異世界ファンタジー編 第16話

 

166 名前:1 [] 投稿日:2005/03/29(火) 02:14:45
第16話(前半)
王の命を救った俺達は多額の報酬を与えられた。王は宮殿への滞在も申し出てくれたのだが、俺達は魔王討伐の旅の途中の為、遠慮しておいた。
再び情報を得るべく、俺達はシ・フィーロ市街を歩いている。
「あぁ、宮殿のお料理おいしかったなぁ…」
甜歌はうっとりとした表情で呟いた。頭の中には、今朝食べた最初で最後であろう超絶豪華な宮廷料理の像がグルグル回っているに違いない。
「甜歌らしいな。で、これからどうしよう。また情報収集する?」
俺は深田に尋ねる。お馴染みののんびりとした笑顔で深田は言う。
「いえ、もうシ・フィーロで得られる情報は全て得ましたから」
「というと?」
「はい、実は宮殿で諜報係の方とお話させてもらったんですが、この都での事件を皮切りに、どうやら各地で魔王の誕生に影響されて魔物が
出現し始めているそうなのです」
話によると、小規模ではあるが、各地でその土地に通常生息していない魔物の発生、更に魔族軍の結成が確認されているという。深田が開い
た地図には軍が確認された3つの地域が赤くマーキングされている。平井は腕組みをして赤印を見据えた。
「つまり魔物の軍をつぶして行けば、魔王の手がかりが得られるかもしれない、ということですか」
「その通りです」
「魔王の軍勢に殴りこみかぁ。おもしろそう。甜歌ワクワクしてきたよ」
甜歌ノリノリ。
「ち、ちょっと待った!俺達だけで行くのか?」
俺焦りまくり。

167 名前:1 [] 投稿日:2005/03/29(火) 02:16:54
「はい、何か問題でも?」
深田は事も無げに首をかしげた。問題大有りだ。確かに今までは何とかやってきたが、幾らなんでも魔王軍3個師団をたった4人で相手しよう
など、正気の沙汰ではない。返り討ちにされるのがオチではないか。
しかし深田は、
「何とかなりますよ」
「何とかなるって・・・はぁ」
彼女は天性の楽天家で、何を言っても無駄だ。俺はため息をついた。といって、ここで下りる気は毛頭ない。彼女の分のゲート石を手に入れて、
一緒に帰ると約束したのだから。
「勿論、今の装備のままで向かうつもりはありません。それこそ無駄死にです。あなたの分の異世界人専用武器を貰いに行きましょう」
「異世界人専用の…?」
「はい。これと同じような武器です」
そう言いながら、深田はロングソードを見せた。俺がフィカブーを倒した時も、この剣が力をくれた。やはり異世界人専用というだけあって、
何か特別な金属で出来ていたり、特殊な鍛えられ方をしているのだろう。
「わたしにこのロングソードをくれた北の老魔術師を尋ねてみましょう」
「了解」
俺は大きく頷いた。
「いいなぁ、甜歌も専用杖欲しいなぁ」
甜歌は深田の持つ剣に触れようとした。
「あ、駄目です。この世界の人が持つと手が溶けますよ」
「え……」
ふと俺の脳裏に、やっぱり今回も溶けるのか、という突込みが聴こえた気がした。
                                                                 続く

175 名前:1 [] 投稿日:2005/03/29(火) 23:20:58
第16話(後半)
縄があれば首を吊りたくなるほどの寒さの中、俺達一向はキタミの街を目指して、夕暮れ時の風雪吹きすさぶ街道を歩いている。
「もう少しですよ」
深田が行く先を指差した。複数の灯りが、一つ場所に寄り添ってともっている。俺達は元気を取り戻し歩を早めた。すると近
づくにつれて、やけに派手な看板が街の入り口を飾っているのが見えてきた。石造りのゲート上に設置されたこれまた石で作
られた看板は、周囲にランプが何本か取り付けられており薄暗がりの中でも文字を確認できる。
「き、きた、きたみ、おん、」
まだこの世界の文字に疎い俺が何とか読もうとしていると、隣にいた甜歌が助けてくれた。
「キタミ温泉にようこそ、って書いてるね」
「キタミ温泉?」
深田は地図上のキタミの街を指差した。お馴染みの温泉マークが記されている。
「はい、キタミは温泉観光名所なんですよ。ちなみに北の老魔術士はここで温泉宿を経営しています」
「大魔術士が温泉宿を?」
「こんな先の知れない世の中ですし、魔術士も霧や霞を食べているわけではありませんから」
「やったー!甜歌温泉大好き!!」
何だかんだで、北の魔術士の宿屋にご一行様到着。どてらを羽織った貧相な爺さんが迎え出た。
「いらっしゃい。何名様…って、フカキョンじゃないか」
「お久しぶりです」

176 名前:1 [] 投稿日:2005/03/29(火) 23:21:29
魔術士の爺さんはやけに馴れ馴れしく、深田の手を取った。だがそれもすぐに合点がいった。客室に招き入れられた俺達は、
彼らが出会ってからの経緯を聞かせてもらった。5年前、深田はこの世界に召喚された。その際に気を失っているところを、
宿屋を建てる土地を探す為に諸国を旅していた北の魔術士に助けられた。以後、深田は彼と旅を共にし、剣術と魔術を教え
られ、この世界で生きていく力を与えられたというわけだ。そして1年前、魔術士は、深田に異世界人と魔王の関係を教え
て進むべき道を示し、更に異世界人専用ソードを彼女に与えて別の途についた。その後は、この街に落ち着いてまったりと
宿屋を経営している次第。
「お師匠様、異世界人専用武器の在り処を教えていただけませんでしょうか」
深田が真面目な面持ちで、魔術士に頼み込む。すると、
「裏山にあるから、勝手に取ってけばいいわい」
と、簡単な返事。
「裏山に?」
「そうじゃ、裏山の中腹に洞穴がある。そこの一番奥まった場所に、この街の連中が聖剣として祀っておる」
「あのー、聖剣って、そんなの持ち出したら悪いんじゃないんですか?」
俺は恐る恐る進言した。
「あー、気にせんでいいわい。どうせ山の主を恐れて、誰もあそこに近寄ろうとせんでの。100年経っても気づかんじゃろう
て。まぁ、明日の朝にでもこっそり入山するがいい。ワシが入山口まで案内してやるから」
「山の主?」
また巨大なドラゴンなんてものが棲みついているのではないか。一気に不安になる俺。
「なに、主といってもいつも寝ているから、騒がなければどうということはない」
信用していいものか。

177 名前:1 [] 投稿日:2005/03/29(火) 23:22:31
「ところでフカキョン、しばらく見んうちに大人になったのぅ。わしゃ見違えたぞ。今夜は風呂でも入ってゆっくりしていけ」
一瞬、俺は爺さんの目に鋭い光が宿ったような気がした。
夕食をとった後、俺達は交代で入浴することにした。この宿屋は貧乏なので露天風呂が一つしかないそうだ。最初に深田と甜歌
が入り、その後に俺と平井が入ることになっている。
女性陣2人が入浴している間、俺達は特に何をするでもなく部屋でくつろいでいた。俺は窓外の景色を眺め、平井は書物に目を
落としている。しかしお互いにそわそわしているのが分かる。落ち着かない。
「ちょっと外見てくる」
「あ、それなら僕も行きましょう」
2人で一緒に部屋を出て、宿屋の狭い廊下を歩く。前方から甜歌がタオルを肩にかけてやってきた。
「あーいいお湯だったぁ♪」
パジャマに身を包み、湯上りの上気した顔をしている。冷たい空気が気持ち良さそうだ。
「あれ、甜歌。深田さんは?」
「おねえちゃんならまだお風呂に入ってるよ。かなりの長風呂みたい。甜歌はのぼせそうになったから、先に出ちゃった」
「そうか」
俺はさも興味なさそうな返事をして、早足に浴場に向かう。平井も後を追ってくる。
「まだ深田さんは出ていないそうですね」
「らしいな」
2人とも真剣かつ緊張した表情。脱衣場を迂回して、俺達は外に出た。露天風呂の塀が、城壁の様に眼前に立ちはだかる。
「俺は別にノゾキ見ようとしてるわけじゃないよ」
「ぼ、僕だってそんな下卑た行為をしようだなんて」
お互いに内心を明かそうとしない。実際は2人とも女に飢えて魔が差したのである。
「ちょっとた疑問なんだけどさ、この塀の強度ってどんなもんなんだろうな?」
「さぁ…ちょっと試してみたいですね…」
「試してみたいな…ちょっと穴を開けるくらいでいいんだがな」
平井が刀を抜いて構えた。性欲という根源的な欲求の前に、人格者かつイケメソである平井の理性も勝てなかったようだ。
「こりゃ、ワシの宿屋の設備に傷をつける気か」

178 名前:1 [] 投稿日:2005/03/29(火) 23:22:58
ヤバイ!北の魔術士に見つかった!!慌てて踵を返そうとするが、時既に遅し。俺達は即座に見えない力で体を縛られた。
恐らく神経系統を麻痺させる術だ。
「まぁ、落ち着け。中を見るならこっちに来い。予め開閉できる蓋を作っとるからのぅ」
マジか!?同じ穴の狢だったのか、爺さん。術が解け、俺達は身体の自由を取り戻した。先ほど深田と話した際に、彼が
見せた目の光はこれを意味していたのか。
「ワシが温泉宿をしてる理由の一つはこれなんじゃわい。さぁ、ここがベストポジションじゃ」
爺さん。それは立派な犯罪だから。曲がりなりにも偉大な魔術士の一人といわれる北の魔術士の名を冠しているのに。
「ちょっと待て、爺さん!やっぱりフカパイ…じゃなくて、深田さんのあられもない姿を覗き見させるわけにはいかない」
北の魔術士のにやけた顔をみて、俺の中で一時はひきこもっていた理性が、急に息を吹き返した。
「何を言うか。ワシは育ての親も同然。それにお前らも共犯のくせに」
恩人とか育ての親とか一切関係ないから。
「共犯なんて滅相もない!僕らはただちょっと散歩していただけです」
「どうだかのぅ。お前さん緊張して声が高くなっておるぞ("style"歌う時くらい)」
恥も外聞もなく言い争いになる俺達。傍から見るとあまりにも醜い姿。
「あの〜、先程から何をモメてらっしゃるんですか?」
「外野は黙っててくれ。俺達は今フカパイをどうするかについて…」
後ろから声をかける者を追い返そうと、振り返った俺が見たのは…
「フカパイって何ですか?」
きょとんとしているのは当の深田。そして目の前に夢にまで見たフカパイ(ファンタジーなので鳩胸ではなくリアル胸)が。
バスタオルを巻いてはいるものの、そのボリュームはなかなかどうして見事なものだ。などと感嘆している場合ではない。
うまくごまかさなければ。

179 名前:1 [] 投稿日:2005/03/29(火) 23:23:28
「いや、その、あれだ。海に棲んでるフカだよ。この近くではワニって呼ばれて名物になってるんだっけ、な?」
俺から平井にパス。
「え!?ええ……そうですよ。フカのすり身で作られたパイなんて食べてたいなぁと思って、ね?」
平井から魔術士の爺さんにパス。
「お、、おお。そうなんじゃ、隣のワクチ村にマンサクさんの料理屋があって、そこに材料を分けてもらいに行こうと準備
をしていたところなんじゃっ!」
Gooooool!!!
おk!ナイス俺ら!!GJ!ちょっと苦しい気もするが、大体辻褄は合っている。これでフカパイも納得しないわけがない。
「それはそれは。今夜は猛吹雪だそうですけど気をつけてくださいね」
その夜、俺達は凍てつく吹雪が襲う中、食べたくもないフカのパイを作る為に、はるばるマンサクさんの家を訪ねた。
明けて翌朝、俺達は聖剣を求めて入山口までやってきた。俺と平井、そして北の魔術士は、昨晩の買い出しによる疲労素を目
の周囲にどっさり集積させている。そこに追い討ちをかけるように、
「おにいちゃん、あのフカパイあんまりおいしくなかったねぇ」
甜歌のきつい一言。確かにあれは不味かった。でも違うんだ、甜歌。本物のフカパイは。真の意味でのフカパイは、きっとお
いしいはずなんだよ。
俺は気を取り直して、北の魔術士に話しかける。
「山に登って剣を取ってくればいいんだろ?」
「ところがどっこい、そう簡単にはいかんよ。この山に一度に入山できるのは2名までと決まっとる」
「何だよ、それ」
魔術士に聞き返すと、彼は面倒くさそうに答える。
「この山に3人以上の集団で立ち入ることはできん。一人でも多く入れば、途端に山の主が騒ぎ出すでのう」
そんなおっかない場所から本当に聖剣を取ってきてもいいのだろうか。再び不安に取りつかれる俺に、平井は告げる。
「剣を持つべきあなたが一人目として、あと一人を僕らの中から選ばないといけませんね」
「どうしようか…」
突然降って湧いた選択肢。俺は腕組みをして沈思黙考した。

ここで分岐。
@深田と入山
A甜歌と入山
B平井と入山
                                                             続く

180 名前:1 [] 投稿日:2005/03/29(火) 23:26:24
最初の分に加筆

縄があれば首を吊りたくなるほどの寒さの中、俺達一向はキタミの街を目指して、夕暮れ時の風雪吹きすさぶ街道を歩いている。
深田によると、そのキタミという街に北の魔術士は居を構えているという。

181 名前:1 [] 投稿日:2005/03/29(火) 23:31:14
>>179
×フカのすり身で作られたパイなんて食べてたいなぁと思って、ね?」
○フカのすり身で作られたパイなんて食べてみたいなぁと思って、ね?」

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