異世界ファンタジー編 第9話

 

65 名前:1 [] 投稿日:2005/03/20 (日) 00:37:01
第9話
ゴーレムの一撃は、俺の肩をかすめて床に激突した。激しく陥没する石造りの床。続いて第二、第三の攻撃がとんでくるが、動きが鈍いので
何とか回避できた。最初は急展開に面食らい動揺しだが、よくよく見ればゴーレムの動きは隙だらけだ。石が擦れあう無機質な音を発しなが
ら、ゴーレムは俺に向けて腕を大きく振りかぶった。
俺は攻撃を身を屈めて避ける。
「足元がお留守だぜ」
あたかもヤムチャに向けるがごとく、放った渾身の一撃はカウンターでゴーレムの大腿部に命中。足から折れたゴーレムは、床にしたたかに
打ちつけられて砕け、元の石塊に身を帰した。
「へぇ、おにいちゃん見た感じ雑魚っぽいけどやるね。まぁ、小手調べなんだけど。それじゃあ……ニヒヒヒ、こんなのはどうかな〜?」
甜歌は小悪魔のような笑みを浮かべた。今度はゴーレムの時より長い詠唱。広間に立ててある8本の燭台上の蝋燭から、火が一箇所に集まる。
火はこれまた不気味な人型を形成した。
「イフリートさん、やっちゃって下さい」
炎から生まれた精霊は、腕を炎の鞭に変貌させて振るう。鞭が俺の肌を打ち付ける度に得も言われぬ快感が全身を電流のように流れる、わけがな
く、とにかく熱過ぎ。その上幾らロングソードで斬り付けても、炎は一瞬揺らぐだけで斬り裂くことはできない。
俺万事休す。イフリートが炎の抱擁で俺を焼き尽くさんと手を伸ばした。
その時、
「もうやめてください!」
深田が風系魔術を施したサーベルを横一文字に振るった。風を纏った斬撃に切り裂かれイフリートは消滅。
「あ〜!ズルだぁ。おねえちゃんは強いんだから、手を出しちゃだめだよ」
「そうだ。何で手出しすんだよ」
何故か息を合せて抗議する俺と甜歌。
「ダメなんです。わたしの為にあなたが苦しむのなんて……ダメなんです」
悲しげな表情でうつむいた深田。彼女の気持ちを嬉しく思う反面、複雑な心境。

66 名前:1 [] 投稿日:2005/03/20 (日) 00:37:39
「深田さん……そいつは俺の実力を過小評価し過ぎ」
「え?」
「俺だって魔王を倒したんだ。それに深田さんの腕を治して、一緒に帰るって言ったろ?」
「でも……」
「心配はいらない。俺だって、俺だって女の子の一人くらい助けられる」
俺は改めて甜歌の目を見据えた。その視線を受けて彼女はたじろぐ。
「な、ならお望み通り甜歌のとっておきの召喚術で……」
次はどんな精霊が出てくるのか。正直、イフリートにすら苦戦した俺に対抗できるはずがない。胸の内にある自信が再び揺らぎ始める。
しかし、一度は掲げられた杖が下ろされた。
「やーめた!!」
甜歌は投げやりな声で叫んだ。
「えぇ!?」
せっかく格好いいところを見せたのに、これでは拍子抜けしてしまう。
「なんか甜歌が弱いもの苛めしてる悪者みたいじゃない」
「いや、既に十分過ぎる程悪役だから」
「違うもん!甜歌は正義の魔術士なんだから。いいよ、おねえちゃんの腕治して上げる」
「マジか!?それマジか!?」
いきなり事態は好転。俺興奮。ところがどっこい、
「あ、思い出した。そう言えば腕を形作る材料がないんだった。アッハハハ」
甜歌はあっけらかんとして言い放った。
「お前、本当は最初から気づいてたろう」
「うん」

67 名前:1 [] 投稿日:2005/03/20 (日) 00:38:11
平然と返事をしやがる。
「おい」
「だって…だって甜歌遊んで欲しかったんだもん!!」
今度は打って変わって泣き出しそうな表情。最初は憎らしかったものの、その顔を見ていると、次第に責める気持ちが失せていく。
「はぁ…」
ため息をつかずにはいられない。希望を見出したり絶望の淵に落とされたり、疲れる一日だ。肩を落とす俺をよそに深田が甜歌に問い
かける。
「その材料というのはどこにあるんですか?」
「セットー海を渡って、更に砂漠やら山やらを越えた所にあるヤウタの沼だけど…あ!こうしよーよ。お詫びに甜歌が一緒に付いて行ったげる♪」
「いや、遠慮しておくよ、さぁ、深田さん、さっさと別の方法を探しに…」
身を翻して広間の出口に歩き出す俺。しかし、
「お願いします」
深田が甜歌に頭を下げた。無言の抵抗を続ける俺に彼女は言う。
「大丈夫ですよ。旅の仲間は多い方がいいですしね」
「決まり!安心してね♪おにいちゃんとおねえちゃんは、正義の魔術士甜歌が守ってみせるから!」
「こんな阿呆な展開ありかよ…」
茫然自失する俺。心強いと言うべきか、不安材料を抱えたと言うべきか。とにもかくにもこうして甜歌は俺達と旅を共にすることになった。
                                                                 続く

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