MS編 第三部 エピローグ ルート分岐

 

839 名前:1 [] 投稿日:2005/03/08 (火) 16:46:07
第26話(エピローグ分岐@)
俺は久々に尾関山で昼食をとることにした。セブンイレブンに寄り、和風幕の内弁当とウーロン茶を
買う。法務局前の交差点を左折し、車(シビックフェリオ。95年製)を駐車場に止めた。
俺は遊歩道を歩き、中腹に設置してあるベンチに腰掛けた。そうして三次の街を見渡しながら、弁当
の中身を黙々と口に運んでいく。
ふと俺の名を呼ぶ人がいる。振り返ると一人の女性。その姿には見覚えがあった。
「…鳥羽の奥さん……?」
それは俺が勤める店の下請け業者、鳥羽の妻だった。俺が昏睡状態にある時、結婚したらしい。数日前、
一度だけ店で見かけたので覚えている。
彼女は微笑んで、
「そこ、いいですか?」
「あ、どうぞ」
俺の隣に座った。とはいえ、人妻と一体何を話していいのか、俺は言葉を詰まらせた。幸いにも彼女の方
から話しかけてくれた。
「大変な事故に合われたんですってね」
「ええ。もう全然大丈夫ですけどねwにしても、俺が眠っている間に色々ことあったみたいで。地球連
邦と公国の間で大きな戦いがあったみたいだし。赤川さんも連邦の艦に乗ってたんですよね?」
彼女は少し困ったような顔をして、数秒考えた後、再び口を開いた。
「はい。でも私が乗っていた畠敷という艦には、とても優秀なエースパイロットがいて、彼は悪夢を打ち壊
してくれたわ。もう居なくなってしまったけど…」
「自分の身を犠牲にしたんですか…俺には到底真似できないな。ところで赤川さんは…」
俺は口をつむんだ。赤川さんとは誰だ?今、会話しているのは鳥羽の妻だ。

840 名前:1 [] 投稿日:2005/03/08 (火) 16:46:37
……赤川さん……
何かが蘇ろうとした。しかし俺の心はそれを拒んだ。胸の内の最も弱いところに刻まれた傷。真実を知るよりも、
それは閉じたままにしておいた方がいい。己の心の深い場所に居る何かがそう呟いた気がした。
「休憩時間が終わる。もう行かなきゃ」
俺はベンチから立ち上がった。彼女も立った。
「あの、桜が咲いたら一緒にここへお花見に来ませんか?うちの人もみんなで」
「うーん、考えてみます。また鳥羽に伝えます」
俺は花見には行かないだろう。
「それじゃ…さようなら」
彼女に背を向けると同時に、頬を温かいものが落ちた。最後に泣いたのはいつだったか。もう何年もお目にかか
っていなかったそれに、俺は戸惑った。そして、それを見られないように足早に歩を踏み出した。
「ありがとう…」
別れ際に、背後から震える声で彼女は確かにそう言った。微かな声に気づかなかった振りをして、俺は山道を下っ
ていく。彼女も逆側の山道を下りていった。二人の行く道は決して交わることはないだろう。麓に着いた俺は、大
きな安堵と得体の知れない喪失感を抱えて車のキーを回す。ふと前を見ると、来る時は気づかなかったが、公衆便
所裏の林で桜の蕾が、春の到来を告げていた。
                                               終わり

848 名前:1 [] 投稿日:2005/03/08 (火) 21:37:54
第26話(エピローグ分岐A)
俺は、はな丸うどんで昼食をとることにした。毎度お馴染みのメニュー、カレー(大盛り)+半熟卵(カレーフェア
が終わって付いて来なくなったのが残念)+ゲソ天を平らげた。ついでにATMで金を下ろす為、サングリーンに立
ち寄る。
ふと俺の名を呼ぶ人がいる。振り返ると一人の少女。その姿には見覚えがない。
「お兄ちゃん!」
「え、誰?」
少女は俯いて顔を曇らせたが、すぐにまた笑顔を取り戻して、
「あれ〜、忘れたの?甜歌だよ」
「テンカだよって周知の事実みたいに言われてもなぁ。知らないものは知らないよwそれじゃあ、俺は急ぐから」
「あ、待って!」
春先は変なのが多い。関わり合いになりたくない俺は、足早にその場を去ろうとする。
「うわあああああああああああああ!!」
急に少女が火をつけた様に泣き出した。辺りは騒然として、買い物客が一斉に何事かとこちらを見るわ、警備員はジロ
リと睨むわで俺ピンチ。
「あああ、わかったわかった、泣くなよ!あ、そうだ。お腹空いてるか?”妹のお前に”にぃちゃんがミスド奢ってや
るよ」
周囲に怪しまれないように、咄嗟に”妹”という表現を混ぜた。
「おk、レッツゴー。甜歌と”血のつながった”お兄ちゃん!」
「こいつ嘘泣きかよ…」

849 名前:1 [] 投稿日:2005/03/08 (火) 21:38:22
甜歌はケロッと満面の笑みを浮かべて身を翻し、ATMコーナーの向かいにあるミスドに向かった。児ポ法に怯えなが
ら俺はトレイを持つ。彼女はその上にドカドカと、遠慮一切ナッシングで各種ドーナツを盛り上げた。席につき、嬉し
そうにそれらを口に運ぶ甜歌。俺は降って沸いたように現れたこの子をどうしたものかと悩んだ。が、その顔を見てい
ると不思議とこちらも気持ちが弾んでくる。しかも、どこかで会ったような気がしてきた。何とも不思議な感覚だ。
「なぁ、さっきは知らないって言ったけど、ひょっとしてどこかで会ったか?」
「一緒に畠敷に…おっと、司令に口止めされてたんだ」
「司令?」
「うーん、本当は知らない」
「え?」
「初対面だよ。赤の他人」
「!!」
俺は仰天した。この子は何だ。これが噂に聞く、いわゆる一つの天然というやつなのか。それとも頭が少し弱いのか。そ
うしている間にも甜歌はドーナツを黙々と食べ続け、最後の一個を残すのみになった。それを俺の眼前につきつけ、
「はい、お兄ちゃん。食べていいよ」
「あ、ありがとう」
受け取った俺はそのポン・デ・リングの一玉を口に放り込んだ。それを嬉しそうに見つめる甜歌。
「あ、俺もう行かなきゃ。仕事があるんだ。それじゃあな、甜歌…だっけ?」
彼女は寂しそうな笑顔を浮かべたものの、小さく頷いた。
「ねぇ、お兄ちゃんまた会いに来ていい?」
「ん、でも何で俺にこんな…」
「いいって言って!」
「ああ、わかったわかった。いい、いいよ!いいから大声出すなよな」
「よし、じゃあ携帯番号交換ね」
お互いの携帯番号を交換して俺達は別れた。甜歌は大きく手を振った。俺も手を振り返す。50mくらい離れて姿がほとん
ど見えなくなってもまだ手を振る甜歌。
「ああ、あんな遠くまで行ったのにまだ振ってるよ…」
いい加減手が疲れてきたものの、それに応じた。応じなければならない気がした。その姿がようやく見えなくなると、俺は
車に乗りこむ。不思議と朗らかな気持ちで俺はキーを回した。車載オーディオからDavid Bowieのスターマンが流れる。
俺は甜歌からの着信音をこの曲に決めた。

                                                  終わり

874 名前:1 [] 投稿日:2005/03/09 (水) 23:42:53
第26話(エピローグ分岐B)
俺はホカ亭に唐揚げスペシャル(大盛り)を注文して、配達してもらうことにした。弁当が届き、食事の番が回ってくる。
休憩室に入りいざ弁当の蓋を開ける段になって、内線が入った。自分あての来客のようだ。蓋を閉じて売り場に出る。
売り場にいたのは髪を金色に染め上げ、派手なブランドものと思しき洋服に身を包んだ女性。記憶を辿るがこんなお客さ
んを接客した記憶はない。
「約束通り買いに来てやったわよ!」
ひどく偉そうな態度だ。
「ど、どうもご来店ありがとうございます…」
ぎこちない態度の俺を見て、彼女ははっと何かを思い出した顔をして、
「あ!そうか。憶えてないんだ…」
と、わけのわからないことを呟いた。
「まぁいいわ。パソコン買いに来たんだけど、あんた的にはどんなのがオススメ?」
「(いきなりあんたかよ…)そ…そうですねぇ。主にどんな用途にお使いになる予定ですか?」
「当然ワープロとかDVD見たり、あと音楽管理にも使いたいし。メモリはペンティウムM3Ghzくらいがいいわねぇ。最
近のパソコンはハガキ作成ソフトや家計簿ソフトは予めインストロールされてるわよね?」
どうやら付け焼刃で勉強してきたらしい。得意そうに語る。俺は訂正するのは可哀そうに思えて、そこは触れずに彼女に合
いそうなパソコンを提案していく。
「じゃあ、それにするわ。もしあたしに合わなかったら、あんたの責任ね」
「え!?」

875 名前:1 [] 投稿日:2005/03/09 (水) 23:43:17
どこまでも自己中心的な人だ。俺は正直彼女に商品を販売するのが、まさに地雷地帯に足を踏み入れるように思えて、ひど
く不安になってきた。とりあえず伝票を作成する。配達票に記入された内容を見ると、どうやら浜崎という名前らしい。
「当然あんたがうちまで来て、操作とか一通り教えてくれんでしょ?」
「有料になりますがインストラクターによる訪問教室もさせてもらっており…」
「なに言ってんの!買ってやるんだから、当然”無料”でしょ」
「お客さん、そんなこと言われても、できることとできないことが…」
「あんた自身が休みを利用してでも来ればいいじゃん!!いい?他の人間じゃ駄目だからね」
浜崎は俺の目を凝視しながらまくし立てた。この業界に入ってそれなりになるが、ここまで滅茶苦茶な購入前クレーマーに
はお目にかかったことがない。しかし、通常なら責任者に相談するところが、俺は何故か濃い目のアイシャドウからのぞく
瞳を見ていると断れなくなってきた。極めて我儘ではあるけどもどこか憎めない。そんな子供のような瞳が、何故か懐かし
く感じられた。
「なんとかします…」
俺は渋々答えた。
「それでよし」 
彼女はひどくご満悦な様子。配達日を決定して代金(ギリギリまで値切られた)を受け取り伝票を渡す。
「また電話するから」
「ありがとうございました…」
颯爽と店を出る姿を、振り返って戻ってくるのでは、と戦々恐々しながら見送る。
「なかなか可愛い子じゃないか。お前の知り合いか?」
チーフが矢鱈嬉しそうに話しかけてくる。
「それはこっちが聞きたいです」
疲れた。とにかく疲れた。俺は商品を手配して再び食事に戻る。結局配達は貴重な休日を削ることになった。長引くこと間
違いないので、出勤日にはまず行けまい。通常なら休日が一日減ってへこむところ。ところが、何故か心は不思議と弾む。
(俺ってちょっとM入ってるのかな…)
自分の隠れた一面に気づかされつつ、俺は冷めた弁当を電子レンジに入れた。
                                                     終わり

894 名前:Mr.名無しさん [] 投稿日:2005/03/11 (金) 00:40:29
第26話(エピローグ分岐C)
俺はセブンイレブンで弁当を買ってきて昼食をとることにした。食事時間が重なった同僚と他愛の無い会話を交わす。しかし、
その会話はどこかかみ合わない。彼らも病み上がりの俺に何かと気を遣ってくれているようだ。明日から、以前は絶対にくれ
なかった3連休までくれた。逆にそれが俺には居心地が悪い。第一、連休を貰っても予定などありはしないのに。
数日前に彼らが俺について話しているのを耳にした。”変わった”。同僚の一人はそう言った。そうだ。俺は明らかに以前と
変わった。自分でも分かる。価値観、身のこなし、俺を構成する様々な要素が、一年前と比べてあまりに違いすぎる。一年、
ただ寝ていただけなのに。
結局いたたまれなくなって、俺は早々に休憩室を出る。復職してからは毎日こんな按配だ。売り場に戻り、接客、売り場の整
備、発注、POP作成。諸作業に追われて俺は忙しく売り場を駆け回る。しかし何故か満たされない。この鬱屈とした感情は
事故に遭う前にも感じていたはずだ。だが今のそれは以前のそれとは違う。どこかが違う。
夕刻。
「おい、即日でサポート入ったから、君田まで走ってくれ」
「はい」
チーフから回されたインターネット設定サポート。俺はサービス車で国道54号を走る。特にどうということの無いナンセンス
コールだった。早々に作業を終えると、再び来た道を辿る。夕焼けが美しい。信号待ちで俺は窓外の景色に目を奪われた。ふ
と山の麓に廃墟のようなものが見えた。
「あそこは確か…」
俺は見えない何者かに手を引かれるように、その場所へ向けて車を発進させた。
「これは……連邦軍三次基地…」

895 名前:1 [] 投稿日:2005/03/11 (金) 00:41:32
そうだ。確かここは連邦の基地があった場所。基地は公国軍の攻撃を受けほぼ潰滅。現在では三和町に移転している。俺は廃墟
の中を歩いてみることにした。フェンスを乗り越えて中に忍び込む。人の居る気配は皆無。焼け落ちた建物、転がる機械の破片、
そして壁にこびりついた血痕。生々しく襲撃時の様子を物語るそれらに奇妙な感覚を覚えた。それは意外にも懐かしさだった。
俺は宿舎らしき建物の跡で、焼け残った一冊の本を見つける。それはアルバムだった。ところどころ焼けたページをめくってい
く。恐らく既にこの世の人ではない人もいるだろう。俺よりもずっと年下の者もいる。まだ世界の中心が自分であったろう年代。
あどけなく無邪気に写る彼らの表情は、それ故に余計儚く感じられる。
「!!」
俺はページめくって硬直した。
「何の冗談だよ…」
そこには自分の顔があった。俺は怖気を覚えた。他ならぬ己に向けられた恐怖の念。
「俺は一体何者なんだ」
さらに震える手でページをめくって行く。異常な状況は立て続けに俺を襲う。どういうわけかアルバムの中に、名前を思い浮か
べられる人間がいる。
「上戸……浜崎……甜歌………」
名前を思い出していくうち、アルバムを持つ自分の手が振るえ、その上にポツポツと水滴が落ちる。
俺は泣いた。涙と鼻水を垂れ流し、なりふり構わず泣いた。この言いようのない感覚。既に恐怖は無い。代わって身を覆ってい
るのは、あまりにも不条理な現実に対する悲しみだった。名前しか思い出せない写真の中の人達が、この上なく愛しく感じられ
た。そしてアルバムは最後のページに至る。そこには、自分と歳の近い連邦の制服を着た女性と並んで、居心地悪そうに写る俺
がいた。
「……赤川さん」
そう、この人の名は赤川さんだ。その顔をじっと見るうちに気づいた。
「待てよ。この顔どこかで…」
そうだ。数日前に下請け業者の鳥羽が引越すということで、店に連れてきていた彼の妻だ。あの時は顔を垣間見ただけだが、確
かに覚えている。どういった了見で俺と並んで写真に写っているのか。西の空を見上げると、夕陽が沈みきり、辺りが暗闇に覆
われていく。

896 名前:1 [] 投稿日:2005/03/11 (金) 00:41:57
俺はアルバムを携えると車に駆け戻った。そのまま三次に向けて車を走らせる。店に着くや鳥羽に電話をかけるが、出ない。そ
う言えば月面都市に引っ越すので、第7世代FOMAにキャリア変更すると自慢していた。店の同僚はまだ誰も、新しい電話番
号を教えてもらってないという。
真実を知りたい。果たして俺はこの一年間、本当に昏睡状態だったのか。だとすれば今手元にあるこのアルバムは何なのか。手
がかりは鳥羽の妻、赤川さんが握っているに違いない。翌日、俺は居ても居られず三次駅前の旅行代理店を訪れた。30分ほどし
て代理店から出てきた俺の手には、月行きのチケットが握られている。空白になる筈だった3連休の予定が埋まった瞬間だった。
                                                       終わり

899 名前:1 [] 投稿日:2005/03/11 (金) 00:45:02
ここでエンディング

エンディングテーマ
Miz 「Dreams」(昨日発売のアルバムから)


今作の回想シーンをバックにお馴染のスタッフロール

監督・脚本・声の出演    俺 
スペシャルサンクス     お前ら

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