はじめて見た海、それはどこだか知らないけど、自分の記憶の中にある、はじめて見た海のイメージは、今でも私の中に残っている。 それは、北の海だった。 北緯45度近くの北の海。 北の海の水は重くうねり、紺青の冷たさをたたえていた。 水に臨むデッキを歩くと板がギシギシ鳴り、その下で水がたゆたい、空には遠く鴎の声が響いていた。 その頃、私はアメリカのアイオワという、田舎の小学生だった。 アイオワは内陸で、海も山もない。 そんな、地平線の広がるのどかな景色も好きだったけど、海は私を惹きつけた。 そんな私の記憶にあるはじめての海景、それがボストンの海だったのだ。
北の海を見ながら私が考えていたのは、海を渡ってきた冒険者たちのことだった。 学校で習った移民の話し、メイフラワー号に乗って来た人たちの話し。 この海を渡ってくるのはどんな気分なんだろう、そう思わずにはいられなかった。 船の中で、陸を見ることもなく、ずっと漂っているのは。 船という限られた空間のなか、目の前に見えるのが膨大な空間、膨大な海。 船から飛び出して、ふと海に飛び出したくなることはないのだろうか。 子供の勝手な空想。 でも、漂流するというイメージ、これは学校で学んだアメリカ移民の話によって決定づけられたと思う。 海を漂う冒険者たち。 それ以来、海にまつわる話し、漂流物語などを好むようになった。 港に行ったり、船に乗ったりするのが好きになった。 ここは、そんな私の海の記憶の断片を集めた場所です。 日常生活の中で冒険者となれない人たちも、幻想海洋逍遥の旅に出てみて下さい。 船は、いつでも用意されているのです。
『海をみたことがなかった少年』ル・クレジオ
『パワナ』ル・クレジオ
『海底二万里』ジュール・ヴェルヌ
『神秘の島』ジュール・ヴェルヌ
『夢の港』原田康子
『蠅の王』ゴールディング
『霧笛』レイ・ブラッドベリ
『ケルト民話集』フィオナ・マクラウド
『オデユッセイア』ホメロス
『テレビジョン・シテイ』長野まゆみ
ここに取り上げている作品は、私の読んだことがあり、気に入っている作品です。 海洋文学は、この他にもたくさんあります。 自由国民社から出版されている『世界の海洋文学』は、海洋文学を探すうってつけのカタログだと思います。 この本には336ほどの小説やエッセイ・ルポなどが紹介されています。 大部分がはじめて目にした作品なのですが・・・・。 埋もれてしまっているのでしょうか。 メジャーな作品ももちろん取り上げられているので、興味のある方は是非一度見てみて下さい。
幻想の地誌学 谷川渥著 トレヴィル 2500円
テクストの中だけに存在する、幻想の島たち。 空想旅行を読み解く評論集。 海洋に限らず、幻想旅行を取り上げています。 図版も収録されていて楽しめます。
『架空地名大辞典』 講談社 3900円
世界文学における架空の地名を集めた辞典。 調べるもよし、気ままに開いて珍奇な島を探すもよし。 盛り上がりなく、流れるような記述をしているのが特徴。 けっこう詳しく書き込んでいるので、真剣に読んでいると妙な気分になってくる。 これだけ変なものを集めるとけっこう壮観な気がする。 現実には役に立たない知識かもしれないけど、これを読んでいると楽しいです。