異世界ファンタジー編 第2話

 

972 名前:1 [] 投稿日:2005/03/13 (日) 01:22:53
第2話
俺達を乗せた馬車は平原を走る。幌内には俺と深田と真岡(兄)。真岡(兄)は暢気にうたた寝をしている。深田はというと、ひじを
突いて外の風景ばかり見ていて、たまに目が合うと、のほほんとした緊張感のない笑みを返してくる。
とりあえず乗り合わせてみたものの、俺はどうしたものか考えた。魔王討伐の旅(しかもそろそろ終点)に加わるなど滅相もない。来
て早々命を落とすなど御免だ。手遅れにならない内にと、俺は勇気を出して口を開く。
「あの、やっぱり降ろしてもらえませんか?」
「はい?」
深田はきょとんした表情。
「いや、その…俺はあなた達みたいに武術や魔術の心得があるわけでもないし。第一、この世界の人間じゃないっぽいんです」
「あ〜、別に気にしないでください。戦力外で寧ろ足手まといの雑魚が混ざってるとか、異世界人とか、そんなことはどうでもいいん
です」
「へ?」
「魔王の城には4人揃ってないと入れないんですよ♪」
魔王の城に乗り込むのに人数制限があるのか。今度は俺がきょとんとした顔をした。
「不思議そうな顔してますね。まぁ、じきに分かりますから」
「魔王の城が見えたぞ!!」
真岡(弟)が雑魚丸出しで叫んだ。幌から外に顔を出すと眼前にはそびえる山。その中腹に冗談みたいに巨大な城が鎮座している。幾本
も突き出た塔が、いかにも凶悪といった風。

973 名前:1 [] 投稿日:2005/03/13 (日) 01:24:36
俺は固唾を呑んだ。と同時に唖然とした。確かに魔王の城がある。それはいい。何と魔王の山の麓に建物が立ち、人の賑わいがある。さ
らに近付くとゲートがあり、その先にあるのは5軒ほどの家屋。その内一軒は2階立てで、看板の紋章から憶測するにちょっとした宿屋
に思える。ゲートには受付があり、眼鏡をかけた事務的な中年女性(中学時代の英語の先生)が、不機嫌そうな顔で俺達を迎えた。
「パーティの構成は?」
「純戦士2名と魔術剣士、あと荷物持ちの道化師だ」
真岡(兄)が雑魚臭を漂わせながら答える。
「道化師?困るのよねぇ。最近頭数揃わなくて、道化師だとか行商人とか加える人が多くて。どうせ2階上るくらいまでに死んじゃうのに」
その場の全員が俺の顔を見た。なるほど人数制限とはこのことか。魔王攻略を狙う者は多いが、中には愚かにも一人で乗り込もうとする者が
いる。これでは徒に死者を増やすだけ。そこで挑戦を望むパーティに人数の下限を設けることで、無謀な挑戦を削減させている、というわけ
か。で、それを管理するためにゲートができ、次第にそこを中心にオリンピックの選手村みたいなものが出来たと。
「大丈夫ですよ。彼にも剣は持たせてますから」
深田が即座に俺の手に剣を握らせた。刃こぼれした錆まみれの青銅の剣を。
「当然ね。丸腰で入れば瞬殺だわ。はい、これチケット4枚ね。入城は明日の朝一番。幸運を」
ここはアミューズメントパークか?
「今夜はあの簡易宿屋に泊まります」
先ほど見た建物はやはり宿屋だったようだ。馬小屋式パーキングに馬車を止めて、カウンターでチェックインを済ませた。俺と雑魚2人は同室、
深田だけ一人部屋だ。日が暮れて、一階の酒場で簡単な夕食をとる。そう言えばこっちに来て初めての食事だ。肉は硬くて水は濁っているが、
空腹の前には瑣末な障害だ。食後、真岡兄弟はDQN連中と一緒に馬鹿酔いしている。ここは毎日が祭状態のようだ。人々はそれぞれの決戦を前
にして束の間の快楽に身を浸す。或いはそれが最後の晩餐でもあるかのように。

974 名前:1 [] 投稿日:2005/03/13 (日) 01:26:04
明日の今頃はこの世にいないかも知れない。気が気でない俺は、酔っておもおられず、深田を外に呼び出した。
「やっぱ俺無理だって!!まだ死にたくないよ」
「大丈夫です。あなたはわたしが守りますから」
確かに深田の剣と魔術の腕は折り紙付き。しかしいわゆるラスボスが相手なわけで、彼女も一般人の俺をフォローしきれるかどうか。
「いや、そんなことを言われても…」
「あなたの力を……貸してください」
深田は急に真剣な眼差しを俺の目に突き刺し、両の手を握った。まるで某ゴルゴンに睨まれたように固まる俺。深くため息を一つ付くと、
「じゃあ、せめて剣の振り方くらい教えてくれないと」
錆びた青銅の剣を四苦八苦して鞘から抜いた。
「お安い御用です!」
月の下で一夜漬けの剣の稽古。遠くから「また失敗したどーーー!」とか「うはwwww全員ブレスに焼かれて灰ww」などと馬鹿笑い
しているのが聴こえる。俺はそれが耳に入らないよう、一心不乱に慣れない剣を振るった。
                                                                 続く

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