異世界ファンタジー編 第12話

 

105 名前:1 [] 投稿日:2005/03/22(火) 20:34:25
第12話
平井の船室。
俺はイケメンに滅法弱い。地球にいた頃、イケメンの同僚と飲み屋などで席を同じにすると、どうしても会話が弾まない。
相手の性格に関係なく外見面で気後れしてしまうのだ。我ながら情けない。
彼は年季の入ったズタ袋の中から、徳利と杯を2人分取り出した。
「僕の地元で出来た酒なんですよ」
「はぁ、そうですか」
俺は注がれた杯を口に運ぶ。というか今になって思い出した。俺は下戸だった。
「うまいですねぇ」
日本酒だ。接着剤みたいな味がする。何とか我慢して旨そうな顔を造ろうと努力してみる。
「口に合ってよかった。ところで深田さんのことなんですが」
早速キタ━━━(゚∀゚)━( ゚∀)━(  ゚)━(  )━(゚  )━(∀゚ )━(゚∀゚)ヨ━━━!!!!!
「綺麗な人ですね」
「あ、ああ、そうですねぇ…( ゚Д゚)ポカーン」
「それに聡明だし、性格も落ち着いていて」
「え、ええ、そうですねぇ…(((( ;゚Д゚))))ガクガクブルブル」
「思わず惚れてしまいそうです」
「お、おお、そうですかぁ…(orzorzorz)」
手に持った杯を落としそうになり、俺は危ういところで受け止めた。平井はそんな俺が落ち着くのを待つかのように間を
置いて言葉を続けた。

106 名前:1 [] 投稿日:2005/03/22(火) 20:34:53
「大事にしてあげて下さい」
「へ?」
鳩が豆鉄砲を食らったような表情の俺。
「深田さんのこと」
「あ……い、いや、俺は別段彼女と付き合ってるとか、そんなんじゃなくて、その何というかdrtgyふじこめんlp;@」
「ハハハ、そうですか」
彼は大きく笑いながら酒を口にした。俺も動揺ごと酒を飲み干す。もう下戸だの気にしている場合ではない。
「僕にもそんな時がありました」(ここでひとみを閉じてが流れ出す)
平井は過去について語り出した。彼も元は小さな村のこれまた小さな酒場で、シンガーとして普通の暮らしをしていた。
貧しいながらも恋人と2人の充実した日々。結婚も考えていた。しかし、ある夜、前魔王フィカブーの軍が村を焼き払い、
平井は命からがら逃げ出すものの、恋人は魔王軍の軍師エナリ(えなり)の手にかかり命を落とす。それからは復讐のみに
人生を費やすべく旅を続け、今に至る。ぶっちゃけRPGの登場人物の生い立ちによくある話。だが実際に本人の口から直に
聞くと、彼のやるせなさに共感せずにはいられない。
「何て言ったらいいのか…」
会話に窮した俺は、平井の杯が空いていることに気づき、神の助けとばかりに酒を注いだ。彼は注がれた酒を一気に飲んだ。
そして真剣な表情でこんな申し出をしてきた。
「僕を、あなた達の魔王討伐に同行させて頂けないだろうか?」

107 名前:1 [] 投稿日:2005/03/22(火) 20:35:19
俺は面食らった。
「え、それをどこで!?」
幾ら打ち解けたとは言え、深田が喋るはずがない。お互いにこの世界で生きていく上で、異世界人と知られると何かと不都合が
起こる可能性があるので、魔王関係の話題は極力避けるように申し合わせていたからだ。となると、
「甜歌ちゃんから聴きました」
やっぱり。きつく口止めしておいたのに、ベラベラ喋りやがった。
「僕の恋人を殺した男エナリ(えなり)は代々の魔王に仕えることを条件に、永遠の命を得たと聞きました。奴は次に現れる魔
王の足元にも必ず跪くはず」
俺達と行動を共にしていれば、単独で動くよりも効率良くエナリに近づけるというわけか。何だか利用されている気がしないで
もないが、正直平井ほどの剣士かつ純正イケメンが仲間に加わってくれれば心強い。何より彼の今の口調は揺ぎ無い決意を感じ
させる。
「俺は別にリーダーってわけじゃないから、自分の一存じゃ決められない。深田さんと甜歌からも了解貰わないと…」
「それなら、もう了解を得ました」
断る理由はどこにもなくなった。
「……なら、よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
お互いに軽く会釈を交わし、同時に杯を干した。その時、天井に開いた穴から暗い船室に一条の明かりが指した。夜が明けた。
                                                                 続く

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