三騎士英雄譚〜プロローグその3〜 セドリック・フォン・ラグワルト(32歳)男 愛称=セディ セルディア王国ラグワルト伯爵家の次男。第二白銀騎士団中隊長。 貴族の名家の生まれだが華やかな社交界を嫌う変わり者。 いまだ独身を通しており、剣の道に進むが うらはらに婦人からの人気は高い。 物腰は柔らかく、文才に長けるが剣の腕は白銀騎士団随一の腕を持つ シャルル・フォン・フランソワーズ(29歳)男 愛称=シャル セルディア王国フランソワーズ子爵家の当主。 剣より学問に通じ、第一黄金騎士団に所属するも 自領の統治に尽力を尽くしている。 セディとは幼少からの付き合いがある。 学者肌の貴族。 バーナード・オズワルド(37歳)男 愛称=バーニィ ラグワルト家に代々仕えるオズワルド家に生まれ。 セディが生まれた時から従者として仕えている。 騎士の武装を禁じられている為、戦斧を愛用している。 ティナ(15歳)女 ラグワルト家に盗みに入った泥棒。 セディに一目惚れして付き纏う。 クラウディア・セルジア伯爵夫人(28歳)女 セルディア王国ハウゼン・セルジア伯爵の未亡人。 恋多き情熱の女性。セディに執拗なアプローチをする。 舞台説明 バーニィM:セドリック様に仕えて32年・・・ そろそろ奥方様を貰われてもよいのだが・・・ いまだ社交界にすら顔を出されず。 浮いた噂すらたたない・・・ セディ:バーニィ、明日はフランソワーズ子爵が訪れられるから 昼食はテラスに用意してくれる様、料理長に伝えておいてくれ バーニィ:シャルル様の分もですね、畏まりました。 ではおやすみなさいませ。 セディ:ああ、おやすみ・・・ 【ラグワルト邸、屋外】 ティナ:貴族の邸宅って言ってもチョロいもんだ こんな警備で宝剣アディマイアを所有するなんて 盗んでくれって言ってるようなもんだぜ・・・ バーニィ:何者だ! ティナ:やべっ・・・見つかった。 バーニィ:くせ者か!・・・・逃がすか!! ティナ:へっへぇ〜ん♪そう簡単に捕まるかよ! バーニィ:今の動き・・・何者だ・・・完全に捉えたかと思ったのだが・・・ ティナ:あのオッサン・・・タダモンじゃねぇな・・・ よし、この窓から・・・あっ、 セディ:訪問は昼間、正門からお願いしたいのだが・・・ 当家に何の用かな? ティナ:え・・・あ、やべぇ!逃げなきゃ・・・ セディ:元気な坊主ですね。まだ用件を聞いてないですよ? ティナ:ぅわっ!?・・・ボーラなんて捕獲具を普通、貴族が使うのかよ!? セディ:短剣を投げつけるより効果的で安全ですからね・・・ ボーラなら足を絡め取るだけですし。 ティナM:しかし・・・なんて優しそうに微笑みやがるんだ・・・ 見惚れて逃げ出すタイミング逃しちまったじゃねぇか・・・ セディ:で、今夜の訪問はどのような御用件ですかな? ティナ:ご機嫌麗しゅうって挨拶しに来たとでも思ってるのかよ!? 盗みに入ったに決まってんだろ? セディ:これは、開き直りましたね・・・この屋敷にはそれほど金目の物は 置いてないのですが・・・入る屋敷を間違えましたかねぇ・・・ ティナ:しらばっくれるな!この屋敷に宝剣アディマイアが秘蔵されてる事 ぐらいお見通しなんだよ! セディ:あぁ・・この剣ですか? ティナ:あたしの言ってるのは宝剣だよ! セディ:あはははっ、これこそ、その宝剣アディマイアですよ。 装飾のされた鞘や柄は邪魔なので倉庫に放り込んでますが・・・ ティナ:なっ・・・ セディ:アディマイアの良さは宝石の埋め込まれた鞘や柄の装飾でなく この神がかりな切れ味のブレードにあるんですよ。 ティナ:それが本物なのか・・・? セディ:装飾が目当てなら持って帰るといいです。 年端もゆかぬ少年をみすみす処刑させるは本意ではないからな 貴族屋敷に単身忍び込む度胸・・・失うには実に惜しい。 ティナ:訪問は明日、正門からと言ったな? セディ:ん? ティナ:確かに聞いたぞ!明日また来るからな!! セディ:ふふっ、元気な坊主だ・・・ バーニィ:セドリック様!ご無事で・・・ セディ:なんだ? バーニィ:それが屋敷にくせ者が・・・恐ろしく身の軽い小僧で・・・ セディ:あぁ、私への客人だ。明日出直すと伝えに来おった。 バーニィ:フランソワーズ家の使いの者で? セディ:いや、知り合ったばかりの友人だよ。 バーニィ:はぁ・・・ セディ:では、また眠るとしよう・・・ バーニィ:セドリック様・・・まだ夜は冷えます。ガウンを・・・ セディ:ありがとう・・・ 【翌日】 クラウ:ご機嫌麗しゅう・・・セドリック様 セディ:これは、セルジア伯爵夫人。シャルル卿をご同伴されているとは 分かっておりましたら、こちらから迎えを出しましたものを・・・ クラウ:お心遣い感謝致しますわ・・・ 今日はフランソワーズ子爵に無理を言ってご一緒させて頂きましたの シャル:無理などと・・・伯爵夫人の願いなら断る者などおりますまい。 クラウ:まぁ、お上手なこと・・・ セディ:昼食はお済ですかな? クラウ:セドリック様とご一緒させてもらえるものと、 まだ取っておりませんわ。 セディ:では急いで準備させましょう。 シャル:伯爵婦人・・・私はセドリック卿に用がございますので、 しばし、彼を借りて行ってもよろしいですかな? クラウ:えぇ、お二人との昼食を楽しみに待っておりますわ・・・ セディ:では、セルジア伯爵夫人お茶を用意させますので ごゆるりとお寛ぎください。 クラウ:ありがとう・・・ シャル:すまん、セディ・・・ セディ:どうもあのご婦人は苦手だ・・・ シャル:セディはどのご婦人も苦手だろう? セディ:言ってくれるな・・・私は気取らぬ下町の娘の方が 気楽でいい・・・ シャル:そんな事を言っていては、いつまでも一人身のままだぞ? セディ:それでも構わんさ・・・ バーニィ:セドリック様!! セディ:なんだ? バーニィ:フランソワーズ子爵様もご一緒でしたか・・・ シャル:やあ、バーニィ!元気そうだね。 私達だけの時は子供の頃の様にシャルで良いのに・・・ バーニィ:そうはいきません・・・ご身分が違います。 シャル:昔から私達は身分など変わっていないのだがな・・・ セディ:で、どうしました? バーニィ:はっ、昨日の少年がセドリック様に会わせろと・・・ シャル:昨日の少年?セディ・・・とうとう男色にでもはしったか? セディ:悪い冗談はよしてくれ・・・昨晩、約束をしている。 丁重にお通ししろ。 バーニィ:はっ・・・ ティナ:おい伯爵! セディ:ぉ!?来たな・・・ ティナ:しかし、明るい所で見ると馬鹿デカい屋敷だなぁ セディ:そなたも明るい所で見ると・・・随分とみすぼらしいな・・・ ティナ:ほっとけっ! シャル:これが噂の客人かい? セディ:あぁ・・・昨晩、単身この屋敷に忍び込んだ泥棒さんだ。 シャル:ほぉ〜それはイイ度胸しているな・・・ しかし・・・ セディ:ん? シャル:先ほどは少年と話を聞いたが・・・こやつはレディだぞ? セディ:なっ?まことか? ティナ:けっ、どこに目を付けてやがる!こんな可愛いらしい娘の どこが少年なんだよ!? セディ:それはすまなかったなぁ・・・ シャル:して、何の用なのですか?お嬢さん・・・ ティナ:あ、そだ、昨日のドジをチャラにしてもらった借りを返しにな。 情報屋から買った情報を売ってやりに来たんだよ。 セディ:情報を売りに? いいでしょう・・・聞かせてください。 ティナ:信用できる情報だ。クライセン侯爵は知ってるな? バーニィ:アスエル教団の枢機卿をも務める内務大臣だな。 ティナ:そう、そのガルビア・クライセン候がデミドーラ王国と通じ 謀反を起こす計画を立てているんだ。 シャル:何!?クライセン候は今度のデミドーラ王国ガルニア要塞攻略作戦を 推し進めている張本人だぞ? ティナ:デミドーラ側もガルニアが攻められる事は もうすでに、知っているのさ シャル:デミドーラがセルディアを攻める大義名分を作る為か・・・ セディ:まずいですね・・・作戦はもう議会で承認されている。 シャル:こうなればガルニア要塞の攻略をなんとしても成功させるしかない ティナ:あたしが調べてやろうか? セディ:ん? ティナ:今知ってるのは通常時のガルニア要塞の戦力だろ? 攻められると解っているなら増強するだろうし それなりの防衛の手筈も整えてるはずだ。 シャル:確かに・・・戦力や向こう側の作戦が分かれば デミドーラの更に裏を掻ける。 ティナ:その代わり・・・条件がある。 セディ:なんです? ティナ:あたしを伯爵ん所の専属の密偵として雇え。 セディ:わかった。 バーニィ:こんな娘の言うこと信じるんですか? シャル:クライセンには暗い噂が流れているのも事実だ。 今作戦を内務大臣の彼が強引に推し進めたのも これが事実であるとすれば頷ける。 セディ:もし、偽りであったにしても、作戦が成功すれば問題ない訳だ 彼女に働いてもらうになんの問題もない。 あと、私はこの家の当主ではない。 伯爵ではなくセディと呼んでもらおう。 ティナ:うん、わかった。あたしはティナ。 これからはよろしく♪ シャル:しかし、お嬢さんをそのナリでうろつかせるのは問題だな・・・ セディ:バーニィ、彼女を浴場に案内してみあった衣服を用意させなさい。 バーニィ:はっ・・・ シャル:服の見立ては手伝わせてもらおうかな。 セディ好みに仕立ててあげますよ。 ティナ:ぅえ?ちょ!? シャル:ささ、お嬢さんはこちらへ・・・ クラウM:小娘め・・・いらぬ事をセドリック様に吹き込みおって・・・ クライセン様にこの件どう伝えれば良いものか・・・ セディ:さて、伯爵夫人もあまりお待たせ出来まい・・・ クラウ:あ、セドリック様・・・ セディ:お待たせいたしました。 クラウ:いえ、御用はお済ですの? セディ:えぇ、まぁ クラウ:実は私も急用を思い出しましたの。 昼食を楽しみにしておりましたけど・・・ 今日はこの辺で失礼させていただきますわ。 セディ:では屋敷まで送らせましょう。 クラウ:いえ、寄る所も色々ありますので・・・ でわ、ごきげんよう・・・ セディM:ふぅ、早くに帰ってくれて良かった・・・ あのような事を知って、婦人と談笑する神経は 持ち合わせてないからな・・・ ティナ:あの・・・ セディ:どちらかな? ティナ:あたしだよ!ティナ! セディ:なっ・・・ シャル:どうだい?女は魔性と言うが・・・ 磨けば変わるもんだろう? セディ:いや、これは参りました・・・ ティナ:どうせ、似合わないとか言うんだろ!? セディ:野菊の様だ・・・正直、見違えたよ・・・ ティナ:ば、バッカ・・・思ってもない事言うなよ!? あ〜ぁ、こんな服、窮屈で堪らないよぉ! シャル:軽業の邪魔にならない様、仕立て直したんですがねぇ? ティナ:お前、うるさい! セディ:分かった分かった。とにかくティナ。 君を今日から私専属の使用人として雇います。よろしく頼みますよ ティナ:使用人? セディ:密偵兼、だがね・・・ そうそう、伯爵夫人が帰って昼食が余ってしまった。 ティナも一緒に食べるといい。 ティナ:ぅわ゛!?毎日こんなもん食べてるのかょ・・・・ 本当に食っていいのか!? セディ:バーニィ、テーブルマナーも教えてやってくれないか? バーニィ:畏まりました。 ティナ:ちょ、オッサン!?・・・・いでぇ!! シャル:あはは・・・これは飼い慣らすに時間が掛かりそうだ・・・ セディ:失礼な、しかし毎日が楽しくなりそうではありますね。 ティナ:くそぉ〜自由にくわせろぉ〜!! セディ:数日後、ガルニア要塞攻略の特別編成隊に セドリック、シャルル両名は参加を志願する・・・ 新たな出会いと波乱の運命が待ち構えているのも知らずに・・・ 本章につづく。 次回に続く。