてる様ですな・・・
    私とて第一黄金騎士団の一員。副団長とはいえ第三騎士ごときに
    後れを取るつもりは毛頭ないですぞ!

ランス:アン〜、アン。私だ、ランスフォードだ。

アン:ランス様・・・

ランス:あ・・・これはエディラン・オルヴィス卿・・・・

エディ:これはこれは・・・ランスフォード卿・・・
    我が愛しの婚約者に何の用かな?

アン:エディラン様・・・おやめください!

ランス:はい、エディラン卿・・・今日は貴方の婚約者の今の気持ちを
    聞きに参りました。

エディ:何?アンジェリカの今の気持ちだと?

ランス:アンの幸せと思い一度は身を引こうと思っていた私ですが・・・
    どうやら私は大きな過ちを犯していたようで・・・

エディ:その過ちとやら・・・聞こうではないか・・・

ランス:アンを幸せにするものは家柄でも財産でもなく
    共に歩む2人の心にあると。

アン:ランス様・・・

エディ:聞き捨てならんな!私とアンジェリカとに心通わぬと聞こえるが!?

アン:私はいまだランス様だけをお慕い申し上げております・・・

ランス:お聞きの通りでございます。
    愛とは身分や財で買えぬもの。
    アンの幸せは私にしか守れぬものと思っております。

アン:嬉しい・・・

ランス:アン。すまなかったな・・・

エディ:えぇぃ!決闘だ!!
    ランスフォード・シュタイン卿!
    アンジェリカ嬢の真の愛を賭けて、そなたとの決闘を申しつける!

アン:エディラン様おやめ下さい。怪我をなさるだけでございます・・・

エディ:どこまでも馬鹿にしおって・・・
    この勝負に勝ってアンジェリカ、お前を妻に貰い受ける!よいな!!

ランス:正式な決闘としてお受けいたします。

エディ:場所はラーブル中央広場、時間は明日の正午だ!
    逃げるでないぞ!!

セル:これは面白い事になったな♪

アン:お兄様・・・

アル:第三紺碧騎士団の名誉の為にも負けれませんね。

ランス:アルフレッド・・・お前まで・・・

セル:ここは俺の自宅でもあるんだ。俺がここに居ても不思議ではあるまい?

アル:私はサーバルド卿に夕食に招待されましてね。

ランス:ふぅ〜。仕方のない奴らだ・・・

【ラーブル中央広場】

エディ:よく逃げずに来たな!ランスフォード卿!

セル:まぁ〜お決まりの台詞を恥ずかしげもなく・・・

エディ:ぬ・・・決闘はこのレイピア(細身の剣)で行なってもらう!
    剣はそなたの分もこちらで用意した。

アル:レイピアなら使い慣れてないとでも思ったのでしょうか?

セル:ぶははっ!ランス!
   エディランの上品なケツの穴でも突いてやれ!

エディ:貴様らぁ・・・・

ランス:お前達・・・これは正式な決闘だ!酒場の喧嘩のような野次はやめてくれ・・・

エディ:早く剣を取れ!そちらが抜かなくとも・・・こちらから行くぞ!

ランス:我が愛する者の為に・・・

エディ:我が名誉に賭けて・・・

ランス:ふんっ!

エディ:タァァー!!

ランス:な!?

アン:ランス様!?

アル:剣が中程で折れた!?

セル:何か細工してやがったな?

エディ:私の剣の鋭さに剣が耐えれなかった様ですな・・・

ランス:抜け抜けと・・・

エディ:冥府に旅立ち過去の者となれ!・・・ハァッ!!

アン:ランス様ぁぁぁ〜!!!

エディ:ば、ばかな・・・・

ランス:ブレードの長さだけが勝敗を決めるとは限りませんよ?

エディ:ち・・・血が・・・痛い・・・誰か早く手当てを!!

セル:ぶっ!大げさな・・・手の甲を切ったぐらいで、何騒いでやがる。

エディ:覚えていろ!ランスフォード!!
    アンジェリカ共々絶対に許さんからな!

ランス:ふざけるな!もしアンに手出ししてみろ!
    今度はその首跳ね飛ばしてやる!!

エディ:ぐっ!この屈辱忘れぬからな!

【アンセル宅】

セル:ぷっ・・・ぷははははっ!!
   見たかよあの坊っちゃんの逃げ出し様!?

アル:サーバルト卿・・・笑っちゃ悪いですよ・・・ぷぷっ

セル:お前だって今笑ったじゃねぇか!

ランス:いい加減にしろ・・・
    アルフレッド、お前もセルに毒されて来てるんじゃないか

アル:えぇ!?本当ですか!?
   サーバルド卿とこれからは距離をおかなければ・・・

セル:ざけるなよ!仮にも俺はお前の直属の上官なんだからな!

アル:いえ、今日づけで中隊長の辞令を頂きました。
   今日からは同僚ですよ?

セル:マジか・・・聞いてないぞ!?

ランス:本当だ。デミドーラ王国への侵攻の足がかりとして
    ガルニア要塞攻略作戦が決定された。
    その先遣隊に参加する事を条件に中隊長への昇格が決まったのだ。

アル:サーバルド卿も参加する事になってますよ?

セル:マジかよ!?まったく聞いてねぇ・・・

アル:サーバルド卿は報告のあった定例会議に遅刻なさってましたから。

セル:あ、あの時か・・・

ランス:先遣隊は各騎士団から精鋭を選出した特別編成部隊となる。
    しかし、難攻不落のガルニア要塞だ
    心してかからねば・・・生きて帰れないかもしれない・・・

アル:私はまだ死にませんよ。
   副団長の様に愛を語らう相手も、まだいないのですから・・・

ランス:アン。この作戦から生きて帰って来られたなら
    俺と結婚式を挙げよう・・・
    必ず生きて帰るから、待っていてくれ。

アン:それは出来ないわ。

ランス:え・・・?

アン:だって、第五真紅騎士団からガルニア作戦に選出された騎士は
   私なんですもの・・・

セル:お前・・・いつの間に真紅騎士団の叙勲を受けてたんだ・・・!?

アン:つい、先日よ?お兄様はご自宅より盛り場でお眠りになられる方が
   お好きらしいですから・・・知らないのも当然かもですわね。

ランス:アン・・・なら、必ず2人で帰って来よう。この王都セルデンに・・・

アン:新婚旅行にしては騒がしい場所になりそうね♪

アル:大人しそうなご婦人かと思いきや・・・

セル:こりゃ、夫婦喧嘩が楽しみだ・・・



ランス:セルディアの歴史はまた動乱の時代を迎えようとしている。
    自分に出来る事は・・・目の前の幸せを守る事だけなのだろうか?
    これから降りかかる自らの運命すら、まだ知らない・・・。





                   本章へつづく・・・
                           次回に続く。