異世界ファンタジー編 第8話

 

51 名前:1 [] 投稿日:2005/03/19 (土) 00:54:45
第8話
丘を上ると真っ青な大海が視界を埋め尽くした。深田によるとセットー海と言うらしい。海岸沿いに小さな村が見える。深田は地図に目
を落とし、現在位置を確認して頷いた。
「間違いなさそうだわ。あれがレク村です」
「結構小さな村なんだな。港っぽいけど」
桟橋が見えるが、停泊してい船舶はほんの3隻ほど。
「この大陸があるのは世界の端っこですからねぇ。こんな辺境まで貿易に来る変わり者はいないんでしょうねぇ」
「端っこ?」
「あ、言ってなかったですね。セットー海の先は、何にも無いらしいんですよ。もの凄く大きな滝があるだけだって」
「へぇ…」
さすがファンタジー世界。天平説が大手を振ってまかり通っているわけだ。
丘を駆け下り俺達はレク村へと入る。中央通りに人影はまばらで落ち着いた雰囲気だ。早速老魔術士を訪ねようと村人A(橋谷。小学校
時代。ピアニカ破壊事件の容疑者)に尋ねる。すると驚きの返答。老魔術士は3ヶ月前に他界したという。かなりの勢いで落胆する俺達。
そこに村人Aは続ける。
「今はお孫さんが南の魔術士の名を継いでるよ」
望みがつながった。村人Aに礼を言い、教えられた場所に赴いてみる。さすがは偉大な魔術士が住む館なだけはある。ちょっとした宮殿
のようだ。馬鹿でかい扉をノックをするとメイド(片桐はいり)が現れ、無愛想に俺達を奥に通してくれた。厳かなドアを開けると、そこ
は薄暗い広間。広間の奥まった所で台座に鎮座しているのは…
「あああああ!?」
俺達は仰天した。草原で馬を掠め取ってくれたあの少女ではないか。

52 名前:1 [] 投稿日:2005/03/19 (土) 00:55:07
「馬泥棒!!」
今にも掴みかからんばかりの勢いで叫ぶ俺に、
「馬泥棒とは人聞き悪いなぁ。甜歌はちょっと借りただけなのに。その証拠にちゃんと返したでしょ」
と、少女は至って明るく無邪気に言い放った。
「あれは返したとは言わないよ!ってか、何でお前がそこに座っているんだよ」
「甜歌がこの館の主、15代目南の魔術士だもん」
「は?」
俺は唖然とした。この子供は何を言っているんだ。
「あ〜あ、甜歌何だか機嫌が悪くなっちゃいそうだな〜」
「何だと、この糞ガキ!!」
「ま、待ってください。あまり彼女を刺激しない方がいいと思います」
「深田さんまで何言ってんだ。こんな子供が南の魔術士のわけが…」
ふと頭の中に昨日の光景が浮かんだ。壊滅した盗賊のアジト、散らばる魔術の秘薬、そして滅茶苦茶下手糞な書置き……こいつなのか。こいつ
が南の魔術師なのか。”いや、展開わかり杉だからw”などという天の声など一切聴こえない俺は混乱した。
「で、おにいちゃんとおねえちゃんは何しに来たの?」
「ごめんなさい。実は…」
深田はこれまでの事情を説明した。意外にも真剣な眼差しで聴いている甜歌。
「おねえちゃん…かわいそう……」
好感触、と思った矢先に、甜歌は何かを閃いて指を鳴らした。
「そうだ!それじゃあ、おにいちゃんが甜歌のテストに合格したら治してあ・げ・る!」
「テ・ス・ト?」
きょとんとする俺達をよそに、甜歌は秘薬を目の前の床にばら撒き、目を閉じて杖を構えた。そして何やら低い声で呪文を唱え始める。すると
石造りの床が粉々に砕けて宙に舞い上がった。

53 名前:1 [] 投稿日:2005/03/19 (土) 00:55:51
おわわわわ!?」
たまらず転倒する俺。石は終いには俺の身長の倍はあるかという巨大な人型を造り上げた。
「おにいちゃん、この子を倒してみてよ。そしたらおねぇちゃんの腕、元通りにしたげるから」
「ハハハ…冗談だろ?」
「本気でやらないと死ぬよ♪」
甜歌はニカッと歯を見せて、杖を高く掲げた。どうやら冗談ではないようだ。ゴーレムの腕が、俺の頭上めがけて腕を振り下ろされた。
                                                                 続く

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