異世界ファンタジー編 第38話

 

22 名前:1 [] 投稿日:2005/10/12(水) 20:14:22
第38話 
「ど、どういうことだ?」 
「見ての通りさ。ボクには自分の中のゲート石を自在に操る能力が備わっている。あっちの世界とこっちの世界を 
自由に行き来出来るのさ」 
「な、なんだって!?(キバヤシAA略)」 
確かにここはどう見ても三次だ。深夜なのか通りに人影はない。 
「いいじゃない。こういう所で戦うのも」 
と魔王。俺は毅然として言う。 
「見知った場所なら、俺が被害を気にして力を出し切れないとでも思ったのか?」 
魔王は首を振った。 
「理由はない。単なる興だよ。では早速行くよ!!」 
眼をかっと見開き、魔王は先制攻撃をしかけてきた。俺はロングソードでの斬り上げを受け止める。さすが魔王の名 
に恥じぬ重い攻撃だ。それを捌き、体勢を立て直すために距離を取るべく、車道脇のフェンスを飛び越えようとした。 
「ぐぇ……!!」 
ところがどっこいフェンスに足を引っかけ、俺は無様に顔を地面にうずめた。だらしなく垂れる鼻血を拭う。跳躍力 
が低下している。いや、違う。現実世界に戻ったことで、身体能力が元に戻っているのだ。ファンタジー世界にいた 
時のような超人的な力は失われている。 
魔王の攻撃に耐えられるのも、彼が宿っている深田の身体が俺と同じ人間に戻っているからだろう。魔王も自分の身 
体能力の低下に気づいていなかったようで、戸惑いを見せている。 
「マジか……でも待てよ。それじゃ、こっちはどうだろう?」 
何を思ったのか魔王は左手を宙に掲げる。次の瞬間、激しい閃光が迸り、遙か武田山の中腹に命中して大爆発を起こ 
した。轟音がここまで響き渡り、住宅の電気が次々と灯る。 
「どうやら魔術はそのまま使えるようだね。でも今のは実験。魔術は使わないでおいて上げる。フェアに行こうじゃ 
ないか」 
俺は深呼吸をして睨み返す。 
「どっちでもいい。早くしろ。時間の無駄だ」 

23 名前:1 [] 投稿日:2005/10/12(水) 20:15:28
続行。今度は俺から仕掛ける。運動能力が下がっても、剣技は身体が覚えている。俺は魔王に連続攻撃を浴びせる。 
が、そこは深田の意識を利用しているのか、彼は俺の攻撃をことごとく防いでしまう。このままでは埒があかない。 
その時である。 
「お前ら何しとるんなら」 
「見いや。あいつら剣持ってるぞ。つか、まさかコスプレってやつ?」 
「プゲラ。ヲタかいwww」 
見るからにDQNな連中が3人(金岡、田中、島西)。俺達の闘いを見てちょっかいを出そうと近づいてきたではないか。 
「お、女の方は結構イケてるじゃん」 
「ヲタにはもったいないのう」 
DQN1(田中。高校時代。あだ名はタンカー)が魔王の肩に手を置いた。 
「うるさいなぁ」 
魔王は苛立たしげに振り向き、先ほどと同じように手を構え、印を結んだ。 
「待て、やめろ!」 
俺が止めに入る間もなく、炎がDQN3人を包み込む。 
「おぎゃああああああああああああああああ!!!」 
のたうち回るDQN達。あっけなく死去。絶叫を聞いて駆けつけた住民が、炎に包まれた人間を見て警察に通報している。 
このままでは野次馬が集まってきてしまう。 
「あ〜あ、しまったな。人が集まっちゃう」 
魔王は踵を返し住宅街へと走る。俺はその後を追う。今の騒ぎが届いていない住宅街は寝静まり、人っ子一人いない。俺 
達は馬洗川の河川敷で足を止めた。 

24 名前:1 [] 投稿日:2005/10/12(水) 20:16:34
-----------何が起こったんだ。 
「おにいちゃん、いなくなっちゃった……」 
呆気に取られる甜歌。 
「ちょっと、あいつと魔王はどこ行っちゃったの!?」 
カエラさんが僕に耳打ちをする。だが自分にも皆目見当がつかない。 
「わからない」 
“彼”がうまく窮地を抜けてくれるはずと信じるしかない。と言うより、今はそれどころではない。問題は僕達の方だ。 
何しろ目の前にえなりと有田という二人の魔族が立ちはだかっているのだから。 
僕はえなりの前に進み出る。 
「えなり……」 
念願。そうだ。僕が今ここにいるのは念願を果たす為。千乃の仇を討つこと。それが僕の念願だった。今目の前にいるの 
は夢にまで見た仇敵。 
「お前とこうしてまみえる日を、僕はどれだけ待ちわびただろうか」 
えなりは、 
「君は確か………あれ、誰だっけか?」 
と、とぼけた風に挑発する。以前の僕なら間違いなく激昂していたであろう。しかし、僕は昂ぶる心を抑え、えなりに言う。 
「それなら今から刻み込んでやるさ。死にゆくお前の網膜に」 
えなりは呆れたような表情。 
「見上げた根性だね。越えることの出来ない壁があるってこと、教えてあげよう。もっとも知った時には君はあの世なんだけどな」 

25 名前:1 [] 投稿日:2005/10/12(水) 20:17:28
正直勝てる気なんて微塵もない。先ほどの技を見ても破壊力は桁違い。おまけに僕の刀は、“彼”や深田さんが持つ異世界 
人用武器のような、魔族特効属性ではない。 
だがここは打って出るしかない。死中に活を見い出す。 
「カエラさん、甜歌ちゃん、摩邪さん。有田をお願いします」 
二人が驚きの声を上げる。 
「ま、まさか…あなた、独りでえなりとやり合う気!?」 
「堅、無理だよ!!」 
そこに摩邪さんが割って入り、二人を止める。 
「それがお前の覚悟なのか?」 
「私闘ということは重々承知です。でも僕は独りでやりたい」 
僕は彼女らを振り返ること、依然としてえなりを見据える。 
「最近のチャラチャラした奴にしては見上げたもんだ。よし、他の連中のことはあたいらに任せとけ」 
さすが摩邪さん。良い所に出てきて、おいしい所を持って行く。内心そう思いながら、僕は呟いた。 
「すみません。ありがとう」 

26 名前:1 [] 投稿日:2005/10/12(水) 20:18:34
-------------------------星がきれいだ。こんな時に俺は何を考えているのか。かつてよく散歩したこの場所で命を賭けて 
戦うとは皮肉な話だ。目の前には剣を構えた魔王。一切の雑念が入る余地を捨て、俺も俺専用異世界人専用聖剣を強く握る。 
-------------------------星がきれいだ。いつの間にか日は暮れ夜になっていた。有田はカエラさん達が何とかしてくれる 
だろう。今ここには僕とえなりだけ。奴は一向に構えを取る気配がない。どこまでも人を小馬鹿にしている。そこに千之の 
顔が浮かぶ。僕は心を静め、刀の刃を立てる。 

------------俺は、深田……いや、魔王に対し- 
-----------僕は、仇敵えなりに対し、 

小さな声で、しかし力強くこう言い放った。 
「これで本当の終わりだ」 
                                                                 続   く 

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