GWスペシャル 〜OVA版俺専用MS第2巻〜

 

593 名前:1 [] 投稿日:2005/05/08(日) 00:07:40
第2巻
「第三世代?」
聞き返す俺の言葉など耳に入らず、橋本は放心状態でMSから視線を外せないでいる。
第三世代と呼ばれた機体は、ロングビームサーベルの一撃でデスパが装備している巨
大なランチャーを一刀両断。相手のずんぐりむっくりとした体躯から繰り出される鈍
重な攻撃をことごとく避け、ライフルで頭部を打ち抜いた。間髪を入れず、いつの間
にか距離を取ってスピア砲にエネルギーを充填していていたバリスタが、第三世代に
向けて発射した。しかし、それすらも紙一重でかわした第三世代は、シールドを弾き
飛ばされたものの機体はほとんど無傷だ。
「強い。連邦のMSでも全く歯が立たないのか…」
戦闘に見とれている俺は、その圧倒的な性能に驚嘆した。だが、それ以上に先程から
妙な感覚に襲われている。いわゆる既視感というやつだ。あの第三世代というMSを
どこかで見た気がしてならない。それがいつのことなのか、夢か現かすらも定かでは
ない。それなのに、まるで旧い友に再会したような。
「っと、こんなことしてる場合じゃないな」
そうだ。悠々と観戦している状況ではない。俺は動けずにいる橋本の身体を抱きかか
えると、その場を離脱すべく駆け出した。パイロットには気の毒だが、元々遠距離専
用のバリスタでは第三世代には到底適わないだろう。しかし時間稼ぎにはなる。
と、その頭上を轟音が通過した。
「新手か!?」
空を見上げると、どどめ色とでも言うのか、暗い紫色で塗装された機体が目に入った。
戦闘機にしては少々いびつな形状のそれは、空中で人型に変形した。可変型MSだ。
肩アーマーには連邦の軍章。

594 名前:1 [] 投稿日:2005/05/08(日) 00:08:06
新型は着地したかと思うと、そのままサーベルを構えて第三世代に向けて突進する。
思わぬ増援に意表を突かれた第三世代は、右腕を切り飛ばされて体勢を崩した。しかし
敵もさるもの。膝を突いた格好でビームライフルを構える。その照準は連邦のMSには
向けられていない。銃口が狙う先は俺達だ。
「やばい!!」
俺は咄嗟に橋本の身体に覆い被さって守る。迫るビーム。だが間一髪で弾は弾かれた。
辺りに金属が溶ける異臭が漂う。瞼を開けると、どどめ色のシールドが俺達の前に聳え
立っている。第三世代は既に姿を消してしまったようだ。
「そこの民間人、何でさっさと避難しないの!」
拡声器から苛立ち混じりの怒号が響いた。女の声だ。激しい中にどこか冷たさを感じさ
せる声色。俺は彼女が乗るMSのメインカメラに顔を向けて、申し訳なさそうに両手を
合わせた。すると、
「あなたの名前は?」
「へ?」
俺は声を張り上げて自分の名を名乗った。
「く……いいわ。行きなさい」
女パイロットは苦々しそうに言い捨てた。やはり俺達のせいで敵を逃がしたことに苛立
っているのだろう。
サイレンが近付いてくる。戦闘が収まった演習場に、連邦軍所属の軍用車や救急車が次
々と集合して来た。その倍はあろうかというマスコミも。俺は橋本を抱えて、それらを
避けるように野次馬の中に溶けこんだ。
月面都市の夕方は、照明を徐々に弱めることで再現される。俺と橋本は中心街の広場で、
据えられたベンチに腰掛けている。隣に座る彼女の表情は浮かない。できれば“第三世
代”のことを聞き出したいのだが、あの驚愕した様子を思い出すと踏ん切りがつかない。
すぐ側のTV局前に設置されている大型モニタには、昼間のMS一般公開会場襲撃の報
が絶え間なく流されている。仕事を終え帰宅中の会社員、買い物中の主婦、部活帰りの
女子学生、誰もがモニタから流れてくる戦争の匂いに歩を止めている。

595 名前:1 [] 投稿日:2005/05/08(日) 00:08:46
つい30分ほど前、白いMSに会場を襲撃させたグループから声明が発表された。彼らは
一年前の戦争で敗れた友岡公国の残党、というと語弊があるだろう。というのも友岡公
国は敗戦以来、戦争放棄を主張している。実際には連邦の監視の下に武装を禁止されて
いると言ったほうが適切なのだが、とにかく今回の襲撃について一切の関与を否定した。
では犯人は一体何者なのかと言うと、故友岡王の遺志に傾倒した一部の残党とのこと。
彼らは友岡公国からの連邦の完全撤退を要求。昼間の戦闘は軍事力を見せつける為のプ
レゼンテーションの意味合いだった。しかし連邦軍最高司令官山田は威信を傷つけられ
て引くに引けず、それを拒否。こうして再び戦争の火蓋が切って落とされたわけだ。
既に宇宙港では月面都市への出入りが制限され始めている。戦争が本格化すれば、地球
に帰るのも一苦労だ。早めに真相を確かめなければなるまい。
俺は橋本の横顔を再度見た。とりあえず彼女は家に送っていくべきだろう。
「橋本、家に送ってってやるよ」
「え!?でも、まだ目的地に着いてないじゃん」
「ありがたいけど、あんなことになっちゃったしなぁ」
「ウチはおにいちゃんに付いていく義務があるの」
「義務って何だよ。そもそもお父さんやお母さんが心配するだろうし」
「…いや!絶対にいや!!」
だだをこねる橋本を俺が持て余していると、肩を叩く者が。
「君、何をしているんだ?」
肩を叩いたのは若い警察官(倉橋。中学時代の後輩。現職警察官。GTAが好き)。俺
は眼を見開き硬直した。こんな時間に歳の離れた俺達が言い争いをしているのを見て怪
しんでいるようだ。
「あ、いえ…別に少女に悪戯とかそういうことを目論んでいるわけじゃ」
我ながらお見事な墓穴掘り。
「ねぇ、おにいちゃん。そろそろ家に帰ろうよ」
橋本が俺の腕を引っ張った。ナイスフォロー。

596 名前:1 [] 投稿日:2005/05/08(日) 00:09:09
「おにいちゃん?それにしちゃ歳が離れているようだねぇ」
警察官はなおも疑いの目。
「…実はウチのお父さんとお母さんは愛人関係で。おにいちゃんとは腹違いの兄妹なの。
いつもはお母さんの目があってなかなか会えないんだけど、今夜は特別におにいちゃん
と会う許可が下りたの。ね、おにいちゃん」
「あ、ああ」
示し合わせたとは言え、こうも取ってつけたような設定で上手く騙され…
「そうか。おにいさんと仲良くな」
騙されてる!!コロコロッと騙されてる!!疑り深いと思ったら思いのほか単純でよか
ったー\(^o^)/
俺達は敬礼する警官に、作り笑いで別れを告げて中心街を出た。そのまま橋本に手を引
かれて、裏路地を進んでいく。黙々と俺の手を引っ張る彼女に、俺はただただついてい
くしかない。しばらく歩いて、巨大な集合住宅の前に辿り着いた。
「着いたよ、おにいちゃん」
「ここか」
一体何十世帯が入居しているのか、整備されている点を除けば、香港の九龍城を彷彿と
させる。プレートには確かに市営住宅の文字が記されている。早速鳥羽の住む部屋を探
そうと、俺が郵便箱に近付こうとすると、俺の背後でドサリと地面に何かを落とす音が
した。
振り返ると、音の発生源はビニール袋。収まりきらない大根やパンが顔をのぞかせてい
る。そして袋の横には人間の足。俺は恐る恐る視線を上げた。
「赤川……さん」
照明が完全に落ち、月面都市に夜が訪れた。
                                                                 続く

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