異世界ファンタジー編 第11話
- 100 名前:1
[] 投稿日:2005/03/22(火) 01:39:53
- 第11話
航海3日目。
退屈な船旅は続く。平井はすっかり船内の人気を欲しいままにしている。クラーケンを倒した上に、恋人の仇を探して世界中を回っている
というイケメソ的な旅の理由も手伝って、既に船中の女子の憧れの的だ。俺はというと吐瀉物をかけた親父(前店長)とむさ苦しい船室で
同居中。
今日も特に何をするでもなく暇を持て余しデッキに出てみると、平井が深田と話している。あんまり楽しそうに話しているので、俺はさり
げなく近くに寄った。柱の影から2人をこっそり観察していると…
「おにいちゃん、何してるの?」
「うわ!?」
甜歌だ。いつの間にか俺の背後に立っている。
「べ、別にこれといって何もしてないよ。盗み聴きしようなんてこれっぽっちも。ちょっと潮風に当たりに来ただけだよ」
「へぇ、そうですかぁ」
全く信じていない風だ。
「恭子おねえちゃんと堅が気になるんでしょ?」
「え!!何言ってんだ。こ、子供がそんなこと気にしてるじゃないよ」
「いいからいいから♪でもねぇ、あの2人結構お似合いだよね。堅はイケメンだし、噂によるとあっちの方も結構ヤリ手らしいよw」
「く…」
「おにいちゃん、残念でした♪でも、すぐにいい人が見つかるよ。意外と身近な所から」
いたって楽観的に言ってくれる。
- 101 名前:1
[] 投稿日:2005/03/22(火) 01:40:20
- 「何でお前にそこまで予言されなきゃならないんだ?」
「甜歌は大魔術士だからそれくらい分かるの。じゃあね」
人の心を乱すだけ乱して行ってしまった。ナイス小悪魔ぶり。俺はどうにも落ち着かず、結局2人の会話を聴くこともできずその場を去った。
夕食を取った後も頭がぼーっとしている俺は、凪の海でも見て落ち着こうと再び甲板に出た。偶然そこには深田が独りで海を眺めていた。
「やぁ」
「どうも」
久々に会ったような違和感が、2人の間に張り詰めた。俺は我慢できず本題に触れる。
「いい夜だね」
「いい夜ですね」
訪れる沈黙。海面を月明かりが照らし、幻想的な光景を作り上げている。俺は勇気をふり絞った。
「あのさ……平井さんってどんな人なんだ?」
「え、何でそんなこと訊くんですか?」
「ちょっと気になってね」
深田は少し考えた後、口を開く。
「そうですねぇ。一言で言うとイケメンですね。カッコいいし頭もいい、あと歌もうまいんですよ。完璧ですね。旦那にするならあんな人
が理想ですね。でも彼は…」
「わ、わかった。もういいよ」
俺は眩暈がして逃げるようにその場を離れた。今の会話から判断するに、やはり深田は平井に惚れている。そして、これは付随的に判明した
のだが、どうやら俺自身も深田に本格的に恋をしていたようだ。俺ショック。
そこに渦中の人平井が現れた。俺の隣に立ち、海原の遥か向こうを指差して言った。
「もうそろそろコクシ大陸が見えてきますよ。明朝には着くでしょう。ところで、今から俺の部屋に来ませんか?」
いきなりの平井からの誘いに、俺は面食らった。
「え?」
「うまい酒があるんですよ」
どういう魂胆かはわからないが、俺は平井の誘いに乗ってみることにした。
続く
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