異世界ファンタジー編 第13話
- 115 名前:1
[] 投稿日:2005/03/24(木) 01:39:39
- 第13話
船はコクシ大陸に到着した。港町マ・ツヤーマに降り立った俺達一行は、装備を整え砂漠地帯に向けて出発する。砂漠でジャイアン
トスコーピオンやらバジリスクやら名物モンスターが現れる。だが甜歌と平井を加えたパーティは、特に苦戦することなく適度の経
験地を稼ぎながら、砂漠地帯を抜けて山岳地帯に至る。山を越えて、目的地ヤウタの沼が近づくにつれ、異臭が立ち込め始めた。
鬱蒼と茂った森が拓け、沼は俺達の前に姿を現した。
「これが…ヤウタの沼」
異様な光景を目の当たりにして、俺達は思わず絶句した。濁った黄土色の沼があり、その周囲に何とも形容しがたい色合いをした泥
状の何かがウネウネと脈打っている。白を基調として所々に赤い筋が混じった、まるで死体の肌のような色だ。
「な、なかなかどうしてフレッシュなカラーですね」
ちょっとやそっとのことでは動じない平井も、面食らっている様子で呟いた。
「これがニクツチだよ」
甜歌は蠢く土を素手ですくい上げ、俺の鼻っ面に突きつけた。ドロドロとした形態は土というより泥だ。
「おゎ、臭っ!!」
「臭くない臭くないwさぁて、ちゃちゃっとやっちゃいますか!」
彼女だけは意気揚々として、見た目も匂いも全く気にならないようだ。やはり魔術士だけあってどこか変わっている。俺が妙な納得の
仕方をしている間に、甜歌は手頃な岩の上にニクツチを盛った。
「深田おねえちゃん、腕見せて」
「あ、はい」
甜歌は岩の上にあぐらをかいて、深田の腕を観察しながらニクツチをこね始めた。フルスクラッチで見事に腕の形を造り上げていく甜
歌。モデラーとして食っていけそうだ。俺と平井はその見事な手捌きに、ただただ見惚れるばかり。そうしてかれこれ2時間ほど経と
うという時、平井が俺の肩を叩いた。
「ん?」
「少し周囲が騒がしくなってきたようです…」
- 116 名前:1
[] 投稿日:2005/03/24(木) 01:40:05
- 彼は背にした刀の柄を握った。俺はゆっくりと周りを見回す。あらびっくり。いつの間にやら魔物に包囲されている。スケルトンやロッ
ティングコープスなど、アンデッドな面々がざっと40から50体。
「愚かなる者達よ。ここが我の領地と知っての侵入か…」
中心人物らしい青白い顔をした魔術士風の老人が、目を真赤に染めて凄んだ。かなりご立腹のようだ。
「リッチか…マズいことになりましたね」
「リッチ?」
「不死の肉体を得た魔術士です。どうやらこの一帯は彼の領地だったようです」
「そんなことジャランには書いてなかったけど」
「リッチがいるなんて書いたら観光客が来ないでしょうから」
「いや、観光客とか普通に死ぬし……まぁいいや」
腕の再生術が終わるまで、甜歌と深田を動かすわけには行かない。俺と平井はそれぞれ得物を構えると、アンデッドに斬りかかる。だ
が通常の魔物と違い血肉を持たない彼らに、斬撃や打撃は大した効果を見せない。
「如何せん数が多すぎますね。対アンデッド用の銀武器を用意しておくべきでした」
「ここまでなのか…」
「剣を貸してください」
背中越しに聴き慣れた声が。
「へ?深田さ…!?」
深田は俺の手からロングソードをひったくると、アンデッドに向かって駆け出した。その双肩からはしっかりと日本の腕が揃って伸びて
いる。甜歌の施術が成功したようだ。だが、それにしても、これだけの数を相手に特攻を掛けるのは、
「無茶だ!」
しかし、俺の声が届くより早く、深田の初撃がスケルトン5体を一撃の元に粉砕した。振り上げられた剣身が白銀色に光る。
「あれ、剣の色が…」
「なるほど。属性変化剣というわけですか」
「ゾクセイヘンカケン?」
「説明は後です。僕達も行きましょう」
- 117 名前:1
[] 投稿日:2005/03/24(木) 01:42:17
- 刀を水平に構えて走り出した平井。俺もその後を追う。が、よくよく考えてみると先ほど深田に剣を渡した為武器がない。俺ピンチ。あ
っという間にロッティングコープスの集団にのしかかられ、バイオなんとかというゲームのヤラレキャラ状態。
「うわ、やべぇ!」
間一髪、というところでロッティング(ryの身体を炎が覆った。
「もぅ、おにいちゃんしょうがないなぁ」
「甜歌!」
「やっぱおにいちゃんはわたしが守ってあげないとねぇ♪」
甜歌は深田が持っていたサーベルを俺によこす。ようやく俺も参戦。どうにかこうにか雑魚アンデッドを一掃した。残るリッチを前にする俺達。
「面白い。貴様ら!この我に適うと思って…お…お…お」
リッチの言葉が途切れた。首筋に一筋の線が現れる。
「は、はいごから、と、とは、ひ、ひき、きき」
「殺し合いに卑怯もなにも有りませよ?」
いつの間にかリッチの背後に回りこんでいた深田が、目を細めて微笑んだ。リッチの首がズルリと地面に落ちた。深田完全復活。それどころか
以前に比べて、刃の切れ味は鋭さを増している。鬼気迫るほどに。
「や、やったな…深田さん」
俺は崩れ落ちるリッチの胴体越しに深田さんを見た。
「ありがとうございます」
深田は緊張を解き、いつも通りのほほんとした笑みをたたえた。
続く
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