33の作品 第一章 〜栄光の門〜 第1話
- 35 名前:33
[sage] 投稿日:2006/05/13(土) 02:47:33
- 第一章 〜栄光の門〜 第1話
閑散した本屋でのバイト。客もいなく、至って暇なひととき。
適当に本棚の本を片付けていたおれは、ふと見慣れない本を発見した。
中古本は扱っていないはずだが、棚の端に納まったその本は
背にある文字すら読み取れないほどぼろぼろだった。それを手に取り開けてみると、
見たこともない文字の羅列がそこにあった。訝しく思いながら、おれはその古本を棚に戻した。
その瞬間、本屋の無機な棚が、ヨーロッパの一流大学に置いてありそうな古風なものに変貌した。
いや、本棚だけじゃない。さっきまでおれがいた本屋はもうどこにもない。
おれはオイルランプに照らされたオーク材の壁に囲まれた図書館に呆然と佇んでいた。
そしてさっきまで読めなかった本の背の文字が、「世界異聞録」という表記に変わった。
いや、文字が変わったじゃない。読めなかった文字が、なぜか読めるようになったのだ。
「異変をもたらす者...か。もう何年ぶりになるかな。」
おれの背後から老人の声がした。
...
老人からおれの現状の説明を受けた。どうやらここは魔法の大地「オナルニア」であり、
おれは魔法が消え去った世界「ガイア」から飛ばされてきた。
自分の世界を離れた故に時間の流れから乖離した存在となった。
そのため年を取ることなく、殺されない限り永遠に生き続ける。
「異界のものは、必ず魔法の本がぎっしり積まれているこの図書館に現れるようじゃな。
...そして大戦がはじまって以来、『異界からのものは全て軍に突き出せ』、
という指示が軍からされておる。悪いようにはせんからついて来い。」
- 36 名前:33
[sage] 投稿日:2006/05/13(土) 03:46:39
- 軍官僚との短い会見の後、おれはわりと高級な調度品が置かれている個室に閉じ込められた。
言わば軟禁ってやつか。しかも説明なしで、だ。
外はさっきからずっと騒がしい。「異変をもたらす者」、「戦況の挽回」、「救国」などの
言葉が窓越しに聞こえてくる。それだけでも外で交わされている会話を予想できるが、
「ただ一人不老の人間がいたところで戦況が挽回できるわけねーだろうが」とおれは脳内で罵った。
「不老の人間にしかできないことだってあるのよ。
戦況を挽回できるぐらいとんでもないことをね。」
窓台には一人の女性が立っている。足場が狭い二階にあるこの部屋の窓台に。
大剣を背負い、四肢をプレートメイルで包んでいるが胴体にはビキニしかつけていない。
もともとエロい顔と体を服装がより一層エロく見せる。
「お前誰だ。というか助けてください。」
「ふふふ...面白い男。一つ良いこと教えてあげるわ。」
エロい女剣士は悠久の空間の説明をしてくれた。
ありとあらゆる資料から知識を学び、修行に必要な物質も練習台となる生物も召喚できる。
(召喚した生物は対戦相手以外の何もできないが)
しかも何十年いても外界の時間は週間単位でしか進まない。
そこで修行すれば極限まで実力を高められる。いや、極限そのものを変えられるかもしれない。
「強すぎるモンスターを召喚して殺されたり、孤独に耐え切れず発狂したりしなければの話だけどね。」
ウィンクしながら言うな。
その時、ドアを開く音、そしておれの名を呼ぶ声が部屋の入り口から響いた。
王国軍軍機処ティアンム中将だと名乗った。
窓にはもうビキニ女の姿が見えない。
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