異世界ファンタジー編 第6話

 

25 名前:1 [] 投稿日:2005/03/17 (木) 00:54:48
第6話
俺は慣れない馬の背に揺られながら、街道をひたすら南に向かっている。深田は普段と一向変わることなく、のほほんと馬を並走させる。レンガの舗道はとにかく延
々と遥か彼方まで伸びている。行けども行けども辺りは草原ばかり。
魔王との戦いで服がボロボロになった俺は、村で貰った冒険者用の麻布製の服を着ている。その上に鋲付革鎧を装備。剣は錆びた青銅の剣から深田が持っていた異世
界人専用ロングソード(+5)に昇格している。深田は片腕になってしまった為、腕が元通りになるまでは小振りのサーベルを装備するつもりのようだ。
それにしてものどか過ぎる。あまりののどかさに、俺は思わず大あくびをした。それを見た深田は小さく笑う。俺は慌てて取り繕う。
「み、南の老魔術師ってどんな人?」
「さぁ、わたしも会ったことはないんですよ。もう少し南西に進んだ所にあるレク村に住んでいるという噂です。白黒双方の魔術に長けた超偉大な魔術師で、どんな
怪我や病気も治せるとか」
「へぇ」
偉大というだけあって、さぞ高齢なのだろう。俺はワー○ナだとかガン○ル□ァといった典型的魔術士の姿を想像した。
その後も特に会話をするでもなく、ぽっくりぽっくり歩く俺達。ふと前方を見ると、一人の少女が岩の陰で休んでいる。俺はとりあえず声を掛けてみる。
「どうしたんだ?」
「この先に根城を構える盗賊に襲われて馬を奪われちゃったんです……大事なお薬も全部一緒に」
見ると年の頃は10歳か11歳くらい。日本でいえばまだ小学校に通っていても不思議ではない年頃だ。よく誘拐されなくて済んだものだ。薬というのは、恐らく家族
の病気か何かを治す為に必要なものなのか。
「かわいそうに……で、どこまで行くつもりなんですか?」
「レク村です」
奇しくも同じ目的地ではないか。俺達は顔を見合わせてお互いの思う所を確認して頷き合った。俺は下馬して少女の目に視線を合わせて、できるだけ優しい笑みを浮
かべて申し出た。
「よかったら一緒にどうだ?俺達もレク村に向かっているんだ」
「はい…でも、できれば…」
「ん?」
「ちょっと馬を貸して欲しいんだけど」

26 名前:1 [] 投稿日:2005/03/17 (木) 00:55:18
少女は俺の隙を突くと、俊敏な動作で馬に飛び乗った。
「それじゃそういうことで」
馬の手綱を引き、そのまま走り去ってしまった。
「………………」
俺はただただ茫然自失してそれを眺める。少女を乗せた馬は小さな点となり、ついには地平の彼方に消えた。
やられた……!!!
「あはははは、一本取られましたねぇ」
まるで他人事のように笑う深田。
「笑い事じゃないだろぉぉぉお!!」
「まぁまぁ、あの子はこの先に盗賊の根城があるって言ってたでしょ。その人達から馬を奪えばいいじゃないですか」
またのんびりした顔で過激なことを。
とりあえず途方に暮れていても仕方が無いので、俺達は先に進む。しばらくすると確かに盗賊の根城が見えてきた。だが様子がおかしい。建物のあちころから火の手が
上がっている。近づいてみると盗賊達は一人残らず皆殺し。砦の入り口には盗られたはずの俺の馬が放置されている。
深田が地面に落ちている色とりどりの粉を人差し指でつまんだ。
「何だ、その怪しい粉は?」
「魔術に使用する秘薬の粉ですね。この組み合わせは爆炎系魔術ののようです」
つまりこの火事と殺戮は魔法によって起こされたということか。しかし一体誰が。馬に近寄ると、確かに俺の馬だ。そして馬の鞍には一枚の付箋紙が貼られており、下手
糞な字で”ありがとうございました 甜歌”とだけ書いてある。
「甜歌……まさかあの子が……いや、まさかな」
俺達は盗賊の砦を物色してみた。食物庫には食糧が蓄えてある。僥倖とばかりに食糧を火事場泥棒的に頂戴して、俺達は旅路を急いだ。
                                                                 続く

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