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バウルはベンガル地方に古くからある民間修行者のグループです。インド西ベンガル州を中心に活動するヒンドゥー系の修行者をバウル、バングラデシュを中心に活動するムスリム系の修行者をフォキルと呼んで区別することもあれば、両者を併せてバウルと総称することもあります。
「バウル」は、サンスクリット語のvatula(風狂)に由来するとも、vyakula(思い乱れた)に由来するとも言われています。自らの身体の内に潜む「心の人」と呼ばれる人間本質への熱狂的な渇望と、伝統的な宗教(正統ヒンドゥー教・イスラム教の考え方、儀式、ヒエラルキー)や社会習慣(カースト制等)の否定をモットーとするバウルの本質を、これらの語源説ははからずも言い当てています。 バウルは、その歴史的な淵源を、10−12世紀のベンガルで盛んだった仏教のサハジャ乗密教にさかのぼると言われています。この時代にすでに、修行僧の間では、独特の比喩を使って自分たちの哲学や修行の内容を口伝で伝える修行歌の伝統が確立されていました。ノーベル賞詩人のタゴール(1861−1941)が、19世紀に活躍したバウルの偉大な修行者ラロン・フォキル(1774?−1890)の歌と思想に強く感化され、そのカースト否定の人間主義的考え方、特に「心の人」という理念を、自分の思想の中核に取り入れたことはよく知られています。タゴールはまた、バウルの修行歌収集の草分け的存在であり、バウルの歌の旋律や言葉を取り入れた歌を多く作曲しました。現在の(タゴール作詞作曲の)バングラデシュ国歌も、バウルの旋律で作られています。 インド西ベンガル州に住むヒンドゥー系バウルの多くは、村外れの低力―ストの人々やイスラム教徒が住む一角の近くに庵を編み、男女一対で住んでいます。修行上の導師(グル)のもとで入門し、タントラの教えに基づく独特の修行を積んで悟りを開くことをめざします。世俗の生活を捨てるため、日々の生活は、主に門付けや信者の寄付に頼るのが本来の姿です。村々での門付けや、祭りの際には、サフラン色の衣装をまとい、一弦琴をかざして踊りながら歌うかれらの姿をよく見かけます。今度日本に来る3人も、こうしたヒンドヮー系バウルのグループに属します。 西ベンガル州のバウルの聖地として名高いのはビルブム県のケンドゥリで、ここには多くのバウルが庵を編んで住んでおり、毎年冬に大がかりなバウルの祭りが開かれます。また、同じくビルブム県のシヤンティニケトンには、タゴールが設立したビッショバロティ大学(タゴール国際大学)があり、そこの主催で開かれるポウシュ・メラ(ボウシュ月、新暦の12月末頃開かれる祭り)には、例年多くのバウルが集います。 大西正幸(言語学者) |